2018.09.21 ON AIR

いまもバリバリの現役、ファンキーなブルーズロッカー、エルヴィン・ビショップの新譜

Elvin Bishop’s Big Fun Trio/Something Smells Funky ‘Round Here (P-VINE PCD-25262)
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ON AIR LIST
1.(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
2.Another Mule/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
3.I Can’t Stand The Rain/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
4.Right Now Is The Hour/Elvin Bishop’s Big Fun Trio

エルヴィン・ビショップを知ってますか。60年代70年代のロックが好きな人なら「ああ、ギタリストの」「ポール・バターフィールド・ブルースバンドの」「スワンプロックの」と思い出す方もいると思います。
僕がエルヴィン・ビショップの名前を知ったのは高校生三年の頃かな。その「ポール・バターフィールド・ブルーズバンド」のメンバーとして彼の名前を知った。バンドにはもうひとりギター、マイク・ブルームフィールドがいて当時はそのブルームフィールドの方がギターが上手いと言われていて、キーボードのアル・クーパーと話題になったアルバム「フィルモアの奇蹟」を作ったり、ボブ・ディランのアルバムに参加したり、エレクトリック・フラッグというバンド作ったりとなにかと華々しい活躍をしていた。
一方、エルヴィンはポール・バターフィールド・ブルーズバンドで研鑽を積み68年にソロに。69年に初ソロアルバム”The Elvin Bishop Group”をリリースしてから現在までずっと活動を続けているブルーズロックのレジェンドだ。
今日紹介する今年7月にリリースされたニュー・アルバムElvin Bishop’s Big Fun Trio/Something Smells Funky ‘Round Hereは24枚目のアルバムになるという。しかもまったく衰えていないところがすごい。

このニュー・アルバムのメンバーは、キーボードとギターのボブ・ウェルシとカホーンとヴォーカルのウィリー・ジョーダン、それにギターとヴォーカルのエルヴィン・ビショップの3人。つまり、ドラムではなくカホーン(打楽器)とギター、ギター、またはカホーンとギターとキーボードという編成というところがミソになっている。
まずは1曲、カホーンのウィリー・ジョーダンが歌っている1967年ジャッキー・ウィルソンのヒット曲のカバーです。
1.(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
ウィリーが高い声で押せ押せハイテンションで、一方エルヴィンはダウンホームな歌い方というふたつがなかなかええ感じにアルバムに入っっている。

80年代に少しレコーディングのブランクはあったが、長い経歴の割にはコンスタントにアルバムをリリースしているエルヴィン。
ところでエルヴィンはいま何才なんだろうと調べてみたら1946年生まれで76才。バターフィールド・ブルーズバンドの頃が23才くらいだからもう半世紀以上やってる!

僕はちょうど1975年”Juke Joint Jump”というアルバムを出した直後に、ロスのUCLAの会館でエルヴィン・ビショップを観たことがある。
対バンはJ.ガイルズ・バンド。それが僕がアメリカでロックバンドのライヴを観た最初だった。もちろん両方とも素晴らしかった。
エルヴィンはアルバムが評判がよくてそこからヒットした曲もありノリノリのライヴだった。その頃は南部のサザンロック、スワンプロック的なアプローチでシカゴ・ブルーズのような感じではなくファンキーなライヴだった。
次はニューオリンズの偉大なプロデューサー、作曲家でもあるデイヴ・バーソロミューの曲でこのエルヴィンのトリオはレイドバックしたムードで、ニューオリンズ・テイストもしっかり踏まえていい感じです。
2.Another Mule/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
いいよね。
実はこのアルバム、カホーンの3人編成やし・・どないやろ・・と思ってたのですが、予想を裏切ってよかったです。
ここで最近流行っているカホンについてひとこと。
カホンは元々ペルーが発祥の木で出来た木製の箱形の打楽器で素手で叩きます。南米の音楽やフラメンコにもよく使われています。日本では大きな音のドラムセットが使えないカフェのライヴとかイベントで使われることが多いので知ってる方も多いと思います。
ただ、お手軽な感じで気軽に叩く人がいますが、いま言ったみたいにちゃんとした打楽器でコンガ、ボンゴと同じで素人が気軽に叩けるものではない。ちゃんと習って練習しないと・・。今日聴いてもらってるアルバムのカホンのウィリー・ジョーダンも元々ドラマーです。エルヴィンのバンドでドラム叩くこともあります。ちゃんとしたドラマー、打楽器プレイヤーなんです。
でも、日本で見ていると全然練習もしていないような人が、適当に叩いていることがよくあるんですがあれ止めて欲しいです。
ギターとかピアノはまったく習ってない練習しない人がステージで弾かないですよね。あれカホンという楽器に対しても、打楽器プレイヤーの方に対しても失礼だと思います。・・・まあこういうこと言うと「そんなに堅く考えんでもええやん」っていう人いるんですが、包丁を持ったことがない人が魚をおろして刺身をつくろうとするようなものです。カホンを演奏したければしっかりリズムをキープできるくらい練習して人前に出てもらいたいです。

次はメンフィスのソウル・クイーン、アン・ビーブルズが歌ってヒットさせた曲のカバーです。
カホンのウィリー・ジョーダンが歌ってます。
3.I Can’t Stand The Rain/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
ウィリー・ジョーダンのハイトーンの声がいいですね。
エルヴィン・ビショップは南部の生まれかと思ったら、カリフォルニアの生まれなんで10才の頃にオクラホマ州に引っ越してます。
オクラホマ州はアメリカの中南部テキサスの北、カンザスの南東隣はアーカンソー・・もうブルーズ、リズム&ブルーズがバンバン聴こえてくるあたりで育ってます。そこでラジオから流れてくる黒人音楽にいったいこれはどういうミュージシャンがやっているのだろうと思っていたそうです。そしてなぜかシカゴ大学に入学します。1960年代初期です。
シカゴではまだまだマディもリトル・ウォルターもハウリン・ウルフも元気な頃です。ジミー・リードもいます。それで同じ白人でブルーズ・フリークだったポール・バターフィールド・ブルーズバンドに誘われバンドに加入。いまに至るミュージシャン・ライフの始まりだった。

エルヴィンはすごくいいギターを弾く人で、黒人音楽だけでなくカントリーやザディコ、R&Bなどもうまく取り入れてきた人でもっと評価されるべき人だと思う。
作品としては75年の”Juke Joint Jump” 91年の”Don’t Let The Bossman Get You Down”とか2001年の”King Biscuit Flower Hour Presents In Concert”とか2010年の”Red Dog Speaks”とかいいアルバムがたくさんある。僕が格別好きなのは1974年のアルバムで”Let It Flow”。当時サザン・ロックと呼ばれたものですが、同じサザンロックのオールマン・ブラザーズのディッキー・ベッツやマーシャル・タッカー・バンドのトイ・コールドウェイやチャーリー・ダニエルもゲスト参加している。ちょっとそのアルバムを想い出させる曲を最後に。
4.Right Now Is The Hour/Elvin Bishop’s Big Fun Trio

今日は芸歴50年以上に渡り活動を続けいまも元気に精力的にアルバムを出すエルヴィン・ビショップの新しいアルバム、エルヴィン・ビショップ・ビッグファントリオのSomething Smells Funky ‘Round Hereを聴きました。日本盤もリリースされていますので是非!