2020.10.23 ON AIR

「永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.26」

女性ブルーズシンガーたちのスタンダード曲集 vo.2

Memphis Minnie/The Essential Recordings (PRIMO PRMCD-6108)

Lucille Bogan/Black Angel Blues (P-Vine PCD-20094)

Mamie Smith/Complete Recorded Works vol.1 (document DOCD-5357)

ON AIR LIST
1.Me And My Chauffeur Blues/Memphis Minnie
2.When The Levee Breaks/Joe McCoy&Memphis Minnie
3.Bumble Bee/Memphis Minnie
4.Shave’em Dry/Lucille Bogan
5.Crazy Blues/Mamie Smith & Her Jazz Hounds

前回「ブルーズ・レディたちのスタンダード」の1回目は「ブルーズの皇后」と呼ばれたベッシー・スミスの名曲を聴きましたが、ベッシーの活躍から約10年後くらいから人気のブルーズ・レディとなったメンフィス・ミニーの名曲から今日は始めます。ベッシー・スミスとメンフィス・ミニーの大きな違いはベッシーが楽器を弾かないヴォーカルだけのシンガーでしたが、メンフィス・ミニーはギターを弾く弾き語りスタイルでした。しかも、このギターがまた上手い!ミニーは主に南部を旅しながら酒場などでギターを弾いて歌うダウン・ホームなブルーズ・スタイルでした。そして、ベッシーもミニーも200曲近く録音を残しています。つまりふたりともすごく人気があったということです。
まずメンフィス・ミニーを1曲
曲名が「私と私のお抱え運転手」ですが、「お抱え運転手」なんていう言葉が出てきたらまず男女の営み系のことです。車の運転を絡めながら私を運転してくれと言うてるわけです。車関係でこの手のセクシャルな歌はブルーズに本当に多い。この歌のお抱え運転手は運転が上手いんですよ(つまりセックスが上手いということなんですが)、それで他の女性も運転してしまうんですね。それでそんなことやってたら私はピストルであんたを撃ってしまうよ。新車のフォードのV8を私が買ってやるから他の女は乗せないで私を乗せて世界中ドライヴしてよ」
1941年録音
1.Me And My Chauffeur Blues/Memphis Minnie
日本の女性の歌にはこういうセックスをすぐに連想させるような歌詞はまずないですね。こういう下ネタな歌詞を男女ともに笑って楽しむ文化が日本にはないんですね。まあアメリカでもそういうのを嫌う人もいますが、日本よりは大らかな気がします。
いまの”Me And My Chauffeur Blues”はマリア・マルダー、ジェファーソン・エアプレインのグレイス・スリックなど多くの女性シンガーにカバーされています。ちなみにいまのもうひとりのギターはミニーさんの三番目の旦那さんのリル・サン・ジョーです。その前の二番目の旦那がカンザス・ジョーと呼ばれたジョー・マッコイで、そのジョー・マッコイと録音してヒットさせたのが次の”When The Levee Breaks”
レヴィは堤防のことですから「堤防が壊れる時」「堤防が決壊する時」という曲名ですが、これが録音された2年前1927年に大雨が降ってミシシッピ・リバーが決壊した時の歌です。
「雨が降り続けると堤防は決壊してしまう。決壊したらオレには居場所がない。泣いても祈ってもどうしょうもない。堤防が決壊したらどこかへいかなくては。昨日の一晩中彼女と幸せな家庭のことを考えて堤防の上でうめいた。シカゴへ行こう、シカゴへ行くんだ、ごめんね、オマエを連れて行くことはできないけど」
大雨でかなり切羽詰まった気持ちのブルーズです。ここ数年日本でも大雨で洪水が多いのですごくこういう歌詞はリアルに感じます。歌っているのは旦那のジョー・マッコイ。歌のバックでオブリガードを弾いているメンフィス・ミニーのギターの素晴らしさも聴いてください。
2.When The Levee Breaks/Joe McCoy&Memphis Minnie
いまの曲はレッド・ツェッペリンがカバーしていてツェッペリンのオリジナルと思っている人もいるのですが、いまのが1929年に録音されたオリジナルです。
男女ふたりで演奏して旅をするとなると僕はなんかめんどくさい感じがしないでもないんですが、どうなんでしょう。喧嘩なんかしてたら一緒に演奏する気持ちにならんでしょ。それとも演奏しているうちに仲直りしたりとか・・。いまの曲もどっちかが途中で小節数を間違って、でも元に戻るんですが「あんた、なんで間違えるん」とか言われそうでしょ。
ミニーさんの最初の旦那もメンフィス・ジャグ・バンドのケイシー・ビル・ウェルダンというミュージシャンです。まあ、一緒に演奏しているうちにやっぱりくっついてしまうんでしょうね。

彼女はルイジアナ生まれですが13才の時に家を出てメンフィスに来て、たくさんのブルーズマンがしのぎを削ったビール・ストリートで歌い始めるのですが、13才ってただの家出少女でしょ。ええんかな・・・。それで19才でジョー・マッコイと出会って一緒に演奏を始めるんですが、その最初のヒットが次の”Bumble Bee” (マルハナバチという蜂)これも男が蜂で家を出て外でいろいろ女性を刺しにいくんですね。まあ彼女がええかげんしてくれ、やめてくれと言ってる歌です
3.Bumble Bee/Memphis Minnie
女性ブルーズシンガーのセクシャルな歌の極め付けといえばルシール・ボーガンです。セクシャルというかもう猥褻の領域です。ルシール・ボーガンは裏世界のヤバいつながりもあって、セックスに関する歌だけでなく売春やギャンブル、ドラッグといった歌もあります。日本のP-Vineレコードから一枚アルバムが出ているのですが、解説を書いている小出斉くんも訳すのを憚っている曲でFUCKが平気で歌詞に出てきます。最初が「私のおっぱいは・・」から始まります。その後に「私の足の間にあるもの・・」と来ます。これさすがに発売されなかったらしいですが・・・ルシール・ボーガンを代表する曲で、ブルーズにはこんな歌もあるんだということで選びました。
4.Shave’em Dry/Lucille Bogan
曲名のShave’em Dryの意味もここでは話すのはぼくでも無理なくらいLow Downな内容で猥褻の領域です。こういうブルーズのことをBawdy Bluesといい「Bawdy Blues」というコンピアルバムもあるくらいブルーズでは下ネタ、猥褻な歌がたくさんあるのですが、ルシール・ボーガンはボーディ・ブルーズの女王だと思います。
ブルーズの録音が始まったのは1920年でメイミー・スミスの”Crazy Blues”がその最初です。ブルーズの最初の録音というだけでなく、女性シンガーとして初めてレコードに歌声を残したのがメイミー・スミス。その後にベッシー・スミス、アイダ・コックス、ビクトリア・スパイヴィ、ルシール・ボーガンなど、その初期は女性ブルーズ・シンガーがたくさんいました。みんな苦労しながらも逞しく時代を生き抜いた女性たちでその後の黒人女性シンガーたちへの道を残した偉大な先人たちです。
では今日の最後はその記念すべきブルーズの初めての録音そして黒人女性シンガー初めての録音、メイミー・スミスの”Crazy Blues”。
「夜眠ることもできない、食べることもできない。愛した男が私に優しくしてくれないから。彼は私を憂鬱にさせて私はどうしたらいいかわからない。私は時々座り込んでため息ついて
そして泣き始める。だから親友は私にあいつと別れてしまいなよと言う。彼の手紙は読めるけど彼の心が読めない。そして彼と別れてから私はクレイジーブルーズに取り憑かれている」
5.Crazy Blues/Mamie Smith & Her Jazz Hounds
このブルーズが録音された1920年ですがいまも男女の恋愛事情は変らない、人の心は変らないと思います。
この曲のクレジットがMamie Smith & Her Jazz Houndsとなっていますが、今日最初に聴いたメンフィス・ミニーのような南部で活躍した女性シンガーは違いますが、ニューヨークのような都会で歌った女性ブルーズシンガーはジャズバンドをバックにしていました。ベッシー・スミスもそうです。まだいろいろ話足りない女性ブルーズ・シンガーですが、次回もこの続きをやります。

2020.10.16 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.25

女性ブルーズ・シンガーたちのスタンダード曲集vo.1「ブルーズの皇后、ベッシー・スミス」

Martin Scorsese Presents The Blues/Bessie Smith (Sony MHCP-2056)

 

ON AIR LIST
1.Down Hearted Blues/Bessie Smith
2.’Tain’t Nobody’s Bizness If I Do/Bessie Smith
3.Nobody Knows You When You’re Down And Out/Bessie Smith
4.Me And My Gin/Bessie Smith
5.Careless Love/Bessie Smith

今日は女性ブルーズシンガーが歌ったブルーズのスタンダード名曲を聴きます。
みなさんは女性のブルーズ・シンガーというと誰が思い浮かびますか、ビッグ・ママ・ソーントンやココ・テイラー、ロックを好きな方はジャニス・ジョップリンやボニー・レイットを挙げるかも知れません。ジャズならダイナ・ワシントン、ビリー・ホリディの名前も出るでしょう。R&B、ソウルならエスター・フィリップスやエタ・ジェイムズ、ルース・ブラウンもブルーズ・テイストの強いシンガーです。でも、まずは「ブルーズの女帝(Empress)」と呼ばれたこの人、ベッシー・スミス。
スタンダードに選ぶべきいい曲がたくさんあって今日はベッシー・スミスだけです。

1923年にニューヨークでベッシー・スミスは初録音しました。
ベッシーが歌ったこの曲はスタンダードとなって歌い継がれ、しかもいまも多くの女性シンガーたちにベッシーがリスペクトされていることを考えると、この曲はブルーズだけでなくアメリカの音楽歴史上の重要な一曲ということになります。
「愛してる男がオレはオマエだけのものになると言ってくれていたのに他に女を作る。愛してくれない人を愛している自分。ずっとトラブルばかりでただただ落ち込んでしまう。一生のうちに愛した男はたった3人。その3人は自分の父親と兄と、そしてあの男(だから男として愛したのはあの男ひとり)。
最後の方で「あなたが私を捨てる日に私もあなたを捨てるわ」と歌っているところが、僕はいいなぁと拍手を送りたいです。
1.Down Hearted Blues/Bessie Smith
ベッシー・スミスの初期の録音はピアノだけの伴奏で歌っています。ちなみにこの1923年のヒットチャート1位になってます。ベッシーは29才くらい。

次は’Tain’t Nobody’s Bizness If I Do。
僕が24才の時にウエストロード・ブルースバンドで初めてカバー録音した曲ですが、僕はB.B.キングとジミー・ウィザースプーンを聴いてカバーしたのですが、オリジナル録音はこのベッシー。ジャズのビリー・ホリディも録音しています。
「お金のない友達がいたら、私のお金を全部あげるよって言う。でもそれは私のやることだからつべこべ言わないで。日曜日には教会に行く。でも次の月曜には自堕落なことをするけどほっといて欲しい自分がやることだから」とつづくのですが、要するに自分のやりたいようにやるという歌です。いつの時代にも人の気持ちを代弁している普遍的な意味のあるブルーズです。この曲はいろんなシンガーが歌って自分なりの歌詞を付け加えたバージョンも多く、10番くらいまで歌詞があるものもあります。
1923年録音ピアノはクラレンス・ウィリアムス
2.’Tain’t Nobody’s Bizness If I Do/Bessie Smith
1923年録音というと日本は大正12年、関東大震災の年です。僕も今も時々歌っていますが、いまもたくさんのシンガーに歌い継がれているブルーズ名曲です。

次の曲もブルーズスタンダードにふさわしい1曲
いつの時代にも共通する人生への戒めを歌った内容ですが、タイトルが「落ちぶれたあなたのことを誰も知らない」
お金をもって羽振りがよかった頃はみんなにシャンペーンや高い酒を奢っていたけど、自分が落ちぶれはじめたら誰も寄り付かなくなっていくというよくある話です。とくに音楽やショービジネスの世界はアップ&ダウンが激しいので、この曲をいまでも歌うミュージシャンは多い。
実際のベッシー・スミスもこの歌を歌った1929年頃、30代半ばはすでに人気は下降気味でアルコールへの依存も強くて健康状態もあまりよくなかった。
3.Nobody Knows You When You’re Down And Out/Bessie Smith
1929年録音でまだベースとドラムはありませんが、コルネット、チューバ、サックス二本、ピアノとバンドスタイルが始まってます。

1920年代から30年代初期までアメリカはアルコールの製造販売を禁止する禁酒法を施行していて、次の歌はその頃作られた。
アルコールへの依存が強かったベッシーのリアルなブルーズ。別名Gin House Blues
「近寄らないで私は罪を置かしているから・・警察が来たらそれは私と私のジンが悪いの。気分がハイになったら何でもやるよ。たくさん呑めばあんたをいい感じにしてあげる」
4.Me And My Gin/Bessie Smith
1928年に作られたこの曲もたくさんカバーされていまして、ジャズのニーナ・シモン、ロックのアニマルズ、日本の浅川マキさんそして亡くなったブルーズの盟友、ウィーピングハープ妹尾くんなど。妹尾くんはお酒を呑まないのにこのブルーズが好きでしたね。

1920年代の終わり頃には音楽の流れがより洗練されたものへと変わり、1929年の世界大恐慌の影響もあり彼女のレコードも売れなくなって行きます。
1933年が最後のレコーディングになっていますが、それ以降もライヴでは人気があったので彼女は旅をして歌い続けました。そして、1937年に彼女は旅の最中に43才で交通事故で亡くなってしまいます。

100年近く前の曲ですが、歌われている内容はいまの時代にも共通することがたくさんあります。「友達の彼氏を好きになってその友達から奪ったけど、彼も友達も失った・・私は軽はずみな恋をしてしまった」と、後悔している歌です。
5.Careless Love/Bessie Smith
ベッシー・スミスは身長は182センチで体重は90キロ近くあったらしく、酒も強くて男も負けてしまうほど腕力も強かったそうです。「ハウス・ロッキン」、歌っている「店を揺らす歌手」と呼ばれ人気のあるシンガーで、経済的にも自立して男に頼らないで、男性とも女性ともセックスをするバイセクシャルな女性でした。
いまの時代にもベッシー・スミスの名前が多くの女性シンガーからリスペクトする人として名前が出るのは、歌手としての実力はもちろん1920年代30年代という時代に自立して精神的に自由な女性だったということも大きいと思います。今日はベッシー・スミスが残したブルーズスタンダードの名曲を聴きました。

今日聴いてもらった曲は映画監督のマーティン・スコセッシが制作指揮をした「ブルース・ムービー・プロジェクト」の関連で2003年にリリースされたベッシー・スミスのコンピレーションアルバムから聴いてもらいました。興味のある方は番組HPをどうぞ。http://blues-power.jp

2020.10.09 ON AIR

追悼:ピーター・グリーン vol.2

A Hard Road / John Mayall&The Blues Breakers (Decca 984 222-5)

English Rose / Fleetwood Mac (Blue Horizon/epic ESCA 5421)

The Pious Bird Of Good Omen/Fleetwood Mac (Sony/Columbia)

ON AIR LIST
1.Stumble/John Mayall & The Blues Breakers
2.So Many Roads/John Mayall & The Blues Breakers 
3.Need Your Love So Bad/Fleetwood Mac
4.Black Magic Woman/Fleetwood Mac
5.Albatross/Fleetwood Mac 

この番組のブルーズ・スタンダード曲集のブルーズ・ロック編でフリート・ウッドマックの”Black Magic Woman”を取り上げたばかりですが、そのフリート・ウッドマックのギタリストだったピーター・グリーンが7月25日に73才で亡くなりました。今日はかれの追悼の2回目です。
60年代イギリスで起きたブルーズ・ロックのムーヴメントでブルーズをルーツにしたたくさんのロックバンドが登場し、たくさんの素晴らしいギタリストも現れましたが、僕はブルーズに関してはピーター・グリーンがいちばん好きでした。彼はブルーズ以外のオリジナル曲でも才能のあるソング・ライティングとギタープレイを残してます。
僕がいちばん最初にピーター・グリーンを聴いたのは亡くなった盟友の塩次伸二が持っていたジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズの”Hard Road”というアルバムでした。1970年頃です。それはかのエリック・クラプトンがブルース・ブレイカーズを辞めたあとにピーター・グリーンが入った時のアルバムで、塩次伸二は「クラプトンよりピーター・グリーンの方がいい」と言ってました。エリック・クラプトンはブルース・ブレイカーズ時代にフレディ・キングの”Hide Away”というインストの曲を録音して素晴らしいギター・プレイを残したのですが、ピーターはブレイカーズに入って同じフレディ・キングの”Stumble”というインストを録音しました。どこかクラプトンに対抗する気持ちがあったのでしょうか。
1.Stumble/John Mayall & The Blues Breakers
素晴らしい演奏でギターが上手いだけでなく彼のブルーズへの熱い気持ちが出ているプレイです。
同じアルバムに入っている次のスロー・ブルーズのギターソロも印象に残っています。オリジナルはオーティス・ラッシュ。このカバーで歌っているのはジョン・メイオールです。
B.B.キングが彼のギターを初めて聴いた時、「いままで聴いたいちばんスイートなギターの音色で、こりゃヤバいなと冷汗が出た」と言ってますが、スイートかつアグレッシヴなとても個性的な音色とギタープレイをどうぞ。
2.So Many Roads/John Mayall & The Blues Breakers 
この時ピーターは20才です。クラプトンがイギリスのロック・シーンで「クラプトンは神だ」みたいなことを言われていることへの反発はビーターにあったと思います。どっちも素晴らしいブルーズ・ギターを弾いていて、あとは好き嫌いですがクラプトンへの評価は過大だったようにぼくは思います。
ピーターはこの”Hard Road”というアルバム一枚でブルーズ・ブレイカーズを脱退します。そしてフリートウッド・マックの結成になります。1967年です。
次はリトル・ウィリー・ジョンの名曲をカバーしているのですが、この歌はすごく難しいのですがピーターはうまく歌おうとしないでさりげなく歌っているのがすごくいいです。イントロの音数の少ないギターも最後のフェイドアウトしていくギターもすごく心に沁みます。
3.Need Your Love So Bad/Fleetwood Mac

僕は一度だけ彼に会っています。1999年だったか、日比谷の野音で僕はロケッツの鮎川くんとセッションバンドで出演したんですが、その時訊きたいこともいろいろあったのですが、若い頃のドラッグの後遺症で精神状態が普通ではないのであまり会話が進みませんでした。ピーター・グリーンはもちろんブルーズをルーツにしてましたが、いいオリジナル曲もたくさん作りました。そのあたりのことも聞きたかったのですが・・・。
次の曲はサンタナでヒットしましたが、オリジナルはフリートウッド・マック
4.Black Magic Woman/Fleetwood Mac
次の曲はもう大好きな曲で短いインストの曲なんですが、イマジネーション広がる素晴らしい曲だと思います。
「あほう鳥」
5.Albatross/Fleetwood Mac 
フリートウッド・マックはブルーズもオリジナルもまだまだ可能性のあったバンドだったんですが、ギタリスト三人がドラッグで精神がすこしおかしくなって、変な宗教団体に入ってしまったり失踪したりで活動ができなくなりました。すごく残念です。ブルーズのオリジナル(Black Magic Woman)でヒットを出したイギリスのミュージシャンはピーター・グリーンだけだと思います。
ギター三人が脱退してからは、ベースのジョン・マクヴィとドラムのミック・フリートがまったくコンセプトの違う第二期のフリートウッド・マックを作り上げヒット曲をたくさん出しました。
ジョン・メイオール時代、フリートウッド・マック時代だけでなくピーター・グリーンは素晴らしいソロ・アルバムも残しているのですが、それはまたの機会に。
今日と前回は7月25日に73才で亡くなったイギリスの素晴らしいギタリストでソングライターだったピーター・グリーンの特集を聴いていただきました。

2020.10.02 ON AIR

追悼:ピーター・グリーン vol.1

Blues Jam In Chicago vol.1&vol.2 (Epic ESCA 7827&8)

ON AIR LIST
1.Homework/Fleetwood Mac(vol.Peter Green) 
2.Sugar Mama [Take 2]/Fleetwood Mac(vol.Peter Green)
3.Everyday I Have The Blues/Fleetwood Mac(vo.Jeremy Spencer)
4.Like It This Way/Fleetwood Mac(vo.Danny Kirwan)

この前、この番組のブルーズ・スタンダード曲集のブルーズ・ロック編でフリート・ウッドマックの”Black Magic Woman”を取り上げたばかりですが、そのフリート・ウッドマックのギタリストだったピーター・グリーンが7月25日に73才で亡くなりました。少し時間が経ってしまいましたが、今日はピーター・グリーンの追悼特集です。
60年代、イギリスではブルーズに影響されたギタリストがエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、キース・リチャーズなどたくさんいました。
ブルーズに影響されたバンドもブルース・ブレイカーズ、ヤードバーズ、ストーンズ、アニマルズ、ゼムとたくさんありましたが、僕はピーター・グリーンのバンド「フリートウッド・マック」がいちばん「ブルーズの濃度」が高かったと思ってます。
ピーター・グリーンは70年代に入ってドラッグの影響で少し精神を病んでしまい音楽シーンからいなくなった時期もあり、最近も華々しい活躍はしていなかったのですが、彼の残した功績は大きくいまも彼の熱狂的なファンはたくさんいます。
ブルーズに影響を受けたロックミュージシャンにとってマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフなどの歴史的録音をリリースしたシカゴの「チェス・レコード」はブルーズの聖地のひとつです。かくいう僕もシカゴへ行った折は2120サウス・ミシガン・アヴェニューにある「チェス・レコード」を訪ねました。僕が行った時は改装中で中を見せてもらうことはできませんでしが、ミーハーなので入口で写真を撮りました。ローリング・ストーンズは1964年の初めてのアメリカツアーの時に「チェスレコード」のスタジオを訪れて録音もしています。その時住所をそのままタイトルにした「2120サウス・ミシガン・アヴェニュー」という曲を録音しています。60年代ブルーズに影響を受けたイギリスのロックバンドにとって聖地チェスで録音するというのはひとつの夢だったと思います。ピーター・グリーンのフリート・ウッドマックは1969年にチェスのスタジオでの録音を残しました。今日はそのアルバム”Blues Jam In Chicago”を聴いてみようと思います。

一曲目シカゴのブルーズマン、オーティス・ラッシュの1962年にデュークレコードからたった一曲だけリリースされた曲です「学校へ行くなんて無駄な時間使ってアホみたいや、オマエに夢中で宿題なんかやってらへん。オマエのキス、手の感触、オマエのすることすべてがスイートなんよ。たまらんで」
彼女に夢中で宿題なんかできんいう歌です。
1.Homework/Fleetwood Mac(vol.Peter Green) 
HomeworkはJ.ガイルズ・バンドもカバーしてます。

次の曲なんかもそうですがピーター・グリーンは意外と、というと失礼ですが歌がいいです。ギターはギブソン・レスポールのムンムンとしたいい音がしています。ピーターは黒人ブルーズマンのフレディ・キングが好きだったのて、そのフレディも使っていたギター、レスポールを使っていたのだとおもいます。
オリジナルはハウリン・ウルフ。
2.Sugar Mama [Take 2]/Fleetwood Mac(vol.Peter Green) 
このアルバムはフリートウッド・マックのメンバーであるピーター・グリーンg,ダニー・カーワンg,ジェレミー・スペンサーg,ジョン・マクヴィb,ミック・フリートウッドdrとシカゴの黒人ブルーズマン、ピアノのオーティス・スパン、ハーモニカのウォルター・ホートン、サックスのJ.T.ブラウン、ウッドベースにウィリー・ディクソンなどとのセッションのコンセプトで作られています。
フリートウッド・マックのメンバーは自分たちが聴いていたレコードのブルーズマンたちが一緒なわけですから、現場では緊張と興奮でしょう。
次はフリートウッド・マックのスライドギターの名手ジェレミー・スペンサーが歌って弾いている曲ですが、もうこの曲の全体が醸し出しているブルーズのムードがすごくいいです。エルモア・ジェイムズと一緒に録音もライヴもやっていたサックスのJ.T.ブラウンが参加しています。もうこれはエルモア・フリークのジェレミーにとってはめちゃ嬉しかったに違いないです。彼のスライドギターがまたええ音してます。
3.Everyday I Have The Blues/Fleetwood Mac(vo.Jeremy Spencer)

もうジェレミーの歌声が時々エルモア・ジェイムズに聴こえますよね。
フリートウッド・マックにはギタリストが3人いるんですが、3人はちょっと珍しいです。でも、3人いても演奏のじゃまになっている感じはないんですよね。普通ギター3人いたらちょっと煩わしいです。よく、最後の全員セッションみたいのがコンサートでありますが、僕は弾くふりをして音出して弾いていないです。5人も6人もギターいるとホントにうるさいので僕はエア・ギターです。

次はもうひとりのギター、ダニー・カーワンが歌ってます。全体のイケイケのシャッフル・グルーヴの中でカーワンとピーター・グリーンのギターの絡みがこれまたすごいことになってます。
4.Like It This Way/Fleetwood Mac(vo.Danny Kirwan)
いいブルーズバンドなんですよフリートウッド・マック。僕は同じイギリスのクリームのブルーズへのアプローチよりこのバンドの方がオーセンティックなあぷろーちで好きです。
バンドとして結束力もあるしジョン・マクビーとミック・フリートのリズム隊のグルーヴもすごくいいんですよ。

フリートウッド・マックを結成して3年目、バンドがすごくいい方向に進んでいたことを感じさせるいいアルバムです。
今日はピーター・グリーンと彼のバンド「フリートウッド・マック」がシカゴの黒人ブルーズマンたちとセッションしたアルバム「Blues Jam In Chicago」を聴きました。このアルバムは二枚組で出されていたり、二枚別々に出されていたりいろんな形でリリースされているし、アルバムタイトルも「Blues Jam In Chess」というのもあります。番組のHPにアルバムが出てますので参考に探してみてください。
来週はフリートウッド・マックのオリジナルや例のあの名曲なんかも聴きます。お楽しみに!

2020.09.25 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.24
戦後エレクトリック・シカゴブルーズvol.4
サニーボーイ・ウィリアムスン2 vol.2

The Real Folk Blues/Sonny Boy Williamson (Chess/MCA MVCM-22021)

Bummer Road/Sonny Boy Williamson(Chess/Universal UiCY-93316)

King Biscuit Time/Sonny Boy Williamson(Arhoolie/P-Vine PCD-24117)

The Sky Is Crying/Elmore James (Sphere/P-Vine PCD-23790)

ON AIR LIST
1.One Way Out/Sonny Boy Williamson
2.One Way Out/Elmore James
3.Unseen Eye/Sonny Boy Williamson
4.Pontiac Blues/Sonny Boy Williamson
5.Mighty Long Time/Sonny Boy Williamson

前回に引き続きサニーボーイ・ウィリアムスン(アレック・ライス・ミラー)から聞いてみましょう。最初の曲は”One Way Out”
僕はロックのオールマン・ブラザーズがカバ-しているのを最初に聴きました。黒人ブルーズに入るすこし前です。サニーボーイを知ってオリジナルはサニーボーイかと思っていたのですが、実はそれよりほんの少し前にエルモア・ジェイムズがレコーディングしています。サニーボーイがチェスレコードで録音したのが1961年9月。エルモアは同じ年の2月か3月にスフィア・レコードで録音してますからエルモアの方が少し早いのですが、作ったのは誰かとクレジットを見るとエルモアの方はエルモア・ジェイムズになっていてサニーボーイの方はサニーボーイとエルモアと両方名前がクレジットされています。たぶん、これはエルモアの作品だと思います。
歌の内容がですね、旦那が家におらんうちにこの男はその嫁さんと不倫濃厚接触するためにその家におったんですね。するとそこへ旦那が帰ってきてしもた。隠れたんですが逃げるにも逃げられへんがなという歌です。
1.One Way Out/Sonny Boy Williamson
サニーボーイとエルモアは若い頃からミシシッピのデルタ一帯で旅をしていた仲なので、たぶんお互いの曲を自分のレパートリーにしたり、歌詞の一部を自分の歌で使ったりということはよくあったんでしょう。実はそこにロバート・ジョンソンも加わって3人で旅っていうのもあったらしいのですが、一緒に旅したいようなしたくないような3人ですが・・・めちゃ怖いですよね。
エルモアのOne Way Outも聞いてみましょうか。エルモアの”The Sky Is Crying”という名盤に収録されているのですが、エルモアはこんな感じです。
2.One Way Out/Elmore James
同じ曲とは思えないですが、リズムもエルモアはシャッフルでやっているし、歌がもうまったく違います。この歌もすごいです。エルモアというと何かとスライドギターと言われますが、こういう普通の押弦スタイルだと意外とB.B.King スタイルのモダンな感じで弾くんですが、こういうスタイルも上手いです。

次は気怠いムードで始まるサニーボーイのハーモニカが本当に素晴らしい。バックのギターはロバートJr.ロックウッドとルーサー・タッカーですが、曲全体に彩りを添えるロックウッドのモダンなギターは見事です。彼のギターでこの曲は更にグレードアップした感じです。ドラム、フレッド・ビロウ、ピアノがオーティス・スパン、ベースがウィリー・ディクソン。鉄壁のチェスレコードのレコーディング・メンバー。1957年、時代的にブルーズ全体が下降していく中、この曲はエレクトリック・シカゴブルーズが円熟した、その極みのサウンドを聞かせてくれます。
「自分のやることには気をつけた方がいいよ。見えない目がオマエを見続けてるいるからな」といかにもサニーボーイらしい思わせぶりな内容です。
3.Unseen Eye/Sonny Boy Williamson
ディープだけどモダンな絶妙の味わい。

では、以前このブルーズスタンダード曲集のメンフィス編でサニーボーイの”Eyesight To The Blind”をOn Airしましたが、シカゴに出てくる前に南部に居た頃の彼の名曲がまだあるので聞いてみましょう。
車をネタにしたブルーズの曲はたくさんあります。次の「ポンティアック・ブルーズ」は50年代最初に流行った車でキャデラックなんかより少し安い車で黒人に人気のあった車種です。「あんたのことも好きやけどポンティアックには首ったけ」という彼女を乗せてドライヴする話で、最後にハイウェイ49をぶっ飛ばすと彼女が「あんた、すべてが最高やわ」というその光景が目に浮かぶような歌です。
4.Pontiac Blues/Sonny Boy Williamson
今日の最後は大好きな曲で、ジェイムズ・コットンがカバーしているのを以前ON AIRしました。
「本当に長い時間が過ぎた。オレがあいつと会ってから長い時間過ぎた。眠れない夜も長く続いた。長い時が過ぎた。部屋のカーペットも色褪せてしまった。もし、あいつが戻ってきたら、オレはもう離しはしない」
5.Mighty Long Time/Sonny Boy Williamson
サニーボーイ・ウィリアムスンはバンドのメンバーにギャラを払わないでひとり占めして逃げてしまうようなひどい人でしたが、彼の曲、歌、ハーモニカはやはりブルーズそのもので、ブルーズという音楽の素晴らしさを味わうことができます。サニーボーイは酔っぱらってスタジオに来て「ウィスキーはないのか」と言って、その場で適当に歌を作ってしまう人でした。生きていることがブルーズそのものである彼がわざわざ曲を作る時間をもうける必要などなかったのでしょう。言葉を発してハーモニカを吹けばそれはもうブルーズだったのです。