2018.08.03 ON AIR

Matt”Guitar” Murphy~またひとり去っていった偉大なブルーズギタリスト、マット・マーフィ vol.2

The  Blues Brothers/Briefcase Full Of Blues (Atlantic 82788-2)

The Blues Brothers/Briefcase Full Of Blues (Atlantic 82788-2)

Matt Guitar Murphy/Way Down South(WPCR-1731)

Matt Guitar Murphy/Way Down South(WPCR-1731)

ON AIR LIST
1.Hey Bartender/The Blues Brothers
2.Shot Gun Blues/The Blues Brothers
3.Way Down South/Matt Murphy
4.Gonna Be Some Changes/Matt Murphy

前回に続き、残念ながら6月16日に88才で亡くなったブルーズ・ギター・マスターのひとりマット・マーフィの特集です。
前回はマット・マーフィのデビューの話から長く在籍したメンフィス・スリムのバンドでの音源、そしてマットがキーパーソンだった70年代半ばにブルーズ界を驚かせたジェイムズ・コットン・バンドの音源を聴きました。
今日はたくさんの方が知っている70年代後半のブルーズ・ブラザーズに在籍した時の話から。
ブルーズ・ブラザズは元々アメリカのテレビ番組「Saturday Night Live」で活躍していたジョン・ベルーシとダン・アクロイドのふたりが中心になって、ブルーズやソウルの曲を彼らなりのエンターテイメントを加えて演奏していたのが始まりで、それがだんだん本格的にバンドを結成する方向に行った時にマット・マーフィがギタリストとして選ばれたわけです。
映画にもなりましたが、アレサ・フランクリンとソウルフード店の夫婦役でマットも出演しているシーンなんか最高におもろかったです。
では、1978年のブルーズ・ブラザーズのファースト・アルバム”Briefcase Full Of Blues”から
1.Hey Bartender/The Blues Brothers
ブルーズ・ブラザーズにはマットとスティーヴ・クロッパーとふたりギタリストがいるのですが、いまのソロはマットです。
このブルーズ・ブラザーズに参加したことでマット・マーフィの名前は広く知られることになりました。黒人のブルーズ界での名人的なギタリストで終わっていたかも知れませんが、ブルーズ・ブラザーズで映画やテレビに出て知名度はぐーんと上がりました。1991年にブルーズ・ブラザーズ・バンドで日本にもやってきてくれました。残念だったのはその時にはジョン・ベルーシはすでに亡くなってたことです。
次の曲はブルーズ・ブラザーズでマット・マーフィのギター・ソロがフィーチャーされたスロー・ブルーズ。マットはいろんなタイプのブルーズギター、メンフィス流のアグレッシヴなスタイルからシカゴ・ブルーズ・スタイル、ジャズ・テイストのブルーズ、ここではB.B.キング・スタイルのチョーキングを多用したモダン・ブルーズギターを主体にロック・テイストもいれたファンキーないいギターを弾いてます。

2.Shot Gun Blues/The Blues Brothers

次は彼のスタジオ録音の初ソロ・アルバムです。
マット・マーフィくらいのギタリストであれば、60年代にすでにソロ・アルバムの一枚や二枚あってもおかしくなと僕は思うのですが、初めてソロ・アルバムが出たのは1990年。マット60才の時です。還暦で初アルバムです。このソロアルバムが出せたのもブルーズ・ブラザーズでの知名度が上がったことと関係していると思います。

さてマットのソロ・アルバム、このアルバムに参加しているのが、裏ジャケットに2ショット写真が出てますが、弟のフロイド・マーフィ。この弟フロイドもなかなかのギタリストで、50年代初め頃に兄貴と同じようにメンフィスでジュニア・パーカーのバンドなどで活躍したのですが、だんだんショービジネスの世界が嫌になってやめていったそうで、この兄のアルバムで30数年ぶりの録音。でも、ギターはずっと弾いていたのでしょう。
では、マット・マーフィ、1990年初めてのソロアルバム”Way Down South”からアルバムタイトル曲です。
最初のソロが弟のフロイドであとのソロがマットです。絶妙なふたつのギターの絡みを聴いてください。
ギターめっちゃいい音してます。
3.Way Down South/Matt Murphy
僕は歪まないこういうクリアな音が好きなんです。南部のダウンホームなリラックス感がありつつも、ファンキーでちょっとしたジャズ・テイストのブルーズ・・・このあたりがたぶんマットがいちばん得意とするところだと思います。
モロにジャズに行かないところ、ファンクもモロに行かないでいつもルーツにブルーズを感じさせるところがいいところです。
マットが若い頃に活動していたメンフィス界隈の50年代は本当に上手いギタリストがたくさんいて、ボビー・ブランドやマディ・ウォーターズのバックで活躍したパット・ヘア、ハウリン・ウルフの右腕ヒューバート・サムリン、ブランドの右腕ウエイン・ベネット、サニーボーイのバックだったロバート.Jr.ロックウッドなど・・・その中でギタリストとして一流のプロでいられたというのはすごいことやと思います。

次はちょっとジョニー・ギター・ワトソンにも繋がるファンク・テイストたっぷりの曲。
歌もすごく上手いわけではないんですが、声の質とか無理のない歌い方とか僕は好きです。
4.Gonna Be Some Changes/Matt Murphy
マットのソロは今日聴いている90年の”Way Down South”と96年の”Blues,Don’t Bother Me”と2000年の”Lucky Charm”の3枚です。

ミシシッピーから子供の頃にメンフィスに行って、上手いギタリストがたくさんいる中で腕を磨いて、シカゴに行って地位を確立し、ヨーロッパにも演奏に行き、人生の中で何度かブルーズ史上に残る重要な録音やライヴをして60才と遅かったですが、いいソロアルバムも残しています。どうだったんでしょうね、本人としては88年の自分のブルーズ・ギター人生は・・・。
ブルーズギターを志す人は是非聴いてください。
マット・ギター・マーフィの冥福を祈ります!