2026.07.31 ON AIR

ロバート・ジョンソンが憧れた強靭なブルーズを聴かせたサン・ハウス

ON AIR LIST
1.My Black Mama Part 1/Son House
2.Death Letter Blues/Son House
3.Dry Spell Blues Part 1/Son House
4.Preachin’ Blues/Son House

ロバート・ジョンソンは故郷ミシシッピ・デルタのブルーズだけでなくいろんな音楽の影響を受け、それをうまく自分の曲に取り入れてましたが、ジョンソンがブルーズマンとして強い影響を受けたのがデルタ・ブルーズの第一人者、サン・ハウス(Edward James House Jr.)。年齢的には約10才ほどサン・ハウスが年上で最初はギターも下手だったジョンソンを相手にもしなかったらしい。ではロバート・ジョンソンはどんな影響をサン・ハウスから受けたのでしょうか。
サン・ハウスは20才半ばまで教会の牧師であり説教師でもあったので世俗のブルーズを嫌っていました。しかし、デルタ地帯の人気ブルーズマンだったチャーリー・パットンなどを見ていると女性にもモテて、金も稼げるということもあり次第にブルーズを歌うようになりました。すると溢れ出る感情を隠さずパワフルに歌うゴスペル譲りの彼の歌唱は、何かに取り憑かれたようでもありそれが多くの人を引きつけました。ロバート・ジョンソンもその1人だったと思います。
当時はブルーズは世俗の悪魔の音楽と呼ぶ人も多く、聖なる音楽のゴスペルやスピリチュアルズなど教会の音楽とは相反すると考える人も多くいました。その聖なる音楽から世俗の音楽ブルーズへの転向にはサン・ハウスも心中複雑なものがあったようです。しかし、彼も生身の人間で周りからチヤホヤされて女性にもモテてお金も入ってくると止めらなくなったわけです。
1930年サン・ハウスの初レコーディング。7番まである歌詞にはそれぞれあまり繋がりがなく整合性がないのだけど、自分の女の自慢みたいな歌で始まります。しかし途中から天国も地獄も死んだらどこへ行くのか誰も教えちゃくれない。神様、私の邪悪な魂にお慈悲を・・と懺悔するような歌詞になっていきます。

1.My Black Mama Part 1/Son House

久しぶりに聴きましたがギターのビートが素晴らしいです。
正式な名前はエディ・サン・ハウス、この時28才。ブルーズを歌い始めてまだ四年ぐらいだったと言います。もうひとりギターが入ってますが名前はウィリー・ブラウン。
まさにミシシッピ・デルタ・ブルーズの黎明期。普段は綿花畑の農場で働いている黒人たちのブルーズをレコードにして売るという商売が始まって5年くらいしか経っていなかった時代です。
サン・ハウスの前年にブルーズを録音して売れていたのがチャーリー・パットン。サン・ハウスをレコーディングに誘ったのはそのチャーリー・パットン。ここにチャーリー・パットンからサン・ハウスへそしてロバート・ジョンソンへという流れを知ることができます。
次は「死の手紙」です。愛する女が亡くなったという手紙を受け取りすぐに彼女のいるところに駆けつけるが、彼女はもう冷たい台の上に横たわっていたというブルーズをハウスは30年代とほとんど変わらないパワーと気迫で歌っている。

2.Death Letter Blues/Son House

1930年のレコーディングでサン・ハウスは売れた訳ではなかったが地元のミシシッピ州あたりで人気者でした。しかし、1943年、13年後に彼は音楽を辞めて引退しにニューヨーク州のロチェスターに移り住んでしまい、それから消息不明となりました。50年代に入り黒人たちが聴く音楽がどんどん変わっていき彼も稼げなくなったのでしょう。しかし60年代初めの白人のフォーク・ブルーズのリバイバル・ブームで行方不明になっていた昔のブルーズマンの消息を探す作業が始まりました。そしてサン・ハウスは1964年に白人ブルーズバンド「キャンドヒード」のメンバー、アラン・ウィルソンによって発見され再び音楽の世界に戻ってくることになりました。

3.Dry Spell Blues Part 1/Son House

64年に再発見されて以降も衰えたという感じはなく、彼はいろんなコンサートに呼ばれ、ライヴが増えていきました。現在You Tubeで探すと60年代の映像があるので観てもらいたいです。そして70年代半ば体調が悪くなるまでライヴ活動を続けましたが88年こう頭ガンで亡くなってしまいます。
若い頃は信心深く教会で神父として働いていたこともあったが、酒好き女好きな一面もあり神父という聖職が身につかなかった。そんなとき飲み仲間のボトルネックを使ったスライドギターのブルーズを聴き一気にブルーズへ傾倒して行った。
聖なる気持ちと俗な気持ちの心の中の葛藤というのがわかるような気がします。それは誰でも持っている気持ちではないでしょうか。
そんなサン・ハウスだからこそ生まれたブルーズが次の「ブルーズを説教する」というタイトルの曲。

4.Preachin’ Blues/Son House

ロバート・ジョンソンが衝撃を受けた若き日のサン・ハウスの歌とギターはもっと激しく、グルーヴしていたのだと思います。しかし、いまの歌を聴いてもやはり何かに取り憑かれたような高いテンションによる溢れ出る感情を感じます。
一度は真正面からサン・ハウスを聴いてもらいたいです。