2019.02.15 ON AIR

ハウリン・ウルフのサイドマンとして名曲を残したギタリスト、
ヒューバート・サムリン

Tribute To Mr.Hubert Sumlin

The Real Folk Blues/Howlin Wolf (Chess/MCA MVCM-22019)

The Real Folk Blues/Howlin Wolf (Chess/MCA MVCM-22019)

The Back Door Wolf/Howlin Wolf (Chess/MCA CHD-9358)

The Back Door Wolf/Howlin Wolf (Chess/MCA CHD-9358)

Heart&Soul/Hubert Sumlin (Blind Pig BP7 3389)

Heart&Soul/Hubert Sumlin (Blind Pig BP7 3389)

 

ON AIR LIST
1.Killing Floor/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
2.Love Me Darlin’/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
3.Do The Do/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
4.Coon On The Moon/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
5.Old Friends/Hubert Sumlin

去年の暮れに「サイドマン」というブルーズの映画が公開されました。映画の内容はいろんなブルーズマンのバックで主役を支えてきたサイドマンの話なんですが、シカゴブルーズの大物ハウリン・ウルフのギタリストのヒューバート・サムリン、マディ・ウォーターズのピアニストとして長くバックを務めたのパイントップ・パーキンス、そしてやはりマディのドラマーを務めたウィリー・スミスの3人が中心になってるのですが、主役ではない、メインのスポットライトは当たらない彼らの音楽を支える気持ちや精神を知るとてもいい映画でした。

今日はその3人の中からヒューバート・サムリンです
ヒューバート・サムリンはミシシッピー生まれですが、育ったのはウエストメンフィスで若い頃からハーモニカのジェイムズ・コットンたちとつるんでブルーズを演奏してました。それが1954年に当時のメンフィスのブルーズの大物ハウリン・ウルフに声をかけられて一緒にシカゴに移り住みます。ウルフは一旗あげにシカゴに向かったのですが、若いヒューバートにこいつは才能があると思ったのでしょう。それからウルフが亡くなるまでヒューバートはほとんどウルフのサイドマンとして活躍します。

2011年に80歳でヒューバートは亡くなったのですが、やはり間違いなく一流のブルーズギタリストでした。

ヒューバート・サムリンのギターというとまず想い出すのはやはりハウリン・ウルフの右腕として録音した「Killing Floor」という曲ですが、イントロと途中に出てくる曲のテーマのようなフレイズはヒューバート特有のシャープな切れ味です。
1.Killing Floor/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
いまの曲はジミ・ヘンドリックスがアメリカに凱旋帰国した最初のコンサート「モントレーポップフェスティバル」の一曲目に演奏したのですが、そのジミヘンはじめエリック・クラプトン、キース・リチャーズなどロックギタリストでヒューバート・サムリンのギターが好きな人が多いです。それはヒューバートのギターがロックしていて幅広く上手い人ではないけれどすごく印象に残るギターを弾く人だからでしょう。

次の曲はハウリン・ウルフのChange My Wayという1975年にリリースされたアルバムに入っているのですが、録音はほぼ10年前の1964年。リリースされた75年はレコード会社のチェスが倒産寸前で、まあ結局はその直後会社が身売りされてしまうのですが、60年代にウルフが録音した過去のシングルを集めてアルバムにしてなんとか金稼ぎをしょうとチェスはしたんでしょう。でも、収録されている曲はどれも素晴らしくて、ヒューバートのギターもギラギラに冴えてます。
2.Love Me Darlin’/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
いまの曲で多用されていたフレイズの最後の音をキュッと鳴らすのもヒューバートのギターの特徴です。

ハウリン・ウルフはヒューバート・サムリンを自分の息子のように可愛がっていたそうで、ヨーロッパでツアーをする時もイギリスでエリック・クラプトンやスティーヴ・ウィンウッドたちとレコーディングする時も必ずヒューバートを参加させることがウルフの条件だったという。

次の曲Do The Doなんかはイギリスの60年代ブルーズ・ブームでみんなが好きだった曲だったと想います。
リズムもサウンドも曲のムードももちろんウルフの歌もサムリンのギターもみんなロックしてますから。
3.Do The Do/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
いやワイルドな曲ですがやはりウルフの歌とサムリンのギターの中にあるアグレッシヴなテイストがすごいです。

1976年にハウリン・ウルフは65歳で亡くなったのですが、最後のアルバムとなったのがその3年前に録音されたThe Back Door Wolfというアルバム。すでにウルフは病に冒されて身体は弱ってましたが、最後の力を振り絞るように歌っています。その最後までやはりヒューバートはウルフの右腕としてバックをしっかり務めています。
やはりウルフにはヒューバートがいなければということをしっかり焼き付けたウルフのラスト・レコーディングでした。では、そのアルバムから僕が一番好きな曲でCoon On The Moon。Coonというのはスラングで黒人の蔑称でいい言葉ではないですが、黒人が自分たちでわざと自分たちをそう呼ぶときは黒人であることに誇りを持ってるということです。Coon On The Moon/月の黒人。韻を踏んでます。
「子供の頃は南部で育った。中古の服を着て大きな屋敷の裏に住んでた。時代は変ったオレたちも月に行くかも。奴ら白人はオレたちと一緒に遊ばなかったし、オレたちは学校にも行けなかった。年とるまで綿花を摘んでいたもんだ。時代は変ってオレたちも月へ行く。毎日ブーツを履いてたけど新しい靴を履くんだ。ある朝目覚めたら黒人が月にいるかもよ」
4.Coon On The Moon/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
いまの曲が入っているウルフのラストアルバム「The Back Door Wolf」を聴いているとすごいウルフの気迫のようなものが伝わってきます。そして、最後までブレずに自分のブルーズスタイルを貫き通したウルフに感動し、その最後のアルバムでもウルフの歌に的確なギターを弾いているヒューバートにも心打たれます。

実はヒューバート・サムリンはソロ・アルバムを10枚以上出しているのですが、いかんせん歌があまりよくなくて今回もソロ・アルバムをいろいろ聴いてみたのですが・・それで一曲だけ1989年にリリースされた彼のソロ”Heart&Soul”から聴いてみましょうか。ハーモニカにヒューバートのメンフィス時代からの仲間ジェイムズ・コットンが参加しています。この時ヒューバート58歳、コットンはちょっと下で54歳。
ふたりのことを歌った曲でしょうか

5.Old Friends/Hubert Sumlin
ヒューバート・サムリンはボスだったウルフが亡くなってからしばらく仕事がなくて困っていたようで映画「サイドマン」にはその頃の話も出てきます。自分が主役ではなくてそれを支える立場にいる仕事をしている人たちは音楽でなくてもたくさんいます。でも、いまに残るウルフの歴史的なブルーズの名作はこのサムリンなくして絶対に生まれなかったものです。時に一生懸命やったことの賞賛を受けるのはバックやサイドで支えた人たちでなくて、主役の人だけということも多いと思います。でもやはりしっかり見ている人はいて「サイドマン」のような映画ができるんですね。
サムリンが長くウルフのバックを務めたのはウルフが自分のバンドのサイドマンを大切にしたからです。そして、ウルフが亡くなってから晩年サムリンは再評価を受けていろんな賞を受けたり、大きなコンサートにも呼ばれました。なかなかいい晩年だったように思えます。映画の中でドラマーのウィリー・スミスが言うんですよ「貧しくても楽しくないとね」って笑いながら・・素敵な言葉でした。
映画「サイドマン」もし機会があれば是非ご覧下さい。

2019.02.08 ON AIR

テキサスから発信された現在の女性ブルーズ・シンガーたち

Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies/I Just Wanna Make Love To You (Mr.Daddy-O Records SPACE-016)

ON AIR LIST
1.I’ll Be There/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies
2.I’ve Got A Feeling/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies
3.Just Like A Fish/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies
4.One Good Man/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies
5.I Just Wanna Make Love To You/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies

 

今日は昨年11月にリリースされた「Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies」です。
ブラッデェスト・サキソフォンは日本のジャズ・ジャンプ・ブルーズバンドなのですが、まだ一度もライヴを聴いたことがありません。
プロフィールを見ると20年前から活動しているんですね。アルバムも何枚かリリースされているし、今回も今日聴くアルバムと自分たちのアルバム「Bloodest Saxophone IN TEXAS」の二枚を同時にリリースしています。バンマスでテナーサックスの甲田伸太郎さんを中心にトロンボーン、バリトンサックス、ギター、ベース、ドラムという編成です。

このアルバムはフューチャリング・テキサスブルーズレディーズとなっているようにテキサスの女性シンガー5人がブラッドサキソフォーンをバックに歌う内容になっています。
最初はソウル・サポーターズというコンビ名でコーラスの仕事もしているローレン・セルヴァンテスとアンジェラ・ミラーのふたり。曲はサックスプレイヤーで、キングピンズという自己のバンドで多くの録音を残し、アレサ・フランクリンの名盤”Amazing Grace”にも参加しているキング・カーティスとメルヴィン・ダニエルズというシンガーの共作です。
思えばキング・カーティスもテキサス出身ですね。
1.I’ll Be There/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies
すごく軽快な気持ちのいいブルーズで声もいいですよね。

数年前からアメリカでブルーズが盛り上がっているのはテキサス、オースティンと言われていたんですが、ここ数年本当にテキサスからブルーズというルーツ・ミュージックをしっかり踏まえ、しかもオールドスタイルだけでないどこか新しさを持った音楽が発信されています。
次の曲なんかも「これ、いつの時代やねん」と言いたくなるほどしっかりルーツを感じさせてくれる一曲です。このI Got The Feelingは元々は30年代から60年代にかけて長く活躍した女性シンガー、ビッグ・メイベルの歌で、ブルーズ好きな方はどこかで聴いたことのあるリフだと感じると思います。このアルバムの一曲目に入って曲で、ここで歌っているのはディアンナ・グリーンリーフというシンガーですが、なかなか骨太のシンガーです。
2.I’ve Got A Feeling/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies
これ何も言わずに聴いてもらったら1950年代くらいの録音だと思う人もいると思いますが、録音は去年の9月テキサス、オースティンの録音です。

次はこのアルバムで5曲ソロで歌っているクリスタル・トーマスさんですが、5曲収録されているのでイチオシなのでしょう。年末に日本に来られたのでどこかでご覧なった方もいるかと思います。
クリスタルさん、おいくつかわかりませんが、すごく落ち着いた歌いっぷりで、シャウトしたり唸ったり、がなったりしないところがいいですね。女性のブルーズ・シンガーでがなるように歌う人が僕は苦手なんですが、クリスタルさんはナチュラルでストレートな感じでいいです。曲は僕の好きなエスター・フィリップスも歌っていたと思うのですが、オリジナルはブルーズ・シンガーの極みジュニア・パーカーで1967年の「Like It Is」というアルバムに収録されてます。
3.Just Like A Fish/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies

次もクリスタル・トーマスで曲はジャニス・ジョップリンが作詞作曲して歌った”One Good Man”。1969年の「i got dem ol’ kozmic blues again mama 」通称「コズミック・ブルーズ」というジャニスのアルバムに入ってるんですが、僕もロック好きだった頃よく聴いたアルバムです。クリスタルさんはジャニスのように激しく歌わないで静かに攻めてくる感じで、それもまたいいです。
そういえばジャニス・ジョップリンもテキサスのポートアーサーという街の出身でした。同じテキサスということもあってクリスタルさんはこの曲を選んだのでしょうか。
「私はいろんな高いものが欲しいわけではなくて、正直な嘘偽りのない男が欲しいの」
4.One Good Man/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies

最後はこのアルバムBloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladiesのアルバムタイトル曲で、参加した女性シンガー全員で歌っています。マディ・ウォーターズの有名ブルーズですが、僕も昔ウエストロード・ブルーズバンドの「ジャンクション」というアルバムでファンク・テイストにアレンジしたんですが、こういうアレンジもあるかと想いました。
このアルバムに参加のクリスタル・トーマス、ジェイ・マラーノ、アンジェラ・ミラー、ディアンナ・グリーンリーフ、ローレン・セルヴァンテスの五人で歌ってます
5.I Just Wanna Make Love To You/Bloodest Saxophone feat.Texas Blues Ladies
恐らくアメリカにはまだまだブルーズを歌ういいシンガーがいるんだと思います。それも懐かしのブルーズではなくいまの感じで歌える人たちが・・、これからもこういうブルーズシンガーを探して僕たちに届けてもらいたいです。最後に苦言をひとつ、日本で聴いてもらうことを意識したのかどうかわかりませんが、山下達郎さんの”Your Eyes”をクリスタルさんが歌ってますが、その曲はアルバムのコンセプトには馴染まないと僕は思います。いい曲ですが、このアルバムには要らなかったと思います。
今日は昨年11月にリリースされたBloodest Saxophone feat.Texas Blues LadiesのI Just Wanna Make Love To Youを聴きました。

2019.02.01 ON AIR

ローリング・ストーンズが選んだブルーズの名曲たち”Confessin’ The Blues”を聴く vol.2

Confessin’ The Blues (BMG BMGCAT155CD)
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ON AIR LIST
1.Just Your Fool/Little Walter
2.I’m A KIng Bee/Slim Harpo
3.Mona/Bo Diddley
4.Down The Road Apiece/Amos Milburn
5.Stop Breakin’ Down Blues/Robert Johnson

 
このアルバム”Confessin’ The Blues”のストーンズのメンバーで選んだブルーズのオリジナル曲は、シカゴ・ブルーズの大物マディ・ウォーターズとハウリン・ウルフが4曲、その次に多いのがリトル・ウォルターの3曲
三年前の2016年にリリースされたローリング・ストーンズのブルーズのカバー・アルバムのタイトルがリトル・ウォルターのBlue&Lonsomeでした。このアルバムにもオリジナルのBlue&Lonsomeを収録していますが、それより僕はこっちのリトル・ウォルターが好きです。

1.Just Your Fool/Little Walter
このJust Your Fool も前のアルバム「Blue&Lonsome」でカバーされていました。シカゴのブルーズ・ハーモニカ・プレイヤーとなるとサニーボーイ・ウィリアムスンとかジェイムズ・コットンもいるんですが、ミックはリトル・ウォルターがお気に入りでしょうか。

僕は1964年中学3年生の時にストーンズのファースト・アルバムを買ったのですが、最初に印象に残った好きだった曲が先週ON AIRしたチャック・ベリーの”Carol”と”Route 66”でしたが、その次に好きだったのが”King Bee”でした。
この”King Bee”のオリジナルのスリム・ハーポを聴いたのは20歳過ぎた頃でしたが、一発でスリム・ハーポにハマりました。歌がクールでビートがよくてサウンドがすっきりしていて、ちょっとポップで・・・まあこれはヒットしますね。
2.I’m A KIng Bee/Slim Harpo
この歌の内容が「オレは王様蜂で女王蜂の巣の周りを飛び回って、女王蜂にオマエの巣の中に入れてくれよ」という歌詞が、セクシャルな意味を持っていることはもちろん中学三年ではわからなかったし、ブルーズにそういう歌がたくさんあることもブルーズにハマってから知った。
このスリム・ハーポの所属したエクセロレーベルをストーンズは好きでいろいろ聴き込んでいたと思います。このアルバムには同じエクセロのライトニン・スリムのHoodoo Bluesも収録しています。

ストーンズの3枚目のアルバム”The Rolling Stones Now”に収録されていた次のMonaも、子どもの頃はずっとストーンズのオリジナルだと思ってました。あとからこれはボ・ディドリーの曲だとわかったのですが、ジャングル・ビートのワン・コードでずっと続けられるグルーヴがカッコいいなとガキのくせに思ってました。
3.Mona/Bo Diddley

ストーンズはとても広く、深くブルーズを研究したバンドですが、彼らがカバーをするブルーズにはどこかロックしているテイストがあります。
次のエイモス・ミルバーンの”Down The Road Apiece”も、オリジナルのビートにR&Rテイストがあることをストーンズは気づいていたりのか、無意識なのかわかりませんが見事な選曲です。エイモス・ミルバーンはブギを得意としてしいたジャンプ・ブルーズの代表的なピアニストのひとり。1947年の録音
4.Down The Road Apiece/Amos Milburn

次は1972年にストーンズは「メインストリートのならず者」でカバーしていますが、オリジナルは偉大なロバート・ジョンソン。
5.Stop Breakin’ Down Blues/Robert Johnson
ストーンズはほとんどのアルバムにブルーズやリズム&ブルーズのカバーを入れていて、オリジナルのヒット曲を狙いつつもずっとブルーズへの愛着と執着を表してきたバンドです。
今回自分たちがセレクトしたブルーズのコンピレーション・アルバムを出すというのは、いままでのロックバンドではなかったと思います。アルバム・ジャケットもメンバーのロン・ウッドが描いてます。
そして、キース・リチャーズは「ブルースを知らないなら、ギターを手にとって、ロックンロールや他のポピュラー・ミュージックをやっても、まるで意味がないんだよ」と言って、このアルバムからひとりでもブルーズの世界に入ってくれることを彼は願っています。
僕もこのストーンズお薦めのブルーズがたくさん収録されているアルバム”Confessin’ The Blues”からたくさんの人がブルーズの世界に入ってくることを願ってます。さすがストーンズのセンスのいい選曲でした。

2019.01.25 ON AIR

ローリング・ストーンズが選んだブルーズの名曲たち”Confessin’ The Blues”を聴く vol.1

Confessin’ The Blues (BMG BMGCAT155CD)
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ON AIR LIST
1.Rolling Stone/Muddy Waters
2.Carol/Chuck Berry
3.Little Red Rooster/Howlin’ Wolf
4.The Prodigal Son/Robert Wilkins
5.Ride ‘Em On Down/Eddie Taylor

 
ブルーズを好きなロックバンドはアメリカ、イギリスにはたくさんいるが、今も昔も変らずブルーズに強い愛着を示しているバンドはやはり「ローリング・ストーンズ」が一番でしょう。
一昨年は「ブルー&ロンサム」という全曲ブルーズのカバー・アルバムをリリースしたと思ったら、なんと今度は自分たちでブルーズの曲を選曲、監修したアルバムを出すというブルーズ馬鹿ぶりです。
最初の曲はローリング・ストーンズというバンド名の由来となったマディ・ウォーターズの”Rolling Stone”。今回のアルバムの一曲目に選曲されています。
1950年にマディ35才、シカゴに出てきて7年ほど経った頃の録音。

1.Rolling Stone/Muddy Waters
若き日に共同生活していたロンドンの安アパートで、ミックやキースはどういう気持ちでこのブルーズを聴いたのだろうか。キースとミックは19才くらい、ブライアンは20才ほどだ。
彼らはブルーズという音楽に心酔し、ブルーズを広めるためにローリング・ストーンズというバンドを結成した。いまでは世界で最も有名な現役のスーパー・ロックバンドでオリジナルのヒット曲もたくさんあるが、その初期は黒人のブルーズとR&Bをカバーするバンドだった。
1964年にリリースされた彼らの最初のアルバムはほとんどブルーズとR&Bそしてブルーズから生まれたR&Rのカバーで占められている。そのストーンズのファースト・アルバムでカバーされているのが、次のR&Rの王様チャック・ベリーの曲だ。1958年リリース。
2.Carol/Chuck Berry
60年代中頃、僕は中学生でビートルズとストーンズをラジオで追いかけていた。ビートルズは最初から作詞作曲の才能に恵まれたジョン・レノンとポール・マッカートニーのふたりによってヒット曲が嵐のように生まれた。一方ストーンズの方もオリジナルを出してはいるが、ビートルズほどのヒットではなかった。しかし、ストーンズはカバーのブルーズやR&Bをイギリスのチャートに上げていた。当時の僕はそれがオリジナルか黒人音楽のカバーかということはどうでもよかった。「かっこいい!」かどうかだった。
初期の頃、オリジナルのビッグヒットは出ないものの、ストーンズはそのライヴ・パフォーマンスではビートルズにもひけを取らない魅力的なバンドだった。
64年に次のハウリン・ウルフのブルーズをシングルでリリースしてイギリスではチャート1位を獲得している。こういうブルーズのカバーがチャートの1位を取っているところに当時のイギリスのブルーズの盛り上がりも感じます。
ハウリン・ウルフはマディ・ウォーターズと双璧のブルーズの偉人。Spoonful,Smokestack Lightnin’ Killing Floor,など素晴らしいブルーズを残している。
ストーンズが64年にカバーした”Little Red Rooster”の原曲、ウルフのオリジナルを。
3.Little Red Rooster/Howlin’ Wolf
イギリスのテレビ音楽番組に出演した時のハウリン・ウルフの映像が残っている。その時ウルフを紹介するのがストーンズのブライアン・ジョーンズだったが、そのブライアンが尊敬するブルーズマンのウルフを紹介するMCの嬉しそうな顔がとっても良かった。
次の曲のロバート・ウィルキンスもストーンズが68年リリースの「ベガーズ・バンケット」でカバーしたことで名前を知った。ロバート・ウィルキンスは20年代から30年代に活動していたブルーズマンというより、宗教的な歌を歌ったレヴェレント、牧師です。こういうあまり知られていない古いミュージシャンをストーンズはよく知ってます。
日本語のタイトルは「放蕩息子」
4.The Prodigal Son/Robert Wilkins

ストーンズが選曲したこの”Confessin’ The Blues”というアルバムにはマディ・ウォーターズ4曲、ハウリン・ウルフも4曲選ばれていて、まあシカゴ・ブルーズへのストーンズの傾倒ぶりがわかります。そして、次のエディ・テイラーが二曲選ばれているところが嬉しいですね。二曲ともすごく売れた曲というわけではないのですが、シカゴ・ブルーズのサイドマン、裏方的な録音も多かったエディ・テイラーの代表曲。
5.Ride ‘Em On Down/Eddie Taylor
ハーモニカを吹いているのは南部にいる頃から友達だったジミー・リード。いつもはジミー・リードの録音でエディがギターを弾いているのでこれはエディに対するお返しのようにも思える。高音で吹くハーモニカの音がすごく印象的でいい味つけになってます。

今日はローリング・ストーンズが選曲監修したブルーズ・アルバム「Confessin’ The Blues」を聴きましたが、来週もこの二枚組アルバムからブルーズの名曲を聴きましょう。

2019.01.18 ON AIR

いにしえのセントルイスへレコードでタイムスリップ

St Louis Town !929-1933 (YAZOO L-1003)
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ON AIR LIST
1.St.Louis Blues/Jim Jackson(B-1)
2.Hunkie Tunkie/Charlie Jordan(A-4)
3.Spoonful Blues/Charlie Jordan(A-5)
4.Long Ago/Henry Townsent (A-2)
5.Nut Factory/Hi Henry Brown (B-2)

この番組ではブルーズが録音され始めた1920年代30年代の古いブルーズを二ヶ月に一回くらいはON AIRにしょうと思っています。
ブルーズの根源をみなさんに知って欲しいという気持ちがあるからです。素朴で、飾り気のない、土着的な遠い昔のブルーズにこそブルーズという音楽の本質がはっきり表れています。

今日はアナログレコードで1920年代終わりから30年代初めのセントルイスのブルーズを聞きます。アメリカの真ん中よりちょっと東のミズーリ州のまた東の端に位置してるのがセントルイスで、ミシシッピ川とミズーリ川がぶつかったところにあります。今日聴くアルバムは「セントルイス・タウン 1929-1933」というタイトルなんですが、この期間はアメリカを発端に世界的な「大恐慌」が起こって不景気になった時代です。
でも、それより以前は元々セントルイスは1920年代頃はアメリカの中部の工業都市として栄えた街でした。なので多くの労働者があつまり歓楽街も栄えて、ブルーズマンたちもこの地に集まってきていました。
ミズーリ州は東隣がシカゴのあるイリノイ州で南がアーカンソー州、南東にテネシーその南にアラバマ、ミシシッピーという位置で、黒人たちが南部の田舎暮らしがイヤで北部のシカゴ、デトロイトあたりで一旗あげようとする時に途中寄る街がメンフィスだったり、このセントルイスだったりしたわけです。
まずはみなさんも聞いたことがある「セントルイス・ブルーズ」この曲は作曲家のW.C.ハンディが1914年に黒人が歌っているのを譜面に起こした最初に譜面になったブルーズなのですが、曲そのものはそれ以前も以後も多くの黒人たちによっていろんなバージョンでこの地域で歌われていたと思います。いまから聞いてもらうジム・ジャクソンも誰かのを聞き覚えたのでしょう。

1.St.Louis Blues/Jim Jackson(B-1)

ジム・ジャクソンはテクニック的に上手い人で、ブルーズだけでなくフォークやジャグ的なものも歌っていました。「カンザスシティ・ブルーズ」という曲でめちゃ売れたのて映画にも出たり、レコーディングもたくさんやっていて20年代30年代のブルーズマンとしてはかなり売れた人です。

次はこのアルバムに4曲収録されていて、このアルバムのジャケット写真にもなっているチャーリー・ジョーダン。ジャケ写(あとでホームページで見てください)を見るとですね、ちょっと話しかけるのに勇気がいる感じの強面のおっさんですが、演奏するギターはめっちゃ繊細で軽やかです。この太い指でそんな細やかなこと弾けるんや?!みたいに思います。
音楽以外にブートレガーつまり密造酒を作って売っていたセントルイスの顔役やったそうで、そう言われればそういう顔かと納得です。
2.Hunkie Tunkie/Charlie Jordan(A-4)
うまいですよねギター・・弾きながら歌ってるわけですから。
ギャングみたいな顔からは想像できない細やかな音楽でしたが、結構録音も残っていてP-Vineレコードからソロのコンピ・アルバムもリリーされています。
このチャーリー・ジョーダンもセントルイスで音楽やり、酒の密造やり、まあ当時の黒人としてはそれなりにお金のある生活をしてたんでしょう。
このアルバムを聞いているとセントルイスはやはり都会ですから、20年代30年代とはいえやはり田舎のミシシッピやアラバマのブルーズマンに比べると洗練されています。
ギターが上手いのでピーティ・ウィートストローやルーズヴェルト・サイクス、メンフィス・ミニーといった当時の人気ブルーズマンと共演し、そのあともビッグ・ジョー・ウィリアムスともデュオでやったりしています。
もう一曲チャーリー・ジョーダン
3.Spoonful Blues/Charlie Jordan(A-5)
やっぱり基本的にリズムがステディで踊れるグルーヴがあります。この当時の弾き語りのギタリストはリズムがいいか悪いか、つまり踊れるか踊れないかは大切な要素でした。
また、誰かとデュオをやるにしろやはりリズムがよくないと出来ませんからね。ギターのフレイズも素晴らしいんですが、それよりリズムの良さに感動します。セントルイス、1930年代のボス、チャーリー・ジョーダンでした。

さて、次はこの人もセントルイスのブルーズというと必ず名前の出てくるブルーズマンでヘンリー・タウンゼント
ミシシッピ生まれですが、イリノイ州のカイロというイリノイの南端にある街で育ち、つらく当たる父親がイヤでなんと9才で家を出てます。小学三年か四年生くらいですよ。それでセントルイスに住んでギターを習ったらしいんですが、どうやって食べてたんでしょうね。それでも20才くらいの時にはウォルター・ディヴィスという有名なピアニストと組んで旅に出たりしてます。
いまから聞いてもらうのはちょうどその頃、1929年の録音です。どんな気持ちだったでしょうね、9才で家を出て・・貧しかったでしょうね。それが20才の時にレコーディングまでたどりついた彼の気持ちは・・・曲のタイトルが「遠い昔に」
4.Long Ago/Henry Townsent (A-2)
ヘンリー・タウンゼントは長生きしまして、2006年97才まで生きました。Last of the Great Mississippi Delta Bluesmen: Live in Dallas”というロバート・Jr・ロックウッドーやハニーボーイ・エドワード、パイントップ・パーキンスたちと一緒にコンピレーションされたアルバムでグラミーのトラディショナル・ブルーズ・アルバムをゲットしています。他にもいろんな賞をもらって長く生きていいこともたくさんあったんだと思います。
こういう古い、ほとんど写真もないブルーズマン、生まれた年月もわからないブルーズマン、中には名前がわからなくてUnknown(無名の)とだけクレジットされているブルーズマンもいるわけです。そういうたくさんの名前の知られてない、有名でもないフツーの黒人たちによってブルーズという音楽が作られ、いままで歌い継がれてきたということをみんなの心のどこかに留めておいてください。B.B.キングやバディ・ガイもそしてエリック・クラプトンやスティービー・レイボーンもそしてもちろん僕もそういう人たちの作った音楽の上でブルーズやらせてもらっているわけです。
では、あまり知られていないブルーズマンでHi Henry Brown
彼もミシシッピ生まれで30年代からセントルイスで活躍して、さっきのチャーリー・ジョーダンのギタリストとして上手いギターを聞かせた人です。
ギターもいいんですが、太い声の歌もパワフルでいいです。1932年録音
5.Nut Factory/Hi Henry Brown (B-2)

今日は素晴らしい戦前ブルーズをたくさんリリースしているヤズーレコードのアナログレコードで「セントルイス・タウン 1929-1933」を聞きました。