2016.05.13 ON AIR

Mavis Staplesの新譜”Livin’ On A High Note”~変らないメイヴィスの信念

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Your Good Fortune/Mavis Staples (ANTI-/87381-2)

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Livin’ On A High Note/Mavis Staples (ANTI 87444-2)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ON AIR LIST
1.See That My Grave Is Kept Clean/Mavis Staples
2.High Note/Mavis Staples
3.Jesus Lay Down Beside Me/Mavis Staples
4.Milk Song/Mavis Staples
5.If It’s A Light/Mavis Staples

 
僕の大好きなメイヴィス・ステイプルズが、今年のグラミー賞のベスト・アメリカン・ルーツ・パフォーマンスを獲得しました。グラミーは以前にも獲得しているしロックの殿堂入りもして、いまや本当にアメリカの至宝と呼ばれる歌手になった感じがします。50年代のファミリー・ゴスペルグループ「ステイプル・シンガーズ」から今日までの長いメイヴィスの足跡を振り返ると、60年代、70年代・・とそれぞれその時代の流れを意識しながらも彼女の底に流れる信念はまったくブレていない誠実な歌手です。
では、まずグラミーをゲットした曲をまず聴いてみましょう。オリジナルは1928年盲目のブルーズシンガー、ブラインド・レモン・ジェファーソンが録音したもの。ブルーズというよりスピリチュアル・テイストの曲。死に行く男が「ひとつだけ頼みを聞いてくれ、オレの墓をきれいにしておいてくれないか。棺の音も聞こえて来る。やっと聖書の意味することがわかったよ」という曲去年の夏にリリースされた4曲入りアルバム”Your Good Fortune”に収録された曲。
“See That My Grave Is Kept Clean”

そして、メイヴィス・ステイプルズはこの春に約3年ぶりのアルバム”Livin’ On A High Note”をリリース。そのタイトルにからめた曲”High Note”を聞いてみましょう。ちなみにI’m Living On High Noteとは「私は絶好調よ」という意味です。
“High Note”
知っている方も多いと思いますが、メイヴィスは「ステイプル・シンガーズ」というお父さんポップス・ステイプルズを中心としてその子供たちで作ったファミリー・グループのリード・ヴォーカルとして50年代に歌い始めました。グループは最初ゴスペル・グループでしたが、60年代の中頃からキング牧師の公民権運動を後押しするメッセージソングや人種差別反対の主旨をもった社会的な歌も歌うようになり、その後はメッセージ性のあるソウル・グループとして”Respect Yourself””I’ll Take You There”などいくつものヒット曲をスタックス・レコードから出しました。その辺りの曲がもっとも知られていると思います。70年代中頃のカーティス・メイフィールドと組んだ素晴らしいアルバムもあります。でも、ずっと彼らの音楽の底を流れていたのはゴスペル。どんな歌を歌ってもゴスペルの匂いがなくなることはなかったのです。
メイヴィスの音楽的な基本はいまも変らずゴスペルにあり、次の曲を書いたオーストラリアのミュージシャン、ニック・ケイヴはメイヴィスにぴったりのゴスペル調の曲をプレゼントしています。
「神様、私のそばで休んでください。真実を聞いてもらえなくてあなたはたくさんの涙を流し続けてきました。でも、絶望しないでください。私はあなたのためにいつも用意しています」
“Jesus Lay Down Beside Me”

メイヴィスの歌声は若い頃に比べると少しずつ荒れてきています。誰しも年老えばそうなります。もともと音域が低いところにある人ですが、10年くらい前から高いところがすっとでなくなってきています。50年代から歌ってきて何十年も休まずに歌い続けてきたのだからそうなりますよ。それでも自分で歌い方を工夫しています。次の曲を聴いた時そう感じました。メイヴィスはかって「私の声は神様に捧げたから後悔はない」と言ってましたが、まだまだ歌って欲しいです。
“Milk Song”

2000年にお父さんのポップス・ステイプルがなくなり、2013年にはお姉さんのクレオサが亡くなりました。それでグループとしての活動はできなくなったのですが、メイヴィスはお姉さんのイヴォヌのバックアップもありソロ活動を活発に行っているここ数年です。76才になったメイヴィス・ステイプルズの新しいアルバム”Livin’ On A High Note”を今日は聞きました。ライヴ聞きたいですね。
最後にもう一曲、メイヴィスの歌手としての深さを感じられる歌を。
“If It’s A Light”