2018.04.20 ON AIR

Rick Hall
追悼 リック・ホール(魔法のマッスル・ショールズ・サウンドを作った男)第1週

The Fame Studios Story 1961-1973 (KENT BOX12  P-Vine Records)

The Fame Studios Story 1961-1973 (KENT BOX12 P-Vine Records)

RICK HALL

RICK HALL

ON AIR LIST
1.When A Man Loves A Woman/Percy Sledge
2.You Better Move On/Arthur Alexander
3.Let Them Talk/Dan Penn
4.Steal Away/Jimmy Hughes
5.I’m Your Puppet/James &Bobby Purify

 
マッスル・ショールズ・サウンドの生みの親と呼ばれるリック・ホールが、今年初め1/2に85才で亡くなりました。ご冥福を祈りたいと思います。
でも、リック・ホールと言われても知らない方も多いと思います。
リック・ホールは60年代からずっとR&B,ソウル、ファンク、ロック・・とポピュラー・ミュージック界に大きな功績を残したプロデューサーでありレコーディング・エンジニアです。彼が作ったサウンドを「マッスル・ショールズ・サウンド」と呼ぶのですが、マッスル・ショールズとはアラバマの小さな街の名前で、リック・ホールはその街に”FAME”という録音スタジオを作り質の高い音楽をたくさん作りました。FAMEというスタジオ名はリックが隣町のフローレンスという街の出身で、そこで最初に音楽出版社を作った時に”Florence Alabama Music Enterprises”という名付けました。その名前の頭文字を取ってFAMEとなったのです。
南部アラバマのそんな小さな街のスタジオがなんで世界的に有名になって、「黄金のメロディ~マッスルショールズ」という映画まで作られたのか・・・その最初のきっかけがこの曲の大ヒットだったと言われてます。
「男が女に惚れたら女のことしか考えられなくなる、そしてどんな大切なものでも女にあげてしまうんだ」
1.When A Man Loves A Woman/Percy Sledge

この曲はどこかで耳にしたことがあると思います。パーシー・スレッジが歌ったソウルの定番曲、日本タイトルが「男が女を愛する時」”When A Man Loves A Woman”です。
オルガン:スプーナー・オーダム、ドラム:ロジャー・ホーキンス、ベース:アルバート・ロウ、ギター:マーリン・グリーン
1966年の大ヒットですが、FAMEスタジオは1960年に設立されて最初はちょっとしたローカルなヒットが出るくらいでしたが、曲そのものはすごくいい曲を発表してました。
例えば、次の曲もいい曲ですが、最初リック・ホールは黒人のリスナーには白っぽ過ぎるし、白人には黒っぽすぎると思って全く売れないと思ったら、R&Bで10位までチャートを上がったFAMEで最初のちょっとしたヒットとなりました。
メロディもいいんですが、歌詞がまたいいんです。友達が自分の彼女好きになって自分に彼女をあきらめてくれと言うてきた歌詞ですが、自分は彼女愛してるから君があきらめて他へ行った方がいい(You Better Move On)っていう歌です。途中のWell I know you can buy her fancy clothes And diamond rings.(君は彼女に素敵な服やダイアモンドを買えるだろう)But I believe she’s happy with me without those things(でもね、そんなものなくてもあの娘は僕といるだけで幸せなんだよ)という一節が僕は好きです1961年リリース
2.You Better Move On/Arthur Alexander
アーサー・アレキサンダーは黒人なんですが、すごくあっさり歌っていて最初白人やないかと思いました。だから、黒人のリスナーには白っぽ過ぎるし、白人には黒っぽすぎると思って全く売れないやろと言ったリック・ホールの気持ちもわかります。ところが売れたんですよね。
やっぱり曲がいいんですよね。のちにローリング・ストーンズもカバーしています。カバーしたストーンズのアンテナの張り方もすごいです。
このヒットで儲かった金でリック・ホールはFAMEスタジオを建てます。だんだん知れ渡っていくんですが、全国ヒットがなかなか出ません。でも地元のローカルシンガーのシングルをがんばって出し続けました。
その中に見つけたのが、いまやレジェンドになりましたが、シンガー、ソングライターのダン・ペン。まあ、アラパマの田舎街に偶然、リック・ホールと同じような音楽を志向している白人の仲間のひとりダン・ペンと出会うんです。
3.Let Them Talk/Dan Penn
いま歌っていたダン・ペンは白人ですが、逆にこれ黒人やろと思わせるようなソウルフルな歌です。ダン・ペンはシンガー・ソングライターとしていまやレジェンド的な存在ですが、60年代初期は歌手として独り立ちしたかったようですがあまり売れず、でもいい曲を書けるので曲を提供するソングライターとして活躍してました。僕もジェイムズ・カーが歌った「Dark End Of The Street」とかアレサ・フランクリンが歌った「Do Right Woman, Do Right Man」などの曲のクレジットで彼の名前を知ってました。このダン・ペンがリック・ホールの右腕的な役割をするようになっていきます。
それでリック・ホールの名前とFAMEスタジオの名前が広く音楽関係者に知れ渡っていく大きなヒットが次のジミー・ヒューズが歌ったスティール・アウェイでした。
ジミー・ヒューズも地元のローカル歌手でそれまでにシングル出したことがあったんですが、ヒットしなくて・・・それでリック・ホールが「自分で曲を書いたらどうなん」ってアドバイスして作ってきたんが、”Steal Away”という不倫の歌です。これをリック・ホールはリリースするのを躊躇してたんですが、これ「絶対売れるで」と言ったのはダン・ペンでした。そして、シカゴのインデーズ大手のVee Jayレコードがこれを全国配給したことから大ヒットになりました。
4.Steal Away/Jimmy Hughes
大ヒットになったのでリック・ホールは、経済的にかなり潤ったと思いますが、FAMEはそんなに抱えているミュージシャンはいなかったのでレコード会社として大きくなっていくことはなかったんです。
ただジワジワとFAMEのサウンドとグルーヴがいいという評判が業界に広まっていきます。
次もいい曲です。「私はあなたのあやつり人形なんだからうまく操って」という可愛い曲です。
5.I’m Your Puppet/James &Bobby Purify
ボビーとジェイムズは従兄弟同士でフロリダ出身なんですが、フロリダのプロデューサーに連れられてFAMEへレコーディングに来て録音してこのI’m Your Puppetがチャートの6位に入った。
こんな風にだんだんいろんなレコード会社がFAMEで録音するとヒットするという感じで全国から、そしてイギリスからもFAMEに録音にくるという感じになっていきました。
来週もまたリック・ホールとFAMEスタジオの話をします。