追悼:ジェイムズ・ギャドソン/In Memory Of James Gadson vol.1

ON AIR LIST
1.Use Me/Bill Withers
2.Lean On Me/Bill Withers
3.Love Land/The Watts 103rd Street Rhythm Band (vol.James Gadson)
4.Who Is He?(And What Is He To You?)/Bill Withers
親愛なるドラマーのジェイムズ・ギャドソンが4月2日に亡くなった。86歳だった。体調があまり良くないという話を聞いていたが、まさかそれほどひどいとは思わず最初その知らせをSNSで見たときもフェイク・ニュースではないかと疑った。
ジェイムズ・ギャドソンと言っても知らない方もいると思うので最初にざっと紹介すると、1939年ミスーリ州のカンザスシティ生まれでお父さんがドラマーだったそうだ。でも、最初はドラムをやらずに歌を歌いたくてドゥ・ワップのコーラス・グループを結成して歌っていたという。歌が本当に素晴らしくてレコーディングもしている。しばらくしてドラマーになるのだが彼は左利きなのに右利きのドラムしかなくそれですごく練習したと言っていた。20代半ばにLAに移住して本格的にプロのドラマーとして活動を始めるのだが、私が最初にギャドソンのドラムを意識したのは1973年にリリースされたビル・ウィザースの今や名盤中の名盤と呼ばれているライヴアルバム”Bill Withers Live At Carnegie Hall”だった。LPレコード二枚組のDisc1の1曲目に針を載せた途端始まるすごく気持ちのいいファンクのグルーヴに「何だ、これ」という衝撃を受けた。
それがジェイムズ・ギャドソンのドラムでその曲というのがこれ”Use Me”。
1.Use Me/Bill Withers
そしてもう一曲これもソウルの名曲
曲名の”Lean On Me”のLean Onというのは「寄りかかる」だから「ぼくに寄りかかってくれよ」「誰にも心の痛みや悲しみを感じるときがある。でも私たちが賢いならば必ず明日は来ることを知っている。だから君が弱っている時にはぼくに寄りかかってくれ。ぼくは君の友達になる。ぼくも誰かに寄りかかるときがある」
2.Lean On Me/Bill Withers
互いに助け合おうという静かなメッセージ・ソングでいつ聴いても胸が熱くなりそして穏やかな気持ちにさせてくれる曲です。
このライヴアルバムはドラムのジェイムズ・ギャドソンの他に、メルヴィン・ダンロップがベース、ピアノがレイ・ジャクソンそしてギターがバノース・ブラックマンそしてパーカッションにボビー・ホールというメンバーで本当に信頼しあったバンドという感じがサウンドから感じられます。
ぼくはこのアルバムにギャドソンにサインをもらったのですが、その時「ぼくにとって大好きなアルバムで大切なアルバムです」と言ったらギャドソンが「ぼくにとってもとても大切なアルバムだ」と言ってました。
この名盤はじめビル・ウィザースの重要なアルバムに参加する以前にギャドソンは”The Watts 103rd Street Rhythm Band”というグループに参加していました。そのグループはチャールズ・ライトというシンガーが作ったソウル・ファンク・グループでギターがのちにアース・ウィンド・ファイアで活躍するアル・マッケイ、ベースが先ほどのビル・ウィザースのバンドにも参加していたメルヴィン・ダンロップ、そしてキーボードも同じバンドにいたレイ・ジャクソン、それにギャドソンという強力な腕利きメンバーが集まったグループでした。そして、このバンドでギャドソンがヴォーカルそしてもちろんドラムも担当した曲がヒットしました。それがこの曲。
3.Love Land/The Watts 103rd Street Rhythm Band (vol.James Gadson)
「恋人たちが集まるラブ・ランド(愛の場所)にぼくを連れて行ってくれ。あなたと手を繋いで歩きたい。ぼくの愛は本当なんだ」という愛に溢れた歌は実際ギャドソンに会って彼を知るにつけて、この歌は彼のことなんだと思うようになりました。
このThe Watts 103rd Street Rhythm Band が67年から71年まで続き、そして翌年1972年にビル・ウィザースのアルバム”Still Bill”に参加します。同じThe Watts 103rd Street Rhythm Bandにいたベースのメルヴィン・ダンロップ、そしてキーボードのレイ・ジャクソンも参加することになります。
このあたりからギャドソンはすごく注目されるドラマーになりスタジオのセッション・ドラマーとして本当に信じられないくらい多くのレコーディングに参加します。
Still Billに収録されているビル・ウィザースの曲
「通りすがりの男が自分をじっと見てきたので、ふと一緒にいた彼女をみると彼女は目を反らせて下を向いた。彼はただの通りすがりの男ではないよね。あなたは彼を知っているよね。彼は誰なんだ。あなたにとって誰なんだ」という通りすがりの男に彼女との不倫を感じたという曲。
ギャドソンのドラムはめちゃクールです。
4.Who Is He?(And What Is He To You?)/Bill Withers
ドラムのジェイムズ・ギャドソン,メルヴィン・ダンロップがベース、ピアノがレイ・ジャクソン、ギターがバノース・ブラックマンそしてパーカッションにボビー・ホール、そしてヴォーカルのビル・ウィザースというこのメンバーはバンドだったと思います。セッションではなくビジネスでもなくビルを中心に想いを一つにしたバンドだったと思います。おそらくギャドソンの長いドラマー人生の中でも最も心を熱くして音楽に向かった時代ではなかったかと思います。
でも、この素晴らしいミュージシャン達の結びつきもディスコ・ブームによるレコード会社の意向などで他のミュージシャンを使わざるを得なくなり、しかも踊れる曲を作れという方針もあり、ビルは次第に嫌気がさし音楽業界から身を引いて引退してしまうことになりました。やはりこのメンバーでやりたかったのだろうと思います。今頃、天国でギャドソンはビルに会っていると思います。
来週もジェイムズ・ギャドソン特集