2017.04.14 ON AIR

60年代ブリティッシュ音楽シーンに咲いていたソウルフルな花 LULU

LULU/The ATCO Sessions 1969-1972 (ATCO BSMF RGM-0268)

img

 

ON AIR LIST
1.Mr.Bojangles/LULU
2.Feelin’ Alright/LULU
3.Oh Me Oh My(I’m A Fool For You Baby)/LULU
4.Good Day Sunshine/LULU
5.Melody Fair/LULU
 

 

60年代のブリティッシュ・ロックを探索していると当時の女性シンガー、ルルさんの名前が出てきます。
もちろん高校生の頃から名前は知っていたんですが、ずっと気になっていた彼女の曲を今日は初めて聞いてみようと思います。
僕が高校三年くらいの時にシドニー・ポワチエという黒人俳優が主演の映画「いつも心に太陽を」というのがあったんですよ。その映画の主題歌を歌っていたのが今日のルルさん。風邪薬みたいな名前ですけどね。彼女は歌だけじゃなくて役者としても出演してました。映画は学園感動ものですがあまり記憶に残ってません。それで高校生の時にこのルルさんを知ってテレビの音楽番組にも出てきてましたが、いわゆるポップ・シンガーという感じだったので、その頃ジミ・ヘンドリックスとかクリームみたいなサイケデリック・ロックが好きで女性歌手も好きなのはジャニスでしたから、全然ルルさん興味なかったんですよ。
それが2005年にマーティン・スコセッシが総監督したブルーズの映画シリーズ「ブルース・ムービー・プロジェクト」のイギリス編「レッド・ホワイト&ブルース」というマイク・フィギスが監督した映画あってそこにルルさんが出てきたんですよ。僕にとってはもう40年以上ぶりの再会ですよ。その時R&Bの”I’d Rather Go Blind”を歌うんですが、「ええっ?この人ってただのポップシンガーやなかったん?」とちょっと驚きました。
では、最初にみなさんもよく知っている曲を聴くのがいいかなと思います。元々はカントリーは畑のジェリー・ジェフ・ウォーカーが自作自演したもので、もうたくさんカバーがありますが、僕はニッティ・グリッティ・ダートバンドで最初知りました。ニーナ・シモンのカバーも素晴らしいです。年老いた落ちぶれたダンサーのことを歌っているんですが、15年一緒だった犬が死んで20年経ったいまでも悲しいというくだりが胸にぐっときます、でもミスターボージャングルは拘置所の中でも軽やかに踊ったという歌です。
1.Mr.Bojangles/LULU

その「レッド・ホワイト&ブルース」の映画からルルさんのことはずっと気になっていたら、先日バンドのツアー旅先の岡山のレコード屋さんで2枚組の”The Atco Sessions 1969-72″という2枚組のアルバムに出会って、即ゲットしました。あまり僕が知ってる曲はないのですが、デイヴ・メイソンが作ったFeelin’ Alrightが入ってました。メイソンがスティーヴ・ウィンウッドと結成していたトラッフィックの68年の曲。ファンキーな曲で好きです。
2.Feelin’ Alright/LULU

ルルさんは元々黒人音楽のR&B、ソウルが好きだったみたいですが、ポップな曲で売れてしまったんですね。今日聴いてもらっている”New Routes”というアルバムは1969年にルルさんがイギリスからアメリカのマッスルショールズへ行って作ったアルバムで、当時二十歳です。アラバマのマッスルショールズと言えば、アレサ・フランクリンやウィルソン・ピケットなど黒人ソウルシンガーのヒット曲をたくさん録音したところで、ソウルミュージックの聖地ですよね。やっぱり、そこで録音したかったのでしょう。レコード会社はアメリカ黒人音楽の名門アトランティックレコードの傘下のアトコレコード。アトランティックが録音したということは彼女の実力をわかってのことでしょう。聞いてもらうのはアレサで知られているんですが、実はこの曲ルルさんの方が先に録音してるんですね。
3.Oh Me Oh My(I’m A Fool For You Baby)/LULU

ルルさんは今年69才健在です。2000年にTogetherというアルバムをリリースしてそれにはエルトン・ジョン、ポール・マッカートニー、スティングなどがゲストで入っていて、またルルさんはタレントでもありテレビの司会者でもあり、役者さんをやったこともあるみたいです。日本ではあまり知られてませんが、イギリスでは大英帝国から勲章ももらっている国民的歌手です。いまポールの名前が出ましたが、次の曲はそのビートルズのカバーです。僕はあまりビートルズのカバーでいいなと思ったことはないのですが、この選曲とアレンジは好きです。
4.Good Day Sunshine/LULU
やはり、ソウルが好きだったからアメリカへ行って、しかもマッスルショールズでレコーディングしたかったんでしょうね。アトコから2枚リリースしたのですが、大きなヒットには恵まれませんでした。でもイギリスでずっとルルさんは歌いつづけヒットはいくつかありました。
歌が大好きで辞めなかったんですね。歌を聴いていても真面目な人なんだと思います。
いまの曲はアトコレコードの2枚目のMelody Fairに収録されているのですが、そのタイトル曲を聞いてください。これはビージーズのヒット曲です。
5.Melody Fair/LULU
ルルさんは若い時1969年にビージーズのモーリス・ギブと結婚して、22年という長い結婚生活だったんですが、91年に別れてしまいます。
それでこの間youtubeを見ていたら2010年の映像がありまして、それは別れた旦那さんのモーリスとルルがビージーズのFirst Mayという曲をデュエットしているんですが、それがすごく良くて・・「僕らが小さくてクリスマスツリーが自分たちの背よりも大きかった頃、僕らは無邪気に遊んで愛し合っていた。でも僕らの方がクリスマスツリーより大きくなって 僕らは別れてしまった。けれど愛はなくならない、でも5月最初の日になると涙を流すことになるんだよね」
すごくいいデュエットでいい映像です。これを歌っている時ルルさんは何を想っていたのか・・・音楽のすごく美しい瞬間が見れます。こちらです→https://www.youtube.com/watch?v=-nCedXvoaBE