2019.04.05 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤

70年から80年代にかけて最高のブルーズロック・サウンドを出していたFabulous Thunderbirds
Butt Rockin’ / The Fabulous Thunderbird(CHRYSALIS RECORDS PV-41319)
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ON AIR LIST
1.I Believe I’m In Love/The Fabulous Thunderbirds
2.I Hear You Knockin’/The Fabulous Thunderbirds
3.Cherry Pink and Apple Blossom White/The Fabulous Thunderbirds
4.Tip On In/The Fabulous Thunderbirds
5.Matilda/The Fabulous Thunderbirds

ブルーズにそんなに詳しくない人でもロックを好きな人ならスティーヴィー・レイボーンの名前は知っていると思います。
80年代にジミー・ヘンドリックス・スタイルとブルーズロック・スタイルをミックスしたギタースタイルで登場して、一躍人気の出たスティーヴィー・レイボーン。
その実の兄がジミー・ボーンと言いまして彼は弟とはまた違うギター・スタイルで僕はどちらかというとその兄のジミー・ボーンの方が好きなんですが、そのジミー・ボーンがハーモニカのキム・ウィルソンと1974年に作ったバンドが「ファビュラス・サンダーバーズ」です。
アルバム・デビューは1979年。僕は最初ロスアンゼルスの友達にいいブルーズロックのバンドがいると言われてカセットテープをもらったのがそのデビューアルバムでした。

これが実にいいブルーズロックバンドで、最初歌がいいなと思いました。ほとんどキムが歌っているんですが、白人にありがちな無理な発声もなくもまたか細い感じもなく、すごく自然に歌っていて、演奏よりもまず歌に弾かれました。
今日はその「ファビュラス・サンダーバーズ」の1981年の3枚目のアルバム”Butt Rockin'”をレコードで聴いてみようと思います。
このアルバムは去年僕の後輩のギタリストで上村秀右くんにプレゼントしてもらったもので、あまりにいいので今日ON AIRです。
アルバム・タイトルのButt Rockin’のButtとは・・
まずはアルバムの一曲目
1.I Believe I’m In Love/The Fabulous Thunderbirds

ファビュラスはテキサスのバンドなのでワイルドなテキサス・スタイルととなりのルイジアナのスワンプ、そしてニューオリンズの音楽テイストも入っているところが特色です。

次の曲は以前オリジナルのレイジー・レスターをON AIRしましたが、いわゆるルイジアナのスワンプ・ブルーズの有名曲です。レイドバックとステディなビートが合わさった実にいい味のブルーズなんですが、ファビュラスはその味を損なわないでスワンプ感もしっかりあります。
2.I Hear You Knockin’/The Fabulous Thunderbirds
ちょっとポップな感じもあり最高のダンス・ナンバー、パーティ・ソングです。残念なことにオリジナルのレイジー・レスターは去年の夏に亡くなりましたが、たぶんこの歌はずっと歌い継がれていくと思います。
ファビュラスは最初ルー・アン・バートンという女性シンガーがいたのですが、すぐにやめています。

ファビュラスは結成以来、地元テキサスのオースティンにあるブルーズクラブ「アントンズ」でハウスバンドを長らくやってました。そこで自分たちのレギュラー・ステージをやりつつ、ツアーで「アントンズ」回って来るいろんなミュージシャンのバックも務めていました。だから、バンドは相当鍛えられてタフで上手いバンドになったのだと思います。
次のインスト曲なんかもブルーズではないけれど、ステージでショーアップするために演奏していた曲ではないかと思います。
3.Cherry Pink and Apple Blossom White/The Fabulous Thunderbirds
いまの曲は日本では「チェリー・ピンク・チャチャ」とか「セレソ・ローサ」というタイトルで知られているようですが、元々フランスの曲なのですがヒットしたのはラテンのペレス・プラード楽団の1955年のインスト・バージョンがヒットして有名曲になりました。元々は歌詞があるそうです。
僕も小さい頃にそのペレス・プラード風のアレンジで日本のラテンバンドがやっていたのをなんとなく覚えています。あとは中学校の昼休みにBGMとしてこういう音楽が流れてました。

次もさっきのI Hear You Knockin’のレイジー・レスターと同じレコード会社「エクセロ」所属のブルーズマン、スリム・ハーポの1967年の曲です。
ファビュラスの特徴のひとつですけど、ルイジアナのスワンプ・ミュージックの影響が強いです。他の白人のブルーズバンドと違うところですね。ストーンズとか他のバンドもよくスリム・ハーポの曲を取り上げていますが、ファビュラスほどサウンドとグルーヴがスワンプ・テイストにはなってないです。
語り入りのインストルメンタル曲
4.Tip On In/The Fabulous Thunderbirds

白人のブルーズ系バンドとかミュージシャンはたくさんいるのですが、白人と黒人の違い、また黒人と日本人との違いは歌です。ギターやハーモニカやドラム、ベースといった楽器に関してはブルーズの演奏上、同じようなレベルにあるいは独自の演奏というのはあるのですが歌に関しては自分のことも含めて難しいです。それで僕はやたらと黒人っぽくしょうとか、黒人みたいな声にしょうとかはしません。声は生まれもったものですからどうしようもないです。黒人とは身体の骨格も違うし日常生活も食生活もすべて違いますから。ただツアーを繰り返して長く歌っていると歌うときの自分の声が出来上がっていくんですね。それができあがるように練習とライヴを繰り返すしかないと思っています。たまにブルーズ歌ってもそれは無理です。このファビュラスもすとてつもない回数のライヴをこなしたと思うのですが、ヴォーカルのキム・ウィルソンの歌が自然にブルーズを歌っていてすごくいいです。わざとらしさもないし、がなったり、喉を締めるような感じもなくてナチュラルです。
次の曲でもキムの歌がいいです。曲は僕が大好きなルイジアナ、スワンプR&Bバンドの「クッキー&カップケイクス」の曲です。もうルイジアナという感じです。
5.Matilda/The Fabulous Thunderbirds

ファビュラスはめちゃくちゃ売れたバンドではないのですが、やはりたくさんのライヴで鍛えられたバンドでタイトで骨太、でも大味ではない素晴らしいバンドです。
1986年に「Tuff Enuff」という曲がヒットして日本にも来たのですが、残念ながら僕は見逃しました。
1990年にジミー・ボーンが脱退して、ファビュラスはほとんどハーモニカと歌のキム・ウィルソンのバンドになった感じですが、いまも活動を続けています。いまもいいバンドですが、僕はジミー・ボーンのギターが好きなのでちょっと残念です。ジミー・ボーンはブルーズギターの役割と歌のバックアップの仕方をよく知っていて、派手さは弟ほどないんですが素晴らしいギタリストです。