2026.05.29 ON AIR

追悼:ジェイムズ・ギャドソン/In Memory Of James Gadson vol.1

ON AIR LIST
1.Use Me/Bill Withers
2.Lean On Me/Bill Withers
3.Love Land/The Watts 103rd Street Rhythm Band (vol.James Gadson)
4.Who Is He?(And What Is He To You?)/Bill Withers

親愛なるドラマーのジェイムズ・ギャドソンが4月2日に亡くなった。86歳だった。体調があまり良くないという話を聞いていたが、まさかそれほどひどいとは思わず最初その知らせをSNSで見たときもフェイク・ニュースではないかと疑った。
ジェイムズ・ギャドソンと言っても知らない方もいると思うので最初にざっと紹介すると、1939年ミスーリ州のカンザスシティ生まれでお父さんがドラマーだったそうだ。でも、最初はドラムをやらずに歌を歌いたくてドゥ・ワップのコーラス・グループを結成して歌っていたという。歌が本当に素晴らしくてレコーディングもしている。しばらくしてドラマーになるのだが彼は左利きなのに右利きのドラムしかなくそれですごく練習したと言っていた。20代半ばにLAに移住して本格的にプロのドラマーとして活動を始めるのだが、私が最初にギャドソンのドラムを意識したのは1973年にリリースされたビル・ウィザースの今や名盤中の名盤と呼ばれているライヴアルバム”Bill Withers Live At Carnegie Hall”だった。LPレコード二枚組のDisc1の1曲目に針を載せた途端始まるすごく気持ちのいいファンクのグルーヴに「何だ、これ」という衝撃を受けた。
それがジェイムズ・ギャドソンのドラムでその曲というのがこれ”Use Me”。

1.Use Me/Bill Withers

そしてもう一曲これもソウルの名曲
曲名の”Lean On Me”のLean Onというのは「寄りかかる」だから「ぼくに寄りかかってくれよ」「誰にも心の痛みや悲しみを感じるときがある。でも私たちが賢いならば必ず明日は来ることを知っている。だから君が弱っている時にはぼくに寄りかかってくれ。ぼくは君の友達になる。ぼくも誰かに寄りかかるときがある」

2.Lean On Me/Bill Withers

互いに助け合おうという静かなメッセージ・ソングでいつ聴いても胸が熱くなりそして穏やかな気持ちにさせてくれる曲です。
このライヴアルバムはドラムのジェイムズ・ギャドソンの他に、メルヴィン・ダンロップがベース、ピアノがレイ・ジャクソンそしてギターがバノース・ブラックマンそしてパーカッションにボビー・ホールというメンバーで本当に信頼しあったバンドという感じがサウンドから感じられます。
ぼくはこのアルバムにギャドソンにサインをもらったのですが、その時「ぼくにとって大好きなアルバムで大切なアルバムです」と言ったらギャドソンが「ぼくにとってもとても大切なアルバムだ」と言ってました。
この名盤はじめビル・ウィザースの重要なアルバムに参加する以前にギャドソンは”The Watts 103rd Street Rhythm Band”というグループに参加していました。そのグループはチャールズ・ライトというシンガーが作ったソウル・ファンク・グループでギターがのちにアース・ウィンド・ファイアで活躍するアル・マッケイ、ベースが先ほどのビル・ウィザースのバンドにも参加していたメルヴィン・ダンロップ、そしてキーボードも同じバンドにいたレイ・ジャクソン、それにギャドソンという強力な腕利きメンバーが集まったグループでした。そして、このバンドでギャドソンがヴォーカルそしてもちろんドラムも担当した曲がヒットしました。それがこの曲。

3.Love Land/The Watts 103rd Street Rhythm Band (vol.James Gadson)

「恋人たちが集まるラブ・ランド(愛の場所)にぼくを連れて行ってくれ。あなたと手を繋いで歩きたい。ぼくの愛は本当なんだ」という愛に溢れた歌は実際ギャドソンに会って彼を知るにつけて、この歌は彼のことなんだと思うようになりました。
このThe Watts 103rd Street Rhythm Band が67年から71年まで続き、そして翌年1972年にビル・ウィザースのアルバム”Still Bill”に参加します。同じThe Watts 103rd Street Rhythm Bandにいたベースのメルヴィン・ダンロップ、そしてキーボードのレイ・ジャクソンも参加することになります。
このあたりからギャドソンはすごく注目されるドラマーになりスタジオのセッション・ドラマーとして本当に信じられないくらい多くのレコーディングに参加します。
Still Billに収録されているビル・ウィザースの曲
「通りすがりの男が自分をじっと見てきたので、ふと一緒にいた彼女をみると彼女は目を反らせて下を向いた。彼はただの通りすがりの男ではないよね。あなたは彼を知っているよね。彼は誰なんだ。あなたにとって誰なんだ」という通りすがりの男に彼女との不倫を感じたという曲。
ギャドソンのドラムはめちゃクールです。

4.Who Is He?(And What Is He To You?)/Bill Withers

ドラムのジェイムズ・ギャドソン,メルヴィン・ダンロップがベース、ピアノがレイ・ジャクソン、ギターがバノース・ブラックマンそしてパーカッションにボビー・ホール、そしてヴォーカルのビル・ウィザースというこのメンバーはバンドだったと思います。セッションではなくビジネスでもなくビルを中心に想いを一つにしたバンドだったと思います。おそらくギャドソンの長いドラマー人生の中でも最も心を熱くして音楽に向かった時代ではなかったかと思います。
でも、この素晴らしいミュージシャン達の結びつきもディスコ・ブームによるレコード会社の意向などで他のミュージシャンを使わざるを得なくなり、しかも踊れる曲を作れという方針もあり、ビルは次第に嫌気がさし音楽業界から身を引いて引退してしまうことになりました。やはりこのメンバーでやりたかったのだろうと思います。今頃、天国でギャドソンはビルに会っていると思います。
来週もジェイムズ・ギャドソン特集

2026.05.22 ON AIR

B.B.Kingの初期録音SP盤をシングル盤6枚組ボックスでP-Vineレコードがリリース

B.B.King RPM Singles vol.2

ON AIR LIST
1.She’s A Mean Woman/B.B.King
2.Hard Working Woman/B.B. King
3.3 O’Clock Blues/B.B. King
4.That Ain’t The Way To Do It/B.B. King
5.Don’t You Want A Man Like Me/B.B.King

先週の続きでP-Vineレコードから4月8日にリリースされたB.B.キングの初期のSP盤をシングル盤にした6枚組ボックスセットから聞きます。
1950年(私が生まれた年ですが)からRPMレコードで録音を開始したB.B.ですが、なかなかヒットには届きません。でもRPMレコードは約2年に渡り6枚のシングルをリリースし続けたわけです。もちろんシングル一枚で終わっているブルーズマンもたくさんいる中、やはりB.B.には特別な才能を感じていたのでしょう。メンフィスあたりのB.B.のライヴの評判がいいことも知っていたのでしょう。
まず一曲。”She’s A Mean Woman”
ブルーズの歌詞によく出てくる”Mean”ですが、「意地が悪い」と言う意味ですがそこから「汚い」とか「卑しい」と言う意味もあります。まあいい言葉ではないですが、次の歌は”She’s A Mean Woman”で「意地の悪い女」「邪悪な女」と言う意味で「彼女は俺に優しくしてくれないし、いつも嫌なことばかりする。もう家を出て行こうかと思うよ。あいつは毎日遊びに行って夜まで帰ってこない」
歌のイントロからその憂鬱な感じを絶妙な感じで出しているさすがB.B.キングです。

1.She’s A Mean Woman/B.B.King

今の2分30秒ほどの歌でさえB.B.が傑出したブルーズシンガーであることがわかります。

今の”She’s A Mean Woman”のB面に入れられたのが次のジャンプ・ブルーズ風の”Hard Working Woman”
“Hard Working Woman”ですから「働き者の女」ということで、お金をたくさん稼いでくれる女かと思いきや夜どこかへ行ってしまったりするんですが、「俺の彼女なんや」と言っとります。
ちなみにレコーディング・メンバーのクレジットを見るとドラムにアール・フォレストと書いてあるのですが、このアール・フォレストというドラマーが50年代から60年代にかけてメンフィスを中心に活躍していて、B.B.だけでなくジュニア・パーカー、ボビー・ブランド、ジョニー・エースと名だたるシンガー達の録音に参加したドラム名人です。
先週ON AIRした曲同様にこの曲でもフィニアス・ニューボーンJrが素晴らしいブギウギ・ピアノを弾いています。

2.Hard Working Woman/B.B. King

まだ20代中頃のB.B.のパワフルな溌剌とした歌が素晴らしいです。
そしてとうとうRPMで録音を始めてから6枚目のシングル”3 O’Clock Blues”が全米で評判になります。R&Bチャートで5週間連続一位。 B.B.キング26才。ミシシッピーの田舎から出てきてやっとヒット曲を出すことができたB.B.は世界のB.B.キングになる第一歩を踏み出したわけです。
「夜中の3時になっても眠れない。彼女がどこへ行ったのか探してみたけど見つからないんだ。もう終わりだ」と彼女への不信と嫉妬を滲ませたリアルなブルーズ。ギターはまだT.ボーン・ウォーカーの影響がモロに聞けるし、決して流暢ではないところがまたいい。歌に込められた不安なそして切迫した気持ちが多くの人の心に入った。

3.3 O’Clock Blues/B.B. King

実はこの曲はロウエル・フルソンの曲のカバー。他にもロウエル・フルソンの曲をB.B.はカバーしていますが、B.B.はフルソンにソングライターとして最大の賛辞を送っています。
そのB面の曲を聴いてください。
次の曲はB.B.が大きな影響を受けたルイ・ジョーダンの「カルドルニア」のムードがありますが、バックのミュージシャンたとのタイトな演奏がやはりクオリティを上げています。このRPMというレコード会社に入ったことが本当にラッキーだったと思います。素晴らしいスタジオ・ミュージシャン達が揃っていて、まだまだ未熟な完成されていないB.B.をすごくうまくブッシュしている。

4.That Ain’t The Way To Do It/B.B. King

もう一曲聴きましょうか。次の曲はミディアム・テンポのシャッフル・ビートを練習するのに最適な曲。こういうゆったりしたでもステディなブレないビートを演奏するのは本当に難しい。

5.Don’t You Want A Man Like Me/B.B.King

前回と今回、二回続けてP-Vineレコードが去る4月8日にリリースしたB.B.Kingの初期録音、RPMレコード時代のSP盤をシングル盤にした6枚組ボックスセットからお送りしました。当たり前ですがシングル盤は片面に一曲ずつしか入ってません。でも、それは一曲ずつを丁寧に聴くことに繋がっています。ぼく個人としては音のレベルも高くて臨場感はデジタルで聴くものとはまた違っています。昔、50年代の人たちがどんな感じでB.B.キングのブルーズを聴いていたのだろうというのもわかるような気がします。「B.B.King The First Six RPM Singles Box」少しお値段張りますが、おすすめです。

2026.05.15 ON AIR

B.B.Kingの初期録音SP盤をシングル盤6枚組ボックスにしてP-Vineレコードがリリース

B.B.King RPM Singles vol.1

ON AIR LIST
1.Mistreated Woman/B.B.King
2.B.B.Boogie/B.B.King
3.She’s Dynamite/B.B.King
4.My Baby’s Gone/B.B.King
5.Walkin’And Cryin’/B.B.King

ブルーズの王様と呼ばれるB.B.キング初期のRPMレコード時代の録音から6枚の7インチ・シングルがボックスセットとしてP-Vineレコードから4月8日にリリースされた。もちろん私のようなレコード好きにはたまらないシングルのボックスセットだが、50年代のモダン・ブルーズの花を咲かせた偉大なB.B.Kingのその第一歩をシングル盤でリリースというのはブルーズの音源としても意味のあることだと思う。
B.B.がRPMレコードで録音を始めた1950年はLP盤やシングル盤以前のSP盤というのが使われていた時代で、今回P-Vineレコードはそれをシングル盤に録音してリリースしたわけだ。しかしどこかSPのムード漂っているのが面白い。
1950年当時B.B.キングは25才。やっとメンフィスあたりで人気が出始め、地元のラジオ局でDJの仕事もしていたB.B.にとって自分のレコードがリリースされ、ラジオから流れるというのは大きな喜びだったと思う。
まず一曲。このボックスセットの1枚目、RPMでの最初のシングル。1950年のリリース

1.Mistreated Woman/B.B.King

実はRPMレコードでのこの最初のシングルでB.B.はギターを弾いていない。現在に至るモダン・ブルース・ギターの王様がギターを弾いてなかったというのは驚きだ。しかしそれはB.Bがまず歌手として評価されていたということだ。つまりレコード会社はギタリストではなくシンガーとしてのB.B.を求めていたということ。ギターはカルヴィン・ニューボーンというギタリストでこの録音でピアノを弾いているフィニアス・ニューボーンの弟。この2人の兄弟はジャズ・ミュージシャンとして有名だけどスタジオ・ミュージシャンとしてこういう録音の仕事もしていたのだろう。2人とも実にいいバッキングをしている。
次の曲もギターはカルヴィン・ニューボーンだが、ちょっと彼のアルバムを探そうかなと思うくらいいいギタリストだ。

2.B.B. Boogie/B.B.King

B.B.の歌のスタイルはすでに出来上がっていて、メンフィスでボビー・ブランドやジュニア・パーカーと並んだ傑出したシンガーだったというのも納得。そして2コーラスにわたるフィニアス・ニューボーンのブギウギ・ピアノがいい。
元々こどものころから教会で歌っていたゴスペルに根ざしたしっかりした発声とメリスマ、ファルセットなどの唱法を駆使するテクニックにも恵まれたB.B.の歌はスケールが大きい。ギターよりも歌を買われたのはよくわかる。
もう一つ、B.B.はラジオのDJをやっていたことで当時の流行の音楽を耳にすることができた。それが彼の音楽的な蓄積になっていったことは間違いないだろう。デルタ・ブルーズからジャズ、カントリー、スタンダードまで彼の中には相当な量の音楽が積み重ねられていたと思う。次の曲も20年代から40年代までヒット・メイカーであり人気ブルーズマンだったタンパ・レッドの曲のカバーだ。

3.She’s Dynamite/B.B.King

バック・バンドの演奏のクオリティの高さも素晴らしいが、B.B. の気合が漲っている歌の力に圧倒される。ポップな要素もあり売れてもおかしくない録音だ。

次の曲は2年後にヒットした彼のスタンダード曲となる”Woke Up This Morning”の元曲。B.B.はこういう流行っていたラテンのリズムを取り入れることにも前向きな気持ちがあった。

4.My Baby’s Gone/B.B.King

今回のSP盤からのシングル盤化というのはひとつ惹かれることとして音の生々しさがある。もちろん音の良し悪しというのはいつも言ってますが、その人の感覚なのでSPだからシングルだから音がいいと言っているわけではありません。ただ、これらのシングルがSPでリリースされた当時のサウンドにより近い音で聴くことができるわけです。それをぼくは生々しい音と感じています。つまりスタジオで演奏している生の音に近いということです。もっと言うと目の前でB.B.が歌っている、演奏していると言う感じだ。
後年に録音された“Darling You Know I Love You”,”Please Except My Love”や”Guess Who”でもわかるようにB.B.は素晴らしいバラード・シンガーでもある。次の曲でもギターを弾かないB.B.の歌手としての魅力が溢れているバラードだ。

5.Walkin’And Cryin’/B.B.King

T.ボーン・ウォーカーやロウエル・フルソンの影響を受けていただけでなく、いろんなミュージシャン、いろんな曲からの影響を受けて模索していた40年代から50年代のB.B.キングがとうとうチャート一位の曲をリリースします。それはまた来週。

2026.05.08 ON AIR

チャック・ベリー生誕100年記念 vol.3

「もっと深くチャックを知ろう」

ON AIR LIST
1.Driftin`Blues/Chuck Berry
2.No Particular Place To Go/Chuck Berry
3.You Never Can Tell /Chuck Berry
4.Carol/Chuck Berry
5.No Money Down/Chuck Berry

特集、チャック・ベリー生誕100年記念の3回目最後ですが、「ロックンロールの王様」と呼ばれたチャック・ベリーは実はブルーズマンになりたくて、それもマディ・ウォーターズのバンドに入りたくてシカゴのチェス・レコードに来たのです。しかしオーディションをやってみたらマディが「どうもシカゴ・ブルーズっていう感じやないな、君は。まあチェスの社長に紹介したるわ」ということになったそうです。そうして最初の録音まで漕ぎ着けたのがデビュー・ヒットした「メイベリーン」あまりブルーズ色の濃くない、白人のカントリーを元にした曲でした。でも、それが大ヒット。そこから「ロックンロールの王様」と呼ばれるほどヒットを出すことになるのですが、「ブルーズマンになりたい。ブルーズを歌いたい」というチャックの気持ちはどうなったんだろうと気になるところですが・・・。
チャックのアルバムを聴いているとロックン・ロール曲の間にブルーズの曲が入っています。オリジナルもありますがカバーもあります。あまり話題にならないのはチャックのブルーズがヒットしなかったからです。でも本人はやってみたかったんでしょう。
聴いてもらうのは1960年、デビューして5年目”Rockin’At THe Hope”に収録されたチャールズ・ブラウンの名曲ブルーズです

1.Driftin`Blues/Chuck Berry

偉そうに言わせてもらうとまあ、悪くはないですが普通ですね。
それで55年から58年あたりの3年間はロックンロールのブームもありヒット曲を連発します。60年代になるとブームの少し退いて勢いは落ちましたが、新しくデビューしてきたビートルズやストーンズなどがチャックの曲をカバーしたことでヒット曲は出なくても話題にはなり、ライヴ・コンサートにも引っ張りだこでした。しかし・・62年の2月からチャックは一年半ほど刑務所に入ってました。これはほんまなのかと思いますが、14歳の女性を連れ回して売春を強要したという罪で逮捕され有罪になったのですが・・ちょっと信じがたいことですが・・。まあ若い10代の頃には窃盗で何年間かムショに入り、年取ってからは脱税でも入っていて計三回刑務所のお世話になってます。その2回目の刑務所にいた時に作った曲が次の曲。
出所してきた翌年リリース。アメリカで10位、イギリスで3位まで上がった曲。これも面白い歌詞ですが、多分知り合ったばかりの彼女と車でデートとなって彼女も肩に頭を載せてくるくらいいいムードになり、軽くキスしてさぁいよいよという時に彼女のシートベルトが外れないというなんとも無様な結果に終わった話です。そりゃギター・プレイもワイルドになりますわな。

2.No Particular Place To Go/Chuck Berry

なかなかアバンギャルドなギター・ソロですが音質もワイルドで三連符で攻めてくるフレイズもブルーズ・テイストがあって僕は好きです。
好きと言えばチャックの曲の中で格別好きなのが同じ64年にリリースされた”You Never Can Tell” これもアメリカでチャート14位、イギリスで23位とまだまだ意気軒昂なチャックです。
チャックは刑務所に入っている時に詩集を読んだり、会計学の勉強をしたり、新しい曲を作ったりと時間を有効に使っていたようで、出所するとすぐレコーディングしてます。
この曲は映画「パルプフィクション」で使われていたのでご存知の方もいると思います。映画の中ではジョン・トラペルトとユマ・サーマンがダンスコンテストで踊るときに流れる曲ですごく印象に残るシーンでした。この曲の歌詞はまだ若い2人が周りに色々言われたけど結婚して、結局うまく行ったという話でまあ「人生ってわからないよ」ということです。

3.You Never Can Tell /Chuck Berry

僕は中学生の頃からビートルズやローリング・ストーンズが好きで、でも彼らがチャック・ベリーの曲をカバーしていたことは知らずビートルズがカバーしていた”Rock And Roll Music”や”Roll Over Beethoven”そしてストーンズがカバーしていた”Memphis, Tennessee”や次の”Carol”を聞いてもチャック・ベリーを探そう、聞いてみたいとは思わなかったんですね。あの頃、オリジナルのチャックを聞いていたらまた自分の音楽人生も変わっていたかもしれません。では僕が中学2年かなストーンズがファースト・アルバムでカバーしているのをかっこいいと思って毎日聞いていたCarolのオリジナルです。

4.Carol/Chuck Berry

今のキャロルは映画「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」でイントロを弾いたストーンズのキース・リチャーズにチャックが何度もダメだししてやり直させるシーンがありました。ギターの弦のベンド・アップの感じがちょっと違うだけなのですが、キースはむくれてましたがチャックは気になったんでしょうね。チャックにとってはすごく大切なベンドのタイミングだったのでしょう。

最初マディ・ウォーターズのようなブルーズマンになりたくてシカゴのチェスレコードの門を叩いたチャック・ベリーでしたが、マディにもチェスの社長にも「君はブルーズに向いてないよ」と言われてしまいます。本人もしばらくして自分にはマディのようなディーブなブルーズ・フィーリングがないと気づいて、逆にその軽さがロックロールというダンスミュージックに身を結んだのだからすごいです。最後にそれでもやはり土台はブルーズということがわかるチャックのブルース曲です。
タイトルの”No Money Down”は「頭金なし」という意味で、ボロいフォードに乗っていたら”No Money Down”「頭金なし」という看板のカーショップを見つけて「よし、最新装備のキャデラックを買ってこのボロいフォードとはお別れだ」という歌です。

5.No Money Down/Chuck Berry

やっぱりいいです、チャック・ベリー。ロックロールの王様だけでなくなかなか奥深い音楽性を持ったミュージシャンなので聴くたびになんか発見があったりします。ぼくはブルーズ&ソウルレコーズという雑誌で連載エッセイ書いていて今回はチャック・ベリーのことを書いたのでそちらも読んでみてください。皆さんも一度、チャックの音楽と向き合って楽しんでください。生誕100年を迎えたチャック・ベリーの特集を三回続けてお送りしました。The R&R Is Alright!!!

2026.05.01 ON AIR

チャック・ベリー生誕100年記念 vol.2

「もっと深くチャックを知ろう」

ON AIR LIST
1.Rock And Roll Music/Chuck Berry
2.Roll Over Beethoven/Chuck Berry
3.Sweet Little Sixteen/Chuck Berry
4.School Days/Chuck Berry
5.Johnny B. Goode/Chuck Berry

チャック・ベリーは「ロックン・ロールの王様」と呼ばれるのに相応しい音楽を残したミュージシャンですが、何がすごいかというとまずソングライターとしての作詞作曲の能力、そしてギタープレイの独創性とそのテクニック、ステージ・パフォーマンスの素晴らしさが挙げられます。今日は「ロックン・ロールの王様」チャックのこれぞ「ロックン・ロール」という曲に焦点を当てようと思います。
まずはチャック・ベリーの2枚目のアルバム”One Dozen Berrys”から1957年リリースの”Rock And Roll Music”。ビートルズもカバーしたこの曲。「聞かせてくれよロックンロール・ミュージック」と始まる一番から各フレイズの語尾がMusic、Choose It,Lose It, Use It,と見事に言葉の韻を踏んでいます。そのあともMelody,SymphonyとかTracks,SaxとかJubilee,Jamboree,そして
Tango Mambo Congoと韻を踏んだ言葉が見事に続きます。この曲だけでなくチャックの歌詞を追いかけて読んでみると彼はかなり知的な人だと思います。とにかく語彙力の豊富さがとてつもないです。そして彼の軽やかなグルーヴのギターとそれを支えるバックの演奏能力の高さも聞いてください。Tang ,Mamboに入ったところのリズムの変化も見事です。
「モダンジャズとかマンボやタンゴやあかんのよ。R&Rやないとね。俺と踊りたかったらR&Rやないとねあかんよ」

1.Rock And Roll Music/Chuck Berry

僕は中学2年の時、1964年にリリースされたビートルズのアルバム”Beatles For Sale”でこの曲を初めて聞いて大好きな曲になったのですが、チャックのオリジナルを聴いたのは10年後の23,4才の頃でした。あとからこの曲を歌ったジョン・レノンがチャックの大ファンだということも知りましたがそのビートルズのカバーも素晴らしいです。
そしてこの曲ははっきりロックンロールと曲名、歌詞に出して結果的にロックンロールの始まりを宣言したような曲となりました。本当に名曲です。

次に選んだチャックのR&R名曲は今の曲の前の年1956年リリース
「ベートーベンをぶっとばせ」という邦題がありますが、Roll Overは転がすという意味ですが、「ベートーベンなんか転がしてどっかへやってしまえ!かっこいいのはリズム&ブルーズだ」みたいなことだと思います。そして、ここでもDJとプレイ、ヒューズとブルーズのように見事に韻を踏んでいます。やはりこの韻 を踏むところがより一層曲にグルーヴ感を出しています。そしてイントロのギターのスピード感の素晴らしさ。

2.Roll Over Beethoven/Chuck Berry

現在ロックン・ロールといえば普通8ビートで演奏することになっていますが、この曲でチャックのギターのリフは8ビートをカッティングしてるんが、後のメンバーはまだ2ビート・シャッフルな感じで演奏しています。この8ビートの導入で次第に全体が8ビートになっていったわけですが。これがチャックの革命的なところでもありロックンロールの誕生でもあります。

次はSweet Little Sixteenだから「素敵な16才」とでも訳すのか。R&R好きなおませな女の子がお化粧してハイヒール履いてちょっと大人ぶってR&Rを演奏しているクラブに行きたいとおとんに甘えてお願いして、おとんにおかんを説得してもらうという話。みんながこの素敵な16才と踊りたがってるというあたりが青春ですわ。これもバックの演奏が素晴らしい。ちなみにB.B.キングの曲にも”Sweet Sixteen”という曲がありますが、16才という年齢はアメリカでは日本より大人的な扱いなんだと思います。別にロリコンの歌ではない大人の入り口の歌です。1958年リリース、R&Bチャート一位、ポップチャート2位。

3.Sweet Little Sixteen/Chuck Berry

次の曲は”School Days”のタイトル通り学校生活を歌ったものです。朝起きたら学校へ行って一応一生懸命勉強、昼休みに食堂行って急いでメシ食って、3時になったら学校終わって近所のジュークジョイントでジュークボックスでロックンロール聴いて女の子と踊る。ロックンロール最高や。
こういうティーン・エイジの気持ちを歌ったことでチャックはたくさんのヒットを出したのですが、これも本当に10代の高校生あたりの気持ちにぴったりくるのがわかります。僕はお袋が作ってくれた弁当を午前中に授業中に隠れ食いして、昼は購買でパンと牛乳買って食べて校舎裏で悪い仲間とタバコ吸って、部活終わったら学校前のお好み焼き屋でまた食べて、部活ないときはジャズ喫茶かレコード屋に直行、最初から学校サボるときはジャズ喫茶と映画館に潜んでました。そんなMy School Daysでした。

4.School Days/Chuck Berry

歌とギターのオブリガードが呼応しているところも素晴らしいSchool Days
次はもう何も言うことがないほど有名な曲で映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で知っている人も多いと思います。ビートルズ、ビーチボーイズ始めカバーもたくさんあります。ルイジアナの田舎から出てきた少年がギターが上手くてやがて有名になるよと言う歌詞。イントロのギターはロックン・ロールの定番。そしてこれも見事に韻を踏んだ歌詞です。この曲をカバーするギタリストはたくさんいますが、イントロのギターを正しいフレイズでチャックのような軽やかなスピード感を持って弾いている人はほとんどいません。

5.Johnny B. Goode/Chuck Berry

チャックの曲の中では最も知られている曲だと思います。
とにかく、作詞作曲のすば抜けた能力、ギター・プレイの革新性とリズムの素晴らしさ、8ビートの導入でR&Rの基礎を作ったことなどとにかくいろんな意味で革命的なチャック・ベリーですが、彼のレコードをリリースしていたのはシカゴ・ブルーズの名門レーベル「チェス・レコード」でした。
僕はブルーズにハマってマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフがいるブルーズのレコード・レーベル「チェス」がチャック・ベリーもリリースしていたことがちょっと驚きでした。そしてチャックの録音のバックをマディの録音と同じベースのウィリー・ディクソンやドラムのフレッド・ビロウ、ギターのジミー・ロジャースたちがやっていたのも驚きでした。
故郷のセントルイスからマディのバンドに入ってブルースをやるのが夢でシカゴに来たのにブルースではなく、ロックン・ロールの王様になったチャックの話はまた来週。