ニューオリンズ・ピアノの王様、異才ジェイムズ・ブッカー vol.1


ON AIR LIST
1.Gonzo/James Booker
2.Sweet Thing/Freddy King (James Booker p)
3.Black Minute Walts/James Booker
4.On The Sunny Side Of The Street/James Booker
5.Junco Partner/James Booker
5月の終わりから公開された偉大なピアニスト、ジェイムズ・ブッカーの生涯を描いたドキュメンタリー映画『Bayou Maharajah(原題)/愛すべきピアノジャンキー』をご覧になった方もいると思います。
映画で初めて彼のことを知った人もも多いかと思います。彼は大きなヒット曲があるわけでもなく1983年に43才の若さで亡くなってしまったのでニューオリンズの音楽を格別好きな人たちには知られた存在でしたが、ポピュラリティのあるミュージシャンではありませんでした。
私もファッツ・ドミノとかプロフェッサー・ロングヘア、アレン・トゥーサン、ドクター・ジョンなどのニューオリンズのピアニストは知ってましたが、ジェイムズ・ブッカーの音楽に出会ったのは80年代終わりあたりから自分の中でニューオリンズの音楽に急に興味が出てからです。
ジェイムズ・ブッカーは1939年にニューオリンズ生まれ。お父さんは牧師さん。
それで教会にあるオルガンに興味を持ち弾くようになり、リトル・ブッカーと呼ばれ11才でゴスペル専門のラジオ局で自分の番組を持ったほど才能に恵まれた子供だったようです。
その才能に気づいたひとりがニューオリンズのトランペッターでありバンド・リーダーでありプロデューサーでもあったデイヴ・バーソロミュー。
彼がブッカーを15才で初レコーディングさせました。そしてブッカーはこの頃からファッツ・ドミノなどの録音でスタジオ・ミュージシャンとしても活動し始めました。
音楽的にすごく早熟でその才能も傑出していたのだと思います。
20才頃まで順調に活動して22才の時1960年ピーコック・レコードからシングルでリリースされた”Gonzo”がR&Bチャート3位にランクイン。
1.Gonzo/James Booker
これがローカル・ヒットして少し名も知れたブッカーはシングルを三枚リリースしましたがその後はヒットはなし。しかし、そのピアノの腕前は音楽業界で評判になりアレサ・フランクリン、T.ボーン・ウォーカー、リンゴ・スターなどいろんなミュージシャンの録音に参加する腕利きのスタジオ・ミュージシャンになっていきました。
1969年に参加したフレディ・キングの”Freddie King Is A Blues Master”にも参加してまして、そこから一曲
ギター・インストの曲なのになぜかピアノもフィーチャーされているブッカーのビアノです。このアルバムを初めて聴いた1970年頃は僕は彼の凄さは全くわかっいなかったです。
2.Sweet Thing/Freddy King (James Booker p)
60年代の中頃からブッカーのドラッグの常習が始まり、1970年にヘロインの所持で逮捕されます。ドクター・ジョンの自伝でもネヴィル・ブラザーズの評伝でも当時のニューオリンズの多くのミュージシャンがドラッグを日常的に使用していたことが書かれています。
ジェイムズ・ブッカーはゲイでもありジャンキー(ドラッグ常習者)でもあり複雑な心の持ち主だったと思います。
ただこの映画の邦題でも「愛すべきピアノジャンキー」とジャンキーという言葉を使ってますが、僕はあまり好きではなく原題の”Bayou Maharaja”(バイユーはニューオリンズの湿地帯のことでマハラジャはインドの王様のことですが、ここでは(ニューオリンズのピアノの王様)という意味でしょう)の方がいいと思います。彼がゲイであったことやジャンキーであったことが大切なことではなく、大切なのは彼のピアノ・プレイ、彼の音楽性です。
ジェイムズ・ブッカーのソロ・アルバムを聴いたのは1976年録音の”Junco Partner”というアルバムでした。今もよく聴くアルバムですが、その1曲目がこの曲でした。
3.Black Minute Walts/James Booker
ニューオリンズ・ピアノが聴けると思ったら一曲目に流れて来たのがお聞きの不思議なクラシック調の曲でした。どこかで聴いたことがあると思ったら原曲はショパンの有名な「子犬のワルツ」でした。
ショパンの原曲タイトルは「マイニュート・ワルツ」ですが、ブッカーはそこにBlackをつけて「ブラック・マイニュート・ワルツ」というタイトルにしました。「黒い子犬のワルツ」です。一曲目にこれが出て来て驚きましたが、聴いているうちにピアノを弾けない私でもわかるとんでもないテクニックを駆使した演奏だとわかりました。
とにかくこのアルバムを聴く進むに連れてブッカーがこんなすごいピアニストだったんだと驚きました。もちろん次のようなニューオリンズ・テイストのお馴染みのナンバーも収録されているのですが、何か他のピアニストとは違う濃厚なフィーリングを感じました。
4.On The Sunny Side Of The Street/James Booker
次はアルバム・タイトル曲です。ジャンコ・パートナーですからジャンコはジャンキーつまり麻薬常習者。パートナーは仲間ですから麻薬常習者の仲間。まあその仲間が向こうからやってくる。本人が本人のことを歌っているような曲ですが、酒も飲んでいろんな麻薬もやっているどうしょうもないやつの歌です。
そのどうしょうもないものがブッカーの中に彼自身も持て余すような深くて大きな感情となってあったような気がします。
5.Junco Partner/James Booker
いろいろと問題のある人だったと思いますが、映画の中ではそのピアノ・ブレイを音楽的に説明して絶賛していたハリー・コニックJr.のシーンが的を得て素晴らしかった。彼はブッカーにピアノを教えてもらっていたミュージシャンです。もし、この映画「愛すべきピアノジャンキー」を機会があればぜひ逃さないで観てください。いい映画でした。
来週はもうすこし深くジェイムズ・ブッカーを聴きます。