2018.11.30 ON AIR

天国へ行ってしまった偉大なブルーズマン、Otis Rush追悼 vol.1

Door To Door/Albert KIng Otis Rush (CHESS /MCA ビクター MVCM-22028)

Door To Door/Albert KIng Otis Rush (CHESS /MCA ビクター MVCM-22028)

Chicago/Blues/Today! (Vanguard /KING KICP2130)

Chicago/Blues/Today! (Vanguard /KING KICP2130)

 

ON AIR LIST
1.So Many Roads/Otis Rush
2.It’s A Mean Old World/Otis Rush
3.I Can’t Quit You Baby/Otis Rush
4.It’s My Own Fault/Otis Rush

 

闘病中だったオーティス・ラッシュが、残念なことに去る9月20日に亡くなりました。83才でした。
オーティス・ラッシュには初来日の日比谷野音の演奏や、ブレイクダウンとツアーをまわった時の演奏、それからシカゴのラッシュご自宅におじゃましたこととか、いろいろな思い出があります。
これでシカゴ・モダン・ブルーズの四天王(ジュニア・ウエルズ、マジック・サム、オーティス・ラッシュ、バディ・ガイ)もバディだけになってしまい寂しい限りです。
それで今回から三回に渡ってオーティス・ラッシュの追悼をしたいと思います。

僕がブルーズを聴き始めた70年代初期、オーティス・ラッシュのソロ・アルバムはなかった。
唯一50年代半ばのコブラレコードのシングルの録音をイギリスのプルーホライズンというレーベルが編集したブートレッグの輸入盤だけだった。
そのアルバムは「コブラのラッシュ」とかジャケットが赤で縁取られていたので「赤いラッシュ」と呼ばれていたが、枚数が少なくてなかなか手に入らなかった。そして、値段がも高かった。
それでもレコード屋に行くと「コブラのラッシュ」「赤いラッシュ」と呪文のように頭のなかで唱えて、そのレコードを探したものです。
その頃よく聴いていたのがコンピレーション・アルバムに入っているラッシュだった。どれが最初だったのかもう覚えていないのですが、今日はそのいくつかのコンピ盤からラッシュを聴いてみようと思います。
まずは1969年にチェスレコードがリリースしたアルバート・キングとのカップリング・アルバム”Door To Door”からです。
1.So Many Roads/Otis Rush
このアルバムには6曲ラッシュは収録されているが、録音されたのはその約10年前1960年。
このSo Many Roadsがすごく印象に残って何度もこの曲だけを聴いた覚えがある。
とにかくシャープなギターの音と「So Many Roads~」と始まる歌のインパクトに心奪われた一曲でした。バックでガッガ・ガッガと機関車のようにステディにリズムを刻むマット・マーフィのギターもいいなと思いました。
そして、次はこれも同じ頃にリリースされた”Chicago Blues Today”というアルバムに入っていたラッシュ。
疾走感のあるギターと豊かな歌声で歌うラッシュがかっこよくて、ブルーズを歌い始めたその頃にカバーした自分の思い出の一曲。一緒にバンドをやっていたギターの塩次伸二もこの曲が好きでした。
「ひとりで生きていくにはつらい世の中。愛してる女は他の男に惚れてる」
2.It’s A Mean Old World/Otis Rush
美しいギターの音色と美しい歌声、ブルーズに対するラッシュの美学がわかるような素晴らしい曲です。僕はT.ボーンの原曲は歴史的な一曲だと思うが、このラッシュのカバーも非の打ち所のない優れたカバーだと思っている。
このアルバム”Chicago Blues Today”は1966年のヴァンガードレコードのリリースで、当時シカゴのクラブで互いに上へ這い上がろうとしていたジュニア・ウエルズ、ジェイムズ・コットン、オーティス・スパンなどこれからが期待されるブルーズマンたちが収録されている。
このアルバムにはもう一曲忘れられないラッシュの素晴らしいスロー・ブルーズが入っている。
イントロの張りのある、そして伸びる歌声からもう心を持っていかれるラッシュの名唱だ。歌の内容は結婚して嫁も子供もいるのに好きな女が出来てもう「オマエと離れられへん」I Can’t Quit You Babyというもの。
君はオレの家庭をめちゃくちゃにして、子供にも冷たくしてるという歌詞が出てくるんですが、自分の苦しい心の内をずっと歌ってるんですが浮気したのオマエやろと言いたいけど・・。
3.I Can’t Quit You Baby/Otis Rush
I Can’t Quit You Babyはレッド・ツェッペリンのカバーを先に知っていたが、オリジナルのラッシュを聴いてみるとツェッペリンのヴァージョンにはわざとらしさを感じるようになってしまった。演奏も大げさに思えて、とくに歌、歌唱の違いをまざまざと感じて・・・その頃からロックを離れて完全に黒人ブルーズに突入してしまった。
当時、僕はウエストロード・ブルーズバンドを京都で結成してブルーズを歌い始めた頃で、ブルーズのレコードも何を買っていいのかわからないところから始まった。でも、その最初にいいアルバムに出会えたことは運がよかった。当時の自分の力量にとってはハードルの高い曲でしたが、次の曲をカバーして京都のディスコで歌ってました。ディスコの支配人に呼ばれるといつも「あんなスローブルーズ歌とてんともっと流行の曲歌わんか!」と怒られてました。そしてウエストロードの最初のアルバムでレコーディングしました。冷や汗ものの稚拙な歌です。これはB.B.キングをカバーしたと思っている方も多いのですが、実は次のオーティス・ラッシュをカバーしました。
自分に貢いでくれるいい女がいたのに他の女に手を出していたら、貢いでくれてた女が他に男を作って逃げられたという最悪の歌だけど大好きなブルーズ。
4.It’s My Own Fault/Otis Rush
最後に最初のアルバート・キングとのカップリング・アルバム”Door To Door”に入っている曲で、この曲はすでに録音していたコブラレコードの”Keep On Loving Me”の再録音だとあとから知りました。

最初はこんな感じでラッシュのソロアルバムがないのでいろんなコンピレーション(当時はオムニバス・アルバム)でオーティス・ラッシュを聴いていました。
次回はいよいよコブラのラッシュをゲットする話とその永遠のラッシュのブルーズを聴きます。