ライトニン・ホプキンスからジミ・ヘンドリックス、プリンスにも賞賛された男、Johnny “Guitar” Watson その2
ON AIR LIST
1.Johnny G. Is Back/Johnny “Guitar” Watson(Polystar PSCW-5349)
2.Hot Little Mama/Johnny “Guitar” Watson (BSCP-30101)
3.Those Lonely Lonely Nights/Johnny “Guitar” Watson (BSCP-30101)
4.Too Tired/Johnny “Guitar” Watson (BSCP-30101)
5.Don’t Touch Me/Johnny “Guitar” Watson (BSCP-30101)
前回は70年代半ばから80年代にかけてのジョニー・ギターを聞きました。
ブルーズから独自のファンク・ミュージックをつくりあげた時代の曲を聞いたのですが、実はそれ以降1984年の”Strike on Computers”というアルバム以降、何故かぱったりアルバムを出さなくなります。ライヴもあまりやってないみたいなので、どうしてんのかなぁ・・とファンとしては心配してたんですが、1994年突如復活のアルバム”Bow Wow”が出て、それがグラミーにもノミネートされるほどクオリティも高いものでした。実に10年ぶりのアルバムでした。そして、復活して二年経った1996年に来日ツアーがありました。
実は僕は自分のバンドでツアーに出ていたので今回は見れないなぁ・・・と思っていたら、ある夜友達から電話がかかってきて横浜のライヴハウスでステージの上で心臓麻痺で亡くなったと聞きました。俄には信じられなくて・・・でも、次の日にそのライヴハウスの関係者に電話したらやはり亡くなったと聞いてがっかりしました。
まだ61才でした。
今日はブルーズ時代のジョニー・ギターを聴く前に、その復活のアルバムBOW WOWから「オレは戻ってきたぜ」と自ら宣言した曲をまず聞きます。
Johnny G. Is Back
この94年のアルバム”Bow Wow”が最後のアルバムになってしまいました。
今日はこういうファンクをやる以前、ブルーズ、R&Bだった頃のジョニー・ギターを溯って聞いてみようかと思います。彼のバイオを少し紹介します。ジョニー・ギター・ワトソンはテキサスのヒューストンの生まれで10代の早い頃から、ピアノとギターを弾いて同世代のアルバート・コリンズやジョニー・コープランドとつるんで演奏してました。15才の時にロスアンゼルスに引っ越して、いよいよプロとしてクラブなどに出始めるんですが、最初の楽器はピアノで1953年に18才で「ヤング・ジョン・ワトソン」という芸名でブルーズ、R&Bで有名なレコード会社フェデラルと契約した最初もピアノでした。このピアノをやっていたというのが、ギターだけ弾いてブルーズを歌っているブルーズマンとちょっと違う音楽性になっていると思う。
しばらくしてギターに転向するんですが、ヒットもなく55年にRPMというレーベルに移籍し、ここで”Hot Little Mama,” “Too Tired,” “Three Hours Past Midnight”という曲で彼の才能が開花していった。それが二十歳の頃です。
まず、一曲初期のジョニー・ギターの代表的なファンキーなブルーズです。ギターは極悪というか、アグレッシヴなのに歌はダウンホームというかレイドバックしていて、その落差がまた面白いんですが・・・。
「オレは色っぽいええ女をゲットしたんよ。ウエストは細くてお尻はプリっと出てる。彼女はオレに火をつけるええ女なんよ」
Hot Little Mama
ギターがバキバキで最高です。
RPMレコードでの最初のヒットになったのが、次の曲ニューオリンズのアール・キングが作った”Those Lonely Lonely Nights”のカバー。この2コードの泥臭いブルーズバラードがまたいい曲なんですわ。アール・キングのオリジナルもすごくいいんですが、このジョニー・ギターのカバーもカッコいいです。
「オマエがいなくなってから、枕に頭をのせて寂しい、寂しい夜が続く。一晩中泣いてる。あまえは私達は絶対に別れないなんて言ってたもんや。どうしてオレのハートをズタズタにするんや。オマエがいなくなってから真っ暗や。どうか灯りを持って来てくれよ。戻って来てくれ」
Those Lonely Lonely Nights
戻ってきてくれと歌っているけど、何か悲壮感はないんですよ。カラッとしています。こういうのはもう人柄というか、音楽はとくにブルーズはその人の性格とか生まれ持った資質があらわれる音楽ですから、人によってはもっとねっとりしてしまうシンガーもいるとおもうんですが、ジョニー・ギターはからっとしてます。そういうところがファンキーなんやと思います。だから、ファンキーな人間になろうと思ってもファンキーにはなれないんですよ。その人が生まれもってるもんですから、
ジョニー・ギターはいわゆる黒人のストリートの感覚、庶民感覚をずっと持っていた人で、その歌詞には生活の大変さや下世話な恋愛ストーリーから下ねたブルーズまであります。
から曲、そしてファッションやアルバム・ジャケットの写真まで自分のヒット曲のギャングスター・オブ・ラヴのギャングスターのテイストで押し通した人でした。
大メジャーではなかったのですが、ボビー・ウーマックやスライ・ストーンといった人たちには一目置かれていました。
次の曲のイントロのギターは、ブルーズをよく知っている人ならゲイトマウス・ブラウンの”MidnIght Hour”という曲のイントロのパクリだとわかると思います。ジョニー・ギターがテキサスにいた子供の頃のアイドルはゲイトマウスですから、アグレッシヴでワイルドなギタースタイルも男っぽい歌い方もやはりゲイトマウスの影響は大きいです。
Too Tired/Johnny “Guitar” Watson
たまらんですね。ギターの歪み具合とかめっちゃかっこいいです。ちゃんと音のつぶがわかりつつも、ひずんでいる感じが絶妙です。
最後の曲もジョニー・ギターらしい歌詞で個人的にはブルーズバラードの名作やと思います。
「オレに触んなよ、ほっといてくれや、オレはもう出てくんや。出ていってハイウェイを旅するんや」ブルーズによくある「オレは出てくぞ」ブルーズです。よくできたブルーズバラードでロバート・クレイもカバーしていました。こういう歌もなんかちょっとやさぐれた感があって、別れる悲しさや苦しみより風来坊的なムードが漂っているところがファンキーです。悲しみを吹き飛ばすような感じがあると思います。
Don’t Touch Me
前回と今回、ブルーズから独自のファンクを作った才人、ジョニー・ギター・ワトソンを聞きました。
75年にロスアンゼルスのクラブで彼のステージを見た時は、そのファンクに突入した頃でした。ストリートの歌を歌う人だけあっていろんな友達や知合いが来ていて、休憩時間に客席に来てみんなと楽しそうに話をしていた姿が忘れられません。サインももらいましたが、すごく優しいいい人でした。
最後に僕も音源は持ってないんですが、ジョニー・ギターがフェデラルでソロ・デビューした頃の”Space Guitar”という曲がYOU TUBEで聞けるので検索してみてください。
めっちゃおもろいです。Johnny Guitar Watson Space Guitarです。
では、また来週!Hey!Hey! The Blues Is Alright!