2021.12.03 ON AIR

音楽に思い込みは良くないという話/フィフス・ディメンションから半世紀マリリン・マックーとビリー・デイヴィスjr.

The Very Best Of The 5th Dimension / 5th Dimension(Sony Music Japan SICP-3710)

blackbird / Marilyn McCoo & Billy Davis Jr.(BMG EE1 538675442)

ON AIR LIST
1.Aquarius / Let the Sunshine In / The 5th Dimension
2.Wedding Bell Blues / The 5th Dimension
3.Blackbird / Marilyn McCoo & Billy Davis Jr.
4.(Just Like) Starting Over [feat. James Gadson] / Marilyn McCoo & Billy Davis Jr.

今日は少しブルーズから離れた話なのですが、或ミュージシャンに対して今まで自分が思っていた印象が時が経ち改めて聴くと違っていたということはないですか。私はこの番組で少し前に取り上げた映画「サマー・オブ・ソウル」の中に登場する「フィフス・ディメンション」というグループについて長い間というか、50年間くらい間違った認識をしていたことに気づきました。
50年前、つまり私が20才頃に「フィフス・ディメンション」は登場しました。男女何人かのコーラス・グループで今から聴いてもらう”Aquarius / Let the Sunshine In”という曲が60年代終わりに大ヒットし、その曲は「ヘア」というミュージカルで使われた曲だったという記憶でした。そして大きな記憶違いをしていたのは白人のコーラス・グループだと思っていたことです。それが「サマー・オブ・ソウル」を観ていたら「あれ?黒人のグループやん」と記憶間違いに気づきました。
「フィフス・ディメンション」は男性三人、女性二人のコーラスグループでその母体は63年くらいからロスのクラブ歌手グループとして始まっています。何度かメンバー・チェンジがあり60年代半ばにビリー・デイビスJr.、マリリン・マックー、ラモンテ・マクレモア、ロン・タウンソン、フローレンス・ラルーというメンバーに落ち着きました。
皆さんもどこかで一度は聞いたことがあるだろうこの曲からスタートです。
1969年ビルボードチャート一位になった大ヒット曲
1.Aquarius~Let the Sunshine In / The 5th Dimension
この曲はAquarius とLet the Sunshine Inと二つの曲を繋げたものです。元々ミュージカル「ヘア」を観て感動したフィフス・ディメンションのメンバーが劇中で使われていた曲を歌いたいと申し出たのが録音のきっかけです。バックの素晴らしい録音に参加したのはドラマーのハル・ブレインはじめ当時LAのトップのレコーディング・ミュージシャン「レッキング・クルー」のメンバーたちです。
後半の”Let the Sunshine In”の歌を聴くと歌がすごくパワフルでソウルフルでやっぱり黒人グループだなと今は思うのですが、70年頃私にはわからなかった。なぜなら彼らの音楽に白人的なテイストがあるからで、実際プロデューサーは彼らを白人のコーラス・グループの「ママス&パパス」の黒人版にしょうとしてたらしく、実際「ママス&パパス」の曲もカバーさせてます。また、67年に彼らがヒットさせた”Up,Up And Away”も当時ラジオからよく流れてきてましたが、白人的な軽いサウンドやコーラスに聞こえてました。私がこの5th Dimensionを白人グループだと思い込んだのも仕方なかったと言い訳させてください(笑)。
次の曲もヒットした曲でオリジナルは女性シンガー&ソングライターのローラ・ニーロ。この曲は白人のポップチャートでは一位になってますが、黒人のR&Bチャートでは23位とあまり黒人にはウケず白人に受けています。調べて見ると彼らは黒人グループなのに白人チャートでは何度も一位を取っているのに、黒人R&Bチャートで一位になった曲はないんですね。面白いグループです。
2.Wedding Bell Blues / The 5th Dimension
メンバーのマリリンとビリーが「ウェディングベル・ブルース」をリリースした69年に結婚するのですが、75年にふたりがグループを脱退してデュオとして活動を始めます。5th Dimensionはその後もグループとして続くのですが全盛期はここで終わりとなります。マリリンとビリーは「星空のふたり/You Don’t Have to Be a Star」などヒットを出してソウル・デュオとして活躍し、ミュージカル出演やテレビの司会者などアメリカのエンターテイメントの世界ですごく有名な存在となり今も活躍しています。
そしてそのふたりが今年アルバムをリリースしました
アルバム・タイトルが”Blackbird”(正式にはBlackbird Lennon McCartony Icon) がいまヘヴィ・ローテーションで我が家に流れています。このアルバムはタイトル曲もそうですが、ビートルズのジョンとポールの曲を取り上げたアルバムです。”Got To Get Yoy Into My Life”から始まり”The Fool On The Hill”,”Yesterday”,”Help”などが収録されています。アルバム・タイトル曲”Blackbird”はビートルズの68年のホワイトアルバムに収録された曲です。私はこの曲をずっと夜更けに鳴いている黒い鳥のことをただ歌っていると思っていたのですが、この歌を60年代にアメリカ南部で辛く、苦しい目に遭いながらも公民権運動で戦っていた黒人女性たちに向かってポールは曲を書いたと最近知りました。そしてその曲をマリリンとビリーがここ数年アメリカで巻き起こっている人種間の分断、そしてBLM運動を提起する目的でこの歌を取り上げたということです。すごく意味のある選曲です。
「黒い鳥が真夜中にさえずっている。傷ついた翼で空へ飛ぼうとしている。これまでの人生、君がただ待っていたのは飛び立つこの瞬間だったんだね」
3.Blackbird / Marilyn McCoo & Billy Davis Jr.
マリリン・マックーはきれいな方で調べたら若い頃はモデルさんをされていたようです。「サマー・オプ・ソウル」の映画の中でも観客の若い男の子があんな可愛い人を見たことがないと語っていました。でもきれいなだけでなく歌も上手いです。マリリンとビリーは現在80歳くらいですが、本当に仲のいい夫婦でその仲の良さが音楽にも出ていると思います。
実はこのアルバムには一つ嬉しいことがあって、ジョン・レノンの”Starting Over”がカバーされているのですが、そのドラムがジェイムズ・ギャドソンなのです。僕のバンド「ブルーズ・ザ・ブッチャー」とコラボしてライヴ・アルバムを一緒に録音してくれたギャドソンが参加しています。では最後にその曲を。
4.(Just Like) Starting Over [feat. James Gadson] / Marilyn McCoo & Billy Davis Jr.

フィフス・ディメンションから半世紀、Marilyn McCoo & Billy Davis Jr.の新しいアルバム「ブラックバード」は人種問題や格差の広がりに静かな抗議をしています。80才のアフリカン・アメリカン夫婦の美しい抗議でもあります。いいアルバムです。そして映画「サマー・オブ・ソウル」はぜひ観てください。

2021.11.26 ON AIR

私が選んだブルース名唱15曲 その3
【BSR Playlist Archives】第3回 永井ホトケ隆(https://bsrmag.com/playlist/bsrplaylist3/)

ON AIR LIST
1.Turn On Your Love Light / Bobby Blue Bland
2.Night Life / B.B.King
3.Driving Wheel / Junior Parker
4.Tramp / Lowell Fulson

私がエッセイを連載している「ブルース&ソウル・レコーズ」誌をご存知の方もいると思いますが、その「ブルース&ソウル・レコーズ」のWEB版(https://bsrmag.com)というサイトがありまして、そこから「これぞブルーズの歌」というのを選んで欲しいと依頼されました。それでとても15曲では終わらないのですが15曲を選びました。それで前々回から選んだ曲をこの番組で聞いてもらっているのですが、今日が最後で3回目です。今日はモダン・ブルーズを4曲聞いてもらいますが、このシリーズはブルーズの歌を中心に選んでいます。まずはボビー・ブルー・ブランド
ブランドはB.B.キングと双璧のモダン・ブルーズのトップ・シンガーですが、モダン・ブルーズの大きな特徴の一つにゴスペルの影響というのがあります。曲作りもアレンジもそして歌もゴスペル・テイストの導入がはっきりわかる時代のブルーズで、それは現在も続くブルーズの大きな要素になっています。ボビー・ブランドはとてもふくよかな地声を持っていて包み込むような唱法と彼独自の「痰吐き唱法」とも呼ばれるシャウトを混じえてブルーズの微妙な歌の表現に長けています。ミディアムからスローの曲も素晴らしいのですが、私はこのアップテンポのはっきりとゴスペルテイストを感じさせる曲を今回ブルーズ名唱15曲に選びました。
バックの素晴らしい演奏に乗って最高のブルーズ・シンギングを聴かせるボビー・ブルー・ブランドの1961年の録音です。
1.Turn On Your Love Light / Bobby Blue Bland
踊らざるを得ないようなグルーヴするブルーズでこれを生で聴いたらぶっ倒れそうです。

次は今のブランドと双璧のB.B.キングです。B.B.キングがブルーズに残した功績はあまりに大きすぎて、B.B.以降のブルーズマン、ロバート・クレイ、バディ・ガイなどもほとんどがどこかでB.B.の影響を受けています。B.B.に素晴らしい歌が多すぎて選ぶのに本当に困ったのですが、やはりライヴで本領を発揮した歌を今回は選びました。
カントリー&ウエスタンのウィリー・ネルソンのオリジナルですが、見事に自分の歌、自分のブルーズにしてます。
「夜の生活は良くないってわかってるけどそれがオレの生活なんだ」とリアルなブルーズを聴かせてくれます。1967年のライヴ・アルバム”Blues Is King”からNight Life
2.Night Life / B.B.King

ブルーズにはボビー・ブランドのように楽器を弾かないで歌だけの人もいます。次のジュニア・パーカーもそうです。厳密にいうとジュニア・パーカーはハーモニカを吹くのですが、ハーモニカ・プレイヤーとしてよりもそのシンガーとしての資質がまず素晴らしい人です。少し高めの艶とハリのある美しい声で広い音域を自在に使って多彩な表現をします。
今まで私が出会った黒人のミュージシャンに「私はブルーズを歌っている」というと何人もに「オマエ、ジュニア・パーカー」を知ってるかと訊かれました。ブルーズシンガーと言えばジュニア・パーカーだと言った人もいます。日本ではギターとか楽器をしないで歌だけのブルーズマンはなかなか人気が出ないのですが、何度も言います「ブルーズはギター・ミュージックではなくヴォーカル・ミュージック」です。
I am her drivin’ wheel(オレは彼女の駆動輪だ)という歌詞にあるように彼女のために働いて金をつぎ込んでいる男の話。
1962年デュークレコードからリリース
3.Driving Wheel / Junior Parker

最後はモダン・ブルーズの先駆けで土着的なブルーズの良さも持ち合わせたブルーズマン、ロウエル・フルソン。昔、ロウエル・フルソンのアルバムを一緒に聴いていた友達が「この人って上手いの?」と私に訊いたことがありました。
そり言葉はまさにロウエル・フルソンの個性を表していると思います。今日今まで聞いた三人はブルーズを知らなくても何となく歌が上手い人というのがわかるシンガーです。ところがフルソンは歌もギターもゴツゴツしていて、ジュニア・パーカーのように流暢な歌ではないし、ボビー・ブランドのように包み込むような歌でもなく、またB.B.のように素人耳にもわかるソウルフルな感じでもないわけです。独特のフレイジングというか節回しがありますが歌い上げるようなことはなく、どこか戦前のカントリーブルーズの素朴さとか土臭さを感じさせる歌です。しかし、その歌に昆布のような深い味わいがありブルーズは歌が上手いとか下手とかいうテクニックの問題ではないのだとフルソンを聴くと思います。
1967年の作品ですでにソウルの時代に入っていた当時の黒人音楽に対応したファンキーな曲ですが、やはりイナたい味わいがたまらなくいいです。
4.Tramp / Lowell Fulson

三回に渡ってお送りしたブルーズ名唱。15曲全て紹介できませんでしたが、「ブルース&ソウル・レコーズ」のWEB版(https://bsrmag.com)にアクセスしていただければ、スポティファイで無料で全て聴くことができます。ぜひ訪ねてください。この番組のHPもご覧ください。

2021.11.19 ON AIR

私が選んだブルース名唱15曲 その2
【BSR Playlist Archives】第3回 永井ホトケ隆
(https://bsrmag.com/playlist/bsrplaylist3/)

ON AIR LIST
1.The Sky Is Crying / Elmore James
2.Crawling Kingsnake / John Lee Hooker
3.Down In Mississippi / J.B.Lenoir
4.Mean Old World / T.Bone Walker

先週は自分の弾き語りをお送りしましたが、今回はその前の回にやっていた「私が選んだブルース名唱15曲」のその2です。
私が連載エッセイ「フールズ・パラダイス」を寄稿している雑誌「ブルース&ソウル・レコーズ」のWEB版(https://bsrmag.com)がありまして、そこから「ブルーズの歌で好きな曲、聞いてもらいたい曲」を選んで欲しいという依頼で15曲選んだのですが、とてもとても15曲では収まりません。結局ブルーズの歌で自分がインパクトを受けたものをなんとか15曲選らび、前回の放送ではハウリン・ウルフの”Moanin’ At The Midnight“、マディ・ウォーターズの”Rollin’ Stone”、サニーボーイ・ウィリアムスンIIの”Cross My Heart” そしてライトニン・ホプキンスの”Mojo Hand” の4曲を聴いてもらいました。前回も話しましたが、ブルーズの歌というのは歌声が何オクターブ出るとか歌唱のテクニックがあるとかで判断されるものではなく、歌わざるを得ないそのブルーズマンの切迫した気持ちとか受け止められないような溢れる想いとか、それに伴って表れるリアリティとかインパクトが大切だと思います。
二回目の「ブルース名唱」の一曲目はまさに心に突き刺さるような、そして心から消えないブルーズの歌です。
「空が泣いている。涙が通りを流れ落ちていく。涙とともに彼女をずっと待っている。彼女はどこへ行ってしまったのだろう。ある朝、彼女が通りを歩いていくのを見かけた。見ているだけでとてもいい気持ちになって俺のくたびれた心が踊り跳ねたんだよ。嫌な気分だ、彼女がもう俺を愛してないなんて。空が泣いている。涙が俺のドアまで転がり落ちてくる」
いろんなミュージシャンがカバーしていますが、このオリジナルのエルモア・ジェイムズを超える歌はありません。
1.The Sky Is Crying / Elmore James
エルモア・ジェイムズ自身が弾くシャープでディープなスライドギターと彼の緊張感のある歌のもたらすブルーズの感覚が素晴らしいです。よくこの曲のカバーで途中に何コーラスもギター・ソロを入れるミュージシャンがいますが、このオリジナルには途中のギターソロはありません。歌とギターのオブリガードだけで最後まで押し切っています。ブルーズは歌が主体ということです。

次は初めて聴いた時ブルーズの深い洞窟の中に引っ張り込まれそうな、なんか得体の知れない歌だと思いました。特に途中でリズムを刻むジョン・リーの足音と彼のディープな歌声だけになるところはブルーズの美学とも言えるダークな美しさがあります。とにかくジョン・リーの歌声はまさにブルーズ・ヴォイス。
ジョン・リーは生涯で何度かこの曲を録音しているが1949年が初録音。元々は自分のお姉さんの恋人だったトニー・ホリンズというブルーズマンから教えてもらった曲を自分流に変えたもの。
「俺はくねくね這い回る王様ヘビだ。俺の巣窟(den)は俺が支配してるのさ。お前の周りを俺の仲間がウロウロするようなことはさせないよ。彼女とできるのは俺だけなんだ。俺はくたばるまでは言い回るぜ」
2.Crawling Kingsnake / John Lee Hooker

次は今のジョン・リーのダークな歌声とは対照的な高い声で私は最初女性が歌っているのか・・・と思いました。J.B.ルノアー
多くの黒人ブルーズマンはミシシッピ、アラバマ、アーカンソーと言った南部に生まれたわけですが、その生活は幼い頃から農場で働かされろくに教育も受けられなく貧しくてとても厳しいものでした。そこから抜け出て少しでもいい生活をしたいと思うのは当然でそれで彼らはメンフィスやセントルイス、そしてシカゴやデトロイトなどの都会を目指して故郷を出たわけです。その故郷についてはそれぞれいろんな想いがあり、マディ・ウォーターズは綿花畑で働かされた日々を思い出したくないとほとんどミシシッピによりつかなかった。逆にB.B.キングは成功してから度々故郷を訪ねて故郷の教会などにいろんな贈り物をしたり、自分の父親にも農場もプレゼントしています。
次の「ダウン・イン・ミシシッピ」を歌ったJ.B.ルノアは「故郷では子供の頃から鋤や鍬を持たされて畑で働かされて綿花を摘む仕事もさせられた」と歌い始めて、「自分の奥さんの故郷でもあるミシシッピに悪意があるわけではないけどミシシッピから抜け出せて俺はラッキーだったよ」と歌っています。つまりやはり故郷の生活は辛くてそこからに抜け出せてシカゴでなんとか生活している自分は幸運だと。でも、サビの”Down In Mississipi”と歌うルノアの歌声を聞いているとそこに懐かしさや戻って見たい気持ちや少しは楽しいこともあったような気持ちが私は感じられます。
3.Down In Mississippi / J.B.Lenoir
ブルーズ史上重要ないい曲であり、いい歌です。

今日の最後はT.ボーン・ウォーカー
1945年にリリースされたブルーズ史上に残るモダン・ブルーズの名曲”Mean Old World “
「ひとりで生きていくにはつらい世の中だ。惚れた女は他の男が好きなんだ。泣きたいのを我慢するために酒を飲むんだ」と人生をひとりで生きていく辛さや大変さを歌った内容ですが、最後には「いつの日か俺も土の中6フィートに眠っていることだろう」と人生を達観したような言葉が出てきます。それをT.ボーンはさりげなく淡々と歌っています。その乾いた歌い方が返って都会でひとり生きていく孤独感を滲ませている気もします。この歌がロスを中心としたウエストコーストの都会で生きる黒人たちの共感を得てヒットとなりブルーズのスタンダードとなりました。52年にはシカゴのハーモニカ・プレイヤー、リトル・ウォルターがカバー・ヒットさせています。曲もいいし、アレンジもサウンドもグルーヴもそして歌も素晴らしい名曲、名唱です。
4.Mean Old World / T.Bone Walker
ギターもが、歌もいいT.ボーン

四曲聞いてもらいましたが、どれも個性的でブルーズの歌に規範があまりないことがわかってもらえたでしょうか。でも、これらの曲は本当にブルーズと呼ぶのにふさわしい歌です。
最初に言いました「ブルース&ソウル・レコーズ」のWEBに私が選んだ15曲が出ています。スポティファイというサイトで全曲無料で聞くことができるようになっているので是非「ブルース&ソウル・レコーズ」のWEBを訪ねてください。アドレスはこちらです→https://bsrmag.com/playlist/bsrplaylist3/ 
来週も私が選んだブルース名唱15曲から聞いて見るのでお楽しみに。

2021.11.12 ON AIR

年に一度の弾き語りON AIR

ON AIR LIST
1.Take A Little Walk With Me /永井ホトケ隆
2.Kind Hearted Woman /永井ホトケ隆
3.High Heel Sneakers /永井ホトケ隆
4.Good Night Irene /永井ホトケ隆

年に一度くらい自分の弾き語りを聴いてもらってはどうかということで今年は自宅からグタグダ喋りながらリモート・ライヴやりましたが、いかがでしょうか。
もう少し上手くやれるといいのですが、まあ家で一人でギター弾いて歌っている時はこんなもんです。
お楽しみいただければ幸いです。

2021.11.05 ON AIR

私が選んだブルース名唱15曲 その1

【BSR Playlist Archives】第3回 永井ホトケ隆
(https://bsrmag.com/playlist/bsrplaylist3/)

ON AIR LIST
1.Moanin’ At The Midnight / Howlin’ Wolf ( 1951 CHESS )
2.Rollin’ Stone / Muddy Waters (!950 CHESS )
3.Cross My Heart / Sonny Boy Williamson ( 1957 Chess/Checker )
4.Mojo Hand / Lightin’ Hopkins (1961 FIRE )

私がエッセイを連載している「ブルース&ソウルレコーズ」という日本で唯一のブルーズとソウル、ゴスペルの音楽雑誌のWEB版(https://bsrmag.com)というのがあります。
だれでも見れます。実はそのWEBに私が選んだ「ブルース名唱15撰」というのが発表されています(https://bsrmag.com/playlist/bsrplaylist3/)
歌を中心としたブルーズの素晴らしい曲を15曲選んだものです。そのサイトに行くとSpotifyで登録すれば曲が聴けるようになっているのでぜひ一度訪ねてみてください。
それで今日はその選んだ15曲の一部を紹介したいと思います。
まずそのサイトに私はこんな文を載せました。
「ブルース名唱15撰」       
昔、某音楽学校からブルース・ヴォーカル教室をやってくれないかという依頼を受けたことがある。すぐさま丁重にお断りした。ブルースの歌は教えるようなものではないし、教えられない。歌声が何オクターブ出るとか音域が広いとか発声がどうのとか歌唱テクニックが云々という音楽的な規範がブルースには全くない。だから今回挙げた15曲も私が個人的にこれぞブルースと感じる歌であり、一般的な「名唱」と言えるかどうかはわからない。
15人の偉大なブルースマンは声質も違えば歌い方も様々だ。泥臭い歌から洗練された歌、ゴスペルの影響が感じられる歌もあればダウンホームな歌もあり、語るように歌うものもあり地声に魅力がある歌もある。そのひとつひとつの曲にそれぞれのブルースマンの人間性や人生観を感じることもあり、歌った時の心象風景が浮かんだり、その時の社会状況を知ることもある。そしてもちろんダンス・ミュージックでもあるブルースのグルーヴに心と体を揺らす楽しさもある。長い歳月歌われ続け、聞き続けられて来たブルースをこれからもずっと楽しんでください」

ハウリン・ウルフを初めて聞いた時はいわゆる日本でいう「ダミ声」のような歌声が印象に残り、いいとか悪いよりもとにかくインパクトがすごい声だなぁと感じた。その大きな潰した声はハウリン・ウルフが憧れてギターや歌を教えてもらったチャーリー・パットンがそういう歌い方でその後パットンを聞いてなるほどと思った。きっちり言えば「歌唱法の伝承」ということでしようか。バンドのサウンドも同じチェスのマディ・ウォーターズと比べるとラフで土着的な感じで、それはウルフがシカゴにくる前にいたウエスト・メンフィスのブルーズがそういう荒々しいブルーズなんですね。選んだ”Moanin’ At The Midnight”は「真夜中に唸る」ということですが、実際モーン(唸り)から歌が始まります。南部の匂いがプンプンするアーシーなワン・コード・ブルーズです。「誰かが俺のドアをノックする。心配だ。俺は行くところもない」
1.Moanin’ At The Midnight / Howlin’ Wolf ( 1951 CHESS )
この歌を聞いた時、アメリカの広い荒野に乾いた風が吹いていて砂埃が舞って、月が煌々と照っている所に狼や鳥の鳴き声が聞こえてくる・・そんな寂しい風景を思い浮かべました。

ブルーズの名門レコード会社のひとつシカゴのチェスレコードは映画「キャデラック・レコード」のモデルにもなった有名な会社です。ブルーズだけでなくR&B,ソウル、ゴスペルと幅広く黒人音楽を提供したレーベルですが、ブルーズ部門の大看板が今聞いてもらったハウリン・ウルフと次のマディ・ウォーターズです。マディはベーシストでありプロデューサーでもありソングライターでもあったウィリー・ディクソンが作った曲とディレクションによって多くのヒット曲を出しました。私が選んだのはそれ以前のマディの録音初期、1950年の曲”Rollin’ Stone”この曲がマディのチェスからのデビュー曲。ご存知の方も多いと思いますがロックバンド「ザ・ローリング・ストーンズ」のバンド名はこの曲からつけられました。
歌詞はWell, I wish I was a catfish,swimmin in a deep blue seaと始まる歌詞で「もし、俺がナマズだったら深く青い海を泳いで」I would have all you good lookin women,fishin, fishin after me「きれいな女たちをどんどん釣り上げるやろな」と、女性にモテる自慢で始まり、3番の歌詞でWell, my mother told my father, just before I was born,I got a boy child’s comin,he’s gonna be, he’s gonna be a rollin stone「俺が生まれてくる前にお袋が親父に男の子が生まれるだろうけどこの子は転がる石になりそう(つまり落ち着かない不良になりそう)と言ったのさ」
2.Rollin’ Stone / Muddy Waters (!950 CHESS )
実はこのRollin’ Stoneには20年代にジム・ジャクソンというブルーズマンが歌った”Kansas City Blues”という元歌があり、そこから歌詞が取られていてそしてこのRollin’ Stoneはのちにウィリー・ディクソンが作ってマディに歌わせた”Hoochie Coochie Man”の元にもなっています。マディの声がまだ若いですがふくよかで色気があります。この時マディは35才。マディの弾き語りで彼の故郷ミシシッピのブルーズの匂いがします。歌声もいいのですがギターのリズムがしっかりしているのもマディの素晴らしいところで、デビュー前にハウスパーティなどで引っ張りダコだったというのもこのリズムの良さがあったからだと思います。
ウルフ、マディ、と来て次も同じチェスレコードのサニーボーイ・ウィリアムスン。
私はブルーズを聴き始めた20才くらいの頃、最初によく聞いたのがこういう50年代のシカゴ・ブルーズだったのです。まあ、その前に聴いていたブルーズ・ロックとの関連が深いということもあったのですが、なんか次のサニーボーイなどを聞くとロックが子供の音楽に思えました。何か奥深い、何か得体の知れないものが、人間の本質みたいなものがブルーズ隠されているのではないか・・・と感じたわけです。特にこのサニーボーイの”Cross My Heart”は歌うというより、語るようにというか訴えかけるようなヴォーカルで「これはなんなんや」「この切羽詰まったような歌は・・」とすごく惹かれました。私はブルーズの歌を選んで欲しいと言われると必ずこの曲を出します。
3.Cross My Heart / Sonny Boy Williamson ( 1957 Chess/Checker )
この曲のサニーボーイの歌を支えているのがギターのロバートJr.ロックウッドとルーサー・タッカー、そしてウィリーディクソ(B),フレッド・ビロウ(Dr)と50年代シカゴ・ブルーズの鉄壁のメンバーです。

今のサニーボーイと同じで私にとってはブルーズという音楽の本質と時代を超えた格好良さを教えてくれたライトニン・ホプキンス。「ルイジアナに行ってモジョ・ハンドを手に入れるんだ」と始まるこのMojo Handはいかにもギャブラーをやっていたライトニンらしい、アウトローな彼の人柄がやはり歌に出てるんですね。ああこの人堅気やないなとわかる。
4.Mojo Hand / Lightin’ Hopkins (1961 FIRE )

今日聞いた4人ともすごく個性的な声と歌い方でそれぞれに魅力があリます。やはり歌にはその人の人柄、性格とか出てくるんですね。今日の4人の中ではマディ・ウォーターズがいちばんかっちりしてて彼の真面目さと別な言い方すると細かい、スクウェアなところがあるように思います。
ウルフは自分の売りをよく知ってる感じで、決して器用ではないのでその声のインパクトとパワーで押しながら時折繊細さも聞かせる人です。
サニーボーイは何も気にしていないゴーイング・マイ・ウェイなスタイルで、でも歌っている内容とその声が物事の本質を俺は知ってるという不気味な深さがあります。
ライトニンの歌はストレートでさっき言ったようにどこかアウトローな感じがあり惹かれるものがあります。
是非「ブルース&ソウル・レコーズ」のWEBを訪ねてください。アドレスはこちらです→https://bsrmag.com 最初の見出しのページの下の方にぼくの写真が出ているのでそこをクリックしてください。