2017.08.11 ON AIR

私の永遠のアイドル T.Bone Walker

img01

T-Bone Walker/モダン・ブルース・ギターの父

T-Bone Walker/The Complete Imperial Recordings 1950-54

T-Bone Walker/The Complete Imperial Recordings 1950-54

img03

T-Bone Walker/T-Bone Blues

img04

T-Bone Walker/Funky Town

ON AIR LIST
1.Cold Cold Feeling/T.Bone Walker
2.T.Bone Shuffle/T.Bone Walker
3.Evenin/T.Bone Walker
4.Party Girl/T.Bone Walker
5.Mean Old World/T-Bone Walker

6月に僕のバンド、ブルーズ・ザ・ブッチャーの新しいアルバム”Rockin’ And Rollin'”をリリースしたことでインタビューを受けまして、その時にいちばん好きなブルーズマンは誰ですかと訊かれて困りました。はっきり言うといちばんはないです。誰かというより、僕はブルーズという音楽全体がすごく好きなんです。人によっては退屈なつまらない音楽かも知れないけど、また人によってはロックやソウル、ファンクのルーツや聴かなあかんと思っている人もいるかも知れないけど、僕はただ単にブルーズという音楽が好きなんです。だからブルーズが流行っても流行らなくても関係ないんですよ。
その中で誰が好きですかと訊かれたので、しばらくしてT.Bone Walkerと言ってしまったのですが・・・。
今回のブルーズ・ザ・ブッチャーのアルバムがテーマがテキサスということもあって名前が出たのかも知れません。

思い返してみれば1975年、もう40年以上前に僕にとっていちばん最初のバンド「ウエストロード・ブルーズバンド」で最初のアルバムを録音した時もT.ボーンのブルーズを歌いました。1952年にT.ボーンがレコーディングした曲なんですが、今日はまずそのT.ボーンの中でも僕が大好きな曲を。
「氷が心に張り付いたように僕の気持ちは冷たくなっている。いつも誰かと別れるときにはこんな気持ちになってしまう・・」
1.Cold Cold Feeling/T.Bone Walker
自分はその頃20代半ばで好きだった女の人と別れることも経験する年になってたと思います。
三番の歌詞の「オマエにひどい目に遭わされたけど、オレは変ってしまったんだ。昔はみえなかったもの今は見えるんだ。オレをバカにする奴は黙らせてやるから」というところが好きです。
There’s a change in me baby,
Once I was blind but now I see
I’m gonna put down everybody,
That ever made a fool of me.

ウエストロードの最初のアルバムでもう一曲T.Boneを取り上げてますから、やっぱりブルーズを好きになった最初にからかなりT.Boneが好きやったんでしょうね、自分は。
今度のは軽快なダンスナンバーでこの曲でシャッフルというリズムをバンドのメンバー全員で研究して練習しました。僕がこの世でいちばん好きなリズムです。
「君の髪を下ろして、楽しい事をしょうよ。気持ちいいことしょう。君が幸せでなかったらなんも面白いことなんてないよ」
2.T.Bone Shuffle/T.Bone Walker

最初のCold Cold Feelingは1950年代前半にT.ボーンがインペリアルというレコード会社と契約していた時代のもので、いまのT.Bone Shuffleは1942年のデビューから47年にかけてキャピトルレコード在籍中に残したものですが、この両方キャピトル、インペリアルのアルバムをまずゲットしてT.Boneの世界に入ってください。間違いないです!
一応40年代から50年代半ばが彼の全盛期やと言われてるんですが、50年代後半も”T-Bone Blues”といういいアルバムをアトランティックレコードに残しています。
いまから聞いてもらう曲を僕は何度か歌おうとしたのですが、この曲に関しては彼のような低い声が出ないとこの曲の雰囲気にならないとあきらめた曲です。
1957年の録音、アルバム”T-Bone Blues”から
3.Evenin/T.Bone Walker
いやーいい声ですね。こういう声出されるとちょっとかなわんですね。とにかく歌がめちゃいいです。歌わんと声だけでもええんですけどね。この歌声で若い頃は女性をメロメロにしてたと思います
と言うたあとに女性をテーマにした歌ですが、「パーティ・ガール、パーティ・ガール、オマエ夜家におらんで遊んでばっかいるみたいやけど体壊すぞ」と毎晩夜遊びしているヒップな彼女にちょっと嫉妬している歌ですね。
これは1969年の録音です。黒人音楽の主流はソウル、ファンクの時代なのでT.Boneに16ビートで昔の歌をセルフ・リメイクさせたのですが、見事にハマってます。そう、T.Boneはとても柔軟性のある人でギターソロなんかもフレイズは昔のままなのに16ビートに合わせていくんですよね。この曲は”FUNKY TOWN”というアルバムに入ってるんですが、アレンジも彼自身がしたそうで、こういう当時の新しいビートをオレは好きなんやとT.ボーンは言ってます。頭の柔らかい人だったと思います。リズムギターで参加している当時のウエストコーストのスタジオ・ミュージシャン、メル・ブラウンのリズム・カッティングがこれまたかっこいい。ドラムはこれも当時の売れっ子ポール・ハンフリー
4.Party Girl/T.Bone Walker
いやーかっこいい。
最後にもう一曲、この曲も大好きな曲で、T.Boneの最初のヒットで代表曲です。1942年。この歌詞は本当にブルーズらしく素晴らしい詩だと思います。
「ひとりで生きていかなければいけない辛くせちがない世の中、愛した女は他の男に惚れている。くよくよしたくないから酒を飲むのさ、泣きたくないから笑うのさ。本当の自分の気持ちをみんなに知られたくないのさ。いつの日かオレも土の中6フィートの墓にいるだろう。奴隷になったような気分にさせないでくれよ、ダーリン」
5.Mean Old World/T-Bone Walker

T.Boneはスーツをびしっと着て身なりがしっかりした洒落者でした。晩年、ガンで体弱った時、ステージで立っているのも大変で、共演したジョン・リー・フッカーが「T.ボーン、オレみたいにイスに座ってやればええやないか」と言ってもTボーンはスーツを着て最後まで立って歌ったそうです。音楽にもステージの振る舞いにも彼なりの美学があった偉大なブルーズマン、T-Bone Walkerは僕の永遠のアイドルです。