2019.04.12 ON AIR

黒人音楽と白人音楽が交叉し始めた50年代をテーマにした映画
「アメリカン・グラフィティ」をLPレコードでどうぞ!

AMERICAN GRAFFITI ・Original Sound Track Recording
(ワーナー・パイオニア P-5642/3)

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ON AIR LIST
1.Rock Around The Clock/Bill Haley And The Comets
2.Funny Mae/Buster Brown
3.That’ll Be The Day/ Buddy Holly
4.Johnny B.Goode / Chuck Berry
5.Smoke Gets In Your Eyes/The Platters

皆さんは「アメリカン・グラフィティ」という映画をご存知でしょうか。
1973年に公開された映画です。1962年の夏のある一晩の出来事を描いた青春映画で監督はジョージ・ルーカス、プロデューサーのひとりがフランシス・コッポラ、主演が名優リチャード・ドレファス。
実は僕はこの映画が公開された73年当時観ていたけど、監督がジョージ・ルーカスだったとは知らなかった。「スター・ウォーズ」が公開されたときにジョージ・ルーカスの経歴を見て初めてこの「アメリカン・グラフィティ」が彼の出世作だったと知った。
映画の中でふんだんに50年代から60年代のR&R、R&B、コーラスグループの曲が流れるのと、時代設定が60年代はじめでそのファッションとか車とか食べ物とかすごく憧れながら見ました。

まず映画のタイトル・クリップと一緒に最初に流れるのがビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツのこの有名R&R曲
1.Rock Around The Clock/Bill Haley And The Comets
ビル・ヘイリーは55年に映画「暴力教室」すごいタイトルですが、本題はBlack Board Jungle(黒板ジャングル)これもすごいか。その映画にこの曲が使われてヒットするんですが、使われる前は全然売れてない曲でした。ビル・ヘイリーは白人で元々カントリー&ウエスタンを歌ってました。まああまり売れてないシンガーでしたが、キャリアは長くてこの曲がヒットした時もう30歳は過ぎていました。最初写真を見たときなんかカッコ悪いおっさんやなと想いました。それでカントリー&ウエスタン歌っててもヒットが出ないので、R&Bのテイストを入れたらどうやとプロデューサーに言われていまの曲になったのですが、そり頃には黒人のジャッキー・プレストンがアイク・ターナーのバンドでヒットさせた”Rocket 88″とか、ジョー・ターナーの”Shake Rattle Roll”とか黒人のブルーズをR&R風にしてカバーして売れるようになりました。
おおまかに言うと黒人のブルーズ+白人のカントリーでR&Rテイストが作られました。白人のエルヴィス・プレスリーもそうですし、黒人のチャック・ベリーにもカントリー・テイストがあったから売れたのだと思います。

映画「アメリカ・グラフティ」にはいろんな曲が出てくるのですが、もろに黒人のブルーズというと次のバスター・ブラウンのヒット曲だけです。1960年のR&Bチャート1位、ポップチャート38位です。1960年に白人音楽のチャートであるポップチャートで38位というのはすごいです。
イントロに本物のラジオのDJウルフマン・ジャックの声が入ってます
2.Funny Mae/Buster Brown

次の白人のバディ・ホリーもR&Rのパイオニアのひとり。ビートルズがバディ・ホリーをすごく好きなのは有名な話で”Words Of Love”という曲をカバーしていますが、ビートルズの前身バンド「クォーリーメン」の時に初めてのレコーディングでジョンとポールが選んだのが次のバディ・ホリーのこの曲です。1957年リリース、全米5位になった彼のデビュー曲です
3.That’ll Be The Day/ Buddy Holly
ビートはシャッフルで途中のギターソロもモロにブルーズですね。
バディ・ホリーもカントリー&ウエスタンを歌っていたのだけどそこに黒人のブルーズやR&Bのテイストを加えてヒットを出した。そのきっかけとなったのがエルヴィス・プレスリーで、バディはプレスリーのレコード聴き、ステージを見て自分の音楽を変えていった。当時、歌を歌うのは大所帯の楽団だったり、ホーンセクションを加えたものだったけど、バディはお金がなかったのでベース、ドラム、ギター二本というバンドスタイルで活動せざるを得なかった。そういうバンドスタイルでも音楽が出来るとビートルズ、ストーンズたちに影響を与えた。
でも、黒人ブルーズの世界ではギター二本にベース、ドラムというようなバンドスタイルで演奏することはその前から普通にやっていたことで、時にはギター一本にベース、ドラムとかギター二本のドラム、ベースなしとか、ギターとドラムだけとかブルーズマンは平気でやってました。

そしてバディ・ホリーは売れてからソロになり次第にポップシンガーになっていくのですが、そのあたりはプレスリーと同じ道に入った感じです。それで彼がR&Rのパイオニアのひとりだとしたら、絶対的なR&Rのパイオニアはやはり黒人のこの人。そして永遠のR&Rの名作は1958年のこの曲。
4.Johnny B.Goode / Chuck Berry
チャック・ベリーがR&Rの王様である理由はヒット曲の多さと、その後いままで歌い継がれている曲の多さ、そして音楽的には曲作りの上手さ、ノベルティな楽しい歌詞、印象に残るギターのリフ、フレイズ、ギターソロの上手さ、そして、黒人とは思えないいい意味での軽さが白人にも支持されていまに至ってるのでしょう。
そして50年代中頃から終わりにかけて我も我もとR&Rを歌う白人の若者がデビューしてくるのですが、当初は白人の親の多くはR&Rを不良の音楽として子供に聴かせないようにしていたのだけど、黒人音楽に影響を受けたミュージシャンがプレスリー、バディ・ホリー、ビル・ヘイリーとどんどんデビューしていく中でもうそういう黒人と白人という区別の制約も音楽の上ではだんだん崩れていくんですね。プレスリーは「僕がやっている音楽、ダンス、着ているファッション、ヘアスタイル・・全部黒人が前にやっていることだよ」プレスリーは黒人のクラブに忍び込んで黒人音楽を吸収した人ですから、黒人のカッコ良さよく知ってたんですね。
でも日常生活、社会的政治的には変らず根強く黒人への人種差別は60年代へつづくわけです。そして黒人の権利を求める公民権運動が始まっていくわけです。
このサントラ盤にはコーラス・グループもかなり収録されているのですが、3曲も使われているのが黒人コーラスグループのプラターズ。黒人グループとしは破格に売れていた彼ら。うちの親父もレコードもってました。いまから聴く曲はうちの居間でもよく流れてしまた。ジャズ・コーラスグループでしたが、ポップな曲も多くて白人の若者にも聴かれていたのだと思います。日本のタイトルは「煙が目にしみる」
5.Smoke Gets In Your Eyes/The Platters
ほかにも「Only You」, 「The Great Pretender」,「 My Prayer」, 「Twilight Time」, 「You’ll Never, Never Know」, 「Sixteen Tons」そしていまの「Smoke Gets In Your Eyes」などプラターズは50年代なかばから白人、黒人両方にミリオンセラーの連発でした。

「アメリカン・グラフィティ」のようなアメリカの音楽がたくさん流れる映画のサントラレコードを聴いていると、黒人音楽がどんな風に白人に受け入れられていき、白人がどんな風に黒人音楽のテイストを使っていったのか、また今度は黒人の方が白人にも受け入れられ売れるためにどうしていったのかがよくわかります。来週もこのアルバムを聴いてみようと思います。