2019.03.29 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤

若き日のボブ・ディランも参加している
「Three Kings And The Queen 」(Spivey/DOXY DOY679)

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ON AIR LIST
1.Sitting On Top Of The World/Big Joe Williams&Bob Dylan
2.Lake Charles Stomp/Roosevelt Sykes
3.Four Shots Of Gin/Lonnie Johnson
4.Brown Skin/Victoria Spivey
5.Wichita/Big Joe Williams & Bob Dylan
今日聴く「Three Kings And The Queen」というLPレコードは1964年にスピヴィ・レコードからリリースされたもので、いまだにCDにはなっていません。今日用意したのはその原盤ではなくて、ヨーロッパのドクシーというレーベルがそのまま復刻したものです。
元々のスピヴィ・レコードというのは女性ブルーズシンガーのヴィクトリア・スピヴィが主催していたレーベルで1985年くらいまで続いていたんですが、その間にマディ・ウォーターズ、オーティス・スパン、メンフィス・スリムなどを録音しています。
今日のアルバムの「Three Kings And The Queen」の3人の王様というのはピアノのルーズヴェルト・サイクス、そしてギターのロニー・ジョンソン、ビッグ・ジョー・ウィリアムスのことで、女王さまはヴィクトリア・スピヴィのことです。それだけでも大いに期待できるのですが、このアルバムのもうひとつの売り物は若き日のボブ・ディランがビッグ・ジョーのバックでハーモニカとバックコーラスをやっていることです。ディランはビック・ジョーが好きで、まあ追っかけとまではいかないまでもライヴに飛び入りとかもしていたみたいです。
では、まずそのディランがハーモニカとコーラスで参加している曲を聴いてみよう。
1.Sitting On Top Of The World/Big Joe Williams&Bob Dylan
ディランの声聴こえましたか。ハーモニカもいいですね。1962年の録音でこの時ディラン20歳です。ディランがレコード・デビューした年ですね。大好きだったビッグ・ジョーとの録音はすごく嬉しかったでしょうね。

次はいかつい顔のピアノのルーズヴェルト・サイクスで語りとピアノ・ソロでドラムとのデュオです。
ルーズヴェルト・サイクスはブルーズ・ピアノの名手で1929年からレコーディングし始めて70年代の後半まで録音があるから約半世紀レコーディングがあった強者です。
いまだにカバーされている”44 Blues”,”Driving Wheel”Mail Box Blues”とか有名曲も残しています。アーカンソー州に生まれて、セントルイス、シカゴ、それからニューオリンズへと移り住んだサイクスのこの曲はそのニューオリンズの湖の名前がついた曲です。
2.Lake Charles Stomp/Roosevelt Sykes
見事にうねるピアノさばきで素晴らしいグルーヴ感です。ピアノも歌も明るい感じの曲調が多くて聴いていても楽しくなります。アルバムもたくさん出てますのでチェックしてください。ルーズヴェルト・サイクスでした。

次はB.B.キングはじめ多くのギタリストに影響を与えたギター名人のロニー・ジョンソン。この人も1925年から亡くなる70年まで録音がたくさん残っている人で自分のソロだけでなく、ジャズギタリストのエディ・ラングとの共演はじめ歌手のバックで弾いているものをいれるとかなりの録音数になります。
とにかく的確で正確でリズムもばっちり、表現が豊かなギターで名人芸です。映像を見るとかなり楽勝な感じでゆったり弾いているのがむかつきます(笑)
3.Four Shots Of Gin/Lonnie Johnson
あまり気張らないちょっと鼻にかかった歌声もレイドバックしていていいですね、それにしてもギターのグルーヴ感が素晴らしい。

次はこのアルバムのレーベル主宰者でもあるヴィクトリア・スピヴィの歌です。ヴィクトリア・スピヴィは1926年にデビューしてその曲”Black Snake Blues”が大ヒットして30年代終わりくらいまでは盛んに録音していたのですが、1961年にニューヨークでこのアルバムのプロデューサーでもあるレン・クンスタットとスピヴィ・レーベルを設立して自分のも含めてたくさんブルーズを録音しました。
では、ビクトリアがウクレレを弾いて歌っている素朴な歌を聴いてください。
4.Brown Skin/Victoria Spivey
ウクレレで歌われるブルーズは珍しいです。

せっかくボブ・ディランがハーモニカで入っているので、もう一曲ビッグ・ジョーとの曲を聴きましょうか。
こうして振り返ってみるとディランが数年前にブルーズ・アルバムを出したのですが、彼もローリング・ストーンズと同じように最初に好きなったブルーズという音楽をずっと好きでいるんですね。ディランはロバート・ジョンソンのアルバムを初めて聴いたときの衝撃をいろんなインタビューで語ってますが、「ロバート・ジョンソン」聴いて自分でも曲を作ろうと思ったという言葉は忘れられません。だから、このビッグ・ジョー・ウィリアムスと一緒に演奏したことも彼の音楽にたくさんの影響を与えたと思います。
すごくディランがハーモニカでがんばってますよ。聴いてください。
5.Wichita/Big Joe Williams & Bob Dylan

今日は1964年にリリースされた名盤「Three Kings And The Queen」をLPレコードで聴きました。

2019.03.22 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤シリーズ

ブルーズの名盤中の名盤
Here’s The Man/Bobby Bland (DUKE/MCA DLPS 75)
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ON AIR LIST
1.Turn On Your Love Light/Bobby Bland (side1-3)
2.You’re The One(that I Adore)/Bobby Bland (side1-2)
3.36-22-36/Bobby Bland (side1-1)
4.Stormy Monday Blues/Bobby Bland (side2-5)
5.Blues In The Night/Bobby Bland (side1-6)

LPレコードで聴くブルーズ名盤シリーズ、今日はボビー・ブランドの名作「Here’s The Man」です。
ボビー・ブランドはB.B.キングと双璧のモダン・ブルーズ史上外せないシンガーで、時にボビー・ブルー・ブランドと呼ばれることもあります。
ブランドはこの番組では何度も取り上げていますが楽器を弾かない、歌だけで勝負のいわゆるスタンダップ・シンガーです。
このアルバムは1962年テキサス、ヒューストンの「デューク・レコード」からリリースされたボビー・ブランドの2枚目アルバムです
僕もブルーズにハマってすぐギター・サウンドではなく、しっかりアレンジされた重厚なオーケストラのサウンドのブルーズにちょっと戸惑いました。ギター・サウンドのロックからブルーズに入った人は最初そのサウンドの肌触りに慣れていないので、僕と同じように少し馴染めないかも知れませんが、ブランドのディープな歌声に取り憑かれるとちょっと離れられなくなります。
まずは躍動するグルーヴ感が素晴らしいゴスペル・テイストの曲です。ドラムはのちにJames Brownのドラマーになるジャボ・スタークス。そのジャボのドラムとブランドの歌だけになるあたりの高揚感がたまりません。
「君は突然僕の心を破って引き裂いた。暗闇に僕を残して、僕への愛は死んだと言った。ベイビーどうかお願いだ。その灯りを付けて僕を照らしてくれ、灯りをつけて照らしておくれ」
1.Turn On Your Love Light/Bobby Bland

50年代メンフィスでしのぎを削ってお互いがライバルだったB.B.キングとボビー・ブランドは、女性客に「オマエの方が人気があった」と言い合ってますが、まあふたりともブイブイ言わせていた時期で、ステージに上がってきた女性客に額の汗を拭いてもらっているブランドの写真もあります。一見ごっつい顔のブランドですが、黒人女性にはすごい人気だったらしいです。でも、次の歌なんか歌詞の内容が「君は僕が愛するたったひとりの女だ」なんてことをすごく響くいい声で歌うので、女性はメロメロになるのでしょうか、どうでしょう。
2.You’re The One(that I Adore)/Bobby Bland
今日聴いているボビー・ブランドの「Here’s The Man」というレコードですが、僕が持っているのは原盤、オリジナル・プレスではなくてデュークレコードをMCAレコードが買い取ったあとにリリースしたものでジャケットが違います。オリジナルのジャケットはマイクを持って汗をだくだくで歌うブランドの横顔でしたが、僕のはステージでスポットライトの中に佇んでいるブランドです。そして、いちばん違うのがA面の一曲目の36-22-36という曲のイントロにライヴMCみたいのがオリジナルには入っているのに、今日聴いてもらっているレコードではそのMCがカットされ演奏から入ってます。どうしてこんな編集を後からしたのか疑問です。
では、そのMCが入っていない一曲目を聴いてください。
この数字は彼女のスリーサイズですが、36インチだから胸とお尻が約92センチ ウエストが56センチ・・まあボン・キュ・ボンですわ
3.36-22-36/Bobby Bland

このアルバムでどうしても聴いてもらいたいのが次の「ストーミー・マンデー・ブルーズ」
ブルーズを知っている方ならご存知のブルーズの定番曲ですが、元々はT.ボーン・ウォーカーがオリジナルでそのT.ボーンのもすごくいいのですが、それをカバーしたこのボビー・ブランド・バージョンは是非聴いてもらいたい1曲です。これはホーン・セクションが入ってなくて、コンボでの録音。ギターはブルーズギターの名手、ウェイン・ベネットが弾いています。そのギターソロも珠玉のソロです。
月曜日からずっと働きに出かけてイヤなことばかり、でも金曜日と土曜には遊びに行って、・・・という普通の黒人たちの生活を描いたブルーズです。
ボビー・ブランドの深いいい声がもうとろけるようにいいです。
4.Stormy Monday Blues/Bobby Bland
ブルーズという音楽がもつ美しさを見事に表したストーミー・マンデーだと思います。ブルーズの歴史に残る名演のひとつです。

このアルバムをリリースした1962年あたり、ボビー・ブランドは全盛期なのですが彼の成功の後ろにはアレンジャーでありトランペッターでもあったジョー・スコットのバックアップがありました。
楽器を何も弾かないで歌だけ歌うブランドの場合、やはりバックバンドを自分の歌に合うように仕切ってくれるバンマスが必要です。ジョー・スコットはブランドに合ったアレンジをしただけでなく、歌い方もブランドに指示したらしいです。最近はこういうホーンが入ったゴージャスなバンドを持つブルーズシンガーはほとんどいませんが、50年代から60年代、こういうバンド形態はブルーズマンにとってひとつのステイタスでした。この時代ブランドはオーケストラを引き連れて同胞の黒人のクラブをツアーする大スターでありました。
最後に1941年に公開された映画「Blues In The Night」の主題歌でレイ・チャールズはじめたくさんの人にカバーされています。
5.Blues In The Night/Bobby Bland

今日聴いたBobby Blandの”Here’s The Man”はCD化もされていますので是非ゲットして聴いてください。でも、できればレコードで聴いてもらいたいです。僕はレコードの音の方が好きです。

2019.03.15 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤

ソウルの偉人オーティス・レディングの名作中の名作
OTIS BLUE/Otis Redding Sings Soul (Atlantic/Warner P-6043A)
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ON AIR LIST
1.Respect / Otis Redding
2.Ole Man Trouble/ Otis Redding
3.Shake / Otis Redding
4.Satisfaction / Otis Redding
5.I’ve Been Loving You Too Long/Otis Redding
LPレコードで聴くブルーズ名盤シリーズですが、今日はブルーズではなくソウルの名盤オーティス・レディングの「OTIS BLUE」を聴きます。アルバムタイトルが示すようにオーティスのソウルにはブルーズのテイストが色濃く入り込んでいます。
リリースされたのは1965年。オーティスの三枚目のアルバム。
LPのジャケットが金髪の白人女性の顔のアップなんですが、なぜこんなジャケットにしたのかまったくわかりません。白人女性にすればアルバムが売れるという目論見でもあったのでしょうか。

僕はブルーズやR&Bやソウル・ミュージックが好きになる前、まだロックを聴いていた頃に初めて聴いたソウル・シンガーがこのオーティス・レディングでした。なぜかというと1968年にオーティスは26歳という若さで飛行機事故でなくなり。その後にリリースされた”The Dock Of The Bay”がチャート1位になりラジオでよくかかっていたからです。それでなんかすごい歌手が死んだということでオーティスの他の曲もON AIRされて、それでいまから聴く”Respect”も知りました。
アレサ・フラクリンのバージョンで聴いている人も多いと思いますが、オリジナルはオーティス・レディング。
1.Respect / Otis Redding

いまの曲は1965年シングルでリリースされてチャート1位になった曲ですが、そのB面が次のOle Man Trouble。
オーティスは曲が書けるソウルシンガーで、このシングルの両方ともオーティスのオリジナルです。
ホーンセクションを含めた重厚なアレンジで、バックのMG’sの演奏もシャープでヘヴィで素晴らしい。
「自分はトラブル続きの男だから他の誰かを見つけて、オレから離れてくれ、見てのようにオレはには運もない。オレはこんな風に何年も生きてきた。オレといるとトラブルになるから」
2.Ole Man Trouble/ Otis Redding
R&Bチャート4位まで上がったOle Man Trouble。バックのMG’sの重さを感じさせるグルーヴがやはりオーティスの歌にぴったりです。

オーティスがリスペクトしていたシンガーはサム・クックでした。そのサム・クックが前年の64年に射殺されてなくってしまったのですが、トリビュート的な意味もあったのでしょうか、このアルバムでは”Change Gonna Come”,”Shake”,”Wonderful World”と三曲サムの曲をカバーしています。中でも僕は次のShakeが好きですが、バックのドラムのアル・ジャクソンのビートがもうドカドカで凄いし、ホーン・セクションと一体となってつくられたサウンドの中をオーティスが自由に飛び回っているフリーな感じもいいです。
3.Shake / Otis Redding

このアルバムがリリースされた1965年は、ロックではイギリスのビートルズが「ヘルプ」と「ラバーズソウル」をリリースした年で、ローリング・ストーンズがヒットした”Satisfaction”を収録したアルバム”Out Of Our Heads”をリリースした年です。黒人音楽と白人音楽が交流しはじめた頃でもあり、黒人が白人の曲を歌い、白人が黒人の曲を歌うのもふつうになっていきます。そういう時代の中、ギターのスティーヴ・クロッパーの提案でストーンズの”Satisfaction”をオーティスが歌うことになります。
ここでのオーティスの歌は原曲を更にパワフルにしてドライヴ感を増したものになりました。ミックやストーンズの連中はこの”Satisfaction”をどう思ったのでしょうかね。
4.Satisfaction / Otis Redding (side1-4)
やっぱりアル・ジャクソンのドラムの気持ちのいいビートに耳がいきます。

オーティスはソウル・ミュージックをあまり知らない人に聴かせても好きになり、ソウルつまり彼の魂を感じるという人が多くいます。テクニック的に歌の上手いシンガーとか何オクターブも声が出るシンガーは他にいると思うのですが、歌とはそもそもそういうものではなく自分の心を聴き手に伝えることだということをオーティスを聴いていると感じます。上手く歌ってやろうとかテクニックを聴かせてやろうではなくて、自分のソウル、魂をさらけ出すことが大事だと教えてくれます
次の珠玉のバラード。僕の知合いの何人かが英語がわからないけど、聴いているうちに泣いしまったという歌です。そこはもうオーティスのソウル・トゥ・ソウルです。
5.I’ve Been Loving You Too Long/Otis Redding

オーティス・レディングは他にもいいアルバムがありますが、今日ON AIRした「オーティス・ブルー」は機会があればゆっくり聴いてみてください。
ソウル・ミュージックという言葉はすごくいい言葉だと思います。魂の音楽・・・それをいつも感じさせてくれるオーティス・レディング

2019.03.08 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤
Hoodoo Man Blues/Junior Wells’ Chicago Blues Band
(Delmark Records DS-9612)

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ON AIR LIST
1.Snatch It Back And Hold It/Junior Wells’ Chicago Blues Band
2.Ships On The Ocean/Junior Wells’ Chicago Blues Band
3.Good Morning School Girl/Junior Wells’ Chicago Blues Band
4.Yonder Wall /Junior Wells’ Chicago Blues Band
5.Hoodoo Man Blues/Junior Wells’ Chicago Blues Band

LPレコードで聴くブルーズ名盤シリーズ。今日は1965年リリースのジュニア・ウエルズの「Hoodoo Man Blues」というアルバムです。
レコード会社は「デルマーク・レコード」
メンバーはハーモニカとヴォーカルがジュニア・ウエルズ、ギターがバディ・ガイ、ベースがジャック・マイヤーズ、ドラムがビリー・ウォーレンの4人なんですが、この4人がシカゴのウエストサイドのクラブで出しているブルーズ・サウンドをそのままパックしたようなリアル・ブルーズの名盤です。ジャケット写真もかっこいいです。
まずはside.1の一曲目。ジュニア・ウエルズらしいファンキーなダンス・ナンバー
1.Snatch It Back And Hold It/Junior Wells’ Chicago Blues Band

ジュニア・ウエルズそしてバディ・ガイたちはこの録音当時30歳前後。1965年ですから50年代初期に盛り上がったマディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフたちの時代から10年以上は過ぎているわけです。
マディの時代ほどシカゴブルーズは盛り上がってはいなくて、主流はB.B.キング、フレディ・キングのようなアーバン、モダン・ブルーズに移っていく狭間にジュニアやバディそしてマジック・サム、オーティス・ラッシュたちは、少し取り残された感じになってしまった。
「オレの乗っている船は紙(Paper)でできている。それに乗っておれはひとりで七つの海を航海している。オマエにしてやることは何もない。なにもないんだ」と恐らく苦しい日々の生活を船の航海に例えて歌った次の曲はトラッドなシカゴ・ブルーズとモダン・ブルーズがミックスされ、しかもそこにシカゴのストリートの匂いが付け加えられたこれぞブルーズという曲です。
2.Ships On The Ocean/Junior Wells’ Chicago Blues Band
レコーディングのチャンスも少なくなっている60年代半ばのブルーズ・シーンでこういうドロっとした、アウトローなブルーズをクラブで彼らは毎晩演奏してたのでしょう。
全体のサウンド、グルーヴ、雰囲気がマディの時代のような一流の感じではなく、どこか二流っぽい、でも素晴らしくブルーズなテイストが感じられるこのアルバム。

次はサニーボーイ・ウィリアムスン1(ジョン・リー・ウィリアムス)がオリジナルのブルーズの有名曲です。曲名「Good Morning School Girl」「おはよう女学生」にいつもひっかかるんですが、このスクール・ガールというのはいまで言うJK(女子高生)のことでしょうか。内容がですね「おはよう可愛い女子高生、いっしょに家に帰ってもええかな。パパとママに学校の友達やって紹介してくれよ。ほかの子やダメなんや、君やないと。めちゃ好きなんよ」まあ、これナンパの歌ですよね。これをですね、当時30歳になっているジュニア・ウエルズが歌うのはどうなんでしょう。いまね、援助交際とかセクハラとかうるさい時代に絶対問題になるでしょう。原曲には「オマエにダイヤ買ってやるから、彼女になってくれ」という歌詞もあるんですが、絶対マズいでしょ、いまやったら。でも、この曲ヤード・バーズ、テンイヤーズ・アフターはじめすごくたくさんのミュージシャンにカバーされているブルーズ・スタンダードです。

3.Good Morning School Girl/Junior Wells’ Chicago Blues Band
シカゴではリトル・ウォルターがハーモニカの音をアンプを通してだすアンプリファイドが主流になっていく中、ジュニアはアンプを使わないでヴォーカル・マイクに生の音のまま吹くというサニーボーイ・ウィリアムスン1のやり方で吹くことも多かったです。僕がアメリカでジュニアを見た最後、彼が亡くなる二年前くらいの時もアンプは使ってなかったです。アンプを使わないハーモニカの音の方が僕は好きです。
同時代のウォルター・ホートン、ジェイムズ・コットン、キャリー・ベルとはまた違うジュニア独特のハーモニカ・プレイがあり、改めてジュニアのハーモニカがいいなぁと思います。

次の曲はエルモア・ジェイムズ、ジュニア・パーカー、フレディ・キングなど本当にたくさんのカバーがあります
4.Yonder Wall /Junior Wells’ Chicago Blues Band

1998年にジュニア・ウエルズは亡くなったのですが、ざっと振り返ると34年にブルーズのメッカでもあったメンフィスに生まれ、10代のはじめにシカゴに移ってルイス・マイヤーズやフレッド・ビロウとバンドをつくり、52年にマディ・ウォーターズのバンドに誘われて加入、53年にレコーディング・デビューして”Little By Little”,”Messin’ With The Kid”といったファンキーなブルーズをシカゴ・ブルーズに吹き込んだ。そして、58年頃からコンビを組んだわけではないけれど、バディ・ガイとともに演奏することが多くなり互いの録音にも参加して、初来日もふたりでやってきました。これといった大きなヒット曲はなかったけれどシカゴのブルーズクラブをそのまま持ち込んだようなライヴはやっぱり、リアル・ブルーズで素晴らしかったです。僕が最後に観たときもファンキーなブルーズと独特のドロッとしたスローブルーズでブレないブルーズを聴かせてもらいました。
最後にアルバム・タイトル曲を聴いてください。

5.Hoodoo Man Blues/Junior Wells’ Chicago Blues Band

今日のLPレコードで聴くブルーズ名盤は1965年デルマーク・レコードがリリースしたジュニア・ウエルズの「Hoodoo Man Blues」を聴きました。CDでもリリースされているので是非ゲットしてじっくり聴いてみてください。

2019.03.01 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤

TRAMP/Lowell Fulson(KENT 520/5020)

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ON AIR LIST
1.Tramp/Lowell Fulson
2.Black Night/Lowell Fulson
3.Two Way Wishing/Lowell Fulson
4.Get Your Game Up Tight/Lowell Fulson
5.Pico/Lowell Fulson

今日はブルーズの偉人、ローウェル・フルソンのケント・レコード時代にリリースされた名盤「TRAMP」をLPレコードで聴きましょう!1967年のリリース。
ローウェル・フルソンはB.B.キングがリスペクトしていたモダン・ブルーズの巨人で、いい曲をたくさん残していますが、その大半はこのケント・レコードに所属していた頃に録音されたもので、だからローウェル・フルソンというとケント時代をまず聴かないと・・となります。
このケント・レコードという会社には50年代から60年代、B.B.キング、アイク&ティナ・ターナー、エタ・ジェイムズ、ジョン・リー・フッカー、Z.Z.ヒルなどが所属して素晴らしいブルーズをたくさん残しました。

まずは僕もレコーディングしているこのアルバムのタイトル曲「TRAMP」を聴きましょうか。僕はウエストロード・ブルーズバンド時代といまやっているブルーズ・ザ・ブッチャーと二回この曲を録音しているくらい好きなんですが、いなたモダンというか、すごく洗練されているわけではないんですがそのファンキーさはいまもすごく新しさを感じます。
ちなみにトランプと言ってもアメリカの大統領のドナルド・トランプと違いますよ、スペルがまず違います大統領はTRUMPつまりカードのトランプと一緒ですが、この歌のトランプはTRAMP、意味は放浪者、浮浪者という意味です。「浮浪者って呼んでもいいよ、オレはきちっとした服も着てないし、ハットも被ってない、お金はないけどオレは愛の男よ」
1.Tramp/Fulson
ファンキーなんですがダウンホームなイナタさがある面白い曲で67年のR&Bチャート5位まで上がったヒットでした。ちなみにファンクの帝王ジェイムズ・ブラウンがファンク・ミュージックを確立したとされる”Cold Sweat”をヒットさせたのが同じ1967年。いかにローウェル・フルソンがアップ・トゥ・デイトな音楽をブルーズでやっていたかということです。ブルーズ史上にとってこのヒットはかなり画期的でした。
しかし、元々フルソンは弾き語りのカントリー・ブルーズを歌っていました。バンド編成になってからもどこかその弾き語り時代のアーシーな土着性を感じさせたり、ダウンホーム・テイストが抜けないのが特徴で朴訥な感じが男っぽくって僕は好きです。

次も66年にチャートに上がったヒット曲ですが純正ブルーズです。こういう曲をチャートに上げる実力を持っている骨太のブルーズマンなんです、ロウエル・フルソンは。
「昔はオレのものやったけどいまは新しい男がおるんやろ。昔は仕事が終わったあともふたりで仲良くやっていたもんや。それがいまでは家に帰るとオマエは疲れているか家にいない。ああ真っ暗な夜」
2.Black Night/Lowell Fulsom
ほんまにええ声してます。ぐっと低音へ行ったときに声の膨らみがあるんですね。本人もそこが売り物やったのか時々その低音を出すんですよ。
もうひとつ、いつも思うのはフルソンのギターなんですが、つっかかるような弾き方で、武骨で不器用に聴こえるんですが時々めちゃ難しいフレイズをさらっと弾くんですよ。うまいのかうまないのかどっちやねんみたいなギターで面白いです。
このアルバムのスタジオ・ミュージシャンのクオリティの高さは相当なものです。大げさなアレンジはないんですが本当にビート中心のいい演奏です。
ブルーズ・バンドやっている方は是非じっくりこのアルバム聴いてみてください。
3.Two Way Wishing/Lowell Fulsom

今日聴いているローウェル・フルソンのアルバム”Tramp”は、僕がブルーズを好きになり始めた頃に買ったアルバムですが、当時毎日聴いているうちにミディアムテンポのシャッフルの曲がなんか塩昆布みたいにブルーズの味が出きてクセになりました。さっきのブラック・ナイツもそうですが、次の曲のミディアム・テンポのグルーヴ感もめちゃくちゃ気持ちいいです。
4.Get Your Game Up Tight/Lowell Fulsom

次の曲はインストルメンタルなんですが、これ最初の”Tramp”のオケをそのまま使ってますよね、使ってますよね!とフルソンに聴きたいです。でも、同じオケだとしてもファンキーな印象に残るいいインストなんですよ。
5.Pico/Lowell Fulsom
やっぱり同じオケ使ってるみたいです。まあ、違ってたとしてもリズムのパターンはまったく一緒です。でも、いいんですね。この詐欺みたいな感じが・・。このアルバムは67年にTrampが大ヒットしたのでその頃のシングルを集めてLPにしたんですが、Trampはその後オーティス・レディングとカーラ・トーマスのデュオに歌詞を変えてカバーされたり、ジョー・テックスが歌ったり、ずっと時が過ぎて今度は80年代終わりから90年代にかけてヒップホップでサンプリングされました。やはり時代が変ってもTrampという曲の中になくならないファンクの普遍性があるんだと思います。
もし、レコードでこのアルバムを見つけたら絶対ゲット!です。