2017.05.19 ON AIR

追悼:Super Harp James Cotton Vol.2

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!00%Cotton (Buddah NEX CD 214)

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High Compression(Alligator/King KICP 2588)

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Deep In The Blues (Verve/Polydor POCP-7095)

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Mighty Long Time/James Cotton(P-Vine PCD-1808)

ON AIR LIST
1.Boogie Thing/James CottonBand
2.One More Mile/James CottonBand
3.High Compression/James Cotton
4.Sad Letter/James Cotton
5.Mighty Long Time/James Cotton

前回に引き続き3月16日に81才で亡くなった偉大なブルーズマン&ハーモニカ・プレイヤー、ジェイムズ・コットンの特集です。

ジェイムズ・コットンが一躍脚光を浴びたのは、1974年にリリースされたアルバム「100%コットン」。このアルバムにはコットンが旧知のブルーズギター名人、マット・マーフィーを中心に若手の強力なグルーヴを出すケニー・ジョンソン (ds.)、チャールズ・キャルミーズ (b.)、それに強者サックスのリトル・ボーが参加。新しい強烈なファンク・ブルーズを作り出し、当時のブルーズ界に新しい息吹を吹き込んだ一枚となったが、一部のアタマの固い評論家やブルーズファンには「これはブルーズではない」と、思いっきり敬遠された。
僕はアルバムが出された翌年75年にロスで彼らのライヴを観たが、もうそのサウンドとグルーヴの渦に三日間くらいぼーっとした感じだった。ジェイムズ・コットン名義ではなく「ジェイムズ・コットン・バンド」と名乗ったくらいバンド感にあふれた演奏だった。コットンを中心にはしているが、ボスがやりたいようにやるというよくあるブルーズのライヴではなく全員が同等なバンドの感じがした。
以前にもこの番組でON AIRしましたが、もう一度この「ジェイムズ・コットン・バンド」の「100%コットン」を聴いてみよう。
1,Boogie Thing/James CottonBand
ロスでライヴを観た時ステージの終わりの方でしたが、曲のエンディングでコットンはハーモニカを唇に強く当てる奏法をするんですが、その時唇から血が出てましてなんかそのテンションの高さに唖然としくした。
メンバー全員が腕達者ということもあったけど、本当に一体化したタイトなバンドで、それまでの黒人のブルーズのライヴの概念を変える要素がたくさんありました。
2.One More Mile/James CottonBand

「100%コットン」とあと2枚のアルバムをブッダ・レコードからリリースして、ブルーズへの新しいアプローチは評価されたものの、レコードセールスには結びつかなかった。本当にアメリカのショービジネスは厳しい。
それで70年代の終わり頃にこのバンドは自然と消滅して、コットンはマディ・ウォーターズとジョニー・ウィンターのコラボ・アルバムに参加します。マディ・ウォーターズの晩年の作品群になります。
80年代もアリゲーター・レコードからアルバムをリリースして派手な活躍はなかったけれど、ライヴはずっとやってきていました。
では、そのアリゲーターレコードから1984年リリースの”High Compression”からハーモニカのインスト曲でアルバムタイトル曲です。
3.High Compression/James Cotton

90年代に入ってコットンは歌声の荒れ方がひどくなり喉頭ガンの手術を受けました。いまから聴いてもらう曲は96年にグラミー賞のベスト・トラディショナル・ブルース・アルバム部門に輝いた「Deep InThe Blues」に収録されているものですが、歌声が荒れて声が出にくくなっているのがわかります。それでエレキ・バンドスタイルではなくアコースティック的なサウンドにしたのは声が出にくいコットンへの配慮でしょう。ベースに僕の好きなジャズ・ベーシストのチャーリー・ハイデン、ギターはジョー・ルイス・ウォーカーです。
4.Sad Letter/James Cotton

先週も言いましたが、コットンは9才の時にラジオで聴いたサニーボーイ・ウィリアムスンの歌とハーモニカに憧れて、ひとりミシシッピーからアーカンソーのヘレナにやってきてサニーボーイに弟子入りしました。そこから先頃3月16日に亡くなるまで73年ほどのブルーズ人生でした。メンフィスで若き日に修行をして、マディに誘われてシカゴに移り住み活動しました。マディのバンドにはリトル・ウォルター、ジュニア・ウエルズ、ビッグ・ウォルターと素晴らしいハーモニカ・プレイヤーが歴代在籍しましたが、いちばん長く在籍したのはコットンでした。まあ、マディにとって重要なメンバーだったわけです。それから今日聴いてもらった70年代のジェイムズコットンバンドでの活躍とずっと現役で活動を続けました。
もし、話を聞けることがあったら9才の時にアーカンソーのヘレナにやってきてサニーボーイのところに行った時の気持ちを聞いてみたかったです。それはたぶん切羽詰まった、どうしてもそうせざるを得ない強いブルーズへの気持ちだったと僕は思います。
最後にその師匠ともいえるサニーボーイの曲をカバーしたコットンの演奏をどうぞ。
「可愛いあの娘と出会ってからずいぶんと長い時間が過ぎた。今度あの娘を自分のものにできたらもう離さないんやけどな」という歌なのですが、長いブルーズ人生を見事に送ったジェイムズ・コットンにふさわしい言葉だと思います・・Mighty Long Time
5.Mighty Long Time/James Cotton
ジェイムズ・コットンの冥福を祈ります。