2016.07.01 ON AIR

永遠に歌い継がれるエヴァンジェリスト、ブラインド・ウィリー・ジョンソン

God Don’t Never Change/The Songs Of Blind Willie Johnson(P-Vine Records PCD-25195)
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ON AIR LIST
1.The Soul Of A Man/Tom Waits
2.It’s Nobody’s Fault But Mine/Lucinda Williams
3.Mother’s Children Have A Hard Time/The Blind Boys Of Alabama
4.Trouble Will Soon Be Over/Sinead O’Connor
5.John The Revelator/Tom Waits

 

 

 

この場組でもON AIRしたことのある敬愛するブラインド・ウィリー・ジョンソン。そのブラインド・ウィリーへのトリビュート・アルバムがリリースされました。
ブラインド・ウィリー・ジョンソンは1920年から30年代にかけて活躍したエヴァンジェリスト。エヴァンジェリストとはひとりでギターを弾いてスピリチュアル、つまり神様の教えを歌う伝道師です。ブルーズマンとは歌っている内容が違います。しかし、サン・ハウス、チャーリー・パットンといった1920、30年代あたりのブルーズマンがブルーズを歌いながらもスピリチュアルズやゴスペルを歌うこともありました。俗(ブルーズ)な世界と聖(スピリチュアル、ゴスペル)なる世界の間で人間の心は揺れ動く・・・それを素直に歌っていたとも言えます。だから、黒人音楽のふたつの大きなルーツ、ブルーズとゴスペルは片方が世俗の音楽、片方が聖なる宗教の音楽でありながらその中にある音楽的要素には近いものもたくさんあります。
ブラインド・ウィリーの弾くスライド・ギターにもブルーズのテイストがあり、ブルーズを好きな人にもすごく人気があります。
ブラインド・ウィリーはブラインドつまり盲目なのですが、その音楽は歌もギターもパワフルでとてもエモーショナルでありながら繊細で、すごくピュアな精神を感じさせてくれる人です。
その彼の死後70年以上経ってもアメリカ、ヨーロッパでは、僕と同じように彼をリスペクトするミュージシャンがたくさんいます。
今回このトリビュートアルバムに参加したミュージシャンからもブラインド・ウィリーへの深い敬愛が感じられます。
まずはこのアルバムGod Don’t Never Change/The Songs Of Blind Willie Johnsonから一曲目、「誰か教えてくれないかい、人の人間の魂って何なんだ」という歌を強烈なトム・ウェイツの歌声で
The Soul 0f A Man
次はスピリチュアルの中では比較的よく知られているIt’s Nobody’s Fault But Mine
「もし、聖書を持っているのにそれを読まなかったら地獄に落ちるだろうけど、そうなったとしても誰のせいでもない自分が悪いのだ」つまり、聖書を読みましょう!という歌です。
この曲を歌っているのはルシンダ・ウィリアムズという女性シンガーで、もう60才過ぎてかなりキャリアの長い人ですが、カントリー色の強い人でウィリー・ネルソンとの共演もあります。僕は彼女のSweet Old Worldという曲が好きです。
It’s Nobody’s Fault But Mine

いま聴いてもらったルシンダ・ウィリアムズとその前のトム・ウェイツほか、このアルバムにはデレク・トラックスとスーザン・テディスキー、シネイド・オコナー、リッキー・リー・ジョーンズなどが参加していますが、次は1944年結成、70年以上続いている伝統のゴスペル・グループのファイヴ・ブラインド・ボーイズ・アラバマ。内容は「母親のいない子供はつらい日々を過ごすことになる。父親がいても姉や兄弟がいてもやはり母親がいないと子供はつらい生活をしなければならない。誰かがやさしくしてくれても誰も母親の代わりにはなれないんだ」この歌はつらい思いをする子供たちがたくさんいるいまの時代にも通じる内容だと思います。
Mother’s Children Have A Hard Time

つぎのシネイド・オコナーは社会的な発言や宗教的な物議もいろいろあったり、自殺未遂をしたり・・と、音楽以外の話題も多い女性シンガーですが、僕はひとりのシンガーとして彼女の歌声が好きです。「トラブルはもうすぐ終わるだろう。悲しみも薄れて嫌な事はなくなるよ。悲しみは消えるだろう」
Trouble Will Soon Be Over

最後に再びトム・ウェイツ
曲は聖書とかキリスト教の知識がないとわからない歌詞です。サン・ハウス他この歌を歌っている人は結構います。タイトルは救世主ジョンということです。
John The Revelator