2018.10.26 ON AIR

追悼:アレサ・フランクリンの偉大さ vol.1
アレサのヒット曲


Aretha Franklin/The Very Best Of Aretha Franklin vol.1(Atlantic/RHINO/Waner Music WPCR-26221)

20181026-2

ON AIR LIST
1.Respect/Aretha Franklin
2.I Never Loved a Man (The Way I Love You)/Aretha Franklin
3.Chain Of Fools/Aretha Franklin
4.You Make Me Feel Like A Natural Woman/Aretha Franklin
5.Think/Aretha Franklin

去る8月16日に偉大な女性ソウル・シンガー、アレサ・フランクリンが亡くなりました。
ツイッターはじめSNSには世界中から追悼のメッセージが溢れて、テレビのニュースでも取り上げられ改めて多くの人が彼女の存在の大きさを確認したと思います。
60年代から70年代の黒人女性シンガーたちにとってアレサはまさに尊敬しうる、ソウル・ミュージックの女王でしたが、結局いまもアレサに代わるソウルの女王と呼ばれるシンガーはいないと思います。
多くの女性シンガーが影響受けたシンガーとしてアレサの名前を上げていますが、それは音楽的にだけでなく自立した女性として、意見や意志をしっかりもった女性としても彼女は尊敬の対象でした。
アレサが表舞台に登場した60年代半ば、当時高校生だった僕は毎晩夜になるとラジオの洋楽番組を聴いていました。お目当てはビートルズやストーンズなどのロックバンド。そんな中時折ヒットチャートに入ってくるシュプリームスのようなポップな黒人ソウルもありましたが、サザン・ソウルやディープソウルと呼ばれるような強烈な黒人らしさをもった曲はほとんどチャートには出てきませんでした。ところがある日、新しい黒人シンガーの紹介ということで流れたのがアレサ・フランクリンのこの曲だった。
「あなたが欲しいものはあげてるし、あなたが必要なものもあげてるよね、でも、家に帰ってきたらわたしをリスペクトして、私に敬意を払って、R.E.S.P.E.C.T(リスペクト)それがどんな意味があるのか考えてほしい、T.C.B.(Take Care Of Your Bussiness/ちゃんとしっかりしてね)
私がいなかったらどうするの」
1967年R&B POPチャート両方で1位の大ヒット
1.Respect/Aretha Franklin
この曲はその2年前1965年にオーティス・レディングがヒットさせていて、アレサはカバーをした訳ですがこれがなんとミリオン・セラー。アレサはオリジナルの歌詞も少し変えているのですが、オリジナルのオーティスは”I just lost my song. That girl took it away from me.”と、「僕の曲は彼女に取られてしまった」つまり、あの曲はもうアレサの曲だと言ったそうです。実際この歌はアレサが歌うことで夫婦間のことだけでなく、当時の黒人女性の権利についての主張としてもとらえられました。

今日はアレサのまず忘れられないヒット曲(これがまたたくさんあるのですが・・・)を聴いてみようと思います。
アレサのヒット曲のほとんどは60年代から70年代のアトランティック・レコードに在籍した時期にリリースされたもので、プロデューサーはジェリー・ウェクスラー。彼はアレサがその前に在籍していたコロンビアレコードの頃から、アレサのレコードを作りたいと強く思っていてコロンビアとの契約が切れると真っ先に契約を申し出たそうです。
そして、ニューヨークに住むアレサをアラバマの田舎街のマッスルショールズのフエイムスタジオに連れていってレコーディング。アレサはニューヨークに素晴らしいミュージシャンがいるのになんでこんな田舎へ来なきゃアカンのか・・・と思ったそうです。
でも、マッスルショールズにはジェリー・ウェクスラーの狙い通りの彼女にぴったりのサウンドがありました。
アレサの最初のヒット曲です。
2.I Never Loved a Man (The Way I Love You)/Aretha Franklin
この曲のヒット以降、60年代のほとんどはマッスルショールズのキーボードのバリー・バケット、ギターのジミー・ジョンソン、ベースのデビッド・フッド、ドラムスのロジャー・ホーキンスというメンバーで録音が行われました。
翌年1968年には”Lady Soul”というアルバムがリリースされるのですが、このアルバムのタイトル「レディ・ソウル」「淑女のソウル」という呼び名が本当に当時のアレサにふさわしいものでした。この頃のアレサは曲だけでなく、衣装や喋る内容もそうですがセクシーさとか色っぽさで売るのではなく、男性と対等のひとりの人間としての歌として扱ってほしいという想いがあったと言います。品格のようなものを大切にしていたと思います。
そのLady Soulの一曲目、僕はこの曲がめちゃめちゃ好きです。
自分ひとりが彼女だと思っていたら男にはチェーンでつながっている玉のようにいろんな女(Fools)がいて、自分はそのひとりでしかなかったという歌。でも、このチェーンはね、いつか切れるてしまうよ。・・・まあ、その男に「ええ加減にせえよ」という強い歌です。
3.Chain Of Fools/Aretha Franklin
この歌をアレサは当時の旦那だったテッド・ホワイトに向けて歌ったと言われている。曲が売れて有名になって幸せになっていくように見えていたアレサの私生活は、実はアレサが稼いだお金目当てで女遊びをするしかも暴力もふるう旦那によって幸せではなく、アレサは酒浸りになっていたといわれてます。
でも、このアルバム”Lady Soul”にはもうひとつアレサが生涯歌った名曲、彼女がそんな幸せでない私生活を送りながらも自堕落にならない立派な女性でいたいという思いをこめたこの歌があります。
4.You Make Me Feel Like A Natural Woman/Aretha Franklin
キャロル・キングとキャロルの当時の旦那さんだったジェリー・ゴフィンが作った名曲です。
「あなたに会うまでは辛くて悲しい日々だったけど、あなたと出会ってからは私の心は穏やかになっていく。そして、あなたは私をナチュラル・ウーマンにしてくれる、つまり自然な女、ありのままの自分にあなたはしてくれる」という歌ですが、実はこの歌の「あなた」はひどい旦那のデッド・ホワイトではなく、アレサは神様をあなたとして歌ったと言われています。
そういう言われて聴くと確かにこの歌から感じるゴスペル・テイストは、そういうことなのかと納得です。ラブソングではない何かをこの歌は含んで歌われたんですね。
そして、同じ68年にはもう一枚素晴らしいアルバム”Aretha Now”がリリースされています。
ブルーズ・ブラザーズの映画でソウル・フード店の女将の役で登場したアレサ。ぴったりでした。うだつの上がらない旦那役のマット・マーフィもぴったりでした。そのシーンで歌われたこの歌。「私たちはお互いに必要なんだからもうすこしあんた、考えてくれへんか」
これはアレサのオリジナルです。
5.Think/Aretha Franklin
こうして聴いてくるとアレサはどうしょうもない、ひどい自分の旦那に向けて歌の中で訴えたり、怒ったり、嘆いたりし、どこかで神様に救いを求めて歌っていたのかも知れません。

来週はこの番組らしくブルーズ・テイストのアレサの歌声を聴きたいと思います。

2018.10.19 ON AIR

反骨のブルーズマン、J.B.レノアのシングル・コレクション

I wanna play a little while(The Complete Singles Collection 1950-1960)/J.B.Lenoir (Jasmine JACD-809)
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ON AIR LIST
1.Korea Blues/J.B.Lenoir
2.Let’s Roll/J.B.Lenoir
3.Mama Talk To Your Daughter/J.B.Lenoir
4.Don’t Touch My Head/J.B.Lenoir
5.Eisenhower Blues/J.B.Lenoir

 
最近、大好きなJ.B.レノアのコンプリート・シングル・コレクション1950~1960というアルバムをゲットしました。アルバムタイトルは「I Wanna Play A Little While(オレはすこしの間演奏したい)」ですが、CD二枚組全30曲収録されています。
2015年にイギリスのジャスミンレコードからリリースされてます。今日は50年代のシカゴのブルーズ・クラブにJ.Bルノアを聴きに行きましょう!ビールでも用意してください。

大好きなレノアなので30曲もあるとON AIRしたい曲がありすぎて選曲に悩むところですが、まずいちばん最初のシングルを聞いてみましょう。
1950年録音、僕が生まれた年ですね。シカゴ「チェス・レコード」での録音でピアノがサニーランド・スリム、ギターリロイ・フォスター、ドラムがアルフレッド・ウォーレンスというメンバー。
レノアは発売禁止になった政治社会ネタのブルーズも歌った強いプロテストの意志を持ったブルーズマンですが、最初のシングルからブロテスト・ブルーズです。
「アンクルサム(アメリカ政府)がオレをここから追い出すってなんでだ。やつはこう言うんだ・・オマエが韓国で必要なんだと。恋人よ、心配しないでくれ。空を飛行機で飛び初めている。中国人に撃墜されてコリアのどこかで死ぬだろうよ・・・」と戦争に行きたくない、徴兵されたくない気持ちを歌っている。
1.Korea Blues/J.B.Lenoir
第二次世界大戦がやっと終わったのにまた徴兵で朝鮮に行かなくてはいけない黒人たちの気持ちを代弁したようなブルーズ。
レノアの才能を見つけてクラプやレコーディングの面倒をみたのは、いろんなブルーズマンの面倒をみた偉大なビッグ・ビル・ブルーンジー。
51年からはJOB、パロット、チェッカーとレコード会社を渡り歩きながらレノアは確実に充実した自分のブルーズを作り上げていきます。次はJOBレコードに残したダウンホーム感とモダンさが混じったいかにもJ.B.レノアらしいシャッフル・ビートでたまらんグルーヴ感です。
2.Let’s Roll/J.B.Lenoir
ピアノとギターとドラムが混然一体となったサウンドとグルーヴが当時のシカゴブルーズの匂いを感じさせるダンス・ナンバーです。

僕は自分のバンド「ブルーズ・ザ・ブッチャー」でMojo Boogie,Feel So Good,Voodoo Musicとレノアの曲をカバーしていますが、次の曲も昔マジック・サムのカバーをカバーしてました。サムのバージョンは若いのでテンポも早くてソリッドでエッジが効いてますが、このオリジナルのレノアのブギにも腰が動いてしまいます。1955年この曲はR&Bチャートの11位まで上がってます。
3.Mama Talk To Your Daughter/J.B.Lenoir
独特のポップな感じがあります。

J.B.レノアはパーカッションとデュオでやったり、ピアノ、ドラムと自分のトリオでのものだったり、次のようなしっかりしたバンド形態にホーンを二本入れたものだったり、いろんなパターンがあるのですが、どれも聞き応えがあるところが素晴らしい。つまり本人がどういう形でやろうとブレていないということです。
次のはアルト・サックスとテナー・サックスを加えてベースはシカゴ・ブルーズのフィクサー、ウィリー・ディクソンです。
タイトルはDon’t Touch My Headですから「オレの頭にさわるな」ですが、黒人のブルーズやリズム&ブルーズの曲には頭というかヘアースタイルとかウィグ、かつらとかのネタがよくあります。これも「靴もピカピカに磨いて、ダイヤの指輪もはめてんねん、ヘアースタイルもばっちりやからオレの頭に触んなよ。さわったらぶっとばすで」やっぱりかなりヘアースタイルにはナーバスなんですかね。
4.Don’t Touch My Head/J.B.Lenoir

レノアのすごいところはすべて自作の曲であり、そのハイトーンの歌声もいっぱつでレノアとわかるもので、つくる曲も政治的社会的なプロテストな内容のものがあったり、と思えば独特のシャッフル・ビートのダンサブルなものがあったり、すべてが個性的であるところです。よく着ていたシマウマ柄のジャケットも彼のトレードマークでした。
毎日畑仕事を手伝っていたミシシッピーを15才(中学三年です)で出てからニューオリンズに行って、そこからシカゴまで上がってきて最初は精肉の加工工場で働きながらクラブで演奏できるチャンスをねらっていた彼のことを思うと、38才の若さで交通事故で亡くなったのは本当につらい。
最後は当時のホワイト・ハウス筋から大統領のアイゼンハワーを批判した歌としてクレームがついて発売禁止なったブルーズ。
「金はないしや、楽しいこともない。なんでって稼いだ金ぜんぶ税金で取られるんやから。1セントもないや。家賃も払えんし、オレの彼女は服も靴も買えへん。どないせぇっていうねん。オレは大統領のアイゼンハワーのせいでどつぼや。めちゃブルーや。この世はどないなってんねん」
J.B.レノアはやっぱり気骨のあるブルーズマンです。
5.Eisenhower Blues/J.B.Lenoir

結局二枚組の一枚の中から5曲しか聞けなかったので、またいつかもう一枚聞きます。
J.B.レノア・・・どのアルバムもいいです。是非ゲットしてください。

2018.10.12 ON AIR

追悼:愛すべき、忘れがたいブルーズマン、レイジー・レスター

They Call Me Lazy(OLDAYS 6208)

They Call Me Lazy(OLDAYS 6208)

blues stop knocking'(Antone's TMG-ANT 0051)

blues stop knocking'(Antone’s TMG-ANT 0051)

 

ON AIR LIST
1.They Call Me Lazy/Lazy Lester
2.I Hear You Knockin’/Lazy Lester
3.I’m Not A Fighter/Lazy Lester
4.I Love You Baby/Lazy Lester
5.Lonesome Highway Blues//Lazy Lester
 

大好きなブルーズマン、レイジー・レスターが亡くなってしまった。
好きなミュージシャンの訃報ばかりで気が滅入る。自分が好きだった音楽が、もうライヴでは聴けなくなり、残された音源だけになってしまうのはやはり寂しい。
レイジー・レスターは今年5月に公開された映画「I AM THE BLUES」でその元気な姿を観たばかりだった。映画が製作されたのは2015年だったからすでに三年が経っていたのだけれど、ボビー・ラッシュ、バーバラ・リン、キャロル・フラン、リトル・フレディ・キングなどみんな高齢者なんだけど、レイジー・レスターは飄々として陽気でお茶目で元気な様子だった。

芸名は怠け者のレスターだが、本名はレズリー・カーズウェル・ジョンソンと立派な名前だった。1933年生まれ。ルイジアナのバトンルージュの近くで生まれ育った。南部ルイジアナで育ったのになぜか好きになったのがシカゴ・ブルーズのジミー・リードとリトル・ウォルター。当時ジミー・リードとリトル・ウォルターは全国的なヒットを出していたからルイジアナにいても影響を受けたのでしょう。
「ルイジアナ四天王」と呼ばる4人がいて、ロンサム・サンダウン(寂しい夕暮れ)スリム・ハーポ(すらっとしたハーモニカ吹き)、ライトニン・スリム(すらっとした稲妻さん)それにこの怠け者レスターさんですから・・。どうもレコード会社エクセロの社長のジェイ・ミラーが芸名つけるのが好きらしくて「ああ、君、今日からレイジー・レスターで行くで」みたいな感じやったらしいです。
本人は「オレ、別にそんなに怠け者やないで」って言うてます。
ですが、「みんなはオレのこと怠け者っていうねん」という名刺がわりの一曲です
1.They Call Me Lazy/Lazy Lester
こののんびり感。いいですね。
1956年、レスターさん23才の時にエクセロ・レコードに初めて録音します。
前も彼を特集した時に言ったのですが、初レコーディングに至った経緯がほんまかと思うくらい面白いんですが、
まだデビューする前に一日の仕事を終えて(普通の仕事を朝起きて夕方までしてたんでしょう)レスターさんはバスに乗って家に帰ろうとしました。そしたらバスにライトニン・スリムさんが偶然乗ってたんです。スリムさんはレコーディングに行くのにバスに乗ってたのですが、たぶんギターを持ってたんでしょ。その頃スリムさんはちょい売れしてまして、レスターさんは声をかけました。「ええ、すごい!あのライトニン・スリムさんですか・・どこへいかはるんですか」と訊くと、スリムさんが「いまから録音でスタジオへ行くんや」するとレスターさん「ついて行っていいですか」と突っ込みました。まあ、50年代のルイジアナのクロウリーいう田舎街ですからのんびりしたもんです。「まあ、ええけどな・・」とスリムさんに言われて「ラッキー」とばかりにスタジオへついていきました。
そしたら、その日ライトニン・スリムの録音でハーモニカ吹く奴が時間になってもなかなかスタジオに来なかったので、レスターさんは「あの~、僕ハーモニカ吹けるんですよ」と売り込んだんです。エクセロ・レコードの社長のジェイ・ミラーがスリムさんに「スリム、さっきからおるけど誰やねん、こいつ」「いや~。オレもよう知らんのですがバスに乗ってたらついてきたんですよ。君ほんまにハーモニカ吹けるんか・・」「吹けます、吹けます」
それで初レコーディング。それでしばらくそのライトニン・スリムさんのバックでハーモニカとして活躍することになったというほのぼのとした話です。
それで56年初めて自分のレコーディング。それがいまのThey Call Me Lazy。
レイジー・レスターにはロックン・ロールに繋がるビートがあります。歌のテンションは高くなくてダウンホームなんですがバックのビートがステディなロックなんですよ。もう踊るしかないやろみたいなダンサブルなリズムがあります。ダウンホームな歌とバックのステディ・グルーヴの組み合わせがエクセロレコードの魅力のひとつです。
2.I Hear You Knockin’/Lazy Lester
かっこいい曲です。
レスターさんはすごくヒットした曲はないんですが、いい感じのダウンホームとファンキーがミックスされたブルーズを歌った人だった。
エクセロというレコード会社はシカゴブルーズのような重さはなく、ウエストコーストのような洒落た感じもなく、テキサスのようにアグレッシヴでもないんですが、同じレーベルのスリム・ハーポもストーンズなんかに人気のあったブルーズマンですし、ストーンズの新しいアルバムでHoo Doo Bluesをカバーされたライトニン・スリムもエクセロレーベルのブルーズマンなんですが、ダウンホームでありながらビートはしっかりしてファンキー、そしてどこかポップ感があるという微妙なさじ加減はエクセロレコードならではです。
次の曲は60年代のイギリスのビート・グループ、「キンクス」がカバーしています。
3.I’m Not A Fighter/Lazy Lester
自分の彼女にしょかなと思っていたらら体のデカイ強そうな男が出てきて、僕は愛の男で戦う男やないんよ。I’m Not A Fighter。レイジーで怠け者やしね。まあ、ライオンみたいに吠えることも蜂みたいに刺すこともできるけど僕の血の中にはウサギの血が入ってる、つまり優しい?っていうことでしょうか。
70年代レイジー・レスターの名前は聞かなくなり、一時期リタイア状態で80年代にはもう亡くなっているという話もありましたが、87年に「何言うてんねん。オレは生きてるよ」とばかりにアルバム”Lazy Lester Rides Again”で復活、2000年には来日もしました。第7回のパークタワーブルーズフェスでした。
これから聞いてもらうのは2001年にアントンズ・レーベルからリリースされた”Blues Stop Knockin’というアルバムでファビラス・サンダーバードのジミー・ボーンほかアントンズ界隈のミュージシャンたちがバックをしています。
歌の途中でレスターさんの笑声が出るくらい楽しさが満載の曲で、踊り出したくなるような実に気持ちのいいビートが続きます。
4.I Love You Baby/Lazy Lester
映画で見たレイジー・レスターさんは怠け者というより、優しい人でした。顔つきみてもねほのぼのした感じで笑顔がいい感じでした。
最後にダウンホーム、レイドバック・ブルーズの極めつけみたいなブルーズを聞いてください。こういう感じは本当に普段の生活のリズムがこうやないと演奏できないやろと思える曲です。
5.Lonesome Highway Blues//Lazy Lester
夕暮れのハイウェイをぼろい車で走っている感じでした。
映画「I AM THE BLUES」はもう公開が終わってますが、DVD化されていないのでしょうか。それともまだ日本でリリースされてないのかいるんでしょうか。
もし、DVD化されたら是非観てください。レイジー・レスター、本当に愛すべき、忘れられないブルーズマンでした。寂しいです。

2018.10.05 ON AIR

自らの原点を再確認した大西ゆかりのソウル・アルバム
“BLACK BOX”

BLACK BOX/大西ユカリ(テイチク TECE-3489)
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ON AIR LIST
1.Precious Precious/大西ユカリ
2.If Loving You Is Wrong I Don’t Want To Be Right/大西ユカリ
3.Clean Up Woman/大西ユカリ
4.Every Little Bit Hurts/大西ユカリ

大西ゆかりさんが大阪の通天閣の通天閣歌謡劇場ですごく人気のあった「大西ユカリショー」をずっと続けてこられてきたのを知って方も多いと思います。当時はバンド名も「大西ユカリと新世界」でした。大阪ではテレビに出られたり、ラジオのパーソナリティもされているのでよく知られていて、現在もラジオ大阪「GO!GO!フライデーショー!」をされています。
僕は昔神戸のソウル・バーで彼女が働いていた頃から知ってるのは知ってるんですが、自分でバンドやってるヴォーカリスト同士はあまり同じステージがないんです。それでユカリさんともちょこちょことコンサートや飲み屋で会うことはあったんですが、あまりじっくり話したこともないままでした。
それが縁あって最近、ちょくちょく大阪でお会いするようになっています。
彼女は2000年以降の「昭和歌謡ブームの先駆け」として全国的に知られていると思います。でもソウルバーで働いていたぐらいですから、元々ソウルが大好きなんです。それで今回自分のルーツ、原点を見直すというのでソウルのカバー・アルバムを6/20にリリースされました。
ON AIRが遅くなりましたが、今日は大西ユカリの新譜”BLACK BOX”を聴きます。
まずはサザンソウル好きの方にはオーティス・クレイやO.Vライトの歌で知ってる方も多いと思いますが、オリジナル・シンガーは、曲も作った女性シンガー、ジャッキー・ムーア、1970年の大ヒットでした。
1.Precious Precious/大西ユカリ

このゆかりさんのアルバムの収録曲を見た時に真っ先に聴いたのが次の”If Loving You Is Wrong I Don’t Want To Be Right”でした。この曲はソウルの名曲のひとつです。ルーサー・イングラムが1972年にR&B1位ポップチャート3位まで記録した曲で、74年にカバーしたミリー・ジャクソンのバージョンはグラミーにノミネートされてました。ロックのロッド・スチュワートも歌っています。
これは不倫ソングなんですが、タイトルは「もし君を愛することがよくないことなら、私はよくはなりたくない」
本人は嫁も子供もおるのに他の女性を好きになってしまったんですね。周りの人たちはみんな反対してるわけです。そんな恋愛やめとけと。彼女もそんな嫁も子供もおる男なんかやめとけ言われてるんですよ。でも、好きなんですね。それは悪いことやと言われてもそれなら自分は悪くていいよという・・うーん、わからないでもないです。
2.If Loving You Is Wrong I Don’t Want To Be Right/大西ユカリ
I Can’t See You When I Want To I’ll See You When I Can(会いたい時に会えないのなら、会える時に会うよ)この一節もたまらんです。
ユカリさんの歌にとても力と思いがあり、僕はアルバムの中でいちばん好きな曲です。

このアルバムは”Mojo Club”の三宅伸治くんがプロデュースで甲本ヒロトくんとか山崎まさよしくんそれからコーラスにズクナシの3人、ベースは僕のソロアルバムをプロデュースしてくれた中村キタローくん、キーボードはこれまたよく知ってる佐々木久美ちゃんとかがゲストに入ってます。
このアルバムには昔のソウルの曲だけでなく、一曲目は若くしてなくなったエイミー・ワインハウスの曲で、2曲目がここ数年話題のパワフルな女性シンガージャネル・モネイの曲で、ユカリさんが新しい音楽にもアンテナを張ってるのがわかります。でも、今日は僕の好きな曲かけさせてもらいます。

次は70年代に活躍して僕もよく聴きましたマイアミのソウルシンガー、ベティ・ライトの72年の大ヒットでよくディスコやソウルバーで聴きました。そのヒットの頃、歌っているベティ・ライトが18才やというんで驚いた覚えがあります。
これ「私達女が捨てた愛を拾って掃除してくれる女。彼女は彼の悩みもすべて取り去って24時間体勢で彼にいっぱい愛を与える。」
簡単に愛を彼を捨てる女がいるけどそれはダメでしょという歌なんでしょうか。
3.Clean Up Woman/大西ユカリ
いいですよね。前から思ってるんですが、ユカリさんはさっき名前の出たミリー・ジャクソンとかいまのベティ・ライトとかジャッキー・ムーアとか日常の男女の歌が似合うと思います。ある意味ちょっと下世話な歌の方が本領発揮するような気がします。

4.Every Little Bit Hurts/大西ユカリ
ユカリさんは普段は日本語のオリジナルの曲だったり、こういうカバーものでも日本語でやられていることが多いと思うのですが、自分の原点というか自分が歌を始めた、自分の心を動かした曲をカバーするのは僕はとても大事だと思ってます。それをこうしてアルバムにしたり、ライヴで歌ったりするのはオリジナルをやるのとはまた別の大変さがあります。でも、ユカリさんが影響受けた曲をカバーすることで、それを聴いてそのオリジナルを聴く人もいると思います。そうして音楽が洋楽まで広がっていくといいなぁと僕は思います。
がんばってくださいって僕が言わんでも充分がんばってはりますが・・。
いつも言うてるんですが、ゆかりさん、飲み屋やってください。ソウル・バーやなくてソウル飲み屋。お願いします!毎晩飲みにいきますわ。