2022.05.20 ON AIR

DO THE BLUES 45s! vol.3/The Ultimate Blues 45s Collection (THINK!Records THCD 593)

ON AIR LIST
1.Oops/Bill Dogged And His Combo
2.Chicken Shake/Clarence “Gatemouth” Brown
3.I Got My Eyes On You (Watching Everything You Do)/ Smokey Smothers
4.Hotel Blues/Eddie Boyd
5.Sunny Side Of Love / Raful Neal

去年の12月にリリースされた全くマニアックなでもすごく面白いブルーズのアルバムで”DO THE BLUES 45s! vol.3”というのを今日は紹介します。
Vol.3ということで前のVol.1も2も僕はゲットしているのですが、今回もなかなか聞けないいわゆる7インチシングルレコードでリリースされたものが収録されています。このアルバムをディストリビュートしているのがぼくもよく通っているディスク・ユニオンというレコード店で、このレコード店の以前あった新宿店のソウル・ブルーズ館に秋元さんという方がいてぼくもよくお世話になりました。この秋元さんが自分で持っているシングルレコードをコンピレーションしたのがこの”DO THE BLUES 45s! ”のシリーズでこれで三枚目になります。
収録されているのは僕もほとんど知らない曲ばかりです。今回はインストルメンタルが多いのですが、まず一曲目。
いろんなブルーズマンがカバーしている1956年に大ヒットした”Honky Tonk”というインストの曲がありまして、オリジナルはビル・ドゲットというオルガン・プレイヤーなのですが、このドゲットさんのアルバムがめちゃたくさん出てまして中古店に行くと必ずあります。あまりたくさんありすぎてみんな何がいいのか分からなくてみんな買わないという・・またオルガンというのがミソでアメリカではオルガンはポピュラーな楽器なのですが日本ではあまり馴染みがないんですね。曲名がOops(ウープス)「おっとっと!」「おっと」「やってしもたわ」という意味。

1.Oops/Bill Dogged And His Combo

めちゃ早いテンポで、ファンキーな曲でしたが、ドラムはだれなんでしようか?めちゃステディなビートでドラムかっこいいです。
次の曲もドラムがステディでカッコいいゲイトマウス・ブラウンの曲です。ゲイトマウス・ブラウンと聞いて「おっ、アグレシッヴなかっこいいギターが聞けるかな」と思いきや、ゲイトマウスはハーモニカを吹いてます。でも、このハーモニカがテクニックがあるわけではないのですがかっこいいんですよ。

2.Chicken Shake/Clarence “Gatemouth” Brown

次の曲はブッカーT&MG’sの「グリーン・オニオン」のパクリみたいなんですが、ヘヴィなベースの音とジャリジャリしたギターの音がずっと同じパターンをやり続けるカッコ良さで押し切ったような曲で僕はこういう演奏が好きです。ギターのスモーキー・スマザーズのシングルですが、ギターがどうのこうのというより全体の演奏のカッコよさだと思います。

3.I Got My Eyes On You (Watching Everything You Do)/ Smokey Smothers

こういうブルーズのインスト曲というのはパーティ会場でダンス・タイムによく流れたんだと思いますが、今もこういう曲をクラブの音響システムででかい音で聞くとちょっと別世界に行けます。
このアルバムにはもちろん歌ものも入っているので一曲聞いてみましょう。
曲名がなんかめっちゃ安い感じで「ホテル・ブルーズ」です。「ホテル」という不倫を歌った歌謡曲を思い出しますが・・。
バックのギターは名人ロバート・Jr.ロックウッドが弾いていて解説を書いている秋元さんはロックウッドのギターがいいと書いてますが、エディ・ボイドの歌に何も触れてません。でも、僕はこのエルモア・ジェイムズを彷彿とさせるような歌がめちゃいいと思います。ちなみにエディ・ボイドはブルーズの名作”Five Long Years”を作って歌った人です。

4.Hotel Blues/Eddie Boyd

シングル・レコードの音というのはLPよりも音圧が高くて臨場感がすごくあります。その音の違いがLPに収録されたものとは全く違うこともあります。僕もいろいろ持ってますが、ハマるとちょっとやみつきなり中にはかなり高額でレアなものもあるのであまり手を出さないようにしてます。

最後はレイフル・ニールというハーモニカ・プレイヤーの曲。息子がケニー・ニールというブルーズマンで知っている方もいると思います。レイフル・ニールさんは国際ハーモニカ・フェスティバルで来日してますが、ぼくは残念ながら見ていません。聞いてもらう曲はユルさを感じさせるルイジアナ・テイストが入った曲。解説で秋元さんも書かれてますが、アイボリー・ジョー・ハンターが大ヒットさせた”Sice I Met You Baby”のパターンを使った曲。歌もダウンホームでいいなぁと思います。

5.Sunny Side Of Love / Raful Neal

レコードのシングル盤の音圧とか音の迫力がCDになって、こうしてネットを通して聞いてもらって果たしてどのくらいその迫力が伝わっているか不安ですが・・・。でも、なんかファンキーないい曲が多くて元気出ます。朝に体にエンジンがかからない時に聞くと調子が出るかもしれません。
ということで今日はディスクユニオンの社員である秋元さんが自分が集めたシングルレコードをコンピレーションしたブルーズ・アルバム”DO THE BLUES 45s! vol.3”を聞きました。楽しいアルバムです。

2022.05.13 ON AIR

祝!ジョン・バティースト・グラミー5部門獲得!

WE ARE / Jon Batiste (Verve UCCV-1190)
ソウルフル・ワールド・オリジナル・サウンドトラック
(Walt Disney Records/PIXAR UWCD-1096)
CHRONOLOGY OF A DREAM/Live At The Village Vanguard (Verve Records 0006025982906405)

ON AIR LIST
1.Freedom / Jon Batiste
2.Cry / Jon Batiste
3.I Need You / Jon Batiste
4.It’s Alright /Jon Batiste
5.Higher /Jon Batiste

今年は久しぶりにグラミー賞を誰が獲得するのか熱が入りました。主要四部門の二つは大人気のシルク・ソニックが獲得し、最優秀アメリカーナ・アルバムでも大好きなロス・ロボスが獲得、残念ながら応援していたニューオリンズのマルディグラ・インディアンのビッグ・チーフ、モンク・ブドローは獲得を逃しましたが、この番組でも強く推していた同じニューオリンズ出身のジョン・バティーストが、5部門でグラミーを獲得しました。その5部門はアルバム・オブ・ザ・イヤー『ウィー・アー』、最優秀ミュージック・ビデオ「Freedom」、最優秀アメリカン・ルーツ・パフォーマンス「Cry」、最優秀アメリカン・ルーツ・ソング「Cry」、最優秀サウンドトラック・アルバム作曲賞映画、テレビ、その他映像部門『ソウルフル・ワールド
素晴らしいです。
今回驚いたのは日本の音楽関係者特に音楽ライターの人たちがあまりジョン・バディーストに興味を持っていなかったことです。アメリカでは有名テレビ番組のハウスバンドのバンドマスターだったり、音楽デイレクターもやり、もちろん自分のライヴもアルバム制作もコンスタントにやり、今までもたくさん賞にも輝き、ブラック・ライヴズ・マターの運動が始まった時には自ら先頭に立ってデモ行進したり、いろんな意味でアメリカでは現在最も注目されているミュージシャンです。
今日はグラミー獲得のお祝いとしてそしてもっと彼を知ってもらうためにジョンをON AIRします。
まずは「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を獲得した「WE ARE」から、この曲は最優秀ミュージック・ビデオ賞も獲得しました。

1.Freedom / Jon Batiste

グラミーの授賞式のスピーチで彼はこう言ってます。「僕は子どもの頃から音楽が大好きで、神に感謝しながらプレイし続けてきた。エンタテインメントというよりは、僕にとってはスピリチュアルなものなんだ。僕の祖父や甥っ子、父、プロデューサーのライアン・リン、、、たくさんの人たちでこのアルバムは作り上げられた。このカテゴリーにノミネートされた全てのアーティストを僕は愛しているし、誇りに思う。この賞は真のアーティストのためのものだと思う。これを続けていこう、そして僕たちが僕たち自身であることを大切にしよう。」
最後の「僕たちが僕たち自身であることを大切にしよう」というのは人種差別や性差別への反対、そして暴力への反対を打ち出して音楽活動と社会運動をやってきたジョンの強いメッセージだと思います。

2.Cry / Jon Batiste

次はこれもミュージック・ビデオをYouTubeで是非見て欲しいのですが、絵が飾ってある画廊のようなところでジョンが絵を見ていると可愛い女性が入ってきてその彼女をナンパするみたいな他愛のないビデオですが、曲がR&Bさらにはブルーズがルーツにある軽快なダンスナンバーでストレートに楽しめます。ちなみにそのビデオに出てくる女性がとてもキュートです。

3.I Need You / Jon Batiste

ジョンはいま35才です。ニューオリンズの音楽一族に生まれ11才の頃からお父さんと一族がメンバーの「バティースト・ブラザーズ」に参加してドラムをやっていたそうです。そのあと母親に勧められてピアノを始め、多分その頃から才能が開花していったんだと思いますが、クラシックを勉強してジュリアード音楽院に入ります。デビューがジャズ畑からだったことから日本ではなかなか名前がポピュラーにならなかったのだと思います。ジャズやクラシックだけでなく子供の頃から聞いていたニューオリンズのR&B、ブルーズ、ジャズのようなルーツ・ミュージックも取り込みヒップホップやラップといった今の音楽にいろんな要素を融合させるセンスと技を持ちました。

4.It’s Alright /Jon Batiste

サウンド的にはジョンなりのオリジナリティを打ち出していますが、曲そのものはほぼ原曲通りで歌がソウルフルでいいですね。オリジナルのカーティス・メイフィールドへのリスペクトが感じられます。
ジョン・バティーストの音楽を聴いていつも思うのは過去の音楽への尊敬と過去の曲のいいテイストをいろんなところに散りばめるセンスとテクニックの素晴らしさです。テクニックがなければできないことをたくさんやっているのですが、そのテクニックの使い方がいやらしくないところがいいです。あと彼はクラシックやジャズも学んでいるんですが、やや難しいことも誰もがわかるように表現する包容力を感じます。
彼のジャズ・サイドを最後に聞いてください。2018年11月にニューヨークの老舗ジャズクラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」でライヴ録音されたアルバム「クラノロジー・オブ・ドリーム」から

5.Higher /Jon Batiste

是非来日もして欲しいですし、日本のリスナーの人たちにもっと広く彼の音楽が知れ渡ることを期待しています。
おめでとうジョン・バティースト!Congratulations on five Grammy awards,Mr.Jon Batiste!

2022.05.06 ON AIR

相次いで亡くなったブラック・ミュージックの三人の偉大なドラマー Vol.3

ソウル・ミュージックに忘れられないグルーヴを残したドラマー、ハワード・グライムス

ON AIR LIST
1.Let’s Stay Together / Al Green
2.Take Me To The River / Al Green
3.I Can’t Stand The Rain / Ann Peebles
4.God Bless Our Love / Al Green

今年になって立て続けにブラック・ミュージックにとって大切な、そして偉大なドラマーが三人亡くなりました。サム・レイ、フィリップ・ポール、そしてハワード・グライムスと。今回からその三人の参加した音を聞きながら彼らが残した功績を話したいと思います。今日は3回目でハワード・グライムス。

ブラック・ミュージックに大きな貢献を残したサム・レイそしてフィリップ・ポールが亡くなり時代の推移を感じてたが、ここにきてまた一人偉大なドラマー、ハヲード・グライムスの訃報が届いた。2月12日、80才でした。
ハワード・グライムスと言っても知らない方も多いと思うので簡単に説明すると、10代後半から故郷メンフィスのレコード会社「スタックス」のレコーディング・メンバーとして参加していました。そのスタックス・レコードにはオーティス・レディングやサム・アンド・デイヴの名曲の録音をした偉大なドラマー、アル・ジャクソンがいました。そのアル・ジャクソンがオーティスやサム・アンド・デイヴの仕事で忙しくなり有名プロデューサー、ウィリー・ミッチェルのバンドを辞めることになりその後釜に指名されたのがハワード・グライムスでした。そして、ウィリー・ミッチェルが立ち上げた「ハイ・レコード」のレコーディンクメンバーに参加することになりました。
彼の名前ハワード・グライムスを知らなくても彼が参加したアル・グリーンのこの名曲を聴いたことがある方はたくさんいるのではないでしょうか。

1.Let’s Stay Together / Al Green

アル・グリーンが「いい時もよくない時も幸せな時も悲しい時も一緒にいようよ」と歌ったこの珠玉のラブソングは歌詞、メロディ、リズム、アレンジ、歌、そして録音が全てパーフェクトです。ドラムはほぼずっと同じパターンを叩いているだけですが、そのステディなビートがアルの歌と同じようにイントロが後半に向かって熱を帯びていくのがわかります。ドラムは目立ったことを何もしていないのですが素晴らしいビートをだし続けています。私も歌手の端くれですが、このドラムは歌いやすいというか気持ちが入るドラムです。

次の曲もハワード・グライムスのドラムの素晴らしさを感じられる曲です。彼のドラムの始まりから素晴らしいのですが、全編を通して今日はずっとドラムを聴いてみてください。アクセントを入れるだけでほぼフィル(おかず)はありません。ステディであり推進力のあるビートとその音が本当に気持ちいいです。

2.Take Me To The River / Al Green

1曲目に聴いてもらった”Let’s Stay Together”は1971年にチャート1位に輝いた曲で、今のTake Me To The Riverは歌っているアル・グリーン本人が作り74年にアルバム”Explores Your Mind”に収録されていますがシングル・カットはなく、同じハイ・レコードのシル・ジョンソンがシングルで75年にリリースしてR&Bチャート7位まで上がりました。そのシルのカバー・バージョンもドラムはハワード・グライムスです。もう一つ歌い継がれているソウルの名曲”I Can’t Stand The Rain”にもグライムスは参加しています。歌ったのはメンフィスのソウル・クイーンと呼ばれたアン・ピーブルズ。アンの歌に寄り添うハワード・グライムスの情感溢れるドラムを聞いてください。1973年の録音です

3.I Can’t Stand The Rain / Ann Peebles

「窓を打つ雨の音が彼との甘い思い出を連れてくるようで耐えられない」という今はいない別れた彼への想いを歌った曲です。ゆったりとした重厚なグライムスのミディアムテンポの8ビートがとてもアンの歌にハマっています。
この曲も73年にR&Bチャートの6位まで上がりました。このようにハワード・グライムスはドラマーとしてアン・ピーブルズ、アル・グリーン、O.V.ライト、オーティス・クレイ、シル・ジョンソンなどハイレコード全盛期の多くのミュージシャンの録音に参加しました。そしてヒットに貢献しました。

音楽好きのお母さんの影響で6才からドラムを叩いてきたグライムスは有名なジャズ・ドラマー、ジーン・クルーパなどに影響を受けながら10代でルーファス・トーマスの”Cause I Love You”の録音に参加したのがプロとしての初録音。
そのプロの最初に先輩たちから教えられた”Start on time. Quit on time. Don’t be busy. Don’t overplay “つまり「テンポのタイムを正しく、慌ただしく叩かないでないでおおげさなプレイもしない」という教えられたことを彼は忠実にやってきたのだと思います。余計なことを何もしないことはある意味すごく難しいです。ギターも何もしないでずっと同じリズムだけを正確に切ることの方がソロを弾くことより難しいです。それはある意味、音楽以外の職業でも派手なことではなくずっと同じことを地道にやることの方が難しいと言えるのではないでしょうか。
ハワード・グライムスの話を聞き書きした”Timekeeper My Life In Rythm”という本があるのですが、そのタイトルのタイムキーパー通り次の曲ではリズムのキープに徹していて後半部で三連のフィルが入るだけというストレートさです。

4.God Bless Our Love / Al Green

80年代の初めにハイレコードが売られて録音の仕事がなくなった彼は離婚もありなんとホームレス状態で体を壊し死にそうにもなっていたそうです。でも、神様の「光に向かって歩け」という啓示を受けて彼は復活して「ボ・キーズ」というバンドに参加していました。ここ数年はやはり体調がよくなかったのかその「ボ・キーズ」にも参加していなかったようです。
本当に残念です。O.V.ライトと一緒にハイ・リズム・セクションで来日したときに聞けた彼のドラムはずっとぼくの心に残っています。
Rest In Peace Mr.Howard Grimes
God Bless You

2022.04.29 ON AIR

相次いで亡くなったブラック・ミュージックの三人の偉大なドラマー Vol.2

ジャズ、ブルーズ、カントリー、R&Bとジャンルを超えて多くの名曲に参加した名ドラマー、フィリップ・ポール

ON AIR LIST
1.Hideaway / Freddy King
2.The Twist/Hank Ballard&The Midnighters
3.Good Rocking Tonight /Wynonie Harris
4.Fever / Little Willie John
5.Tore Down / Freddy King

今年になって立て続けにブラック・ミュージックにとって大切な、そして偉大なドラマーが三人亡くなりました。サム・レイ、フィリップ・ポール、そしてハワード・グライムスと。今回からその三人の参加した音を聞きながら彼らが残した功績を話したいと思います。今日はフィリップ・ポール。
ブラック・ミュージックだけでなくアメリカの音楽界に重要な曲のドラマーとして活躍したフィリップ・ポールが1月30日に96才で亡くなりました。
彼自身の生まれはニューヨークですが、お父さんはカリブ海にあるヴァージン諸島のセント・クロイ島という島からニューヨークにやってきた人です。つまりカリブの音楽のルーツが彼の体の中にはあるということです。
彼が9歳の時にお父さんがドラムを買ってくれ13歳でお父さんのバンドに入ってます。そして10代からニューヨーク、ハーレムの有名クラブの「サヴォイボールルーム」でソニー・スティット、ディジー・ガレスビー、バディ・ジョンソンなどジャズ・ミュージシャンとライヴを行なってます。そういう名だたるミュージシャンとステージに立つくらいですからフィリップの実力もかなりなものだったと思います。
特に彼が1952年から65年の約14年間にシンシナティにあるキング・レコードのスタジオ・ミュージシャンとして活動していた時の音源はブルーズ、R&B、ジャズ、カントリーと広い範囲に渡っています。ブルーズを好きな人の中にはキング・レコード時代の若き日のフレディ・キングの曲が思い浮かぶと思います。中でもフレディのこのインスト曲はブルーズのスタンダード曲として今も愛聴され、多くのギタリストにカバーされています。しかし、当時のレコードには参加ミュージシャンのクレジットがなくてフレディ・キングのレコードを聴いている時は「このすごいドラムは誰なんだろう」とみんなで話してました。

1.Hideaway / Freddy King

シャッフル・ビートなのですが、このフィリップ・ボールの打ち出すシャッフルのリズムがステディですごく気持ちいいんですね。シャッフルの達人です。この曲はギタリストがカバーしコピーすることが多いのですが、ドラムをやっている人も是非このシャッフル・ビートをカバーしてみてください。ブルーズドラムのお手本になるような演奏です。この曲は1961年リリースの”Let’s Hide Away and Dance Away with Freddy King”というアルバムに収録されていますが、フレディ・キングのキングレコード時代のコンピレーションにも必ず入っているので是非聞いてください。

フィリップ・ポールがドラマーとして名前が上がるのが1958年に録音されたハンク・バラード&ミッドナイターズの”The Twist”(ツイスト)という曲です。ツイストというのは60年代初めに流行ったダンスのことですが、その最初の曲がハンク・バラードのその曲でした。しかし、その曲を大ヒットさせチャート1位になったのは2年後のチャビー・チェッカーのカバー・バージョンの方で、オリジナルのハンク・バラードの方はチャート6位でした。でもツイストのビートはたくさんの曲に使われ大流行しました。そのオリジナルのビートを作ったのがフィリップ・ポールで、これ一曲でもアメリカの音楽史に名前が残る演奏です。只者ではありません。

2.The Twist/Hank Ballard&The Midnighters

1948年にジャンプ・ブルーズのシンガー、ワイノニー・ハリスが大ヒットさせた次の曲もドラムはフィリップ・ポール。この曲はロックンロールの始まりの1曲と言われていますが、実は元々ロイ・ブラウンというシンガーが歌ったのですが、ワイノニー・ハリスのカバーはそのオリジナルより更にビートをきつくしたエネルギッシュな出来上がりになっていて、それでオリジナルよりも売れてしまいました。「耳に挟んだんだけど今晩みんなでご機嫌なロッキング・タイムがあるんだ。彼女を思いっきり抱き締めるんだ。そしてみんなでブルーズを蹴散らすんだよ」歌詞の内容も曲のメロディもパーティ・ソングにもってこいで当時の若者に受けたのはよくわかります。とくにこの躍動するリズムのビートは踊り出さずにはいられないビートです。

3.Good Rocking Tonight /Wynonie Harris

名曲”Good Rocking Tonight”

フィリップ・ポールがスタジオのドラマーとして契約していたキング・レコードにはたくさんのミュージシャンが所属していて50から60年代の黒人音楽のヒット曲もたくさんリリースしました。次の曲はR&Bシンガーのリトル・ウィリー・ジョンによって歌われ大ヒットしたものです。もちろんカバーもたくさんあり、一般的なポピュラー・ソングと思っている方も多いと思います。歌っているジョン・リトル・ジョンはジェイムズ・ブラウンの憧れの歌手でもあるのですが、歌がめちゃ上手いです。
「おまえがキスしたり抱きついてくると俺の熱が上がってしまうんだ。どんれだけ俺が愛しているかわからないだろう」という歴史に残った名曲です。
1959年のグラミー賞のレコード・オブ・ザ・イヤーとソング・オブ・ザ・イヤーに輝いています。

4.Fever / Little Willie John

この曲のように「ああ、この曲もドラムはフィリップ・ポールだったのか・・と」後から知ることが多いのですが、アルバムに参加ミュージシャンのクレジットが記載されるようになったのは60年代の中頃くらいからで、それまだは誰がドラムやベースを演奏しているのか名前がなかったのでわかりませんでした。

晩年は地元のシンシナティ・ホテルで週末だけドラムを叩いて楽しんでいたようです。

キングレコードでの仕事以外ではアルバート・キング、ジョン・リー・フッカー、それからシカゴ・ダウンホーム・ブルーズのスモーキー・スマザーズなどたくさんあるのですが、最後は今やブルーズの定番曲にもなっているフレディ・キングこの曲を。

5.I’m Tore Down/ Freddy King 

5/29 日比谷野音のTOKYO BLUES CARNIVALに是非お越しください。ひさしぶりのブルーズ野外コンサートです。

2022.04.22 ON AIR

相次いで亡くなったブラック・ミュージックの三人の偉大なドラマー Vol.1

ブルーズの名曲にその名を残したドラマー、サム・レイ

ON AIR LIST
1.All Aboard / Muddy Waters
2.Born In Chicago / The Paul Butterfield Blues Band
3.Highway 61 Revisited/Bob Dylan
4.Killing Floor/Howlin Wolf

今年になって立て続けにブラック・ミュージックにとって大切な、そして偉大なドラマーが三人亡くなりました。サム・レイ、フィリップ・ポール、そしてハワード・グライムスと。今回からその三人の参加した音を聞きながら彼らが残した功績を話したいと思います。今日はサム・レイ。
ブルーズの名ドラマー、サム・レイが1月29日に86才で天国へ向かいました。
ブルーズを好きな方ならドラマー、サム・レイの名前を知らなくても彼のドラム・プレイを知らないうちに聞いていると思います。
ハウリン・ウルフ、マジック・サムなど名だたるブルーズマンのアルバムにサム・レイの名前を見つけることができます。
ぼくが初めてサム・レイの名前を認識したのはマディの1969年のアルバム”Fathers And Sons”です。その”Fathers And Sons”を買った頃はちょうど自分の嗜好がロックからブルーズへ移っていった頃で、このアルバムはブルーズの教科書を聴くような感じで毎日毎日聞いていました。だから最初に会ったブルーズ・ドラマーがサム・レイと言ってもいくらいで、彼のドラムのグルーヴは今も僕の中に宿っていると思います。
そのマディ・ウォーターズのアルバム”Fathers And Sons”の一曲目、サムのパワフルなグルーヴがよくわかる演奏です。

1.All Aboard / Muddy Waters

今の”Fathers And Sons”を僕が聞いたのは1971年頃でした。まだブルーズがよくわからなくてブルーズを聞いてもその聞きどころというか、ブルーズのグルーヴの良さがあまりわからなかった時だったのですが、このアルバムのサム・レイのグルーヴは自然と体に入ってきました。でも、実は高校生の頃67年頃に僕はすでにサム・レイのドラムを聞いていたことに後から気づきました。
それは1965年リリースのポール・バターフィールド・ブルースバンドのデビュー・アルバムで、それを17才くらいの頃に聞いていたのですが当時はメインのポール・バターフィールドやギタリストのマイク・ブルームフィールド以外録音の参加メンバーなど気にかけていなかったんですね。後から「ああ、このアルバムはサム・レイだったんだ」と気づきました。いわゆる白人ブルーズロックの元祖であり名盤です。リズム隊のサム・レイとベースのジェローム・アーノルドが黒人。この二人をハウリン・ウルフのバンドからバターフィールドが引き抜いた形ですが、ウルフからの反発はなかったんでしょうかね。60年代半ばとしては珍しい白人と黒人が参加しているバンドでした。次の曲はポール・バターフィールド・ブルースバンドを代表する曲。この曲を聴くと京都のディスコで歌っていた20歳頃を思い出します。サム・レイの躍動感のあるドラムがグイグイとリズムを推進しているのがわかります。

2.Born In Chicago / The Paul Butterfield Blues Band

60年代中頃はまだ白人のバンドに黒人のメンバーが入ることは珍しかった時代です。人種の差別をさっさと乗り越えていったポール・バターフィールドのこのバンドはそういう意味でも画期的でした。そして、このバンドが当時ボブ・ディランのバックをやることがあり、その関係でディランのレコーディングにサム・レイは参加します。1965年のアルバム”Highway 61 Revisited”。日本のタイトルが「追憶のハイウェイ61」ディランの代表的なアルバムです。
サムが参加したのはこれ一曲だったのですが、とても印象に残るアルバム・タイトル曲です。

3.Highway 61 Revisited/Bob Dylan

サム・レイは1935年南部アラバマ州のバーミンガムという街の生まれでクリーヴランドで音楽を始めて、59年にシカゴに移り住んでいます。40年代からシカゴはブルーズのメッカになっていてドラマーもエルジン・エヴァンス、フランシス・クレイ、フレッド・ビロウ、オディ・ペインなど素晴らしい人たちがいました。
シカゴで最初にリトル・ウォルターなどと始めてすぐにウルフやマディと一緒に演奏できたということは才能が早くから認められていたということでしょう。でも、60年代にはマディたちのシカゴ・ブルーズの全盛期は過ぎていくのですが、サム・レイは若手のマジック・サムのライヴ盤も残っているように少し新しい感覚を持ったドラマーでした。ハウリン・ウルフと録音した次の曲にロック・ミュージシャンのジミ・ヘンドリックス、エレクトリック・フラッグなどカバーがたくさん生まれたのも新しいグルーヴがあったからだと思います。1960年ハウリン・ウルフのこの名曲です。

4.Killing Floor/Howlin Wolf

当時のこの新しいビートを察知してポール・バターフィールドは自分のバンド結成に彼を誘ったのだと思います。
サム・レイはマジック・サムのライヴ・アルバムや、ライトニン・ホプキンスのアルバムにも参加したして、90年代半ばからは自分のバンド”Sam Lay Blues Band”を作りアルバムも何枚が出しました。ブルーズの殿堂入りも、ロックンロールの殿堂入りも、ジャズの殿堂入りもして他にも多くの賞に輝いたドラマーです。
ずっと心臓病を患っていたそうです。レジェンドのドラマーがまた一人去ってしまったことが本当に残念です。
今日は60年代からブルーズの歴史に大きな功績を残した名ドラマー、サム・レイの追悼をしました。サムの冥福を祈ります。
次回はサムが亡くなった翌日に亡くなってしまった名ドラマー、フィリップ・ボールの特集です。