2019.01.18 ON AIR

いにしえのセントルイスへレコードでタイムスリップ

St Louis Town !929-1933 (YAZOO L-1003)
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ON AIR LIST
1.St.Louis Blues/Jim Jackson(B-1)
2.Hunkie Tunkie/Charlie Jordan(A-4)
3.Spoonful Blues/Charlie Jordan(A-5)
4.Long Ago/Henry Townsent (A-2)
5.Nut Factory/Hi Henry Brown (B-2)

この番組ではブルーズが録音され始めた1920年代30年代の古いブルーズを二ヶ月に一回くらいはON AIRにしょうと思っています。
ブルーズの根源をみなさんに知って欲しいという気持ちがあるからです。素朴で、飾り気のない、土着的な遠い昔のブルーズにこそブルーズという音楽の本質がはっきり表れています。

今日はアナログレコードで1920年代終わりから30年代初めのセントルイスのブルーズを聞きます。アメリカの真ん中よりちょっと東のミズーリ州のまた東の端に位置してるのがセントルイスで、ミシシッピ川とミズーリ川がぶつかったところにあります。今日聴くアルバムは「セントルイス・タウン 1929-1933」というタイトルなんですが、この期間はアメリカを発端に世界的な「大恐慌」が起こって不景気になった時代です。
でも、それより以前は元々セントルイスは1920年代頃はアメリカの中部の工業都市として栄えた街でした。なので多くの労働者があつまり歓楽街も栄えて、ブルーズマンたちもこの地に集まってきていました。
ミズーリ州は東隣がシカゴのあるイリノイ州で南がアーカンソー州、南東にテネシーその南にアラバマ、ミシシッピーという位置で、黒人たちが南部の田舎暮らしがイヤで北部のシカゴ、デトロイトあたりで一旗あげようとする時に途中寄る街がメンフィスだったり、このセントルイスだったりしたわけです。
まずはみなさんも聞いたことがある「セントルイス・ブルーズ」この曲は作曲家のW.C.ハンディが1914年に黒人が歌っているのを譜面に起こした最初に譜面になったブルーズなのですが、曲そのものはそれ以前も以後も多くの黒人たちによっていろんなバージョンでこの地域で歌われていたと思います。いまから聞いてもらうジム・ジャクソンも誰かのを聞き覚えたのでしょう。

1.St.Louis Blues/Jim Jackson(B-1)

ジム・ジャクソンはテクニック的に上手い人で、ブルーズだけでなくフォークやジャグ的なものも歌っていました。「カンザスシティ・ブルーズ」という曲でめちゃ売れたのて映画にも出たり、レコーディングもたくさんやっていて20年代30年代のブルーズマンとしてはかなり売れた人です。

次はこのアルバムに4曲収録されていて、このアルバムのジャケット写真にもなっているチャーリー・ジョーダン。ジャケ写(あとでホームページで見てください)を見るとですね、ちょっと話しかけるのに勇気がいる感じの強面のおっさんですが、演奏するギターはめっちゃ繊細で軽やかです。この太い指でそんな細やかなこと弾けるんや?!みたいに思います。
音楽以外にブートレガーつまり密造酒を作って売っていたセントルイスの顔役やったそうで、そう言われればそういう顔かと納得です。
2.Hunkie Tunkie/Charlie Jordan(A-4)
うまいですよねギター・・弾きながら歌ってるわけですから。
ギャングみたいな顔からは想像できない細やかな音楽でしたが、結構録音も残っていてP-Vineレコードからソロのコンピ・アルバムもリリーされています。
このチャーリー・ジョーダンもセントルイスで音楽やり、酒の密造やり、まあ当時の黒人としてはそれなりにお金のある生活をしてたんでしょう。
このアルバムを聞いているとセントルイスはやはり都会ですから、20年代30年代とはいえやはり田舎のミシシッピやアラバマのブルーズマンに比べると洗練されています。
ギターが上手いのでピーティ・ウィートストローやルーズヴェルト・サイクス、メンフィス・ミニーといった当時の人気ブルーズマンと共演し、そのあともビッグ・ジョー・ウィリアムスともデュオでやったりしています。
もう一曲チャーリー・ジョーダン
3.Spoonful Blues/Charlie Jordan(A-5)
やっぱり基本的にリズムがステディで踊れるグルーヴがあります。この当時の弾き語りのギタリストはリズムがいいか悪いか、つまり踊れるか踊れないかは大切な要素でした。
また、誰かとデュオをやるにしろやはりリズムがよくないと出来ませんからね。ギターのフレイズも素晴らしいんですが、それよりリズムの良さに感動します。セントルイス、1930年代のボス、チャーリー・ジョーダンでした。

さて、次はこの人もセントルイスのブルーズというと必ず名前の出てくるブルーズマンでヘンリー・タウンゼント
ミシシッピ生まれですが、イリノイ州のカイロというイリノイの南端にある街で育ち、つらく当たる父親がイヤでなんと9才で家を出てます。小学三年か四年生くらいですよ。それでセントルイスに住んでギターを習ったらしいんですが、どうやって食べてたんでしょうね。それでも20才くらいの時にはウォルター・ディヴィスという有名なピアニストと組んで旅に出たりしてます。
いまから聞いてもらうのはちょうどその頃、1929年の録音です。どんな気持ちだったでしょうね、9才で家を出て・・貧しかったでしょうね。それが20才の時にレコーディングまでたどりついた彼の気持ちは・・・曲のタイトルが「遠い昔に」
4.Long Ago/Henry Townsent (A-2)
ヘンリー・タウンゼントは長生きしまして、2006年97才まで生きました。Last of the Great Mississippi Delta Bluesmen: Live in Dallas”というロバート・Jr・ロックウッドーやハニーボーイ・エドワード、パイントップ・パーキンスたちと一緒にコンピレーションされたアルバムでグラミーのトラディショナル・ブルーズ・アルバムをゲットしています。他にもいろんな賞をもらって長く生きていいこともたくさんあったんだと思います。
こういう古い、ほとんど写真もないブルーズマン、生まれた年月もわからないブルーズマン、中には名前がわからなくてUnknown(無名の)とだけクレジットされているブルーズマンもいるわけです。そういうたくさんの名前の知られてない、有名でもないフツーの黒人たちによってブルーズという音楽が作られ、いままで歌い継がれてきたということをみんなの心のどこかに留めておいてください。B.B.キングやバディ・ガイもそしてエリック・クラプトンやスティービー・レイボーンもそしてもちろん僕もそういう人たちの作った音楽の上でブルーズやらせてもらっているわけです。
では、あまり知られていないブルーズマンでHi Henry Brown
彼もミシシッピ生まれで30年代からセントルイスで活躍して、さっきのチャーリー・ジョーダンのギタリストとして上手いギターを聞かせた人です。
ギターもいいんですが、太い声の歌もパワフルでいいです。1932年録音
5.Nut Factory/Hi Henry Brown (B-2)

今日は素晴らしい戦前ブルーズをたくさんリリースしているヤズーレコードのアナログレコードで「セントルイス・タウン 1929-1933」を聞きました。