2019.06.21 ON AIR

ブルーズの偉人、ライトニン・ホプキンスの初アルバムを聴く

Strums The Blues/Lightnin’ Hopkins (Liberty/東芝EMI LLR-8189)
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ON AIR LIST
1.Katie Mae/Lightnin Hopkins
2.Feel So Bad/Lightnin Hopkins
3.Let Me Play With Your Poodle/Lightnin Hopkins
4.Short Haired Woman/Lightnin Hopkins
5.Sis Boogie/Lightnin Hopkins

 
今日はライトニン・ホプキンスのファースト・アルバムです。
1982年に70才で亡くなるまでにたくさんのレコーディングをしました。恐らくレコーディングが最も多いブルーズマンのひとりだと思います。しかし、「ライトニンに駄作なし」と言われるほどどのアルバムを聴いても聞き応えがあり、たくさん録音がありますが打率はすごくいいです。
僕のようにライトニンのアルバムを見つけるとついつい買ってしまうライトニン・フリークがたくさんいますが、それだけ魅力があるということです。
アルバムごとにすごく違うということはありません。アルバムのコンセプトがあるとかではなく、弾き語りか、デュオか、バンド形態か、エレキかアコギかくらいの違いでどれを聴いてもいつものライトニンがアルバムにいるわけです。でも、なぜかアルバムを見つけると買ってしまう・・・まあ病気です。ライトニン病・・。
それでその数多いライトニンのアルバムから今日は彼の最初のアルバムです。アルバムと言ってもシングルを集めたものです。

まずは彼の代表曲と言われている1946年の録音
1.Katie Mae/Lightnin Hopkins
1946年という古い感じがまったくしない。すごく生き生きしたブルーズですね。
次も同じセッションで録音された曲でピアノが参加していますが、昔からライヴでデュオを組んでいたサンダー・スミス。ちなみにサンダー・スミスと名乗っていたのでライトニンと名乗ったそうです。サンダーはカミナリ、ライトニンは稲妻というわけです。
2.Feel So Bad/Lightnin Hopkins
いまの曲どっかで聴いたことあると思ったのですが、マディ・ウォーターズが歌っている”I Feel So Good”とメロディ似てます。

この録音の頃ライトニンは30半ばですからまだ声が若いです。いい声してます。この声を聴きたくて僕はライトニンのアルバムを次々買ってしまうんですね。声もいいのですが、ギターのリズムがいいんです。次のアップテンポの曲にはドラムが入ってますが、ギターのリズムがすごいのでドラム要らなかったかもと思います。
次の曲は「あの長くちぢれた毛をしている可愛いプードルと遊びたいなぁ。オレはオマエのプードルと遊びたいんや」と何回も歌ってますが、まあプードルは女性のことでしょう。オマエのプードルですから誰か他の男の彼女か、嫁さんでしようか。
3.Let Me Play With Your Poodle/Lightnin Hopkins

ライトニンも子どもの頃は普通の黒人の子どもと同じように農園で朝から夕暮れまで働かされていたんですが、同じテキサスのブルーズの偉人ブラインド・レモン・ジェファーソンを見て「オレもブルーズやりたい」となって、いとこのテキサス・アレキザンダーとこのアルバムのピアノのサンダー・スミスと酒場で演奏し始めてます。
運よく最初の録音のシングルから売れてライトニンにとっては思わぬ大金が入ってきて、金使いも荒かったようです。
では、そのヒットした曲でこれもライトニン生涯の代表曲でもあります。

4.Short Haired Woman/Lightnin Hopkins
ひとりの弾き語りでこれほどギターがスリリングにグルーヴする感じはなかなかないです。ライトニンの独壇場です。
最初にヒットした曲があって図に乗ったライトニンはレコード会社との契約など無視して、他のレコード会社からレコーディングの誘いがあると次々録音してお金をもらうわけです。完全に契約不履行ですが、そもそも契約なんてどういうことかもわかってなかったと思います。それに当時の黒人ブルーズマンのレコーディング契約なんてレコード会社に有利になっていて、最初にまとまったお金を渡すだけで、その後売れてもブルーズマンには金が入ってこないのがほとんどですから・・。
ライトニンと同じくらいたくさんアルバムを出しているジョン・リー・フッカーも別名、偽名を使って他のレコード会社と契約してお金もらってるんですが、ライトニンの場合は別名も偽名も使わないところがすごいです。全部ライトニン・ホプキンスですから。
では、次の曲でもライトニンのギターの素晴らしいスピード感が聴けます。単音のソロのところでも、ブレイクして歌だけになったところでも、ずっとリズムが刻まれているようにグルーヴが続く素晴らしい曲です。
5.Sis Boogie/Lightnin Hopkins

このライトニンの最初のアルバムのタイトルは”Strums The Blues”つまり「ブルーズをかき鳴らす」です。それはいいのですが、ジャケット写真が白人の手がギターを弾いている写真なんですよ。ライトニンの手じゃないんですよね。しかも、ジャケットの裏の解説の最初にはLightnin Hopkins Is A True Folk Singerと書いてあるんですよ。Blues Singerではないんです。ジャケットの白人の手の写真も、そして裏に「フォークシンガー」と書いてあるのも白人に売れるようにというレコード会社の思惑が見て取れます。当時の黒人の置かれていた社会的な立場がよくわかるジャケットです。ひどいです。
ライトニンは黒人で純正のブルーズマン以外の何ものでもないです。
偉大なライトニン・ホプキンスの初期の録音集”Strums The Blues”を今日は聴きました。