2019.10.11 ONAIR

敬愛するJ.J.ケイル、遺作 “Stay Around”を聴く

STAY AROUND/J.J.Cale (BEC5543727)
 

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ON AIR LIST
1.Chasing You/J.J.Cale
2.Stay Around/J.J.Cale
3.Girl Of Mine/J.J.Cale
4.Maria/J.J.Cale
5.If We Try/J.J.Cale

今日は大好きなJ.J.ケイルです。
J.J.ケイルは2013年に亡くなっているのに、いまも亡くなった気がしません。たぶん、生きている時から「オレが・・」というような過剰な自己主張を感じさせない人だったからだろうと思います。
いつも、忘れた頃にアルバムを出してきて「おお、J.J.ケイルの新譜」と喜んだものです。マイペースでアルバムをつくり、ツアーをやり、ほんとにたまに大きなイベントに出るそんな感じでした。
かって70年代にレイド・バックという言葉が流行りました。まあ肩の力が抜けたリラックスしたという意味ですが、レイド・バックと言われた中でこの人ほどレイドバックはないんじゃないか僕は思います。それは今日聴いてもらう最後のアルバムまで少しも変ってません。時代とか流行のとか最新のとかそんなものとはほど遠いところに彼はいて、自分の好きな、信じた音楽をやり切ったミュージシャンでした。でも、オレはやり切ったぜとかそんな感じもないところがいいんですがね。
今日聴いてもらうのは、ケイルが亡くなってから奥さんでありバンドのメンバーでもあったクリスティーン・レイクランドとマネージャーであり友達だったマイク・カッパスがケイルが残した音源から曲を選び、ミックスして作ったアルバム「Stay Around」
まずは美しいギターの音色から始まり「ずっと旅を続けてるんだ、そしてもう戻るつもりはないよ」と歌い出す
1.Chasing You/J.J.Cale
この曲のプロモ・ビデオがネットでアップされてます。彼とバンドがツアーをしている映像とステージの映像がミックスされているのですが、音楽やってる楽しさと旅をしている楽しさが伝わってきて、ああ彼はこうして人生を楽しんでいたんだろうなと思いました。ライヴの会場もそんな大きなところではなくて、バンドもメンバーは最小限、みんなでバスに乗って本当にツアーバンドっていう感じです。

よく知られたことですが、彼が有名になったのは彼の作った「アフター・ミッドナイト」や「コカイン」をエリック・クラプトンがカバーしてヒットさせたからで、ケイル自身も前にインタビューで「クラプトンがヒットさせてくれたその印税でオレは次のアルバムが作れる」って言ってました。おもろいですね。なんかローリング・ストーンズがブルーズマンのフレッド・マクダウエルの”Yoy Gotta Move”をカバーしたらマクダウエルにある日印税がどかーんと入った話に似てます。ブルーズマンではないんですが、ケイルは佇まいがカントリーブルーズマンに似ています。

がむしゃらに歌うわけでもなく、がむしゃらにギターを弾くわけでもなく、その曲の大切なとろこをさっと伝えられる彼の演奏スタイルはちょっとマネできないです。そして、ずっと聴いていると音楽ってなんだろうということを自問してしまいます。よく肩の力を抜くって言いますが、ケイルみたいな人は最初から肩の力なんか入ってないんですね。
次はアルバムタイトル曲。朴訥に歌われていますが、美しいいい曲です。
「そばにいてくれ、もう一回愛し合おう」
2.Stay Around/J.J.Cale

1938年にオクラホマ州のオクラホマシティという街に生まれ、タルサという街で育った彼は10代からロックンロールやカントリーのバンドに入って地元で活動してました。
その頃知り合ったのがレオン・ラッセル。20才すぎの頃にはナッシュビルに住んでカントリーに入れ込んでやっていたけど、またタルサに戻り、1964年に今度はレオン・ラッセルとベースのカール・レイドル(クラプトンのデレク&ドミノスのベーシスト)と3人でロスに行きます。一旗上げに行ったのか。まあ、いろいろやったのですが、67年にまたタルサに帰ってきてしまいます。それで地元のクラブでボツボツやっていたところに成功したレオン・ラッセルが立ち上げた「ジェルター」というレコード会社でアルバムを出すことになったわけです。それが69年。34才。その翌年にさきほど話したクラプトンがケイルの「アフターミッドナイト」を録音するとチャートを上がって思わぬ印税がケイルの懐に入りました。
それからずっとタルサを中心にライヴをやり、ツアーに出て、まあまあコンスタントにアルバムを出して40年の音楽人生で13枚のアルバムをリリースしました。

次の曲はフォーク・ブルーズ・テイストとカントリーテイストがブレンドされた曲。
3.Girl Of Mine/J.J.Cale

弾き語りの曲でたぶん自分でギターをダビングしているんだと思います。
ケイルのバンドもレコーディングもすごく有名なミュージシャンがいるわけではなく、有名なゲストを入れるわけでもなくいつも淡々としてます。今回のアルバムだけでなく、まだまだあるだろう彼の未発表音源に期待したいところです。

4.Maria/J.J.Cale
J.J.ケイルにはカントリー、ブルーズ、フォークにちょっとジャズなどいろんな音楽のテイストがあるのですが、ジャンル分けしてどこかのカテゴリーに入れるのは難しいです。
J.J.ケイルはJ.J.ケイルです。でも、その彼の音楽にクラプトンだけでなく、ニール・ヤング、マーク・ノップラー、ジョン・メイヤーなどたくさんのミュージシャンが憧れ、カバーされている曲数はかなりの数あると思います。

いつもこんな人にはなれないなぁ・・と思うのがJ.J.ケイルです。でも、こんなにカッコつけてない、カッコいいミュージシャンいないです。いつもヨレヨレのTシャツ着ているようなイメージがあるんですが、たぶん新品のTシャツでもヨレヨレに見える人なんですけど、そこがすごくかっこいいですね。
いまも生きているように感じるのはこの世を去るときも彼はさりげなく大げさじゃなかったからでしょう。何か知らん間に逝ってしまっていたような・・いやまだ生きているような・・
自分の生き方を考えるときに、自分と音楽を考えるときにJ.J.ケイルが浮かんできます。
5.If We Try/J.J.Cale
夏の終わり、秋の始まりにJ.J.ケイルの美しいレイドバック・ミュージック、どうでしょうか。