2015.8.28 ON AIR 「アナログレコードでブルーズを聴こう!シリーズ」第10回

Bobby Blue Bland:Two Steps From The Blues (DUKE Records DLPS 74)
20150828
ON AIR TRACK LIST
1:Two Steps From The Blues :Bobby Blue Bland
2.Don’t Cry No More:Bobby Blue Bland
3.I Pity The Fool:Bobby Blue Bland
4.Cry Cry Cry:Bobby Blue Bland
5.Little Boy Blue:Bobby Blue Bland

 

 

 

今夜はブルーズの名盤中の名盤、ボビー・ブランドの「Two Steps From The Blues 」を聴きます。ボビー・ブランドはモダン・ブルーズの中ではB.B.キングと双璧の屈指のブルーズ・シンガーで、黒人社会では50~60年代にすごく人気のあったシンガーです。でも、いわゆるスタンダップ・シンガー(楽器をもたないで歌だけ歌う歌手)なので、ギターを弾くブルーズマンが好きな日本ではあまり人気がありません。何度も言いますが、ブルーズはヴォーカル・ミュージックなのでギター偏重のブルーズには賛同できないです。
1曲目「君と初めて会ってから一ヶ月が経ったけど君の約束はウソだったとわかった。一歩ずつ僕は馬鹿にされて、いまブルーズへあと二歩のところまで来ている」と、自分の愛が裏切られた歌です。さびの「愛されたり、ほっておかれたり、僕の心はあなたが呼んでくれるのを待っている。まったく愛されないより愛されてそして失った方がましだ」という切ないサビの 「Two Steps From The Blues」はじめ、誠実に彼女のことを愛しているのに、彼女に裏切られて、周りの人たちから笑われている馬鹿正直な自分を自分で哀れむというなんともつらい内容の「I Pity The Fool 」など圧倒的なブランドのブルーズ・シンギングが聴けます。「Don’t Cry No More」「Cry Cry Cry 」では彼のルーツであるゴスペルの熱さと高揚感が聴く者の心を鼓舞します。
CD化もされているので是非ゲットしていただきたい一枚です。
ちなみにブランドは「ブルー」というのがあだ名になってボビー”ブルー”ブランドと表記される時もありますが、確かにその歌には都会で生まれた深いブルーズが漂っています。
アルバム・ジャケットを見るとそれ系の方みたいですが、会うと優しい人でした。それにしてもTwo Steps From The Bluesだから家の階段を上がるところというこのベタのシチュエーション・・笑えます。ブルーズの「記憶に残るジャケット」のひとつです。じっくり味わってください。

2015.8.21ON AIR 「アナログレコードでブルーズを聴こう!シリーズ」第9回

Freddy King : Freddy King Sings (KING 762)
20150821
ON AIR TRACK LIST
1.I’m Tore Down : Freddy King
2.Have You Ever Loved A Woman : Freddy King
3.See See Baby : Freddy King –
4.You’ve Got To Love Her With Feeling : Freddy King
5.Takin’ Care Of Business : Freddy King

 

 

 

今夜のON AIRはブルーズの名盤、Freddy Kingの1961年リリース、彼のファースト・アルバム”Freddy King Sings”です。フレディ・キングは何枚もアルバムを出していのすが、まずゲットしなければならない一枚です。フレディはB.B.キングと並んでモダン・ブルーズの代表的なブルーズマンですが、生まれ故郷のテキサスから16才の時にシカゴに引っ越して若い頃にしこたまシカゴ・ブルーズの洗礼を受けています。B.B.が敬愛するブルーズマンにT.ボーン・ウォーカーの名前をよく出していましたが、フレディがよく出すのはジミー・ロジャースの名前です。他にはロバートJr.ロックウッド、エディ・テイラーなどどちらかと言えばシカゴ・ブルーズの職人的なブルーズマンが好きだったようです。
60年あたりから今夜聴いてもらう「フェデラル」というレーベルで録音が始まり、シングル・ヒットを出しました。このアルバムはそのシングルを集めたものです。フレディというとインストルメンタルの大ヒット”Hide Away”が有名で、その後もインストの”Stumble” “San-Ho-Zay”などそのアグレッシヴなギターを取り上げられることが多いのですが、僕は彼のフレディ節とも言えるパワフルな歌が好きです。ちなみにこの時代のフレディのレコーディングに参加していたドラムのフィリップ・ポールの素晴らしいグルーヴにも耳を傾けてください。
このアルバムはCDでもリリースされていますのでネットなどで探してみてください。では、ジャケット写真を見ながらファンキーなフレディをお楽しみください!

015.8.14 ON AIR「アナログレコードでブルーズを聴こう!シリーズ」第8回

Roots Of Rock Vol.2 (YAZOO 1063)
20150807 ON AIR TRACK LIST
1.Bull Doze Blues : Henry Thomas
2.Roll And Tumble Blues : Hambone Willie Newbern
3.That’s No Way To Get Along : Robert Wilkins
4.Walk Right In : Cannon’s Jug Stompers
5.Big Road Blues : Tommy Johnson

 

 

 

先週に引き続きロック・ミュージシャンがカバーした1920~30年代の貴重なブルーズの音源。「ルーツ・オブ・ロック」というタイトル通り、ロックの源となったこういうブルーズを60~70年代のロック・ミュージシャンたちは熱心に聴いていたんですね。
1曲目はどこかで耳にした方もいると思います。これは60年代アメリカのブルーズ・ロックバンド「キャンドヒート」が”Going Up The Country”というタイトルで美味しいところを使っています。有名な「ウッドストック」の映画の最初に流れてくる曲です。2曲目は「ローリン&タンブリン」として今やブルーズの定番曲となっていますが、シカゴ・ブルーズの親分マディ・ウォーターズもカバーし、ロックではジョニー・ウィンターなどカバーしている人が多い曲です。このハムボーン・ウィリー・ニューバーンが録音として残っている最初だろうと思います。3曲目はストーンズ・ファンなら68年のアルバム、名盤「ベガーズ・バンケット」でこの曲を「プロディガル・サン」というタイトルでカバーしてることを知っていると思います。このロバート・ウィルキンスが原曲ですが、こういう戦前の古いあまり知られていないブルーズをカバーするところに、ストーンズのブルーズへの懐の深さを感じます。4曲目は僕が中学生の頃に日本でもフォーク・ソングのブームがあったんですが、その頃に日本のフォークグループもよくカバーしてました。それは白人のルーフトップ・シンガーズというグループのカバーだったのですが、実はオリジナルはこのキャノンズ・ジャグ・ストンパーズだとブルーズに出会ってから知りました。1929年の録音です。最後5曲目はブルーズ史上では絶対に書かせない素晴らしい曲。ボニー・レイット、エリック・クラプトンがカバーしています。歌っているトミー・ジョンソンはおそらくブルーズ史上最強の酒飲みに入ると思いますが、工業用のアルコールも飲んでしまったという強者です。当然のようにアルコール中毒で死んでいます。
遠い昔のこういうブルーズが歌い継がれて現在のロック・ミュージックのルーツになっていることを知り、そのブルーズマンたちがどんな気持ちだったのかと想いを馳せるのも意味のあることだと思います。こういう音楽を最初から「古い」と聴かない人がいますが、僕はかってこういう言葉を詞にしました「古いものは明日には新しく、新しいものは明日には古い」。音楽に古いも新しいもありません。

015.8.7 ON AIR「アナログレコードでブルーズを聴こう!シリーズ」第7回

Roots Of Rock Vol.1 (YAZOO 1063)
20150807 ON AIR TRACK LIST
1.When The Levee Breaks:Kansas Joe&Memphis Minnie
2.Spoonful Blues/Charley Patton
3.Statesboro Blues : Blind Willie McTell
4.Corrine Corrina/Bo Carter
5.Diddie Wa Diddie : Blind Blake
 

 

 

今日は1920年代から30年代にかけてのいにしえのブルーズを聴きましょう。日本の歴史でいうと大正から昭和になる時代ですが、この時代はLPとかシングル・レコード盤より更に昔のSP盤と呼ばれる時代で、このSP盤の音がまたいいのですがさすがにSP盤はいまの放送局ではそういう装置がなくてON AIRできないので、今日聴くのはSP盤をLPに録音し直したものです。
アルバム・タイトルは「Roots Of Rock 」その名の通りロックのルーツとなったブルーズをコンピレーションしたアルバムです。
1曲目はレッド・ツェッペリンがカバー、2曲目は先週ON AIRしたハウリン・ウルフの”Spoonful”の原曲で、そのウルフのバージョンをエリック・クラプトンのクリームがカバーしてました。3曲目はオールマン・ブラザーズのカバーで有名になったブルーズです。4曲目は60年代フォーク・シンガーに好まれてカバーされた曲でボブ・ディランも歌ってます。5曲目はアメリカの・・・というより日本の有山じゅんじくんが日本語で実にうまくカバーした曲で、僕は原曲のブラインド・ブレイクの前に有山くんバージョンを聴いていました。
このアルバムに収録されている曲を聴いて、更にもう一度これらをカバーしたツェッペリンやオールマンを聴いてみると面白いです。そして、ストーンズはじめ60年代のロックバンドがいかに黒人ブルーズから多大な影響を受けたかもこういうアルバムを聴くとよくわかります。
ちなみにこのアルバムをリリースしたレコード会社ヤズー(YAZOO)は、ブルーズだけでなく古いジャズやヒルビリー、ラグタイム・ミュージック、カントリーなどの録音を発掘して復刻しているレーベルです。SP盤は僕も少し持っていますが、骨董品的価格でかなり高いものも多いですし、蓄音機も必要ですし普通に聴くにはなかなか難しいです。だから、こういうヤズーのようなレーベルがLPレコードでリリースしてくれるのはとてもうれしいです。でも、最近はレコードの静かなブームでヤズーのレコードも中古盤屋さんではあまりお目にかかれなくなってきました。
古いブルーズが少しも古くないことを感じてもらえればうれしいです。