追悼:ドン・ブライアントVo.2
誠実なソウル・シンガー&ソングライターが最後に残した歌
Don’t Give Up On Love/Don Bryant (Fat Possum FP1607-2)

You Make Me Feel/Don Bryant (Fat Possum FP1747-2)

The Best Of Ann Peebles The Hi Records Years(Hi-7243-8-52659-2-1)

ON AIR LIST
1.A Nickel And A Nail/Don Bryant
2.How Do I Get There?/Don Bryant
3.I Die A Little Each Day/Don Bryant
4.Woman’s Touch/Don Bryant
5..A Love Vibration/Ann Peebles
昨年12月に83歳で天国に行ってしまった名ソウル・シンガーであり、素晴らしいソング・ライターでもあったドン・ブライアントの追悼の2回目。
前回話したように60年代半ばからシンガーとしてデビューしたもののドンはヒットに恵まれず、70年代に入るとシンガーを辞めて所属の「ハイ・レコード」のソングライターそしてスタッフとして活動していました。その頃彼はアン・ピーブルズという美しく、個性的なシンガーと出会います。2人は結婚してドンはソングライターとして前回ON AIRしたアンの”I Can’t Stand The Rain”などヒットを作りました。すっかり裏方に回りもう歌っていないのかと思っていたのですが、79年に日本のちょっとしたサザン・ソウル・ブルームの最中に2人とシル・ジョンソンの三人で来日公演を行いました。コンサートは悪くはなかったのですがドン・ブライアントは少ししか歌わなくてそれも僕が好きなバラード系はなかったと思います。
それからまたドンのアルバムやライヴ活動の話は伝わってこなくなり、奥さんのアンのマネージメントをやっているとか聞きました。
しばらくするとアンが病気になり彼女もライヴはあまりしなくなり2人のことを心配していたのですが、2016年にドンが突如来日公演をして見事なサザン・ソウルを聞かせてくれました。74歳でした。そして翌2017年にはドン・ブライアントのニューアルバムが”Don’t Give Up On Love”が発表されました。その一曲目が同じメンフィスの名シンガー、O.V.ライトが歌ったこの曲でした。
1.A Nickel And A Nail/Don Bryant
素晴らしい。やはり筋金入りのサザン・ソウル・シンガーです。全く衰えていないどころかとてもパワフルで素晴らしいアルバムを作ってくれました。
75歳とは思えない
教会ではずっと歌っていたらしいですが、どうも奥さんのアン・ピーブルズが歌うことやアルバムを出すことを勧めたらしいです。
その中に収録されている次の曲は教会で歌い続けていた彼らしいオリジナル曲
「どうやったらそこに行くことができるんだ?」という曲名ですが、そのThereは多分天国のことだと思います。「死ぬことのない場所、歩けない人が歩けるようになるという、そして目の見えない人が見えるようになるという、口の聞けない人が喋れるようになるという、耳の不自由な人が聞こえるようになるというその場所、悲しみのない喜びと平和と愛があるというその場所に行くにはどうしたらいいんだ」
2.How Do I Get There?/Don Bryant
そしてこのアルバムがリリースされた四年後2020年に”You Make Me Feel”というアルバムをドンはリリースします。それが最後のアルバムとなったのですが、そのアルバムにオーティス・クレイが歌っていたこの曲が入ってました。これもドンが作った曲だったんです。
「列車が駅を出て行ってから私の人生は下がって行くばかり。君は私の生きる気持ちを奪ってしまった。俺は毎日少しずつ死んでいく」
3.I Die A Little Each Day/Don Bryant
この”You Make Me Feel”というアルバムも前の”Don’t Give Up On Love”も録音ミュージシャンにドラムのハワード・グライムス、キーボードのアーチー・ターナー、そしてオルガンにチャールズ・ホッジズという昔のハイレコードのメンバーが参加しています。そういう昔のメンバーがいることもドンの歌の支えになったと思います。もう一曲このアルバムから。「花も草もない庭のように感じる。家だけど家庭ではない。メロディのない歌のようでいつも1人でいる男のようだ。オレに何が必要なものは女性とのふれあいだ」
4.Woman’s Touch/Don Bryant
最後に70年代初めにドンとアン2人で書いた曲でぼくが大好きな曲を聴きます。曲名が”A Love Vibration”ですから「愛の振動」「愛の波動」ですか。
「涙を流す必要はない。泣くにはもう遅すぎたのよ。愛の波動はもう通り過ぎてしまった。あの気持ち、幸せな気持ちにしてくれたのは覚えている。もしまたあの気持ちが湧いてきたらもう2度とは逃さない。愛の波動を見逃してしまったから」いい曲です。
5.A Love Vibration/Ann Peebles
60年代にデビューしたサザン・ソウル・シンガーはたくさんいます。ヒット曲があり、白人のイベントにも出演し有名になり、でも若くして飛行機事故で亡くなったオーティス・レディングだけでなく、エディ・フロイド、O.V.ライト、スベンサー・ウィギンス、ジェイムズ・カー・・・本当にたくさんいます。ドン・ブライアントもその1人でした。売れるか売れないかというのは紙一重のタイミングでそのシンガーの実力とは関係ないです。だから自分で探してみてください。自分のタイプのサザン・ソウル・シンガーがきっといると思います。今日はぼくの大好きなドン・ブライアントそして彼の奥さんのアン・ピーブルズを聴きました。
83歳まで頑張ったドン・ブライアントの冥福を祈ります。病気を持っている奥さんのアン・ピーブルズは大丈夫かなと心配です。