2017.02.17 ON AIR

ローリング・ストーンズの新譜「ブルー&ロンサム」とその原曲を聴く Vol.1

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BLUE & LONESOME/The Rolling Stones(LP 571494-4)

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The Complete Chess Masters/Little Walter(Chess Geffen B0012636-02)

ON AIR LIST
1.Just Your Fool/The Rolling Stones
2.Just Your Fool/Little Walter
3.I Got To Go/The Rolling Stones
4.I Got To Go/Little Walter
5.Hate To See You Go/The Rolling Stones
6.Hate To See You Go/Little Walter
昨年12月にリリースされたローリング・ストーンズの新譜がブルーズのカバー・アルバムということで、ロック・ファンだけでなくブルーズ・ファンの間でも話題になってきた年末年始。
日本で唯一のオーセンティックなブルーズのラジオ番組を自負している当「ブルーズ・パワー」としては取り上げないわけにいかないということで、今回から数回にわけて、そのストーンズの新譜「ブルー&ロンサム」とカバーされた原曲を一緒に聞きながら話を進めて行こうと思います。
1964年に結成されたストーンズは、元々黒人のブルーズやR&Bを演奏する目的で結成されたバンドだということを知ってる方も多いと思います。バンド名前のローリング・ストーンズもブルーズマン「マディ・ウォーターズ」の曲名”Rollin’ Stone”から取ったものだし、ファースト・アルバムから三枚目あたりまでは、ブルーズとR&Bのカバーが半分くらい入ってました。しかし、”Satisfaction”や”Jumpin’ Jack Flash”といったオリジナルがヒットし始めてからはオリジナルを演奏するロックバンドとなり、アルバムに1,2曲たまにブルーズが収録されているだけで、今回のように全てブルーズというのは初めてです。
「ブルー&ロンサム」の1曲目から聞いてみよう。そのあとでオリジナルのリトル・ウォルターの録音を聞いてみようと思います。まずはストーンズ
1.Just Your Fool/The Rolling Stones
アルバムの最初を飾る曲としてはいい選曲ですね。さぁ、これから始まるよという感じがします。
内容は”I’m just your fool, can’t help myself”ですから「オマエに夢中でめっちゃ好きで我慢でけへん。もし、他の新しい男なんかできたら、オレはショットガンでオマエを撃つよ。そのくらいオマエが好きなんや」
続けてオリジナル1960年録音のリトル・ウォルターの”Just Your Fool”を聞いてください。
2.Just Your Fool/Little Walter
僕としてはいますぐラジオを聞いている人の感想を聞いてみたいところなんですが、ストーンズは聴いたことがあるけどリトル・ウォルターを聴くのは初めてという人も多いと思います。初めてリトル・ウォルターを聞いた感想を知りたいです。
いまのふたつを聞いて何が違うでしょう。
ストーンズは曲のサイズと構成はほとんどそのままオリジナルをカバーして、まあ全体の曲のムードもそのままという感じですね。サウンドの違いは時代も機材もスタジオも違うし、まず演奏している人間が違いますから、そのあたりの音作りの好き嫌いはどうしょうもないです。
でも、決定的に違いを感じるのはいちばん前に出ている歌とハーモニカですよね。ミック・ジャガーとリトル・ウォルターという違う人間が歌ってハーモニカ吹いているのだから違いますが、バックのサウンドは全体的にしっかりカバーした感じがあります。ストーンズ・ファンの方はある種ミックの声を聞いただけで嬉しいというところもあると思いますが、僕はリトル・ウォルターのちょっとやさぐれた歌い方がカッコいいと思います。
次もリトル・ウォルターのカバー。
3.I Got To Go/The Rolling Stones

4.I Got To Go/Little Walter
いちばん最初に思ったのは原曲とリズム・パターンが違います。ストーンズのチャーリー・ワッツは2ビートで叩いてますが、リトル・ウォルターのドラマー、フレッド・ビロウはちょっとラテン風味のファンキーなリズム・パターンでグルーヴしています。それで大分曲の印象が違います。もし、原曲のリトル・ウォルターのこの曲が入ってるアルバムを持っていたら、あとで少し大きな音でこのI Got To Goを聞いてみてください。フレッド・ビロウのドラムが素晴らしいです。
ミックはさっきの”Just Your Fool”でもそうですが、今回の録音でハーモニカがんばってます。やはり、リトル・ウォルターは人間の感情をすべてハーモニカで表現できるような天才肌なので、それをカバーするのは大変なことですが、僕は「ああ、ミック練習したな」と思いました。偉そうですけどね。ハーモニカいいですよね。
リトル・ウォルターのオリジナルは1955年の録音。52年にデビューして三年目油が乗ってきた頃で、シカゴの街でキャデラックの乗って女の子を何人も連れて毎晩豪遊していた頃でしょう。いまの録音はギターが名人のロバート・Jr・ロックウッド、と当時新進気鋭のルーサー・タッカー、ベースがシカゴ・ブルーズの親分であり、実質的なプロデューサーの役割もしたのウィリー・ディクソン、そしてドラム、フレッド・ビロウという鉄壁のシカゴ・ブルーズのメンバーです。
ストーンズは今回のアルバムで4曲リトル・ウォルターをカバーしているんですが、もう一曲リトル・ウォルターのカバーを聞いてみましょう。
5.Hate To See You Go/The Rolling Stones

6.Hate To See You Go/Little Walter
僕はこういうアーシーなワンコード・ブルーズが大好物です。ワン・コードで簡単そうですが、実は全体のリズムがグルーヴしないとすごくつまらないものになってしまうんですが、さすが全盛のチェスレコードのメンバーは素晴らしい。
いまのリトル・ウォルターの録音はさっきのメンバーのロックウッドがいなくて代わりにボ・ディドリーが参加してます。

今日はローリング・ストーンズの新しいアルバム「ブルー&ロンサム」の中からリトル・ウォルターのカバー曲を、オリジナルのリトル・ウォルターと共に聞き比べてみました。
やはり、ストーンズはすごくブルーズ好きなんだなぁという感想とともに、やはりオリジナルのリトル・ウォルターの偉大さを感じました。
ただ聞いているとすべてはそんなに難しくは思えないんですが、ブルーズを演奏することの難しさも今回のストーンズのアルバムを聞いて改めて感じました。今日はリトル・ウォルターのカバー曲に絞りましたが、また来週このストーンズの新譜とその原曲を聞いてみようと思います。
Hey Hey The Blues Is Alright!