2017.05.12 ON AIR

追悼:Super Harp!James Cotton vol.1

ON AIR LIST
1.Cotton Clop Blues/James Cotton
2.I’ve Got My Mojo Workin’/Muddy Waters
3.So Glad You’re Mine/James Cotton(アナログLP Dealing With The Devil)
4.Creeper/The James Cotton Band(アナログLP Pure Cottonより)

A SUN BLUES Collection Various Artists(RHINO/SUN R2 70962)
A SUN BLUES Collection Various Artists(RHINO/SUN R2 70962)

Muddy Waters At Newport(MCA ChessUICY-3200)
Muddy Waters At Newport(MCA ChessUICY-3200)

James Cotton Blues Band/Pure Cotton(Verve FTS-3038 LP)
James Cotton Blues Band/Pure Cotton(Verve FTS-3038 LP)

The James Cotton Blues Band/Dealing With The Devil(KING BEE 1003)
The James Cotton Blues Band/Dealing With The Devil(KING BEE 1003)

偉大なブルーズマンであり、ハーモニカ・プレイヤーのジェイムズ・コットンが亡くなった。81才でした。
ジェイムズ・コットンは1935年ミシシッピーのチュニカの生まれ。いまではチュニカと言う街は全米で三番目の大きなカジノの街であり、一大リゾート地になっているけど、コットンが生まれた頃は延々と続く綿花畑と時折氾濫するミシシッピー川に近い小さな街だった。
子供の頃は大して金にもならない綿花摘みの仕事を日の出から日暮れまでずっとやらされていたんだと思う。そういうコットン少年の楽しみはラジオから流れてくる当時南部で人気だったラジオ番組「キング・ビスケット・タイム」を聴くことだった。そのDJをやっていたのがサニーボーイ・ウィリアムスン。それを聴いて感動しハーモニカに興味を持ったコットン少年はアーカンソー州のヘレナまでサニーボーイ・ウィリアムスンに会いにいくことにした。その時コットンは9才!小学校三年!
家にまで招かれたコットン少年は偉大なサニーボーイから直接ハーモニカの難しい吹き方を伝授された珍しい人だ。
いったい、ミシシッピーの田舎から家出してきたような9才の少年をサニーボーイはどう思ったのか。そして、9才でサニーボーイに会いに行かざるを得ないくらいブルーズとハーモニカへの熱い気持ちを持ったコットンのことを思うとこちらの胸も熱くなる。
しかし、6年後の15才の時にはすでに自分のハーモニカスタイルをコットンは作っていたと言われている。

アーカンソーのヘレナの近くのメンフィスは50年代当時すごく栄えていて、音楽のメッカでもあった。そこでコットンはウィリー・ウィルキスやウィリー・ニックスと演奏を始め、52年にはラジオの番組をやることになった。その翌年メンフィスといえばサン・レコード、そのサンの社長サム・フィリップスに声をかけられて初レコーディング。それが “Cotton Crop Blues”
では、その初録音を聴いてみましょう。
「もう、金にならないコットンを摘むしんどい仕事はもういやだ」
1.Cotton Clop Blues/James Cotton

54年にメンフィスにツアーに来たマディ・ウォーターズに誘われて55年にシカゴへ。リトル・ウォルター、ジュニア・ウエルズの次のハーモニカ・プレイヤーとしてマディ・バンドに参加。しかし、当時シカゴのチェスレコードはめちゃ売れているリトル・ウォルターがいたためコットンにはなかなかレコーディングのチャンスはやってこなかった。それでもマディバンドの重要なハーモニカ・プレイヤーとしてレコーディング、ツアーに参加。マディ全盛時代のハーモニカプレイヤーとして認められ、マディの代表曲のひとつ”Got My Mojo Workin”もコットンが吹いている。
1960年ニューポートのジャズ・フェスティバルのライヴ・アルバムから
2.I’ve Got My Mojo Workin’/Muddy Waters
コットンのソロも素晴らしいんですが、歌のバックで吹いている時のコットンのフレイズがですね、気が利いているというか、すごく的を得ているというか、そこも素晴らしいです。

次はコットンの”Dealing With The Devil”という2枚組のLPに入ってるんですが、1962頃の録音でギターとふたりでやっているんですが、ギターはポールバター・フィールド・ブルーズバンドにいたエルヴィン・ビショップです。コットンはハーモニカをアンプを通さないで吹いてます。こういうダウンホームな素朴な感じも吹けるところに彼のプレイヤーとしての懐の深さを感じます。
3.So Glad You’re Mine/James Cotton(アナログLP Dealing With The Devil)
僕が最後にコットンを観たのは2013年、4年前に来日した時だったと思いますが、その時はいまの曲のような南部の香りがするブルーズハーモニカも吹いてくれました。

コットンは1967年になって念願のソロ・アルバムをVerveレコードからリリースします。シカゴへ行ってから12年も経ってからのソロ・アルバムでギターに若手のルーサー・タッカー、ドラムにハウリン・ウルフのバンドにいたサム・レイ
では、この時代ヴァーヴレコードのアルバム”Pure Cotton”からコットンの素晴らしいハーモニカが聴けるインスト曲を。6分以上あります。
4.Creeper/The James Cotton Band(アナログLP Pure Cottonより)
この1967年のアルバム”Pure Cotton”が僕が最初に買ったジェイムズ・コットンのアルバムでした。71年くらいですかね。もう圧倒的なハーモニカのパワーとグルーヴとスキルが合体している素晴らしさです。

コットンは9才でサニーボーイに弟子入りしてから73年間ブルーズマンとしての人生を送りました。メンフィスで芽が出てサンレコードで初めての録音をして、マディに誘われてシカゴに行きリトル・ウォルターやサニーボーイと並ぶブルーズハーモニカ・プレイヤーとして名前を上げた。けれど、自分のソロ・アルバムを出すには時間がかかり60年代の終わりでした。でも、デビューが早かったのでその時まだ30才過ぎでした。そして、40才くらいの頃にブルーズの歴史に残る「100%コットン」というブルーズにファンクを取り込んだ名盤をリリース。ここでコットンのブルーズ・ハーモニカプレイヤーとしての恐るべき実力を知った人も多いと思います。
来週はその「100%コットン」から話を始めたいと思います。