2018.06.22 ON AIR

珍しいブルーズ・シングル盤をコンピレーションした最新盤
Do The Blues 45s! vol.2 ~the Ultimate Blues 45s Collection~
[ THINK RECORDS THCD-537 ]

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ON AIR LIST
1.Pickin’ Heavy/Joe Scott And His Orchestra
2.I Tried/Larry Davis
3.Don’t Change Your Mind/T.B.Fisher
4.Hop Stroll/Jerry McCain And His Harmonica
5.Red Headed Woman/Baby Face
6.Five Spot/Otis Spann

去年、ブルーズの珍しい、レアなシングルだけを集めた「Do The Blues 45s! 」というCDアルバムがリリースされてかなり評判になりました。リリースしたのはレコード店ディスクユニオンのレーベルTHINK RECORDSです。
今日はその第二弾がリリースされたので聴いてみます。
僕も時々ブルーズのシングル盤を買いますが、ブルーズのシングル盤の世界というのがまた深い世界でハマるとちょっと抜け出せなくなり、中にはかなり高価なシングルもあるので気をつけないとあかんのですが・・・。
でも、シングル盤の音の良さというのがあり、まず同じ曲、同じテイクでもLPに比べるとシングルは音圧が高いので迫力という点ではシングルです。それと50年代、60年代は黒人音楽はシングルの時代でLPというのはシングルを何枚か出して売れた時に、シングルをまとめてLPにしていたわけです。だから当時の黒人の人たちがブルーズをどういう感じで聴いていたのか知るにはやはりシングルです。
それで今日聴いてもらう「Do The Blues 45s! vol.2」をコンピレーションしたのは、vol.1もそうでしたがレコード店ディスク・ユニオンでブルーズとソウルの担当をしている秋元さんと言う方です。

ではまず一曲、インストルメンタルの曲が何曲か収録されているのですが、最初に聴いて「ああ、これかっこいい」と思った曲です。
誰が弾いているのかわからないですが、ギターがすごくいいです。そして、バンド全体のグイグイくるグルーヴ感もたまりません。
1.Pickin’ Heavy/Joe Scott And His Orchestra
ジョー・スコットさんはホビー・ブランドやジュニア・パーカーのアルバムでアレンジャーをやっていた人で、ブランドもパーカーも彼がいなかったらあんなに素晴らしい録音にはなっていなかったかもと言えるほど、大きな役割をしたひとです。ボビー・ブランドには歌い方もアドバイスしたそうです。それでジョー・スコットさんは自分のオーケストラを持っていて、それで録音もやりナイトクラブの仕事もするという当時のテキサスの黒人ショービジネスのフィクサーみたいな人です。

次は僕も歌っている”Texas Flood”のオリジナル・シンガー、ラリー・ディヴィスです。1958年のデューク・レコードに録音したシングルです。それでこの曲のアグレッシヴなギターがすごくかっこよくてラリー・ディヴィス本人かと思ったら、ディヴィスは歌だけでギターは後にシカゴでメロウ・ブルーズ・ジニアスと呼ばれたフェントン・ロビンソンだそうです。僕はシカゴ時代のフェントンよりこの録音の方が断然好きです。ギター・スタイルが変っていったんですね・・・おもろいです。
2.I Tried/Larry Davis
歌もギターもバンドのグルーヴもめちゃいいです。これそのままシングル盤で聴いたら相当気持ち上がりますよ。

次は初めて知った名前でT.B.Fisherですが、テキサスのブルーズマンらしいです。編集した秋元さんもよくわからないらしいです。
曲の感じはスリム・ハーポの”Rain In My Heart”のようなルイジアナ哀愁バラードで、ハーモニカも柔らかい音で歌もゆったりしていてなかなかのダウンホーム・ブルーズバラードです
3.Don’t Change Your Mind/T.B.Fisher
T.B.Fisher・・知らんけどいいですね。知らんけどね。とにかく収録されている曲がみんな短い。どの曲も三分以内ですぐ終わります。それがまた昔のシングルならではでもうちょっと聴きたいなというところで終わってしまう。こういうシングル、1枚とか2枚とかで終わったブルーズマンに興味持ち始めてシングル買い始めると・・だんだんオークションみたいな世界に入り込んで迷宮のブルーズシングル盤の世界になり、やがて暗黒の宇宙SP盤の世界になっていきます。楽しいと思いますが気をつけてください。もう底なし沼ですから。

次は僕が大好きな南部の、サザン・ハープのジェリー・マッケーンです。最初に出てくるハーモニカの音からしてめちゃいいです。最初のメロディというかリフはバスター・ブラウンの大ヒットFunny Maeで、途中のストップ・タイムのところではフレディ・キングの”Hideaway”からいただいたみたいな感じですが、全体のゆったりしたグルーヴ感とハーモニカの音色がたまりません。
4.Hop Stroll/Jerry McCain And His Harmonica

先日このアルバムを最初買った時にざぁ~と聴いていたんですが、次の歌が出てきた時に「あれ?サニーボーイ・ウィリアムスンか」と思ったんですが、よく聴くとサニーボーイほど恐ろしさはないんですが・・。見たらベイビー・フェイスでした。黒人音楽でベイビー・フェイスと言たら80年代からプロデューサーであり自身もシンガーのいまも活躍する人気者ですが、ブルーズの世界でベイビー・フェイスといえば50年代シカゴ・ブルーズのドラマー、ベイビー・フェイス・リロイのことです。この曲のハーモニカもギターも上手いんで誰かと思ったらなんとギターはジミー・ロジャースとマディ・ウォーターズ、ハーモニカはリトル・ウォルターという黄金のシカゴブルーズのメンバーで驚きです。どうやら所属していたチェスレコードには内緒の金稼ぎで裏の仕事で録音したらしいです。ありがちな話ですが・・・。ギターが繰り出すゴリゴリしたリズムの感じと表情豊かなハーモニカの伸びる音、まさにシカゴブルーズ全盛時のサウンドとグルーヴで最高です
5.Red Headed Woman/Baby Face

ワイルドなギターから始まる次もインスト曲なんですが、シカゴ・ブルーズピアノのオーティス・スパン名義の曲です。それでギターがふたり入っているのですが、ひとりがシカゴ・ブルーズのギタリストとして名のあるジョディ・ウィリアムスともうひとりはなんとB.B.キングだそうで、たぶんソロを弾いているのもB.B.だと思うのですが、オーティス・スパンのシングルでB.B.キングがギターだけ弾いてるなんて曲があることに驚きです。
そして短いですがスパンのアグレッシヴなプレイも聞き物です。
6.Five Spot/Otis Spann
このアルバム「Do The Blues 45s! vol.2 ~the Ultimate Blues 45s Collection~」は、本当に個性的な曲ばかりで選曲された秋元さんのセンスの良さに感激しました。

このアルバムの選曲、最高です。パーティとか宴会のBGMに使ってもらうと盛り上がると思います。ブルーズのシングル盤の世界は奥深いのですが、もしどこかで見つけたら一枚買ってみてください。僕はフレディ・キングのハイダウェイのシングル持ってるんですが、LPの3倍くらい音がいいです。CDとかLPで聴いていたのとはまた違う生々しい音に出会えます。