2017.08.04 ON AIR

軽快なグルーヴ、ソング・スター、ジェシ・フラーの素晴らしさ

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Frisco Bound/Jesse Fuller(ARHOOLIE CD360)

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左にある大きな楽器がフットデラ

ON AIR LIST
1.San Francisco Bay Blues/Jesse Fuller
2.Finger Twister/Jesse Fuller
3.Bill Bailey Won’t You Please Come Home/Jesse Fuller
4.Just A Closer Walk With Thee/Jesse Fuller
5.Preacher Lowdown/Jesse Fuller

ブルーズという音楽は自分が年を取るとともに同じブルーズというフィールドでも、昔はあまり聞かなかったブルーズを聴くようになるものです。
僕はロックからブルーズロックへそこからオーセンティックな黒人ブルーズへという経路でブルーズに入ったので、やはり若い頃はエレクトリックされたシカゴ・ブルーズやモダン・ブルーズやロッキン・ブルーズが好きでその過程で南部のカントリー・ブルーズ、そこから戦前ブルーズにハマり、しばらくするとジャンプ・ブルーズやジャズ・ブルーズも好きになり・・というブルーズの旅を歩んできました。もちろんそこからR&B、ソウル、ファンク、ゴスペルも熱心に聞いた時期もあります。でも、今日聴いてもらうようなフォーク・ブルーズ的なものをじっくり聴くようになったのはここ数年です。
今日はフォークブルーズシンガーとしてはもっと有名なひとり、ジェシ・フラーを聞いてみましょう。
まずは彼と言えばこの曲で知っている方もたくさんいると思います。
「サンフランシスコ湾から船に乗っていってしまった彼女が忘れられず想う曲で、彼女が行ってしまったので気が落ち込んで彼女のことばかり考えている。もし帰ってきてくれたらサンフランシスコ湾の海岸をふたりで歩くんだ」という内容です
1.San Francisco Bay Blues/Jesse Fuller

実はこのジェシ・フラーさんは数種類の楽器を同時に演奏します。
いまの曲でもブーブーとカズーを吹いていましたが、彼はいくつもの楽器を同時にひとりで演奏するいわゆるワンマンバンド・シンガーです。まず歌とギター、ハーモニカやカズーを吹く、右足でドラムのハイハットを踏み、右足でフットデラという自作の踏むベースを踏んでます。このフット・デラが意外と大きくて、これをどうやって運んでいたのか・・と気になるんですが・・。
曲もブルーズからラグ、スピリチュアル、バラード、フォークと非常に幅広い人で、そういうミュージシャンをソング・スターというのですが、彼は代表的なソング・スターです。
今日はアーフリー・レコードからリリースされている”FRISCO BOUND”というアルバムを聞いてます。
ジェシ・フラーは生まれたのが1896年頃でデビューが1955年ですから、デビューの時すでに60才です。
その60才デビュー時の録音を聞いてみましょう。インストルメンタルの曲です。
2.Finger Twister/Jesse Fuller
ワンマンバンド、ひとりきりとは思えない60才のグルーヴ感で素晴らしいです。
完全なダンス・ミュージックですね。若い頃はサーカスの一座に入ってアメリカ中を旅していたそうですが、たぶんそのサーカス暮らしの頃にいろんな音楽のテクニックを磨いたのだと思います。
気づいた方もいるかと思いますが、ギターは12弦ギターです。たぶんひとりで演奏するので音を厚くしたかったのではないでしょうか。
彼の鍛えられた歌声も乾いてていいです。
3.Bill Bailey Won’t You Please Come Home/Jesse Fuller

ワンマンバンドでひとりでいつくも楽器やってますが、ひとつひとつにしっかりしたテクニックがあります。僕の知合いでギター弾きながら足でバスドラムのようなものを踏んでちょっとワンマンバンド的なムード出す人がいてるんですが、足を踏むと急にギターのリズムがおかしくなるんでその踏むのやめてと言いたいんですが・・困ったものです。だからワンマンバンドは見た目面白いですが、実はとても難しいんですよ。HPにこのジェシ・フラーの演奏しているところの写真出しときます。見てください。
次の曲もグルーヴ感いっぱいのインスト曲なんですが、彼がパーティなんかで人気者やった理由が分かります。バンドやなくても踊れますからね。
4.Just A Closer Walk With Thee/Jesse Fuller
なんかいいですよね・・。アメリカの草原が浮かんできますよね。ピクニックなんかしている風景が・・。

1976年にカリフォルニアのオークランドで80才で亡くなったのですが、残された写真を見ると温厚に笑っているものが多くてきっといい人だったと思います。ジョージアで生まれてからアメリカ中をサーカスの一員として旅して、ロスでは映画のエキストラの仕事をしたり、パーティやストリートでも歌って、晩年はヨーロッパにもツアーに行った彼の人生はどんなんだったでしょう。
最後にほのぼのした曲を聞いてください。
5.Preacher Lowdown/Jesse Fuller

アルバムもたくさん出ているのでゲットしやすいジェシ・フラー、是非ご家庭に一枚。
今日は50年代から70年代まで活躍したソング・スター、ワンマンバンド、そしてフォーク・ブルーズシンガーのジェシ・フラーでした。