2019.03.01 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤

TRAMP/Lowell Fulson(KENT 520/5020)

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ON AIR LIST
1.Tramp/Lowell Fulson
2.Black Night/Lowell Fulson
3.Two Way Wishing/Lowell Fulson
4.Get Your Game Up Tight/Lowell Fulson
5.Pico/Lowell Fulson

今日はブルーズの偉人、ローウェル・フルソンのケント・レコード時代にリリースされた名盤「TRAMP」をLPレコードで聴きましょう!1967年のリリース。
ローウェル・フルソンはB.B.キングがリスペクトしていたモダン・ブルーズの巨人で、いい曲をたくさん残していますが、その大半はこのケント・レコードに所属していた頃に録音されたもので、だからローウェル・フルソンというとケント時代をまず聴かないと・・となります。
このケント・レコードという会社には50年代から60年代、B.B.キング、アイク&ティナ・ターナー、エタ・ジェイムズ、ジョン・リー・フッカー、Z.Z.ヒルなどが所属して素晴らしいブルーズをたくさん残しました。

まずは僕もレコーディングしているこのアルバムのタイトル曲「TRAMP」を聴きましょうか。僕はウエストロード・ブルーズバンド時代といまやっているブルーズ・ザ・ブッチャーと二回この曲を録音しているくらい好きなんですが、いなたモダンというか、すごく洗練されているわけではないんですがそのファンキーさはいまもすごく新しさを感じます。
ちなみにトランプと言ってもアメリカの大統領のドナルド・トランプと違いますよ、スペルがまず違います大統領はTRUMPつまりカードのトランプと一緒ですが、この歌のトランプはTRAMP、意味は放浪者、浮浪者という意味です。「浮浪者って呼んでもいいよ、オレはきちっとした服も着てないし、ハットも被ってない、お金はないけどオレは愛の男よ」
1.Tramp/Fulson
ファンキーなんですがダウンホームなイナタさがある面白い曲で67年のR&Bチャート5位まで上がったヒットでした。ちなみにファンクの帝王ジェイムズ・ブラウンがファンク・ミュージックを確立したとされる”Cold Sweat”をヒットさせたのが同じ1967年。いかにローウェル・フルソンがアップ・トゥ・デイトな音楽をブルーズでやっていたかということです。ブルーズ史上にとってこのヒットはかなり画期的でした。
しかし、元々フルソンは弾き語りのカントリー・ブルーズを歌っていました。バンド編成になってからもどこかその弾き語り時代のアーシーな土着性を感じさせたり、ダウンホーム・テイストが抜けないのが特徴で朴訥な感じが男っぽくって僕は好きです。

次も66年にチャートに上がったヒット曲ですが純正ブルーズです。こういう曲をチャートに上げる実力を持っている骨太のブルーズマンなんです、ロウエル・フルソンは。
「昔はオレのものやったけどいまは新しい男がおるんやろ。昔は仕事が終わったあともふたりで仲良くやっていたもんや。それがいまでは家に帰るとオマエは疲れているか家にいない。ああ真っ暗な夜」
2.Black Night/Lowell Fulsom
ほんまにええ声してます。ぐっと低音へ行ったときに声の膨らみがあるんですね。本人もそこが売り物やったのか時々その低音を出すんですよ。
もうひとつ、いつも思うのはフルソンのギターなんですが、つっかかるような弾き方で、武骨で不器用に聴こえるんですが時々めちゃ難しいフレイズをさらっと弾くんですよ。うまいのかうまないのかどっちやねんみたいなギターで面白いです。
このアルバムのスタジオ・ミュージシャンのクオリティの高さは相当なものです。大げさなアレンジはないんですが本当にビート中心のいい演奏です。
ブルーズ・バンドやっている方は是非じっくりこのアルバム聴いてみてください。
3.Two Way Wishing/Lowell Fulsom

今日聴いているローウェル・フルソンのアルバム”Tramp”は、僕がブルーズを好きになり始めた頃に買ったアルバムですが、当時毎日聴いているうちにミディアムテンポのシャッフルの曲がなんか塩昆布みたいにブルーズの味が出きてクセになりました。さっきのブラック・ナイツもそうですが、次の曲のミディアム・テンポのグルーヴ感もめちゃくちゃ気持ちいいです。
4.Get Your Game Up Tight/Lowell Fulsom

次の曲はインストルメンタルなんですが、これ最初の”Tramp”のオケをそのまま使ってますよね、使ってますよね!とフルソンに聴きたいです。でも、同じオケだとしてもファンキーな印象に残るいいインストなんですよ。
5.Pico/Lowell Fulsom
やっぱり同じオケ使ってるみたいです。まあ、違ってたとしてもリズムのパターンはまったく一緒です。でも、いいんですね。この詐欺みたいな感じが・・。このアルバムは67年にTrampが大ヒットしたのでその頃のシングルを集めてLPにしたんですが、Trampはその後オーティス・レディングとカーラ・トーマスのデュオに歌詞を変えてカバーされたり、ジョー・テックスが歌ったり、ずっと時が過ぎて今度は80年代終わりから90年代にかけてヒップホップでサンプリングされました。やはり時代が変ってもTrampという曲の中になくならないファンクの普遍性があるんだと思います。
もし、レコードでこのアルバムを見つけたら絶対ゲット!です。