2018.12.14 ON AIR

OTIS RUSH 追悼 vol.3

Mourning In The Morning/Otis Rush (Atlantic 782367-2)

Mourning In The Morning/Otis Rush (Atlantic 782367-2)

Right Place Wrong Time/Otis Rush  (Hightone Records HCD-8007)

Right Place Wrong Time/Otis Rush (Hightone Records HCD-8007)

Ain’t Enough Comin’ In/Otis Rush (Quicksilver/nippon phonogram PHCR-1248)

Ain’t Enough Comin’ In/Otis Rush (Quicksilver/nippon phonogram PHCR-1248)

ON AIR LIST
1.Gamblers Blues/Otis Rush
2.Tore Up/Otis Rush
3.Rainy Night In Georgia/Otis Rush
4.Don’t Burn Down The Bridge/Otis Rush

 

去る9月20日に亡くなった。偉大なブルーズマン、オーティス・ラッシュの追悼の三回目です。
前回聴いてもらった50年代中後期にはチャートへのヒットも出してコブラレコードに18曲を録音しましたが、その後60年代シカゴのブルーズの名門レーベルチェスレコードと契約したが出したのはシングルが数枚。その後のデュークレコードではシングルが一枚のみ。つまり、いちばん勢いのあった時にふたつのレコード会社が契約したもののラッシュに力を入れなかった。これは精神的にかなり辛かっただろうと思います。そのあとヴァンガードレコードなどにも録音しているがトータルなソロ・アルバムはないまま60年代が終わろうとしていた。しかし69年に、コテリオン・レコードからアルバム”Mourning In The Morning”が発表された。60年代にリリースされたアルバムはこれ一枚。
ファンが期待したこのアルバムは、ラッシュ本人はがんばっているが曲やアレンジ、サウンドがあまりよくない。言えばオーバー・プロデュース。残念なアルバムになった。
しかし、その中でこのスローブルーズ1曲だけは素晴らしく良かった。

1.Gamblers Blues/Otis Rush
”Mourning In The Morning”のプロデュースはラッシュを尊敬していたであろうロック・ギタリストのマイク・ブルームフィールドとニック・グレヴナイツ。バックはアレサ・フランクリンやウィルソン・ピケットなどの録音に参加していたドラムのロジャー・ホーキンスほか当時のマッスルショールズの腕利きのスタジオミュージシャンたち。しかし、素晴らしいミュージシャンを揃えてもいい録音になるとは限らないという典型のようなアルバムで、久々のアルバムだったのにラッシュにとっては自分を代表するアルバムにはならなかった。
そして、とうとう70年代に入り日本でブルーズが流行り始めて黒人ブルーズマンによるブルーズのコンサートが始まり、3回目のブルーズフェスでラッシュは来日した。
1975年の夏。当時日本のブルーズ・ブームはすごい勢いで中でも、コブラレコードのラッシュに感動した彼の人気はすごくて僕が見た東京の日比谷野音は超満員、大阪でも入れない人たちがたくさんいた。しかし、ラッシュの演奏は良くなかった。バックのジミー・ドーキンスのバンドがダメとかいろいろ言い訳はありましたが、彼があの時全力を出して演奏したようには見えなかった。うまくいかないので途中で勝負を捨てたような演奏だった。
それ以降彼が来日した時もそうでしたが、時々彼はなぜかひとり内にこもったような演奏になりお客のことも一緒にやっているミュージシャンのこともお構いなしということがよくあった。
ステージがいろんな理由で上手くいかないことはよくあることですが、これがB.B.キングならどうだろうと思ったこともあった。B.B.は最後まで勝負を捨てないでがんばると思った。ラッシュにはそれがない感じでした。僕は1,2曲素晴らしい演奏をするラッシュを見たことはあったが、コンサートが最高だったことは一度もなかった。残念ながら。
何度目かの来日の時は自分のヒット”All Your Love”を歌わないでインストでやったことがあり、その時は僕は頭に来て途中で客席を出ました。あとから関係者に聞けばかなり酒を飲んでいたということだった。それは言い訳にはならない。大好きなだけにしっかりしてくれ!という気持ちでした。
そして、来日の75年の翌年”Right Place Wrong Time”というアルバムが突然リリースされました。実はその五年前1971年に大手キャピタルレコードが録音したものですが、発売されずに76年になってインディーズのハイトーンレコードからリリースされた。その5年も確かにラッシュにとってつらいものだったと思います。

2.Tore Up/Otis Rush

次に聴いてもらうのは黒人のブルック・ベントンが70年にヒットさせましたが、オリジナルは去年の10月に亡くなった白人のカントリーロック・シンガーのトニー・ジョー・ホワイトです。
「スーツケースを持って夜を過ごす温かい場所を探している。めっちゃ雨が降っている中、大丈夫やと言う君の声が聴こえる気がする。ジョージアの雨の夜、世界中が雨のような気がする」
スーツケースとギターを持って放浪しているミュージシャンを歌った曲です。
3.Rainy Night In Georgia/Otis Rush
いい曲です。
いま聞いている”Right Place Wrong Time”以降のラッシュはコンスタントにアルバムを出してます。
94年の”Ain’t Enough Comin’ In”もいいアルバムです。2006年リリースのサンフランシスコでのライヴ盤”Live And In Concert From San Francisco”もよかったです。

では、94年”Ain’t Enough Comin’ In”から彼が好きだったアルバート・キングの曲のカバーです。
その橋(ブリッジ)を焼き落としてはいけない/Don’t Burn Down The Bridgeというタイトルですが、家のドアに全部鍵をかけて、その鍵を投げ捨てて家を出ていこうとする彼女に「その橋(ブリッジ)を焼き落としてはいけない」と言うんですが、ふたりのつながりをすべて失くしてしまってもいいのか。
4.Don’t Burn Down The Bridge/Otis Rush

オーティス・ラッシュの追悼を三回に渡ってON AIRしてきました。いろんな不運なことやミュージシャンとして恵まれない状況の時代もありましたが、まだまだやれる力を持ったブルーズマンでした。1998年には「Any Place I’m Going」をリリースしてグラミーも受賞しました。2004年に脳梗塞で倒れてから結局復帰できないまま彼は亡くなってしまいました。
本当に残念です。
オーティス・ラッシュは他にもアルバムがあり、ライヴ・アルバムも何枚かあります。
僕はシカゴのラッシュのお宅にもおじゃましていろいろ話をさせてもらいました。ありがとうございました。