2017.05.05 ON AIR

怠け者レスターと名付けられたLazy Lesterの珠玉のダウンホーム・ブルーズ

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They Call Me Lazy/Lazy Lester (OLDAYS 6208)

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Blues Stop Knockin’/Lazy Lester (Antone’s TMG-ANT 0051)

 

ON AIR LIST
1.They Call Me Lazy/Lazy Lester
2.I Hear You Knockin’/Lazy Lester
3.I’m Not A Fighter/Lazy Lester
4.I Love You Baby/Lazy Lester
5.Lonesome Highway Blues//Lazy Lester

 
ブルーズマンには面白い芸名の人がたくさんいて、マディ・ウォーターズ(泥水)、ハウリン・ウルフ(吠える狼),ギター・スリム(すらっとしたギター弾き),メンフィス・スリム(すらっとしたメンフィス/の男)マジック・サム(魔法のサム)なんていうのはかっこいいですけどね。それで今日聴くのはレイジー・レスター(怠け者のレスター)
怠け者のレスターさんは1933年生まれ、本名はレスリー・レスターさん。ルイジアナのバトンルージュの近くで生まれ育ってます。南部ルイジアナで育ったのになぜか好きになったのがシカゴ・ブルーズのジミー・リードとリトル・ウォルターです。まあ、当時ジミー・リードとリトル・ウォルターは全国的なヒットを出していたからルイジアナにいても当然影響を受けたのでしょう。
一部で「ルイジアナ四天王」と呼ばるロンサム・サンダウン(寂しい夕暮れ)スリム・ハーポ(すらっとしたハーモニカ吹き)、ライトニン・スリム(すらっとした稲妻さん)それにこの怠け者レスターさんですから・・。どうもレコード会社エクセロの社長のジェイ・ミラーが芸名つけるのが好きらしくて「ああ、君、今日からレイジー・レスターで行くで」みたいな感じやったらしいです。
本人は「オレ、別にそんなに無気力やないで」って言うてます。
「みんなはオレのこと怠け者っていうねん」名刺代わりの一曲でしょうか。
1.They Call Me Lazy/Lazy Lester
こののんびり感。いいですね。
1956年、レスターさん23才の時にエクセロ・レコードに初めて録音します。この初レコーディングに至った経緯がほんまかと思うくらい面白いんですが、
まだデビューする前に一日の仕事を終えてレスターさんはバスに乗って家に帰ろうとしました。そしたらバスにライトニン・スリムさんが偶然乗ってたんです。スリムさんはレコーディングに行くのにバスに乗ってたのですが、たぶんギターを持ってたんでしょ。その頃スリムさんはちょい売れしてまして、レスターさんは声をかけました。「ええ、すごい!あのライトニン・スリムさんですか・・どこへいかはるんですか」と訊くと、スリムさんが「いまから録音でスタジオへ行くんや」するとレスターさん「ついて行っていいですか」と突っ込みました。まあ、50年代のルイジアナのクロウリーいう田舎街ですからのんびりしたもんです。「まあ、ええけどな・・」とスリムさんに言われて「ラッキー」とばかりにスタジオへついていきました。
そしたら、その日ライトニン・スリムの録音でハーモニカ吹く奴が時間になってもなかなかスタジオに来なかったところ、レスターさんは「あの~、僕ハーモニカ吹けるんですよ」と売り込んだんです。エクセロ・レコードの社長のジェイ・ミラーがスリムさんに「スリム、さっきからおるけど誰やねん、こいつ」「いや~。オレもよう知らんのですがバスに乗ってたらついてきたんですよ。君ほんまにハーモニカ吹けるんか・・」「吹けます、吹けます」
それで初レコーディング。それでしばらくそのライトニン・スリムさんのハーモニカとして活躍することになりました。

それで56年初めて自分のレコーディング。それがいまのThey Call Me Lazyです。

レイジー・レスターにはロックン・ロールに繋がるビートがあります。歌のテンションは高くなくてダウンホームなんですがバックのビートがステディなロックなんですよ。もう踊るしかないやろみたいなダンサブルなリズムがあります。ダウンホームな歌とバックのステディ・グルーヴの組み合わせがエクセロの魅力のひとつです。
同じタイトルでニューオリンズのスマイリー・ルイスで有名な曲もありますが、こちらはレイジー・レスターです。
2.I Hear You Knockin’/Lazy Lester
かっこいい曲ですよね。
同じレーベルのスリム・ハーポもストーンズなんかに人気のあったブルーズマンですし、ストーンズの新しいアルバムでHoo Doo Bluesをカバーされたライトニン・スリムもエクセロレーベルのブルーズマンなんですが、ダウンホームでありながらビートはしっかりしてファンキー、そしてどこかポップ感があるという微妙なさじ加減はエクセロならではです。次の曲はキンクスがカバーしています。
3.I’m Not A Fighter/Lazy Lester
自分の彼女にしょかなと思っていたらら体のデカイ強そうな男が出てきて、僕は愛の男で戦う男やないんよ。I’m Not A Fighter。レイジーで怠け者やしね。まあ、ライオンみたいに吠えることも蜂みたいに刺すこともできるけど僕の血の中にはウサギの血が入ってる、つまり優しい?っていうことでしょうか。

70年代レイジー・レスターの名前は聞かなくなり、80年代にはもう亡くなっているという話もありましたが、87年に「何言うてんねん。オレは生きてるよ」とばかりにアルバム”Lazy Lester Rides Again”で復活、2000年には来日もしました。第7回のパークタワーブルーズフェスでした。
これから聞いてもらうのは2001年にアントンズ・レーベルからリリースされた”Blues Stop Knockin’というアルバムでアントンズ界隈のジミー・ボーンたちがバックをしています。
歌の途中でレスターさんの笑声が出るくらい楽しさが満載の曲で、踊り出したくなるような実に気持ちのいいビートが続きます。
4.I Love You Baby/Lazy Lester
イントロのハーモニカから出だしの歌からなんかジミー・リードに似てるなと思っていたら、これジミー・リードの曲でした。ルイジアナに住むブルーズマンにも影響を与えたジミー・リード・リードは偉大です。
元々ジミー・リードが生まれたリ・ランドと言う街はルイジアナにも近くて、レスターさんと同じようなグルーヴとかテイストがあるのかも知れません。
レイジー・レスターさんは怠け者というより優しい人やったんやないかと思います。顔つきみてもね。ほのぼのした人ですよ、きっと。
最後にダウンホーム、レイドバック・ブルーズの極めつけみたいなブルーズを聞いてください。こういう感じは本当に普段の生活のリズムがこうやないと演奏できないやろと思える曲です。
5.Lonesome Highway Blues//Lazy Lester
夕暮れのハイウェイをぼろい車で走っている感じでしたが、いかがでしたか。いまオールディズ・レコードというところからレスターさんのThey Call Me lazyのアルバムが出ているので是非家庭に一枚どうぞ。