2021.01.29 ON AIR

今も多くの女性シンガーに尊敬され歌い継がれるダイナ・ワシントンの歌

Juke Box Pearls/A Rockin Good Way/Dinah Washington(Bear Family BCD 17520)

ON AIR LIST
1.I Don’t Hurt Anymore/Dinah Washington
2.What A Difference A Day Makes/Dinah Washington
3.Such A Night//Dinah Washington
4.Cry Me A River/Dinah Washington
5.A Bad Case Of The Blues/Dinah Washington

今日は久しぶりに女性シンガー、ダイナ・ワシントンのコンピレーションアルバム”A Rockin Good Way”を聞きます。
1940年代から50年代にかけて活躍したダイナ・ワシントンは「ブルーズの女王」と呼ばれることもあるが、ほとんどの人はブルーズ・シンガーというよりジャズ・シンガーのイメージを持っていると思う。
1943年デビューしてすぐにヒットした”Evil Gal Blues”を聞いても、南部のブルーズのような泥臭さはなくジャズ・テイストのサウンドをバックにした当時の都会の匂いをさせるブルーズだ。
つまり30年代に一世風靡した先達の女性ブルーズシンガー、ベッシー・スミスのながれを汲むテイストだった。
思えばダイナは南部アラバマで生まれたものの3歳でシカゴに移りそこで育っているので都会育ちの女性だ。幼い頃から教会でピアノを弾き歌っていたが、当時よく開催されていたアマチュアコンテストで優勝。そこからナイトクラブでピアニスト&シンガーとして音楽の仕事をするようになり、その才能を見出されてレコーディングとなる。
若き日のアレサ・フランクリンもルース・ブラウンもダイナの影響を受けているが、特にエスター・フィリップスに至ってはもう完全にダイナ・フリークだった。それほど後輩に理想とされたダイナの歌だが、とにかく歌声が大きい。それは今のように音響機材が充実していないのでバックのバンドの音に負けないしかも騒がしいクラブで客に届く歌を歌うのが第一の条件だった。歌声が大きいだけでなく歌の最後まで丁寧に心を入れ込み、個性的なビブラートがあったり、時には自由にアドリブを効かして歌うテクニックがあったり・・とスケールの大きな歌手だった。
そのスケールの大きさがわかる曲。元々は白人のカントリー&ウエスタンの歌手ハンク・スノウが歌った曲をブルーズテイストを入れ込んで完全に自分の歌として歌っているダイナ・ワシントン。
1.I Don’t Hurt Anymore/Dinah Washington
この曲のドラムはじめバックのレコーディングバンドの演奏も素晴らしいのですが、メンバーの名前が記載されていなくてわからないのが残念。

ダイナ・ワシントンの最も有名な曲が次の”What A Difference A Day Makes”ですが、1959年のこの曲で彼女は一般の白人層にポップス歌手として認知されたのだが、私は初めてこの曲を聴いた時バックのストリングスやコーラスが曲に余計な装飾をしてしまいダイナの歌の素晴らしさを邪魔している感じがした。
と言うのも私が最初に感動したダイナはそれより5年ほど前にジャズの最前線で活動していたクリフォード・ブラウンやマックス・ローチといったジャズマンとコンボと録音した”Dinah Jam”というアルバムだった。そこにあったリアルで、フリーでスリリングなダイナの歌声がこの”What A Difference A Day Makes”では綺麗な箱に収まったような歌に聞こえた。しかし、時を経て聴いてみるとやはりこの歌の中にはゴスペルをルーツに持ち、消すに消せないブルーズのテイストを持ったダイナがいることに気づいた。揺るがない芯の太い歌声や独特のビブラートそして歌声の最後にまで自分の心を込めて「あなたと出会ってから全てが素晴らしく変わってしまった」と歌うダイナをどうぞ。
2.What A Difference A Day Makes/Dinah Washington
この曲のヒットでポピュラーな歌手として認知されたダイナは60年に同じマーキュリーレコードにいたR&Bシンガーのブルック・ベントンという男性シンガーとデュエット曲をリリースします。ブルック・ベントンの方も当時売れていたスター・シンガーで二人のアルバムはどちらかというとR&Bに近いアルバムでした。
50年代から60年代の黒人女性シンガーは時代の音楽の流れがブルーズやジャズからR&Bそしてソウルに移っていくこともあって、そういう歌も歌わなければならなかったのでしょう。
次はダイナが歌ったリズム&ブルーズの曲でエルヴィス・プレスリーもカバーしていますが、同じ曲名のドクター・ジョンの曲もありますが、これはリズム&ブルーズのクライド・マクファター&ザ・ドリフターズが1953年にリリースしたものです。
「彼といい感じのキスをした素晴らしい夜だった。なんていう夜だ。夜が明けて彼はもういないけどあの素晴らしい夜とキスを忘れない。ああなんいう素晴らしい夜だったんだろう」
3.Such A Night//Dinah Washington

次の曲は個人的にすごく好きな曲でジャズ・スタンダードとして有名な曲です。
「あなたは私のことを想って寂しくて一晩中泣き明かしたというけど、私はあなたのことが好きで川の水のように涙を流してたくさん泣いてきた。あなたに気が狂うほど夢中になったけどその間あなたは涙ひとつ流さなかった。いま愛してるって言うのならそれを私に証明して涙を川のように流して見せて(Cry Me A River)」
愛してきた男から愛を得られなかった女性が今更なんだ、泣いて見せろという、ある意味怖い歌。
ダイナのブルーズ・フィーリングにあふれた素晴らしい歌です。
4.Cry Me A River/Dinah Washington
余談ですが歌謡曲に「黄昏のビギン」という曲があるのですが、それと今の曲が似ていると言った人がいますが、なんとなく似てますかね。僕は黄昏のビギンも好きです。

最後はやはり「ブルーズの女王」なのでブルーズを。
彼女はかなり難しい性格の女性だったらしく結婚も7回しています。何度も結婚した彼女の言い分は「フラれそうになったらフラれる前にフって別れるのよ」というものですが、女性が男性に頼って生きていた時代に稼ぎもあり名声もあった自立した女性の言葉です。
「ひどい男に惚れてしまって消えない心の痛みを持ってしまい悪いブルーズに取り憑かれたのよ」
5.A Bad Case Of The Blues/Dinah Washington
たくさんのダイエットの薬と酒を一緒に飲んでしまい39歳の若さで亡くなったダイナ。
今も多くの女性シンガーに愛されて、彼女の歌は歌い継がれている。

2021.01.22 ON AIR

現代一流のブルーズ・ハーモニカ・プレイヤー、
キム・ウィルソンの新譜

Take Me Back / Kim Wilson (BSMF-2714)

ON AIR LIST
1.Strollin’/ Kim Wilson
2.Last Time / Kim Wilson
3.Slow Down/Kim Wilson
4.No Place To Go/Kim Wilson
5.Out Of The Fryin’ Pan/Kim Wilson

昨年10/28にBSMFレコードよりリリースされた日本盤で聞きます。
キム・ウィルソンは、1951年生まれで私とほぼ同年代。70年代半ばからテキサスで知り合ったギターのジミー・ボーンと「ファビュラス・サンダーバード」を結成して70年代終わり頃からコンスタントにアルバムをリリースしていた。テキサスではブルーズの有名ライヴハウス「アントンズ」でハウスバンドとしてずっと演奏をし、ツアーでテキサスにやってくるブルーズマンたちのバックバンドもやり力を蓄えていた。
私がファビュラスを知ったのは70年代の終わり頃でロスにいた白人のブルーズフリークにカセットテープをもらったのが最初。白人のブルーズバンドにありがちなやたらギターが出てくる感じはなくて、キムのハープと歌を中心にバンドの一体感が素晴らしかった。まさにブルーズバンドという感じだった。ジミーが脱退してしまったが今もファビュラスは続行しているが、このところキムのソロでの活躍が目立つ。
今回のソロアルバムは三年ぶりです。
まずはキムのハーモニカのすばらしさが聞けるインストの曲
1.Strollin’/ Kim Wilson

キム・ウィルソンは現代のブルーズ・ハーモニカを代表するプレイヤーで自身の「ファビュラス・サンダーバード」だけでなくボニー・レイットはじめ多くのミュージシャンのアルバムにゲスト・プレイヤーとして参加している。実際、テクニックがあるだけでなくこれだけパワフルに多彩にブルーズ・ハーモニカが吹けるプレイヤーは黒人、白人問わずあまりいない。
次の曲はシカゴ・ブルーズの名盤と呼ばれているジミー・ロジャースのアルバム「シカゴ・バウンド」に収録されている。
ジミー・ロジャースの曲あたりはキムにとってはもうお手の物という感じだろう。
2.Last Time / Kim Wilson

一曲ラリー・ウィリアムズのR&Rがカバーされている。1958年にラリー・ウィリアムズがスペシャルティ・レコードから”Dizzy Miss Lizzy”のシングのB面として歌った曲で、僕は最初ビートルズがカバーしているバージョンで知った。懐かしいロックンロールだ。
3.Slow Down/Kim Wilson
今のSlow Downでキムはハーモニカを吹かないで歌だけ歌っている。歌が貧弱だとその分ギターとかハーモニカとか楽器の演奏に重点が置かれてしまうのだけど、キムの歌はパワフルで十分聞き応えがある。

自分のバンド”ブルーズ・ザ・ブッチャー”にもハーモニカのコテツくんがいるが、ハーモニカという楽器はいい楽器だ。手頃でどこでも練習できるし、一人でもバンドでも演奏できて音もアンプを通すのもいいし、生の音もいいし、一家に一つハーモニカ!
今回のアルバムはオリジナルとあまり手の込んだアレンジをしていないカバーと二つのテイスト、
「お前が俺の人生をめちゃくちゃにしてからえらい長い時間が経った。俺は年も取って頭も白くなって、行くところもない。俺を捨てて若い男を手に入れるんやろ」
4.No Place To Go/Kim Wilson
今回のこのキムのアルバムでギターを弾いているのがビッグ・ジョン・アトキンソン。見た目おっさんなんですが、彼は1988年生まれだそうでまだ32才。フロリダ生まれで10代でギター弾き始め古いブルーズに興味を持って、18才の時にラスベガスへ移り住んでそこでいろんなミュージシャンとセッションしたりして、その後移ったテネシーで初めて自分のバンドを結成。その後南カリフォルニアに移って初めてのアルバム”House Party At Big Jon’sをリリース。シカゴブルーズ・スタイルのギターが多い感じがするが、多分なんでも弾ける人だと思います。自分のソロ・アルバムやライヴにもキムが参加している。
他の参加メンバーはビリー・フリン(ギター)、キッド・アンダースン(ギター)、バレルハウス・チャック(ピアノ)、ラスティ・ジン(ギター)、ボブ・ウェルシュ(ギター、キーボード)、トロイ・サンドウ(ベース)、マーティ・ドッドソン(ドラム)
2016年に亡くなったバレルハウス・チャックの名前があるところから数年前の録音も入っていると思う。

最後にもう一曲キムのハーモニカがフィーチャーされたインスト曲
5.Out Of The Fryin’ Pan/Kim Wilson
とても力強く押しがある中で細かい技も出しているハーモニカでいい。ビッグ・ジョン・アトキンソンのサボートもいい感じ。
16曲収録されている中の9曲がカバーでトラッドな演奏になっているけど古い感じはしない。こういうサウンドやグルーヴが好きなミュージシャンたちが集まって自然とできたトラッドなブルーズのスタイルだと思う。
今日は昨年10月にリリースされたキム・ウィルソンの新譜”Take Me Back”を聞きました。
来日もして欲しいキム・ウィルソン。

2021.01.15 ON AIR

ネイティヴ・インディアンの血をひくギターの名手、ジェシ・デイヴィスが残した音楽

Red Dirt Boogie: The Atco Recordings 1970-1972 /Jesse Ed Davis

ON AIR LIST
1.Statesboro Blues/Taj Mahal(Guitar:Jesse Ed Davis)
2.Red Dirt Boogie,Brother/Jesse Ed Davis
3.Sue Me,Sue You Blues/Jesse Ed Davis
4.Crazy Love/Jesse Ed Davis
5.Kiowa Teepee/Jesse Ed Davis

前回はネイティヴ・インディアンがアメリカのポピュラー・ミュージックに及ぼした影響を描いた映画「RUMBLE」にまつわる曲をON AIRしたのですが、今回はインディアンの血を引くミュージシャン、ギタリストとして60年代終わりから70年代にかけて活躍したジェシィ・エド・デイヴィスです。
早くからネイティヴ・インディアンの血を引いていることを表明していたジェシィ・デイヴィスは素晴らしいギタリストだったのですが、44歳という若さで亡くなっているので若い人たちには馴染みがないかも知れません。
エリック・クラプトンの”No Reason To Cry”、ジョン・レノンの”Rock And Roll”,ジョージ・ハリソンの”Extra Texture”他様々なミュージシャンのアルバムにゲスト・ギタリストとして客演しています。僕がジェシィ・エド・デイヴィスの名前を知ったのは、オールマン・ブラザーズの”Statesboro Blues”という曲でのデュアン・オールマンの素晴らしいスライドギターが、実はタジ・マハールのアルバムで同じ”Statesboro Blues”でギターを弾いているジェシィ・デイヴィスの影響らしいと聞いて、そのタジのアルバムを聞いたのが最初です。
1968年のアルバム”Taj Mahal”から
1.Statesboro Blues/Taj Mahal(Guitar:Jesse Ed Davis)
オールマン・ブラザーズのこの曲を知っている人は、1972年のオールマンのフィルモアのライヴでのデュアンのスライド・ギターがジェシ・ディヴィスの影響を受けたことがわかると思います。ギターの音色もいい素晴らしいプレイでデュアンが影響を受けたのもわかります。
ジェシィ・デイヴィスは1971年にソロ・アルバム”Jesse Davis”と翌72年に”Ululu”をリリースしてます。その二枚を一枚にまとめた”Red Dirt Boogie: The Atco Recordings 1970-1972 “というアルバムから今日は何曲か聞こうと思ってます。
ジェシィ・デイヴィスは60年代中頃から地元オクラホマを中心に「コンウェイ・トゥッティ」というバンドで活動していましたが、60年代終わりになってウエストコーストに移ってから当時ブルーズをやっていた、タジ・マハールと出会い彼のバンドに加入します。いま聞いてもらった”Statesboro Blues”は68年の録音ですが、その頃からギタリストとして評判になり69年にタジのバンドを離れてからはアルバート・キングやウィリー・ネルソンのレコーディングなどに参加し始めます。そして71年にソロ・アルバム”Jesse Davis”のリリース、そして翌年に”Ululu”をリリースとなります。では、まずその”Ululu”に収録されたこの曲から。ビートにインディアンのテイストがあると思うのですがどうでしょう。
2.Red Dirt Boogie,Brother/Jesse Ed Davis
ギター、ものすごくいい音してます。土着的でありながらファンキーでもちろんブルーズのフィーリングもあり当時こういうサウンドは初めてだった気がします。
次はジョージ・ハリソンが作った曲で、ジョージの1973年のアルバム”Living In The Material World”に収録されてます。ジェシ・デイヴィスはジョージの有名なバングラディシュ・コンサートにも参加していますが、この73年頃は、レオン・ラッセルやクラプトン、ローリング・ストーンズなどイギリスのミュージシャンとの交流も多くてホブ・ディランと共演もしています。ギターも上手いけど性格もよかったそうでいろんな人に誘われていた頃です。
3.Sue Me,Sue You Blues/Jesse Ed Davis
曲名のSue Me,Sue You のSueというのは訴える、告訴するという意味ですが、多分奥さんともめて裁判沙汰になり「君がぼくを告訴して、ぼくも君を告訴するという・・こういうこともういい加減やめないか」という意味の歌だと思います。昔愛し合っていたのに告訴し合うってイヤですね。

80年代に入るとジェシィはドラッグ中毒から抜け出すのに時間がかかるようになり活動が減って行き88年に亡くなってしまいました。
ギターの名手というだけでなく音楽的才能もセンスもある人だけに残念です。
次は最初のアルバム”Jesse Davis”に入ってる曲です。作ったのアイルランドのレジェンド、ヴァン・モリソンですが、愛する彼女から溢れるほどの愛を与えてもらえる喜びを歌ったものです。モリソンの70年のアルバム「ムーンダンス」に収録されています。
4.Crazy Love/Jesse Ed Davis
ジェシィは「スワンプロック」というジャンルで語られることが多いのですが、スワンプとは南部の湿地帯のことですからなんかジトジトした梅雨時のようなサウンドを思い浮かべる人いるかと思いますが、まああまり洗練されていない土臭いロックのことです。70年代の初中期にブルーズやリズム&ブルーズ、ゴスペルという黒人音楽とカントリー、ヒルビリーと言った白人音楽がミックスされたものです。その代表的なバンドがデラニー&ボニーです。そのデラニー&ボニーのサウンドに惚れ込んだのがクラプトンですが、ジェシィ・デイヴィスのことを気に入ったのがビートルズのジョージ・ハリソンです。その時代からレオン・ラッセル、ボブ・ディラン、デイヴ・メイソンなども加わりアメリカとイギリスのロックの交流が盛んになっていきます。
スワンプロックのテイストは同時代のサザンロックのオールマン・ブラザーズなんかも被ってます。

もう一曲。ネイティヴ・インディアンのトライヴであるカイオワ族のティーピーとはテントのことです。
5.Kiowa Teepee/Jesse Ed Davis

映画「RUMBLE」でもジェシィのことが取り上げられていますので機会があれば是非映画もご覧ください。
次回は現在最高のハーモニカ・プレイヤーのひとり、キム・ウィルソンのニューアルバムを聴きます。
Hey Hey The Blues Is Alright!

2021.01.08 ON AIR

ネイティヴ・インディアンの音楽がアメリカの音楽に残してきたもの~映画「ランブル」を観て

Link Wray & The Wraymen (Oldies ODR 6165)

THE COMPLETE RECORDED WORKS/Charlie Patton (P-VINE PCD2255)

Lighting And Thunder/The Golden Eagles (Rounder Records CD 2073)

Electric Lady Land/The Jimi Hendrix Experience (MVCE 24029)

ON AIR LIST
1.Rumble/Link Ray
2.Screamin’ And Hollerin’ The Blues/Charlie Patton
3.Shoo-Fly/The Golden Eagles featuring Monk Boudreaux
4.Gypsy Eyes/Jimi Hendrix

ネイティヴ・インディアンがアメリカの音楽に及ぼした影響を追求した映画「ランブル」が去年の10月から全国順次公開されたのですが、皆さんはご覧になりましたか。
とても興味深い、教えられることの多い映画でした。
ロックのジミ・ヘンドリックスやジェシ・エド・ディヴィス、またブルーズのT.ボーン・ウォーカーなどがインディアンの血を引いているというのは知っていましたが、実に多くのミュージシャンがネイティヴ・インディアン系であることを驚きました。

映画のタイトル「Rumble」は50年代の終わりから60年代にかけて活躍したギタリスト、リンク・レイの曲名から取ったものです。
リンク・レイはライヴ・ステージでのサウンドが歪んだ感じが欲しかったので、ギターアンプのスビーカーにわざわざ穴を開けて音を歪ませたそうです。今はディストーションというエフクターがありそれで音を歪ませているのですが、当時はエフェクターかせなかったので無茶なことをしたわけですが、これがギター・サウンドとしては革新的な音になったわけです。
現在のハード・ロック、ヘヴィ・メタルやパンクのサウンドの第一歩がこの曲と言われているのがわかるワイルドな曲です。
1958年。
1.Rumble/Link Ray
リンク・レイはお母さんがチェロキー族のネイティヴ・インディアンだったのですが、この曲のリズム、ビートの中にネイティヴ・インディアンのプリミティヴなビートが聞こえてきます。リンク・レイは肺が悪かったので歌うのが難しくて こういうギター・インストの曲をたくさん作りました。それにモロ影響を受けて、リンク・レイがいなかったらギターは弾いてなかったと公言しているのが映画にも出てきますが、ピート・タウンゼント。彼のバンド「ザ・フー」の曲を思い出してもらうとリンク・レイの影響がわかると思います。
そのほかレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジなどリンク・レイの影響を受けたロック・ギタリストはたくさんいます。

映画「ランブル」ではアメリカのボビュラー・ミュージックにインディアンの音楽が与えた影響と、インディアンの血をひくミュージシャンたちが無意識に自分の体の中にあるインディアンのグルーヴを音楽に残していることが解明されています。
デルタ・ブルーズのキングと呼ばれるチャーリー・パットンのブルーズの中にそれがあることを解明するシーンがぼくにとっては一番興味深かった。
チャーリー・パットンが活躍した1920年代から30年代時代には当然まだエレキ・ギターはなかったが、彼はアコースティック・ギターでギターのボディを叩いたり、高音部でチャーキングするワイルドなスキルを披露しています。全体的にパーカッシヴでリズムがよくてとてもダンサブル。聞いてもらう次の曲でもギターのボディを叩く音が聞こえます。
2.Screamin’ And Hollerin’ The Blues/Charlie Patton
チャーリー・パットンは自分に流れている血のことを尋ねられることが嫌いだったそうです。黒人なのかインディアンなのか白人の血も入っているのかとか聞かれる容貌なので・・でも、パットンはそういう時に「オレがいまここにいる。それだけで十分だろう」と言ったそうです。
本当にそうです。何人であろうが、どういう血を引いていようがその人間が今生きていてそこにいるだけで充分です。
「ランブル」の映画の中にひとり知っている人が出てきました。ニューオリンズのマルディグラ・インディアンのトライブのひとつ、ゴールデン・イーグルスのビッグチーフであるモンク・ブードロー。僕が90年代にニューオリンズに行くようになって最初に感動したのはこのゴールデン・イーグルスとワイルド・マグノリアスというインディアンのライヴでした。
聞いてもらうとわかるのですが、ギターとかピアノとか和音を出す楽器がなくてタンバリンとコンガにバスドラにカウベルという打楽器と歌だけというとてもプリミティヴな、ストレートでグルーヴのある演奏でエレクトリックな音に慣れてしまっている自分にとってとても新鮮で刺激的なサウンドでした。
3.Shoo-Fly/The Golden Eagles featuring Monk Boudreaux
モンクは日本にもきているので聞いたことがある人もいると思いますが、優しいとてもいい人でした。
こういう土着的なサウンドにエレクトリックな音を入れてよりバンド・サウンドにしたものもその後作られて、僕の盟友の今ニューオリンズで活動しているギターの山岸潤史が加入したワイルド・マグノリアスはエレクトリックサウンドを入れてある種ファンク化、マルディグラインディアン・ファンクしたことですごく人気が出ました。あの頃のニューオリンズは本当に楽しくて、僕はアメリカでいちばん好きな街がニューオリンズになりました。

ロックのジミ・ヘンドリックスはインディアンのトライブのひとつチェロキー・インディアンの血を引いていることを公言しており、彼の作った曲の中にはインディアン音楽の要素が入ってると言われています。次の曲は古いブルーズのフィールドハラー(畑で働くときに歌われる労働歌)がベースになっているのですが、どこかにインディアンのワイルドなグルーヴが入っている気がしませんか。
1968年リリースの「エレクトリック・レディ・ランド」から
4.Gypsy Eyes/Jimi Hendrix

映画の中では奴隷から逃亡した黒人たちが追ってくる白人たちから逃れるために、インディァンの部族に助けてもらってかくまわれた話も出てきます。インディアンはアメリカの先住民族にもかかわらず、後からヨーロッパからやってきた白人たちに土地を奪われ居住区という地域に住むことを強制させられるというひどい目にあったわけです。白人は黒人を奴隷としてアフリカから連れてきただけでなく、先住民のインディアンから土地をうばうという全く理不尽なこともやってきたわけです
映画でブルーズのハウリン・ウルフにもチョクトー族というインディアンの種族の血が流れていると知り驚きました。ウルフはアフリカン・アメリカンだと思っていました。しかし、彼が持っているすごくワイルドなフィーリングはリンク・レイやジミ・ヘンドリックスに似ているかも知れません。
今日は映画「ランブル」から映画に関係していいるミュージシャンの曲を聞きました。
ぜひDVDで出してもらいもう一度観たい映画です。

来週はネイティヴ・インディアンであること早くから隠さなかったギターの名手、ジェシ・ディヴィスの特集。
ジョージ・ハリソン、エリック・クラプトン、ローリング・ストーンズなど多くのミュージシャンに愛されたジェシ・エド・デイヴィスです。お楽しみに。

2021.01.01 ON AIR

2021年新年あけましておめでとうございます!

That’s What I Heard / Robert Cray Band (NOZZLE Records 72098CD)

Rawer Than Raw / Bobby Rush (Deep Rush Records/BSMF-2713)

Living On Mercy / Dan Penn (LMCD-219)

ON AIR LIST
1..Hot/Robert Cray
2.Burying Ground/Robert Cray
3.Down In Mississippi/Bobby Rush
4.Smokestack Lightning/Bobby Rush
5..I’ll See You In My Dreams/ Dan Penn

ブルーズの王様と呼ばれたB.B.キングは生前「全ての人がブルーズを持っている。黒人であろうが白人であろうがどんな人種でも、また貧しくてもお金を持っていても地球上の全ての人間にブルーズはある」と言いました。その言葉のように昨年から猛威をふるっているコロナ・ウィルスは地球上のすべての人にとって逃れられない大きなブルーズになっています。そして一つの大きな試練になっています。
この番組も本来ならキー・ステーションの弘前のアップルウェーブで収録しているのですが、去年の夏前から感染拡大を防ぐために住んでいる東京からリモート録音が続いています。
コロナ・ウィルスに対する考え方は人それぞれあると思うのですが、僕も高齢者ということもあり、また知り合いの医療関係者の方たちの苦労を考えると自然と自粛という方向になっています。弘前に行きたいのは山々ですが、リモート録音しているのも自粛の一つです。ライヴもお客さんを入れてのライヴはやってません。ツアーもやっていません。ほぼ月に一度の無観客配信ライヴだけです。普段も必要のない限り出歩くことはしていない。そこから生まれるストレスや不安はみなさんと同じようにあります。でも、思うように活動できないこの時間の中で自分が今までやってきた音楽活動を振り返り、これからのことを考え準備するための時間なのだと思っています。そして、リモートですがこの番組をやれることが自分自身の大きな活力になっています。そしていま日本でいちばん大きく充実したブルーズのラジオ番組のアーカイヴスを残そうと思っています。
今年もよろしくお願いします。

今日は去年リリースされたアルバムで紹介できなかったものや、去年印象に残ったアルバムから今日は聞いてみたいと思います。
ブルーズに関してはここ10年くらいの間にB.B.キングはじめレジェンドと言われたブルーズマンが亡くなってしまい、かと言ってこの番組で心から聞いてもらいたいと思う新人のアルバムも新譜も少ないのが現状です。
そんな中、もうすっかりベテランになったロバート・クレイが去年2月にリリースしたアルバム”That’s What I Heard”は本当に素晴らしかった。
ブルーズン・ソウルという言い方は70年代に始まった古い言葉だが、クレイのことを僕はブルーズとソウルの両方のテイストがあるブルーズン・ソウルの歌手だと思っている。最初の曲は60年代はじめ頃のR&Bスタイルのジャンプナンバーだがまったく古さがない。

1.Hot/Robert Cray
正直言うと昔私はクレイがあまり好きではなかった。一つの理由はなんでもソツなくて器用で、引っかかるものがなくてあまり好きではなかった。それがここ数年、そこからまた一皮剥けたと言うか円熟味が出てきた。でも変な大御所感みたいな感じで歌っている訳ではない。
もう一つ、このアルバムはプロデュースとドラムで参加しているスティーヴ・ジョーダンの力が大きいと思う。
この録音チームでもう一枚録音してほしいところだ。
次のようなゴスペルの曲も歌う力量があるブルーズシンガーは今はあまりいない。
オリジナルは1950年代に活躍したゴスペル・グループ、センセイショナル・ナイチンゲイルズ。

2.Burying Ground/Robert Cray
オールドスタイルという言い方で古いものという決めつけをしてしまう人がいるけれど歌手とプレイヤー、プロデューサー、アレンジャーそしてレコード会社のスタッフたちが古いことをやっていると思わなければ、それは新しい音楽なのだと僕は思う。逆に新しいことをやっているようで実はそれが少し前のものだと感じた瞬間にもう古いものになってしまうこともある。今の曲には今を生きているロバート・クレイとスティーヴ・ジョーダンはじめスタッフ全員の生きている感じがすごくする。生命力のある音楽だ。
ロバート・クレイは今年68歳、ますます磨きのかかったいいブルーズマンになってきた。ちょっと上から目線で申し訳ない。

次は87歳になったボビー・ラッシュ。去年リリースしたニューアルバム”Rawer Than Raw”は番組で紹介できなかったが、今回はアコースティック・アルバムで歌、ギター、ハーモニカ、そしてバスドラム代わりのフットストンプ(足音)を全て一人でやっている。
しかし、曲の半分をボビーが書いていて気力は全く衰えていない。まずはそのオリジナルを。

3.Down In Mississippi/Bobby Rush
歌、ギター、ハーモニカが格別上手い訳ではないのに曲全体から匂うものがブルーズという感じ。長い間クラブ・ツアーのチトリン・サーキットを回ってきたボビーの原点がわかるようなアルバムだ。

次はハウリン・ウルフのカバー。女にフラれて汽車に乗って街から去っていく歌だが、毎回出てくる”don’t ya hear me cryin’?”(俺が泣いているのが聞こえないのかい)という一節が切なくてと耳に残る。汽車の煙突のことを歌っているのだが「煙突の閃光」とでも言ったらいいのだろうか。

4.Smokestack Lightning/Bobby Rush
今年はずっと聴いてきたダン・ペンが新しいアルバム”Living On Mercy”をリリースしてくれたのも嬉しかった。変わらないいつもの歌声に彼独特のゆったりした曲がちりばめられたアルバムで、これでホッとした人も多かったのではないかと思う。

5.I’ll See You In My Dreams/ Dan Penn
コロナ・ウィルスの収束が早く来ることを願ってます。コロナ・ウィルスを甘く見ないで一人一人ができることで感染を防ぎましょう。人間生きててなんぼのもんです。
今年もよろしく!
Hey,Hey,The Blues Is Alright!