2017.07.28 ON AIR

追悼:Gregg Allman

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The Allman Brothers Band

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Low Country Blues/Gregg Allman

ON AIR LIST
1.Whipping Post/The Allman Brothers
2.Floating Bridge/Gregg Allman
3.Please Accept My Love/Gregg Allman
4.Midnight Rider/The Allman Brothers

オールマン・ブラザーズは今年1月にドラムのブッチ・トラックスが亡くなっています。そして、今度は5月27日にグレッグ・オールマンが亡くなってしまいました。
オールマン・ブラザーズ・バンドは僕にとってはブルーズに導いてくれた大切なロックバンドで、ブッチとグレッグの逝去はショックでした。
60年代の中頃から後期にニューロックやサイケデリック・ロックと呼ばれた新しいロックが現れた、その土台となったのがブルーズロックでした。イギリスのロックバンドの方が黒人ブルーズへの接近は盛んでストーンズはじめアニマルズ、ゼム、ヤードバーズ・・と人気バンドが輩出されました。そういうブリティッシュ勢から少し時間をおいた60年代後半にアメリカから登場したブルーズロック、或はサザンロックと呼ばれたフィールドの最も完成された形のバンドがオールマンだったように思います。もちろん、アメリカ南部に育った彼らの音楽的バックグラウンドにはカントリー&ウエスタンやフォークソングもありましたが、その土台となったのはブルーズでした。
そのオールマンのヴォーカルそしてオルガンを担当したのがグレッグでした。
今日はまず僕が最初に好きになったグレッグの歌のひとつを聞いてください。
「あの女はどこまで俺をバカにしてるんやろ。金は使わされるわ車はめちゃくちゃにされるわ。その上俺のツレと飲んで遊んでる。鞭打ち刑の柱につながれてる最悪の気分や。なんも変らんしどんもできへん。もう、死んでしまいたいわ」
1969年オールマン・ブラザーズのファースト・アルバムから
1.Whipping Post/The Allman Brothers
この頃のグレッグはまだ顔に少年っぽさが残っていて金髪で見た目もすごく美しい人でした。なのに歌声かブルージーで聞いてすぐに好きになりました。
僕は71年くらいからブルーズを歌い始めたのですが、その前はオールマン・ブラザーズのカバーをウエストロード・ブルーズ・バンドでやってました。とにかくいまのファースト・アルバムからIdlewild South、At Fillmore East、Eat a Peach、Brothers and Sistersとこの5枚は本当に素晴らしいアルバムで、いまもよく聴きます。
その彼らの黒人ブルーズの取り上げ方、アレンジとか演奏のセンスがよくて、そのオールマンがきっかけとなって僕は黒人ブルーズへ入っていきました。

話は飛びますが、グレッグは2011年に”Low Country Blues”というアルバムをリリースしているのですが、これが最後のアルバムということになるのでしょうか。最近アルバムを制作中とのことを聞いていたので、是非新しいアルバムを途中でもいいから聞いてみたいです。
その”Low Country Blues”も素晴らしくよくて、いままで何枚か出されたグレッグのソロアルバムの中でも好きな一枚です。
古いカントリー・ブルーズからB.B.KingやBobby Blandあたりのモダン・ブルーズまでをカバーしているのですが、やはり彼のブルーズへの想いの深さと広さを感じる選曲です。グレッグの筋金入りのブルーズ・フリークを感じさせる一曲を聞いてみましようか、1920年代からカントリー・ブルーズマンとして活躍して日本にも来てくれたスリーピー・ジョン・エステスのブルーズのカバー
2.Floating Bridge/Gregg Allman
アルバムの一曲目からスリーピー・ジョンのカバーですから、ディープな選曲です。

いま聞いてもらってもわかるように彼は決して無理をしない歌い方なんです。彼には白人のシンガーがブルーズを歌うときによくある「力み」や「がなり」がありません。「力み」や「がなり」を出しても黒っぽくなるわけではありません。そもそも黒っぽく歌おうとしても、それぞれその人種の声の特製があります。歌声は長く歌っているうちに鍛えられていく声がブルーズ・ヴォイスになるわけですから。あとは内面が心からブルーズを感じないと歌う歌はやはりブルーズにはならないです。それはすごく難しく、歌い続ける限りそのことは最も大切なことです。
次はブルーズ界の王様、B.B.キングの曲です。
3.Please Accept My Love/Gregg Allman

たぶん、オールマン・ブラザーズを好きな人たちはグレッグが歌う次のこの曲が大好きやと思います。南部のツアー・ロックバンドらしい、男臭いバンドらしい、オールマン・ブラザーズらしい曲です。
決して捕まらない真夜中のライダーという、拘束されない自由の象徴としてのミッドナイト・ライダーです。この歌のグレッグの声がたまらなくいいです。
4.Midnight Rider/The Allman Brothers
僕は何度かオールマン・ブラザーズバンドのコンサートに行きました。メンバー紹介以外にはMCは一度もなく3時間くらいぶっ通しで演奏することもありました。そのステージの構成、それぞれの演奏力、曲の素晴らしさ、メンバーの結束力、すべてのクォリティが高くて3時間はあっと言う間でした。そして、その中心にあったグレッグの声が生で聴く事が出来ないのは本当に残念です。グレッグ・オールマンの冥福を祈ります。