2018.06.29 0N AIR

アメリカンロックの偉大なひとり、ライ・クーダーの新譜

THE PRODIGAL SON / Ry Cooder(Fantasy Records / Hostess HSU-10202)

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ON AIR LIST
1.Straight Street/Ry Cooder
2.Prodigal Son/Ry Cooder
3.Nobody ‘s Fault But Mine/Ry Cooder
4.I’ll Be Rested When The Roll Is Called/Ry Cooder

今日は5月にリリースされたライ・クーダーのニューアルバム”THE PRODIGAL SON”
ライ・クーダーは60年代からブルーズ、ジャズ、カントリー、テックス・メックスなどアメリカの様々なルーツ・ミュージックを探求しながら、メキシコ、キューバ、ハワイアンなどワールド・ミュージックにも精通。その様々な音楽を自分のフィルターを通してアルバムを作り続けてきただけでなく、映画音楽でも高い評価を得ている才人なのはみなさんご存知だと思います。

新しいアルバム「THE PRODIGAL SON」はスピリチュアルズとゴスペルを取り上げていて宗教色の濃いアルバムになってますが、そこはさすがライ・クーダー、すべて自分のテイストにしてしまってます。

まずアルバムの一曲目を聴いてみましょう。オリジナルはゴスペル・グループの「ピルグリム・トラべラーズ」が1950年代にヒットさせた曲です。ピルグリム・トラべラーズは1930年代にテキサスで結成され、その後ロスアンジェルスで活動した40年代後半から50年代にかけてのゴスペルを代表するグループ。レイ・チャールズも憧れたグループです。
歌詞の内容は「前に住んでいたところにいた悪魔にとりつかれていたけど、神様がそこから出て行くようにと言われたので引っ越した。引っ越していまは真っすぐな通りに住んでいる」真っすぐな通り(ストレート・ストリート)というのは真っすぐに生きるということなんでしょうね。
1.Straight Street/Ry Cooder
いいですね。ソウルフルででも無理なく、淡々としていて僕はこういう感じ好きです。この曲はまっすぐに生きるというライ・クーダーの声明なのではないでしょうか。

次の曲はアルバム・タイトル曲の「ザ・プロディガル・サン」
今回、このタイトルを見た時に真っ先に頭に浮かんだのが20年代から30年代に活躍したロバート・ウィルキンスの「プロディガル・サン」。
邦題が放蕩息子で、ローリング・ストーンズがアルバム「ベガース・バンケット」でカバーしていました。
でも、このライのバージョンはザがついていて「ザ・プロディガル・サン」。曲も歌詞もまったく違います。
でも、曲の題材はもともと同じ聖書に出てくるもので、父親から結構な金をもらった息子の弟の方が、明日のことも顧みずに散財してやりたい放題する。でも、弟は財産をすべて使い果たしてボロボロになって家に戻って来る。その戻って来た放蕩息子の弟を父親はあたたかく迎える。それを見た兄が僕はおとうさんの元で地道に働いてきた。弟はあんなにやりたい放題やって金を使い果たして帰ってきた。その弟をどうして温かく迎えられるのか、と父に訊くと「いなくなって、死んだと思っていた息子が、オマエの弟が生きて帰ってきたのだから温かく迎えて喜ぶのは普通だろう」と言う。この例えは父親は神様で弟はいろいろ罪を置かす私たち人間。父である神様の大きな愛情を表している話とされている。
2.Prodigal Son/Ry Cooder
ライ・クーダーがは1970年にリリースした初めてのソロ・アルバムで盲目のエヴァンジェリスト、ブラインド・ウィリー・ジョンソンの”Dark Was The Night,Cold was the ground」を録音して、それは映画「バリ、テキサス」でもとても印象的に使われていた。ライがブラインド・ウィリーのスライド・ギターと彼の音楽性に影響されているのは有名だが、今回再びそのブラインド・ウィリーも録音したゴスペルのトラッド”Nobody ‘s Fault But Mine”を収録している。
「誰のせいでもない、誰のせいでもない、この自分のせいだ。家には聖書があるのに、聖書を読まないからオレの魂は迷ってしまった。誰のせいでもない聖書をちゃんと読まなかった自分のせいだ」
3.Nobody ‘s Fault But Mine/Ry Cooder
バックにバイオリンが不安な音を奏でながら少しヘヴィなライの歌声、そして美しく鋭いスライド・ギターの音。スライド・ギターの腕はやはり絶品です。録音の状態も完璧ではないでしょうか。こういうのは白人ではもうライ・クーダーの独壇場ですね。オリジナルのブラインド・ウィリーの原曲に新たな息を吹き込んだ感じがします。

ライ・クーダーはブルーズも当然好きなのですが、昔からスピリチュアルズやゴスペルといったアメリカの宗教歌も好きで、いままでもよく取り上げています。
今回はそういうゴスペルやスピリチュアルズとライの音楽性がうまく融合したアルバムだと思います。
最後にもう一曲
20年代から30年代に活動したブラインド・ルーズヴェルト・グレイヴスの曲です。ルーズヴェルト・グレイヴスは先ほどのロバート・ウィルキンスと同じようにブルーズもゴスペルも歌った人です。
4.I’ll Be Rested When The Roll Is Called/Ry Cooder