2026.05.08 ON AIR

チャック・ベリー生誕100年記念 vol.3

「もっと深くチャックを知ろう」

ON AIR LIST
1.Driftin`Blues/Chuck Berry
2.No Particular Place To Go/Chuck Berry
3.You Never Can Tell /Chuck Berry
4.Carol/Chuck Berry
5.No Money Down/Chuck Berry

特集、チャック・ベリー生誕100年記念の3回目最後ですが、「ロックンロールの王様」と呼ばれたチャック・ベリーは実はブルーズマンになりたくて、それもマディ・ウォーターズのバンドに入りたくてシカゴのチェス・レコードに来たのです。しかしオーディションをやってみたらマディが「どうもシカゴ・ブルーズっていう感じやないな、君は。まあチェスの社長に紹介したるわ」ということになったそうです。そうして最初の録音まで漕ぎ着けたのがデビュー・ヒットした「メイベリーン」あまりブルーズ色の濃くない、白人のカントリーを元にした曲でした。でも、それが大ヒット。そこから「ロックンロールの王様」と呼ばれるほどヒットを出すことになるのですが、「ブルーズマンになりたい。ブルーズを歌いたい」というチャックの気持ちはどうなったんだろうと気になるところですが・・・。
チャックのアルバムを聴いているとロックン・ロール曲の間にブルーズの曲が入っています。オリジナルもありますがカバーもあります。あまり話題にならないのはチャックのブルーズがヒットしなかったからです。でも本人はやってみたかったんでしょう。
聴いてもらうのは1960年、デビューして5年目”Rockin’At THe Hope”に収録されたチャールズ・ブラウンの名曲ブルーズです

1.Driftin`Blues/Chuck Berry

偉そうに言わせてもらうとまあ、悪くはないですが普通ですね。
それで55年から58年あたりの3年間はロックンロールのブームもありヒット曲を連発します。60年代になるとブームの少し退いて勢いは落ちましたが、新しくデビューしてきたビートルズやストーンズなどがチャックの曲をカバーしたことでヒット曲は出なくても話題にはなり、ライヴ・コンサートにも引っ張りだこでした。しかし・・62年の2月からチャックは一年半ほど刑務所に入ってました。これはほんまなのかと思いますが、14歳の女性を連れ回して売春を強要したという罪で逮捕され有罪になったのですが・・ちょっと信じがたいことですが・・。まあ若い10代の頃には窃盗で何年間かムショに入り、年取ってからは脱税でも入っていて計三回刑務所のお世話になってます。その2回目の刑務所にいた時に作った曲が次の曲。
出所してきた翌年リリース。アメリカで10位、イギリスで3位まで上がった曲。これも面白い歌詞ですが、多分知り合ったばかりの彼女と車でデートとなって彼女も肩に頭を載せてくるくらいいいムードになり、軽くキスしてさぁいよいよという時に彼女のシートベルトが外れないというなんとも無様な結果に終わった話です。そりゃギター・プレイもワイルドになりますわな。

2.No Particular Place To Go/Chuck Berry

なかなかアバンギャルドなギター・ソロですが音質もワイルドで三連符で攻めてくるフレイズもブルーズ・テイストがあって僕は好きです。
好きと言えばチャックの曲の中で格別好きなのが同じ64年にリリースされた”You Never Can Tell” これもアメリカでチャート14位、イギリスで23位とまだまだ意気軒昂なチャックです。
チャックは刑務所に入っている時に詩集を読んだり、会計学の勉強をしたり、新しい曲を作ったりと時間を有効に使っていたようで、出所するとすぐレコーディングしてます。
この曲は映画「パルプフィクション」で使われていたのでご存知の方もいると思います。映画の中ではジョン・トラペルトとユマ・サーマンがダンスコンテストで踊るときに流れる曲ですごく印象に残るシーンでした。この曲の歌詞はまだ若い2人が周りに色々言われたけど結婚して、結局うまく行ったという話でまあ「人生ってわからないよ」ということです。

3.You Never Can Tell /Chuck Berry

僕は中学生の頃からビートルズやローリング・ストーンズが好きで、でも彼らがチャック・ベリーの曲をカバーしていたことは知らずビートルズがカバーしていた”Rock And Roll Music”や”Roll Over Beethoven”そしてストーンズがカバーしていた”Memphis, Tennessee”や次の”Carol”を聞いてもチャック・ベリーを探そう、聞いてみたいとは思わなかったんですね。あの頃、オリジナルのチャックを聞いていたらまた自分の音楽人生も変わっていたかもしれません。では僕が中学2年かなストーンズがファースト・アルバムでカバーしているのをかっこいいと思って毎日聞いていたCarolのオリジナルです。

4.Carol/Chuck Berry

今のキャロルは映画「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」でイントロを弾いたストーンズのキース・リチャーズにチャックが何度もダメだししてやり直させるシーンがありました。ギターの弦のベンド・アップの感じがちょっと違うだけなのですが、キースはむくれてましたがチャックは気になったんでしょうね。チャックにとってはすごく大切なベンドのタイミングだったのでしょう。

最初マディ・ウォーターズのようなブルーズマンになりたくてシカゴのチェスレコードの門を叩いたチャック・ベリーでしたが、マディにもチェスの社長にも「君はブルーズに向いてないよ」と言われてしまいます。本人もしばらくして自分にはマディのようなディーブなブルーズ・フィーリングがないと気づいて、逆にその軽さがロックロールというダンスミュージックに身を結んだのだからすごいです。最後にそれでもやはり土台はブルーズということがわかるチャックのブルース曲です。
タイトルの”No Money Down”は「頭金なし」という意味で、ボロいフォードに乗っていたら”No Money Down”「頭金なし」という看板のカーショップを見つけて「よし、最新装備のキャデラックを買ってこのボロいフォードとはお別れだ」という歌です。

5.No Money Down/Chuck Berry

やっぱりいいです、チャック・ベリー。ロックロールの王様だけでなくなかなか奥深い音楽性を持ったミュージシャンなので聴くたびになんか発見があったりします。ぼくはブルーズ&ソウルレコーズという雑誌で連載エッセイ書いていて今回はチャック・ベリーのことを書いたのでそちらも読んでみてください。皆さんも一度、チャックの音楽と向き合って楽しんでください。生誕100年を迎えたチャック・ベリーの特集を三回続けてお送りしました。The R&R Is Alright!!!

2026.05.01 ON AIR

チャック・ベリー生誕100年記念 vol.2

「もっと深くチャックを知ろう」

ON AIR LIST
1.Rock And Roll Music/Chuck Berry
2.Roll Over Beethoven/Chuck Berry
3.Sweet Little Sixteen/Chuck Berry
4.School Days/Chuck Berry
5.Johnny B. Goode/Chuck Berry

チャック・ベリーは「ロックン・ロールの王様」と呼ばれるのに相応しい音楽を残したミュージシャンですが、何がすごいかというとまずソングライターとしての作詞作曲の能力、そしてギタープレイの独創性とそのテクニック、ステージ・パフォーマンスの素晴らしさが挙げられます。今日は「ロックン・ロールの王様」チャックのこれぞ「ロックン・ロール」という曲に焦点を当てようと思います。
まずはチャック・ベリーの2枚目のアルバム”One Dozen Berrys”から1957年リリースの”Rock And Roll Music”。ビートルズもカバーしたこの曲。「聞かせてくれよロックンロール・ミュージック」と始まる一番から各フレイズの語尾がMusic、Choose It,Lose It, Use It,と見事に言葉の韻を踏んでいます。そのあともMelody,SymphonyとかTracks,SaxとかJubilee,Jamboree,そして
Tango Mambo Congoと韻を踏んだ言葉が見事に続きます。この曲だけでなくチャックの歌詞を追いかけて読んでみると彼はかなり知的な人だと思います。とにかく語彙力の豊富さがとてつもないです。そして彼の軽やかなグルーヴのギターとそれを支えるバックの演奏能力の高さも聞いてください。Tang ,Mamboに入ったところのリズムの変化も見事です。
「モダンジャズとかマンボやタンゴやあかんのよ。R&Rやないとね。俺と踊りたかったらR&Rやないとねあかんよ」

1.Rock And Roll Music/Chuck Berry

僕は中学2年の時、1964年にリリースされたビートルズのアルバム”Beatles For Sale”でこの曲を初めて聞いて大好きな曲になったのですが、チャックのオリジナルを聴いたのは10年後の23,4才の頃でした。あとからこの曲を歌ったジョン・レノンがチャックの大ファンだということも知りましたがそのビートルズのカバーも素晴らしいです。
そしてこの曲ははっきりロックンロールと曲名、歌詞に出して結果的にロックンロールの始まりを宣言したような曲となりました。本当に名曲です。

次に選んだチャックのR&R名曲は今の曲の前の年1956年リリース
「ベートーベンをぶっとばせ」という邦題がありますが、Roll Overは転がすという意味ですが、「ベートーベンなんか転がしてどっかへやってしまえ!かっこいいのはリズム&ブルーズだ」みたいなことだと思います。そして、ここでもDJとプレイ、ヒューズとブルーズのように見事に韻を踏んでいます。やはりこの韻 を踏むところがより一層曲にグルーヴ感を出しています。そしてイントロのギターのスピード感の素晴らしさ。

2.Roll Over Beethoven/Chuck Berry

現在ロックン・ロールといえば普通8ビートで演奏することになっていますが、この曲でチャックのギターのリフは8ビートをカッティングしてるんが、後のメンバーはまだ2ビート・シャッフルな感じで演奏しています。この8ビートの導入で次第に全体が8ビートになっていったわけですが。これがチャックの革命的なところでもありロックンロールの誕生でもあります。

次はSweet Little Sixteenだから「素敵な16才」とでも訳すのか。R&R好きなおませな女の子がお化粧してハイヒール履いてちょっと大人ぶってR&Rを演奏しているクラブに行きたいとおとんに甘えてお願いして、おとんにおかんを説得してもらうという話。みんながこの素敵な16才と踊りたがってるというあたりが青春ですわ。これもバックの演奏が素晴らしい。ちなみにB.B.キングの曲にも”Sweet Sixteen”という曲がありますが、16才という年齢はアメリカでは日本より大人的な扱いなんだと思います。別にロリコンの歌ではない大人の入り口の歌です。1958年リリース、R&Bチャート一位、ポップチャート2位。

3.Sweet Little Sixteen/Chuck Berry

次の曲は”School Days”のタイトル通り学校生活を歌ったものです。朝起きたら学校へ行って一応一生懸命勉強、昼休みに食堂行って急いでメシ食って、3時になったら学校終わって近所のジュークジョイントでジュークボックスでロックンロール聴いて女の子と踊る。ロックンロール最高や。
こういうティーン・エイジの気持ちを歌ったことでチャックはたくさんのヒットを出したのですが、これも本当に10代の高校生あたりの気持ちにぴったりくるのがわかります。僕はお袋が作ってくれた弁当を午前中に授業中に隠れ食いして、昼は購買でパンと牛乳買って食べて校舎裏で悪い仲間とタバコ吸って、部活終わったら学校前のお好み焼き屋でまた食べて、部活ないときはジャズ喫茶かレコード屋に直行、最初から学校サボるときはジャズ喫茶と映画館に潜んでました。そんなMy School Daysでした。

4.School Days/Chuck Berry

歌とギターのオブリガードが呼応しているところも素晴らしいSchool Days
次はもう何も言うことがないほど有名な曲で映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で知っている人も多いと思います。ビートルズ、ビーチボーイズ始めカバーもたくさんあります。ルイジアナの田舎から出てきた少年がギターが上手くてやがて有名になるよと言う歌詞。イントロのギターはロックン・ロールの定番。そしてこれも見事に韻を踏んだ歌詞です。この曲をカバーするギタリストはたくさんいますが、イントロのギターを正しいフレイズでチャックのような軽やかなスピード感を持って弾いている人はほとんどいません。

5.Johnny B. Goode/Chuck Berry

チャックの曲の中では最も知られている曲だと思います。
とにかく、作詞作曲のすば抜けた能力、ギター・プレイの革新性とリズムの素晴らしさ、8ビートの導入でR&Rの基礎を作ったことなどとにかくいろんな意味で革命的なチャック・ベリーですが、彼のレコードをリリースしていたのはシカゴ・ブルーズの名門レーベル「チェス・レコード」でした。
僕はブルーズにハマってマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフがいるブルーズのレコード・レーベル「チェス」がチャック・ベリーもリリースしていたことがちょっと驚きでした。そしてチャックの録音のバックをマディの録音と同じベースのウィリー・ディクソンやドラムのフレッド・ビロウ、ギターのジミー・ロジャースたちがやっていたのも驚きでした。
故郷のセントルイスからマディのバンドに入ってブルースをやるのが夢でシカゴに来たのにブルースではなく、ロックン・ロールの王様になったチャックの話はまた来週。