シカゴの名ギタリスト、ジョディ・ウィリアムスが残した素晴らしい録音
JODY WILLIAMS/Jody Williams In Session/Diary Of Chicago Bluesman1954-1962(Jasmine JASMCD3100)
ON AIR LIST
1.Don’t Start Me Talkin’/Sonny Boy Williamson
2.Who Do You Love/Bo Diddley
3.One Kiss/Jimmy Rogers
4.Lucky Lou/Little Joe Lee (AKA Jody Williams)
5.Easy Lovin’/Little Papa Joe(AKA Jody Williams)
ジョディ・ウィリアムスはすごく有名なブルーズマンではない。しかし、すごく重要なブルーズマン、そしてギタリストだ。
ブルーズを好きな人なら「この曲もああこの曲のギターもジョディ・ウィリアムスなのか」と気がつくと思う。
このアルバムのタイトルがジョディのことをよく表している。”Jody Williams In Session/Diary Of Chicago Bluesman1954-1962″サブタイトルの1954年から60年のシカゴ・ブルーズマンの日記というように彼はシカゴ・ブルーズ全盛時に、本当に毎日の日記のようにたくさんの録音に参加していた。
まずはサニーボーイ・ウィリアムスンのこの大ヒット曲。メンバーはドラムにフレッド・ビロウ、ベースにウィリー・ディクソン、ピアノにオーティス・スパン、そしてギターにマディ・ウォーターズとジョディ・ウィリアムス。錚々たるシカゴ・ブルーズのメンバーの中に参加している。ブレイクのところのリフや細かいフレイズがジョディです。
1955年録音R&Bチャートの3位まで登りました。「オレに喋らせんなよ。見たこと全部喋ってしまうで・・」と脅しみたいなサニーボーイらしい怖い曲です。
1.Don’t Start Me Talkin’/Sonny Boy Williamson
久しぶりにDon’t Start Me Talkin’を聞くと、曲や歌詞の良さ、録音の良さ、サニーボーイのハーモニカと歌の唯一無比な素晴らしさ、そしてバックの演奏の巧みさ・・それらが一体となってこの完璧なブルーズの名曲を作っていることがわかる。こういう録音に呼ばれるというのは、やはりジョディ・ウィリアムスが腕の立つギタリストとして信頼されていた証だ。
1935年アラバマ生まれでシカゴ育ちのジョディは早くからギターが上手くて16才くらいの時には一角に弾けたということ。その青少年時代の友達がのちにロックン・ローラーの大きなアイコンになるボ・ディドリー。
そのボ・ディドリーの有名な曲の録音にもジョディは参加している。ザ・バンド、サンタナ、ザ・ドアーズ、それからジョージ・サラグッドとたくさんカバーが残っているロッキン・ブルーズの名曲、Who Do You Love。
2.Who Do You Love/Bo Diddley
この曲にジョディが参加していることを知らない人も多いと思う。
いつ聞いても古い感じがしない、ついついノってしまう呪縛のようなビート・ミュージックです。ちなみに最初ジョディはギターの前にハーモニカを吹いていたそうで、その頃、いまのボ・ディドリーと友達になってストリートで演奏していたそうです。
シカゴでギタリストとして頭角を表したジョディ・ウィリアムスは50年代半ばにハウリン・ウルフのバンドに在籍して、その時はもうひとりの若いギタリスト、ヒューバート・サムリンと2ギターでウルフのバンドサウンドを作っていた。当時、シカゴで売れているハウリン・ウルフやマディ・ウォーターズのバンドに加入するというのは、ミュージシャンとして大きなステイタスだった。
ジョディのようなバッキング・ギタリスト、スタジオのギタリストというとシカゴではジミー・ロジャース、ロバート・ロックウッド、エディ・テイラーが有名だが、シカゴ・ブルーズ・スタイルのギターだけでなくB.B.キング的なモダン・ブルーズのギター、そして少しジャズ・テイストもあるギターを弾けるところがジョディの個性だった。
いま言ったシカゴ・ブルーズのギター名人のジミー・ロジャースの録音にも参加している。これもピアノがオーティス・スパン、ハーモニカがウォルター・ホートン、ベースがウィリー・ディクソン、ドラムがフレッド・ビロウ、そこにジョディ・ウィリアムスのギターともう文句のつけようがない鉄壁の完璧なシカゴ・エレクトリック・ブルーズ。ギター名人がジミー・ロジャースとジョディ・ウィリアムスふたりいるという贅沢な1956年、シカゴ・ブルーズの最高にいい時代。大好きな曲。
3.One Kiss/Jimmy Rogers
売れなかったけれどジョディは素晴らしいブルーズシンガーでもあった。最初は1955年”Looking for My Baby”という曲で歌手デビューだが、なぜかリトル・パパ・ジョーという別名でリリースされている。いま聴いたジミー・ロジャースは”That’s Alright”とか”Walkin’ By Myself”とかヒットが出たが、ジョディはこれというヒットが出なかった。その分ジミー・ロジャーズほど有名になれなかった。
オーティス・ラッシュのヒット曲で、エリック・クラプトンもブルーズ・ブレイカーズ時代に録音した”All Your Love”の元曲。このインストルメンタルに歌詞つけ””All Your Love”にしたことがわかる。ビートがシャッフルに変るアイデアも最初からこの曲にあった。そしてどういう訳か、ここでもジョディ・ウィリアムスという名前ではなくてリトル・ジョー・リーという変名で出している。契約上の問題でもあったのだろうか。1957年リリース
4.Lucky Lou/Little Joe Lee (AKA Jody Williams)
次はジョディの魅力的な歌声がきける曲で、ギターはもちろん音色もフレイズも文句なしに素晴らしいです。恐らく後輩のマジック・サムも影響を受けただろうと思える素晴らしいギターだ。
5.Easy Lovin’/Little Papa Joe(AKA Jody Williams)
ギターもいいけど歌もいい。こういう曲がヒットしていればもっと違う活躍があったかも知れない。ジョディはショービジネスの世界が嫌になって一度引退してしまうが、2002年、35年ぶりに復活。復活の初ソロアルバム”Return Of A Legend”を82才でリリースして来日もした。いまも健在な筈だが音楽活動のニュースはここしばらく届いて来ない。
今日のアルバムはJASMINEレコードからCDで今年リリースされた。見つけたら即ゲット!