2017.02.24 ON AIR

ローリング・ストーンズの新譜「ブルー&ロンサム」とその原曲を聴く vol.2

img01

BLUE & LONESOME/The Rolling Stones(LP 571494-4)

img02

WEST SIDE SOUL/Magic Sam (delmark P-vine PCD-23639)

img03

Change My Way/Howlin’ Wolf(Chess UNIVERSAL MUSIC UICY-76527)

ON AIR LIST
1.Commit A Crime/The Rolling Stones
2.Commit A Crime/Howlin’ Wolf
3.All Of Your Love/The Rolling Stones
4.All Of Your Love/Magic Sam
5.Just Like I Treat You/The Rolling Stones
6.Just Like I Treat You/Howlin’ Wolf

ストーンズのニューアルバム「ブルー&ロンサム」とそのオリジナル・ブルーズを聴き比べるシリーズ第二回です。
今日の一曲目はハウリン・ウルフのヤバいブルーズをストーンズのカバーから聴いてみよう。
「オマエはコーヒーに入れるクリームの代わりに毒を入れてオレを殺そうとしてる最悪の女や。毒を入れたあとオマエは座っておれを見ておれが死ぬのを願っているやろ」という歌詞

1.Commit A Crime/The Rolling Stones
次はハウリン・ウルフのオリジナル・バージョンです。1966年にチェス・レコードからリリース。
2.Commit A Crime/Howlin’ Wolf
聴き比べるとまず全体のサウンドの作り方とグルーヴ感が違います。やはりストーンズはロックバンドですからラウドです。ラウドで埋まってしまっている音もありますが、ウルフのオリジナルはラウドではなくひとつひとつの音がくっきりしている。僕はブルーズを聴くのにはこのストーンズのラウドさがギリギリセーフです。ちょっとウルフとは違うヤバい感じをストーンズは作っていていい感じにロックしてますよね。

正直に言うと今回のストーンズのアルバム中で好きになれない曲が次のAll Of Your Loveでした。君のすべての愛を僕のものにしたいと言うマジック・サムの熱い求愛の歌
3.All Of Your Love/The Rolling Stones
いまのストーンズのカバーが耳に残っている間にオリジナル、原曲のマジック・サム・ヴァージョンを聞いてみてください。
4.All Of Your Love/Magic Sam
最初、僕はストーンズのカバーがマジック・サムのAll Of Your Loveには聴こえなかった。
ストーンズはピアノソロが入ってるんですが、なぜギターソロにしなかったのか。あとのソロもハーモニカだし、最後にギターが出てくるんですが、ギターリスト、マジック・サムの曲なのになぜもっとギターソロに行かなかったのか・・・。

マジック・サムはとてもよくしなる、よく伸びる声の持ち主で、高い声を出す時でもシャウトはしていない、あくまでも抑制の効いた中で歌のテンションを上げていくという、自分の声の美しさを維持したままのテンションの高さなんですが、カバーしたミックはもり上がるにつれてがなっている感じが出てくる。そこが僕は好きやないんです。とくに最後の方のそのがなりが強くなってしまい、そこは要らないかなという気がする。この選曲自体がミックに合っていない気がします。
今回のアルバムで言うとBlue And Lonesome,All Of Your Love,Everybody Knows About My Good Thing,I Can’t Quit You Babyのようなミディアムからスローのブルーズに関して、僕は聞いていてあまりいいとは思えなかった。
ストーンズの良さが出るのは次のロッキン・ブルーズ・スタイルのよりダンサブルなブルーズだと思う。
次はオリジナル、ハウリン・ウルフ 1961年リリース
まずは2016年リリースのストーンズから
「オマエにこんなにしてやってんのに、オマエもオレに同じようにしてくれよ」と歌ってます。
5.Just Like I Treat You/The Rolling Stones
では、次、原曲のハウリン・ウルフなんですが、曲が進むにつれてリズムのグルーヴが強くなっていくのが感じられます。ブルーズの魅力のひとつは同じことを繰り返すことによって得られるグルーヴの陶酔感なんですが、そういうグルーヴが生まれないで演奏しているとただ三つのコード繰り返しているだけの退屈な曲になります。この曲なんかはとくに素晴らしいグルーヴ感を感じさせるものです。
6.Just Like I Treat You/Howlin’ Wolf
ハウリン・ウルフは60年代イギリスで当時のロック・ミュージシャンたちにすごく人気があったと思います。その歌声の圧倒的な存在感、それから曲のメロディや歌詞がキャッチーなものがあるところ、でもその底に南部のアーシーなリアルなブルーズがどっしりある。
もうひとつ、ギタリストにとってはヒューバート・サムリンという個性的で切れ味のいいギターを弾くギタリストがウルフの右腕だったこと。
いまの曲にはそのヒューバートとシカゴ・ブルーズギターの名人ジミー・ロジャース、ベース:ウィリー・ディクソン、ピアノ:ヘンリー・グレイ、ドラム:サム・レイとシカゴ・ブルーズの強者のメンバーが集まってます。