2019.02.22 ON AIR

97歳でグラミーを獲得したブルーズピアニスト、
パイントップ・パーキンス

Pinetop’s Boogie Woogie/Pinetop Perkins (Antone’s Records 74210)
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ON AIR LIST
1.Kidney Stew/Pinetop Perkins
2.Pinetop’s Boogie Woogie/Pinetop Perkins
3.High Heel Sneakers/Pinetop Perkins
4.Going Down Slow/Pinetop Perkins

パイントップ・パーキンス 1913年ミシシッピ生まれ、2011年テキサス、オースティン没 享年97歳

先週は映画「サイドマン」に取り上げられた3人のブルーズマンの中のギターのヒューバート・サムリンを特集しましたが、今日はその中のピアニスト、パイントップ・パーキンスです。
1960年代終わりマディ・ウォーターズ・バンドでマディの右腕となって活躍していたピアノのオーティス・スパンがソロ活動に入ったために、スパンの後釜としてパイントップはマディバンドに入りました。その後マディが亡くなるまで在籍し、マディの晩年のアルバムにも参加していました。
今日取り上げるパイントップ・パーキンスのソロ・アルバム「パイントップス・ブギウギ」は1992年にテキサス、オースティの「アントンズ」レコードからリリースされています。
録音に参加したメンバーがいまから思うとすごいメンバーで、ギターにマット・マーフィ、ジミー・ロジャース、ヒューバート・サムリン、ルーサー・タッカーともうブルーズの一流ギタリストがずらり、ハーモニカもジェイムズ・コットン、キム・ウィルソン、ドラムには映画「サイドマン」でもピックアップされたウィリー・スミス、そしてハウンドドッグ・テイラーの右腕テッド・ハーヴィ、ほかにも精鋭のミュージシャンが参加しピアノと歌のパイントップをサポート。メンバーみただけでも悪かろうはずはないアルバムです。
では、まず一曲目 ”Kidney Stew”ですが、キドニーとは腎臓のことで、豚とか牛の腎臓を使ったシチューですから、「ホルモンのシチュー」のようなものになりますが、キドニー・ビーンズ日本語でいうインゲン豆も同じスペルでキドニー豆でその豆を使ったシチューというのもあります。オリジナルはジャズ・ブルーズのクリーンヘッド・ヴィンソン
1.Kidney Stew/Pinetop Perkins
気持ちのいいブルーズでした。いま気づいたのですが、いまのギターにデューク・ロビラードとクレジットされていて「誰やったかな・・」と考えていたんですが、この人ルームフル・オブ・ブルースにいて、そのあとファビュラス・サンダーバードにジミー・ボーンのあとに加入した人ですね。ちょっとジャズ風味のギターがよかったですね。

次はパイントップの看板曲でパイントップの見事なブギウギ・ピアノとバックのマット・マーフィとルーサー・タッカーの名人芸のギター、コットンのファンキーなハーモニカ、そしてドラムはテッド・ハーヴィ 極上のブギウギ・ブルーズをどうぞ
2.Pinetop’s Boogie Woogie/Pinetop Perkins

次のハイヒール・スニーカーズのオリジナルシンガーはトミー・タッカー。「赤いドレス着て、ハイヒール・スニーカー履いて、ウィグ被っておしゃれして今晩遊びに行こうよ」というダンス・ナンバーで、いまやブルーズのスタンダード曲のひとつです。
ハーモニカはキム・ウィルソン、ヒップなギターソロはヒューバート・サムリン
ウィリー・スミスとカルビン・ジョーンズのリズム隊がステディなリズムを繰り出していて最高です。
3.High Heel Sneakers/Pinetop Perkins

パイントップは南部ミシシッピーに生まれ、最初はギターを弾いていたそうですが、アーカンソー州のヘレナのナイトクラブで女性にナイフで腕の腱を何ヶ所か切られてしまってギタリストへの道をあきらめたそうです。。でも、怪我が治ったあと今度はピアノをめちゃ練習したらしいです。よくわからないんですが、ギタリストからピアノに変るというのが・・・ピアノの方が難しいと思うのですが、ドクター・ジョンも手を怪我してギターからピアノに転向したのですが・・やれるかなオレもピアノ・・。
それでパイントップは40年代なかばにはロバートナイト・ホークと南部を放浪したり、サニー・ボーイ・ウィリアムスンのラジオ番組「キングビスケットタイム」に出たりして、それから50年代半ばにシカゴに腰をおろしました。

最後の曲はドラムとふたりだけで歌うGoing Down Slow。
オリジナルは30年代から40年代に活躍したセントルイス・ジミー。41年に流行ったこの歌をパイントップは南部で放浪していた頃に聴いたのかも知れません。これは自分の死を暗示した曲です「もし私がよくならなかったとしても、私は楽しんだよ。私の健康は悪くなっていく。私はゆっくりと終わっていくんだよ。母にはちゃんとやってると手紙を書いてくれ。そして私の罪を許してくれと伝えてくれ」
4.Going Down Slow/Pinetop Perkins

パイントップは97歳まで生きたんですが、その年2011年、亡くなる直前にドラムのウィリー・スミスと「Joined At The Hip」というアルバムを作ってなんとグラミー賞のトラディショナル・ブルーズ部門でグラミーを獲得しました。そのアルバムではウィリー・スミスはドラムではなくてハーモニカと歌をやってまして、ドラムは息子のケニー・スミスが叩いてます。
パイントップの97歳でのグラミー受賞というのはグラミー史上最年長の受賞でした。その時のグラミー会場での様子も映画「サイドマン」に出てくるのですが、晩年も晩年ですがなんかすごく良かったなぁって感動しました。いつもスポットライトが当たっているわけではなく、人生の大半はマディのバックだったり誰かのバックをやってきたパイントッブ・パーキンスですが、でもこのアルバムでもすごくいいピアノと上手いというわけではないけれどいい味の歌を歌っていて、昔からの仲間や若いミュージシャンに囲まれてブルーズマンとして素晴らしい人生を全うした気がします。
もし、見つけたらこのアルバム「Pinetops Boogie Woogie」ゲットしてください。いいアルバムです。