2017.06.30 ON AIR

ブルーズ・ザ・ブッチャー10周年記念アルバム”Rockin’ And Rolln'”を聴くvol.1

“Rockin’ And Rolln’”/blues.the-butcher-590213(P-VINE PCD-18823)

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ON AIR LIST
1.Tell Me What’s The Reason/blues.the-butcher-590213
2.Walkin’ With Frankie/blues.the-butcher-590213
3.Texas Flood/blues.the-butcher-590213
4.Hound Dog/blues.the-butcher-590213+うつみようこ

自分のバンド「ブルーズ・ザ・ブッチャー」が結成から10年を迎えました。1972年に最初のバンド、ウエストロード・ブルーズバンドを結成してから約45年経ちましたが、「ブルーズ・ザ・ブッチャー」がいままでやって来たバンドの中でいちばん長く続いたバンドになりました。ブルーズ・ザ・ブッチャーの前身となる「ブルーズ・パワー」から数えると通算9作目、ブルーズ・ザ・ブッチャーとしては8作目のアルバムがP-Vineレコードから先日6/2にリリースされました。
10年で8作ということはほぼ1年に一枚のペースでアルバムを作ってきたわけですが、アルバムを作って全国ツアーをするというバンド活動のサイクルもこの10年、ほとんど何も変わらずやってきました。
現在もリリースツアーの最中なのですが、今回も50本以上はツアーで回ります。
今回のアルバム”Rockin’ And Rolln’”のコンセプトはテキサス・ブルーズです。
テキサスといえば1920年代のブラインド・レモン・ジェファーソンからライトニン・ホプキンス、T.ボーン・ウォーカー、ゲイトマウス・ブラウン、ジョニー・ギター・ワトソン、アルバート・コリンズ、と名前のあるブルーズマンだけでもかなりたくさんいます。つまり、ブルーズマンの宝庫です。

まずは一曲。先日インタビューを受けたときに「憧れのブルーズマンは誰ですか」と訊かれて悩んだ末に名前を上げたのがT.ボーン・ウォーカーでした。洗練されていて、緻密でありながらもテキサスの伝統のアグレッシヴなテイストや土着性も感じさせるT.ボーン・ウォーカー。彼の50年代インペリアル・レコード時代の曲を今回録音に僕は選びました。「オレを惑わすのはなんでやねん。オレのこと好きやないくせにオレを自由にしてくれへん。なんでやねん」
1.Tell Me What’s The Reason/blues.the-butcher-590213
ドラム沼澤尚、ベース中條卓、ハーモニカKOTEZ、そしてギターとヴォーカル私永井ホトケ隆のブルーズ・ザ・ブッチャーでした。
このメンバーで10年活動してきたわけですが、僕は昔からバンド・メンバーとは同じ職場の仲間だと思っています。友達かといわれるとちょっと普通の友達関係ではないです。バンドという組織の中で音楽という同じ職業をやっている関係ですから、会社勤めをしている方の同じ職場の同僚と同じですよね。上下関係はないです。一応僕が年上なのでバンマスみたいな風に思われることが多いですがメンバーの関係は何もかもイーヴンです。僕は歌とギターを担当しているわけでステージではいちばん前に出てますが、常に全員同じスタンスと僕は想ってやってます。
では、メンバーのいちばん年下といってももうすっかりおっさんですが、ハーモニカのKOTEZくんの歌を聴いてみましょう。
2.Walkin’ With Frankie/blues.the-butcher-590213

いまのWalkin’ With Frankieのフランキーはオリジナルがテキサスのフランキー・リー・シムズというブルーズマンなのですが、このフランキー・リー・シムズが僕もKOTEZくんも大好きで僕も1曲録音したのですが、ファンキーでアグレッシヴですごく魅力的なブルーズマンです。顔はとっちゃんぼーやみたいな顔なんですけどね。
まあ、テキサスは本当に魅力的なブルーズマンがたくさんいるんですが、次の曲なんかはスティーヴィー・レイボーンのカバーで知っている人の方が多いと思いますが、ブルーズフリークの間では昔から人気のラリー・ディヴィスがオリジナルです。僕は70年代の最初、ブルーズを知り始めた頃に買ったデューク・レコードのコンピに入っていたこの曲がすごく好きで聴いてきたんですが、今回録音できて本当に嬉しいです。
テキサスが洪水になって彼女と電話が繋がらない。もう町は暗い雲と洪水で大変なことになってんのや。すると最後にオレは個々を離れるよ、故郷に帰れば毎日太陽が輝いているという歌詞で終わるのですが、電話が繋がらん彼女はどうすんねん・・・とモヤモヤしたままのブルーズです
3.Texas Flood/blues.the-butcher-590213

今回のアルバムのひとつの目玉は女性ヴォーカルのうつみようこさんにゲスト参加していただいたことなんですが、本当に素晴らしい歌手で、いま日本で彼女ほどリアリティを持ってブルーズを歌える女性は本当にいないです。
うつみさんはご存知の方も多いと想いますが、かってはメスカリン・ドライヴというパンク・ガールズバンドで名を知られていましたが、そのあとソウルフラワー・ユニオンに参加されて、その後からいままでソロ活動されているんですが、コーラスも上手いですし度胸ありますし・・・僕は彼女にブルーズの曲だけのフル・アルバムを作ってもらいたいと想ってます。めっちゃ期待しています。
とにかく声量も歌いっぷりも本当にブルーズ向きで、ライヴでも遠慮なくギター弾かしてもらってます。
海外で子供の頃を過ごされているので英語の歌のノリを本当に自然表現できている人です。
次の曲なんかもご本人曰くいわゆるベタな選曲ですが、ベタに終わらせないところがすごいです。
4.Hound Dog/blues.the-butcher-590213+うつみようこ
手前みそで申し訳ないのですが、来週もブルーズ・ザ・ブッチャーの新しいアルバムを聞きます。

2017.06.23 ON AIR

グラミー・コンテンポラリー・ブルーズ・アルバム賞獲得
ファンタスティック・ネグリートを聴く

FANTASTIC NEGRITO/Last days of oakland (P-VINE PCD-24547)

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ON AIR LIST
1.Scary Woman/Fantastic Negrito
2.Working Poor/Fantastic Negrito
3.Hump Thru The Winter/Fantastic Negrito
4.The Worst/Fantastic Negrito
5.Nothing Without You/Fantastic Negrito

 

 

 

 

今年のグラミー賞のコンテンポラリー・ブルーズ・アルバムを受賞したファンタスティック・ネグリートの「Last days of oakland 」を今日は聴いてみたいと思います。コンテンポラリー・ブルーズ・アルバムとは、コンテンポラリーつまり「同時代のとか現代の」ブルーズ・アルバムという賞ですが、この番組を聴いている方の中にはトラッドなブルーズが好きで聴いている方も多いので、いまから聴いてこれがブルーズなのかという疑問を持たれる方もいると思います。僕自身もブルーズという言葉を使う時、どこまでの範疇で使えばいいのか、考えさせられる時もあります。
今日は聴いているみなさんの意見を聞いてみたいです。

今日聴いてもらうLast days of oaklandというアルバムにはファンクやヒップホップ、ロック、またある種のパンクのテイストもあり、いわゆるストレートなブルーズ・アルバムではないのですが、歌詞の中には現在のいまの、つまりコンテンポラリーなアメリカのブルーズが歌われています。かってブルーズがストリートの、それも裏通りバック・ストリートの生活から生まれたものであったように、このアルバムで歌われている内容とそのサウンドには現在のバック・ストリート・ブルーズのテイストが詰まっています。
かって僕がいろんな黒人ミュージシャンに「ブルーズって何を指してブルーズ」と呼ぶのかと訊いて、返ってきたいちばん多い答が「それは歌詞だ」というものでした。だから逆にいうとワンコーラス12小節、三つのコードといういわゆるブルーズというフォームを使って演奏し、歌ってもその歌っている内容がブルーズではないものもあるわけです。
最終的にその聴き手ひとりひとりがその音楽をブルーズと思うか、ブルーズを感じるかどうかですが・・・。
さて、今日のファンタスティック・ネグリートのLast days of oakland つまり、オークランドの最後の日々をみなさんはどう感じるでしようか。
まずは一曲
この曲は50年代からの黒人R&Bのテイストを含み、プリンス的なノリ、グルーヴも感じさせる、でも根っこはブルーズを感じさせます。
1.Scary Woman/Fantastic Negrito
Scary(ské(ə)ri )Womanとはやっかいな女とか怖い女という意味で、「機嫌がいい時は最高だけど、機嫌が悪い時は最悪。本当にやっかいな女だ。ケツの振り方は最高。だけどオレの金を使い果たして、オレを自分の夢から追い払おうとした。機嫌がいい時は最高だけど、機嫌が悪い時は最悪のやっかいな女。オークランドの女さ」
こういう歌詞って昔のブルーズにもたくさんありました。

サウンドの作り方がいいというか僕の好みなんですが、オルガンの使い方なんかいい感じです。

2.Working Poor/Fantastic Negrito
Working Poorとは一生懸命働いているのに貧しい人のことです。「会社で上司にこき使われて、休みの日のことばかり考えている「ドアをノックしてるけど、ノックしても中に入れてくれない」という歌詞が何度も繰り返されるんですが、まあ一生懸命働いて給料をたくさんもらっていい暮らしができるようにと思ってそのドアを叩いているけど、そこには入れてもらえない。そういう楽な暮らしにはならないということでしょう。これもブルーズが生まれたその初期からずっとブルーズで歌われて題材です。

初めての音楽を聴く時、僕の基準になるのはまずその歌手の歌声で、その声が好きになれないとどんないい曲を歌われても好きになれないです。その歌声というのは歌い方も入ってます。そして、リズムがグルーヴがいいか好きなタイプかそれから全体のサウンドのテイストと歌詞です。
ギターが上手いからとか歌が何オクターブも声が出るとかそういうことはあまりどうでもいいです。そういう意味ではこのアルバムは僕の好みです。
次の曲、あれ?これって思う人いると思います。ハードロック好きな人はとくに。
まあ聞いてみてください。
3.Hump Thru The Winter/Fantastic Negrito
そうです。レッド・ツェッペリン。そういう音楽の影響も受けているファンタスティック・ネグリート、ちょっと面白いですね。

次はスピリチュアルズやゴスペルのテイストもあり、メイヴィス・ステイプルズが歌いそうな曲です。
すごくシンプルな歌と歌詞の底辺にルーツ・ミュージックを感じさせファンクやロックのテイストも積み重ねている音作りです。
“Money and power they’re the Root of all evil”(金と権力がすべての悪の根源)という言葉で始まるこの曲は、ちょっと社会的な歌ですが、彼の書く詞が複雑なのでストレートに理解するのは難しいです。
4.The Worst/Fantastic Negrito
5.Nothing Without You/Fantastic Negrito
アルバムのグルーヴ感とかサウンドとか全体の重い、重心の低いどっしりしたミステリアスなムード、こういうのが僕は好きなんですね。グルーヴにはスライ&ファミリー・ストーンやプリンスにも通じるものもあり、ロックやゴスペルのサウンドのテイストも散りばめられて更にその下には現代のいろんな問題や彼なりのブルーズが歌われている気がしますが、ブルーズという音楽のくくりをどこまで自分の中で広げるのかという問題は残ります。みなさんはどう思われますか?

2017.06.16 ON AIR

追悼:チャック・ベリー/偉大なロックン・ロールの創始者 Vol.3

Chuck Berry Gold(Geffen/Chess1317-18)

Chuck Berry Gold(Geffen/Chess1317-18)

Hail! Hail! Rock 'N' Roll/Chuck Berry(MCA MVCM-22106)

Hail! Hail! Rock ‘N’ Roll/Chuck Berry(MCA MVCM-22106)

ON AIR LIST
1.Back In The U.S.A/Chuck Berry
2.Come On/Chuck Berry
3.Confessin’ The Blues/Chuck Berry
4.Sweet Little Sixteen/Chuck Berry
5.Little Queenie/Chuck Berry
6.Reelin’ And Rockin’/Chuck Berry

チャック・ベリー追悼の三回目
前回、前々回と彼のヒット曲を聴きながらその足跡を追いかけてきたのですが、とにかく最初のヒット「メイベリーン」の55年から59年までの5年間くらいはもうヒットの連続で、しかもそれらの曲がいまもロック史上に残っていて、カバーされ続けているところがすごいです。それはやっぱり、チャックの作った曲の中にロックの核になるものがあるからで、ロックをやるには一度はそこを通らなければならない道なんですね。
今回新たにチャックの音源や映像を見て彼のソングライティングの素晴らしさ、ギターの切れ具合、彼の歌とギターが一緒になったところから出てくるグルーヴのに驚きました。いままでも何度も聴いて知っていたと思っていたら、実はこういうノリだったのかとかこういう歌だったのか、こういうギターだったのか・・と知らないことが出てくるんですよ。
前回は1958年の「メンフィス・テネシー」を聴いて終わったのですが、今日の一曲目は1959年のリリースですが、その約10年後にビートルズがホワイト・アルバムにパロディとして録音した”Back In the U.S.S.R”の原曲です。
1.Back In The U.S.A/Chuck Berry
いまの曲のバック・コーラスは同じチェス・レコードのエタ・ジェイムズとマーキーズやってます。
次はローリング・ストーンズが1963年デビュー・シングルでカバーした曲
チャックのオリジナルは二年前の1961年。
2.Come On/Chuck Berry

前回も言いましたが、59年にチャックは女性問題で警察沙汰になり有罪になって3年間塀の向こうにいました。それで63年に出所してくるのですが、まあそういう事件もあり音楽の時代の流れもあってチャックのR&Rの勢いは60年くらいから少しずつ薄れていきます。でも、コンサート、ライヴでは相変わらずの大人気で、その人気を押し上げてくれたのがいまのストーンズやビートルズはじめ白人のロック・ミュージシャンがチャックの曲を取り上げてくれたからでした。
60年代前半にデビューしたイギリスのバンドは、ほとんどがチャックの曲をカバーするくらいイギリスでは人気がありました。
音楽的な流れはそういうイギリスのバンドが次第にアメリカの若者にも人気が出て、ロックン・ロールそしてロックが定着していくわけですが、一方黒人音楽はというと50年代主流だったブルーズ、R&Bが60年代になるとソウル、ファンクという時代になりサム・クック、ジェイムズ・ブラウン、アレサ・フランクリンなどが登場してきます。そんな中でチャック本人もオリジナルが売れないのでちょっと創作意欲が落ちたのか、昔とったきねづかでブルーズを録音したりします。聴いてもらうのはジャズ・ブルーズ・シンガー&ピアニストのジェイ・マクシャンがヒットさせた曲で、デビューする前のチャックがよくステージで歌っていたブルーズだそうです。ピアノ・ジョニー・ジョンソン、ドラム・イビー・ハーディ、ベース・ウイリー・ディクソンそしてギターに名人マット・マーフィが参加してます。
3.Confessin’ The Blues/Chuck Berry
歌のバックのギターはマット・マーフィがオブリガード弾いてますが、途中のソロはチャックでしょうか、でもマットだったらこういうチャックのマネできるから・・ちょっとわからないですね。でも、やっぱりチャック・ベリーがやるとこういうスタンダードなブルーズもロックしてるブルーズになるんですね。面白いです。
そういえばストーンズもこの曲をカバーしてるんですが、彼らはオリジナルのジェイ・マクシャンではなくてこのチャックのカバーをカバーしたんですね
いつからか分からないんですが、チャック・ベリーは自分のバンドをもたないでその街のバンドを使ってライヴをやるように゜なるんですよ。はっきり言ってアマチュアみたいなバンドを使ってひどい演奏することの方が多かったみたいで・・まあ、本人はギャラ、お金もらえれば・・ってあまり音楽的なことを望まなくなったんですね。日本に初めてきた時はアンコールが鳴り止まないのに「オレは契約の時間は演奏したから」ってギターしまって帰ってしまったんですよ。ええっていう感じだったんですが・・。
それでストーンズのキースがみるに見かねて「ちゃんとしたバンドで演奏してみないか。オレがバンドを用意するから」とチャックを説得してやったのが「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」というコンサートでジョニー・ジョンソンはじめボビー・キーズ、クラプトン、スティーブ・ジョーダン、エタ・ジェイムズと豪華メンバーをキースがプロデュースしてやりました。
この映画がすごく面白くてDVDも出てるので是非見てください。
では、その「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」から
4.Sweet Little Sixteen/Chuck Berry(Hail! Hail! Rock ‘N’ Roll [Live])

5.Little Queenie/Chuck Berry(Hail! Hail! Rock ‘N’ Roll [Live])

最後はずっと踊っていたいという曲ですが、本当にずっとチャック・ベリーを聴いていたいです。
6.Reelin’ And Rockin’/Chuck Berry
どんな時代になっても古くならないチャック・ベリーの音楽、ロックンロール。
気分がちょっと落ち込んでいる時に朝からちよっと大きな音でチャック・ベリー聴いてください。落ち込んでることなんか大したことないっていう気持ちなります

2017.06.09 ON AIR

追悼:チャック・ベリー/偉大なロックン・ロールの創始者 Vol.2

Chuck Berry Gold(Geffen/Chess1317-18)

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ON AIR LIST
1.Rock And Roll Music/Chuck Berry
2.Carol/Chuck Berry
3.Johnny B.Goode/Chuck Berry
4.School Day/Chuck Berry
5.Memphis, Tennessee/Chuck Berry

 

 

 

前回に引き続きチャック・ベリー追悼の二回目です
今日はまず最初にこれを聴いてください
1.Rock And Roll Music/Chuck Berry
まさにこの曲名の”Rock And Roll Music”を作った、ロックンロールの創始者のひとりがチャック・ベリー。
いまの曲はチェスレコードと契約して二年目、油が乗り切ってきた頃自分の音楽的なスタイルもう少しで確立する頃です。
僕はいまのRock And Roll Musicを中学三年の時にビートルズの”The Beatles For Sale”というアルバムで聴いたのが最初です。
チャックのオリジナルが1957年、ビートルズのカバーが7年後の1964年。もうすでにイギリスはロックン&ロールとブルーズの嵐が吹き荒れていた頃で、ビートルズ、ストーンズ、アニマルズ、キンクスなどイギリスのバンドはみんなチャックの曲をカバー。
その頃、日本でもビートルズ人気がすごくなっていく頃でしたが、オリジナルのチャックまで届いている人は少なかったと思います。なんとなくチャック・ベリーと言う名前は知ってましたが・・。

チャック・ベリーの50年代この頃から後期はもう本当にヒット曲の連続で、ヒットしなかったもので聴きたい曲もあるのですが、次は僕がすごく好きなチャックの曲です。これもローリング・ストーンズの最初のアルバムのカバーで最初に聴きました。
チャックが亡くなった日もそのあともキースやミック・ジャガー、ポール・マッカートニー、リンゴ・スターはじめチャックの追悼文がツィッターやフェイスブックにあふれてました。やはり影響は大きかったことを改めて思いました。60年代のブリティッシュ・ロックもアメリカのロックも世界中のロック・ミュージックは、いまもチャック・ベリーの作り上げたものから多大な恩恵を受けています。
では、チャック・ベリー1958年リリース
2.Carol/Chuck Berry
かっこいいですね。
チャックは背も高くてルックスも良くて、しかもステージではひょうきんなダック・ウォークとかいろんなアクションもやり、歌詞は面白いし、ギターはキレキレでグルーヴ感満載。これで若い人に受けないわけがない。チャック・ベリーのような表現をした人はいなかったし、そのあともこれだけソングライター、ギタリスト、パフォーマーとして才能のある人はほんとうに少ない。
そして、57年には生涯チャック・ベリーを代表する、いやロックを代表するこの曲がヒットしてチャック・ベリーもロックンロールという音楽も決定的なものになりました。
3.Johnny B.Goode/Chuck Berry
実はチャックの録音の記録を観てみると、最初のヒット「メイベリーン」はシカゴに出てくる前セントルイス時代からの仲間、ピアノのジョニー・ジョンソンとドラムのイビー・ハーディを連れてベースだけチェスレコードの現場プロデューサーでもあるウィリー・ディクソンが参加というメンバーなんですが、次第にチェスのスタジオ・ミュージシャンたちが加入して、いまのJohnny B.Goodeはドラムにフレッド・ビロウ、ピアノにラファイエット・リークが参加しています。ふたりともチェスレコードのリトル・ウォルターやハウリン・ウルフ、サニーボーイ・ウィリアムスンなどブルーズマンのバックで素晴らしい録音を残した人たちです。ウィリー・ディクソン、ピアノのオーティス・スパンなどチャックのバックにはシカゴ・ブルーズの錚々たるミュージシャンが参加していたんです。
だから、ブルーズとR&Bとロックンロールが全く同時期にチェスレコードで作られていたわけです。
そう思うとやはりチェスレコードはすごいです。
50年代半ばになるとR&Bの時代に移り、ブルーズの売り上げが少しずつ落ちてくるのですが、代わりにそこから60年代までチェスを支えた稼ぎ頭がチャックだったんです。
チャック・ベリーはこういうヒットが続いた頃、すでに30才近かったのですが、彼のファンは10代の子供たち・・そういう10代に向けた歌詞を本当にうまく彼は書いてます。次の曲もそういう歌です。
「朝起きて学校行って怖い先生の授業を受けて必死勉強する。のにうしろからチャチャいれてくる奴がいる。昼メシの時間は短いすぐ授業が始まる。チャイムが鳴って学校が終わると教科書をしまってあのジュークボックスのある店に行って、好きな女の子と踊り続けるロックンロールでオレは自由になれる。リズムを止めないでくれ」
4.School Day/Chuck Berry

でも、チャックはそういうティーンズ向けの歌詞だけでなく、こんな歌も作ってました。実は僕はこの歌を電話の交換手にメンフィス・テネシーに住んでる自分の好きな女の子に電話を繋いでくれないかというラブ・ソングやと思ってたのですが・・全然違いました。
「マリーという女が電話をくれたけど自分に連絡がつなかくてメッセージを残してくれた。でも彼女の番号がわからない。そこで交換手に彼女探して電話を繋いでくれないかと・・マリーを愛してるんだ。彼女のママに俺たちは引き裂かれたんだ。別れる時マリーは手を振って泣いていた。マリーはまだ6才なんだ。だからメンフィスの彼女に電話を繋いでくれないか・・」
嫁さんに連れて行かれた自分の娘に会いたいという歌だったんですね。
思っていたのとちょっと違う、ちょっと悲しい歌でした。
5.Memphis, Tennessee/Chuck Berry

59年にチャックは女性問題で警察沙汰になり有罪になって3年間塀の向こうにいました。それで63年くらいに出所してくるんですが、その頃にはイギリスのビートルズやストーンズたちがたくさんチャックの曲をカバーしてくれたので人気はまだまだありましたが、レコードのヒットは少しづつ減っていきます。
もう少しチャックの話をしたいので来週もう一回チャック・ベリーです。
ヘイル・へイル・ロックンロール!

2017.06.02 ON AIR

追悼:チャック・ベリー/偉大なロックン・ロールの創始者 Vol.1

Chuck Berry Gold(Geffen/Chess1317-18)

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ON AIR LIST
1.Maybellene/Chuck Berry
2.Wee Wee Hours/Chuck Berry
3.No Money Down/Chuck Berry
4.Roll Over Beethoven/Chuck Berry
5.Havana Moon/Chuck Berry

 

 

 

去る3月18日にロックン・ロールの偉大な創始者、チャック・ベリーが亡くなりました。90才でした
1926年生まれ 本名:Charles Edward Anderson Berry
生まれ故郷のセントルイスで働きながら音楽をやっていたアマチュア時代のチャックはすでに街の音楽シーンではちょっと知られた存在だったようです。
きっかけは1955年友達についてシカゴへ行ったことから始まる。55年言えば当時のシカゴ・ブルーズは全盛期。友達とマディ・ウォーターズのライヴを観に行き、なんと楽屋に行ったチャックは「あなたの熱烈なファンです。あなたのバンドに入れてくれないかと頼んだ」その頃、マディのバンドにはギターの名手ジミー・ロジャースがいたしその後にも凄腕のパット・ヘア、そして若手のバディー・ガイなど才能のあるギタリストがたくさんも控えていた。チャックがその頃どのくらいの腕前かわからないが、マディにバンド加入は断られる。
マディのバンドに入りたかったということは、チャックはブルーズをやりたかったわけ。ところが当時彼がアイドルとしていたのはシカゴ・ブルーズのマディやハウリン・ウルフではなく、ウエストコーストにいるT.ボーン・ウォーカーであり、好きな歌手はルイ・ジョーダンだった。
たまたま旅行に行ったシカゴでライヴを見て興奮していたかも知れないが、マディにバンドに入れてくれないかと自分を売り込むチャックはどうにかプロになるきっかけをつかみたかったのかも知れない。その時26才。セントルイスには女房も子供もいる。そろそろなんとかせんとなぁ・・・と思っていたかも。
好きなのはウエストコーストのブルーズだからロスあたりへ行くことも考えただろうが、セントルイス~ロスは遠い。一方セントルイスはミズリー州の北でシカゴのイリノイ州のすぐ近くだ。シカゴもそう遠くはない。ウエストコーストへ行くよりは遥かに近い。しかもシカゴのチェスレコードは昇り調子だ。まあ、ダメだったらすぐ帰ってくるか・・と、いつかシカゴに行くことは前々から考えていたのかも知れない。
しかし、マディに断られたチャックは親切なマディにチェスレコードのオーディションを受ける手はずをしてもらう。マディに会えてほんとうに良かったと思っただろう。
そのオーディションで”Ida May” という曲を歌って合格。ただ。社長のレナードチェスが「曲名があかん」とタイトルを変えるアイデアを出して「メイベリーン」としてリリース。このデビュー曲はチャートの5位まで上がった。
その記念すべきチャックのデビュー曲を聴いてみよう。
1.Maybellene/Chuck Berry
メンバーはセントルイスの仲間ピアノのジョニー・ジョンソン、ドラムにエビー・ハーディ、マラカスがボ・ディドリーとやっていたジェローム・グリーン、そしてベースはチェスレコードの現場のプロデューサー、ウィリー・ディクソン
2ビートのダンス・ナンバーはブルーズではなく、いわゆるヒルビリー的なテイストを持った曲だ。つまり白人のカントリー・ウエスタンのテイストを持った珍しい黒人シンガーがチャックだった。
ギター・ソロのところになると盛り上がり激しくロックするチャックが現れ、歌はノヴェルティで物語風、ここにはそのあとに生まれる「ジョニー・B・グッド」などR&Rの予感がある。
セントルイスで活動していた頃からチャックはカントリー・ウエスタンなど白人が歌うような曲をレパートリーにしていてちょっと変った奴だったそうだ。
デビュー曲はR&Bチャート1位、ポップチャートでも5位。つまり白人にも受けたということ。
それでメイベリーンは大ヒットしたわけだが、そのシングルのB面を聴いてみよう
2.Wee Wee Hours/Chuck Berry
いわゆるウエストコーストのクラブ風の曲でチャールズ・ブラウンあたりが歌いそうなブルーズだ。シカゴに来たけれど、チェスで録音だけどこういうのもやりたいんよね~という気持ちがわからないでもない。
でも、A面のメイベリーンを聴いた白人の若者は当然B面も聴くことになったわけだ。のちにエリック・クラプトンがいまの”Wee Wee Hours”を録音しているが、それはA面が有名ヒット曲で買ったけど「おおっ、B面ブルーズやんか」ということだったと思う。

次もチャックのノベルティ・ブルーズ。チャックの歌詞が面白いというのが若者に受けた大きな理由のひとつだったが、歌詞のことは本当によく考えたらしい。
No Money Downというのは頭金不要という意味。自分のボロいフォードの車で走っていたら「No Money Down」(頭金不要)という看板を見つけて、3万ドルのローンで新車の高性能キャデラックを買うという話。オレは新車買うたよ!ボロいフォードはさよなら。まあ、このあとのローンのなんか忘れてオレは新車のキャデラックよというところがブルーズっぽいです。
3.No Money Down/Chuck Berry
チャックの歌は明るくて楽しい。当時の50年代中頃の若者たちがブルーズからだんだんR&BそしてR&R(黒人の人たちの間では当時R&Rという言い方はしなくて、チャックもリトル・リチャードもR&Bというカテゴリーでした)に移行していく気持ちがわかりますね。新しいサウンドとグルーヴ、つまりそのグルーヴ
がR&Rと呼ばれるものなんですが、チャックは無意識にそういう新しいもの、しかもファンキーなテイストを自分の音楽に入れてます。だから、チャックのブルーズはあまりブルーズっぽくないんですよね。いい意味での軽さがあり、マディやウルフのような重さがチャックにはなくて、でもそれがR&Rになっていったんですね。
翌1956年いよいよロックン・ロールの誕生に近づいていきます。イントロのギターのフレイズもロックの歴史上に残るチャックが生み出したもので、チャック・ベリーと言えばこのイントロっていう定番になりました。
4.Roll Over Beethoven/Chuck Berry
日本語のタイトルが「ベートーベンをぶっ飛ばせ」ですが、もうベートーベンやチャイコフスキーなんか聴いてる場合じっゃない。自分たちの新しい音楽の時代だよ 最後にDig These Rhythm&Bluesと歌ってるようにまだロックンロールという言葉はなくてリズム&ブルーズ。それが主に白人たちの間でR&Rと呼ばれるようになった。

50年代中頃、アメリカではハリー・ベラフォンテの「さらばジャマイカ」がヒットしてちょっとしたカリプソ・ブームだった。
そういうカリプソっぽいテイストをいち早く取り込んでチャック独特のミックスチャーで作ったのが次のハバナ・ムーン
時代の流行ものにも意外と敏感だった一面が感じられます。
5.Havana Moon/Chuck Berry
次回もチャックベリー、続きます!