2021.01.15 ON AIR

ネイティヴ・インディアンの血をひくギターの名手、ジェシ・デイヴィスが残した音楽

Red Dirt Boogie: The Atco Recordings 1970-1972 /Jesse Ed Davis

ON AIR LIST
1.Statesboro Blues/Taj Mahal(Guitar:Jesse Ed Davis)
2.Red Dirt Boogie,Brother/Jesse Ed Davis
3.Sue Me,Sue You Blues/Jesse Ed Davis
4.Crazy Love/Jesse Ed Davis
5.Kiowa Teepee/Jesse Ed Davis

前回はネイティヴ・インディアンがアメリカのポピュラー・ミュージックに及ぼした影響を描いた映画「RUMBLE」にまつわる曲をON AIRしたのですが、今回はインディアンの血を引くミュージシャン、ギタリストとして60年代終わりから70年代にかけて活躍したジェシィ・エド・デイヴィスです。
早くからネイティヴ・インディアンの血を引いていることを表明していたジェシィ・デイヴィスは素晴らしいギタリストだったのですが、44歳という若さで亡くなっているので若い人たちには馴染みがないかも知れません。
エリック・クラプトンの”No Reason To Cry”、ジョン・レノンの”Rock And Roll”,ジョージ・ハリソンの”Extra Texture”他様々なミュージシャンのアルバムにゲスト・ギタリストとして客演しています。僕がジェシィ・エド・デイヴィスの名前を知ったのは、オールマン・ブラザーズの”Statesboro Blues”という曲でのデュアン・オールマンの素晴らしいスライドギターが、実はタジ・マハールのアルバムで同じ”Statesboro Blues”でギターを弾いているジェシィ・デイヴィスの影響らしいと聞いて、そのタジのアルバムを聞いたのが最初です。
1968年のアルバム”Taj Mahal”から
1.Statesboro Blues/Taj Mahal(Guitar:Jesse Ed Davis)
オールマン・ブラザーズのこの曲を知っている人は、1972年のオールマンのフィルモアのライヴでのデュアンのスライド・ギターがジェシ・ディヴィスの影響を受けたことがわかると思います。ギターの音色もいい素晴らしいプレイでデュアンが影響を受けたのもわかります。
ジェシィ・デイヴィスは1971年にソロ・アルバム”Jesse Davis”と翌72年に”Ululu”をリリースしてます。その二枚を一枚にまとめた”Red Dirt Boogie: The Atco Recordings 1970-1972 “というアルバムから今日は何曲か聞こうと思ってます。
ジェシィ・デイヴィスは60年代中頃から地元オクラホマを中心に「コンウェイ・トゥッティ」というバンドで活動していましたが、60年代終わりになってウエストコーストに移ってから当時ブルーズをやっていた、タジ・マハールと出会い彼のバンドに加入します。いま聞いてもらった”Statesboro Blues”は68年の録音ですが、その頃からギタリストとして評判になり69年にタジのバンドを離れてからはアルバート・キングやウィリー・ネルソンのレコーディングなどに参加し始めます。そして71年にソロ・アルバム”Jesse Davis”のリリース、そして翌年に”Ululu”をリリースとなります。では、まずその”Ululu”に収録されたこの曲から。ビートにインディアンのテイストがあると思うのですがどうでしょう。
2.Red Dirt Boogie,Brother/Jesse Ed Davis
ギター、ものすごくいい音してます。土着的でありながらファンキーでもちろんブルーズのフィーリングもあり当時こういうサウンドは初めてだった気がします。
次はジョージ・ハリソンが作った曲で、ジョージの1973年のアルバム”Living In The Material World”に収録されてます。ジェシ・デイヴィスはジョージの有名なバングラディシュ・コンサートにも参加していますが、この73年頃は、レオン・ラッセルやクラプトン、ローリング・ストーンズなどイギリスのミュージシャンとの交流も多くてホブ・ディランと共演もしています。ギターも上手いけど性格もよかったそうでいろんな人に誘われていた頃です。
3.Sue Me,Sue You Blues/Jesse Ed Davis
曲名のSue Me,Sue You のSueというのは訴える、告訴するという意味ですが、多分奥さんともめて裁判沙汰になり「君がぼくを告訴して、ぼくも君を告訴するという・・こういうこともういい加減やめないか」という意味の歌だと思います。昔愛し合っていたのに告訴し合うってイヤですね。

80年代に入るとジェシィはドラッグ中毒から抜け出すのに時間がかかるようになり活動が減って行き88年に亡くなってしまいました。
ギターの名手というだけでなく音楽的才能もセンスもある人だけに残念です。
次は最初のアルバム”Jesse Davis”に入ってる曲です。作ったのアイルランドのレジェンド、ヴァン・モリソンですが、愛する彼女から溢れるほどの愛を与えてもらえる喜びを歌ったものです。モリソンの70年のアルバム「ムーンダンス」に収録されています。
4.Crazy Love/Jesse Ed Davis
ジェシィは「スワンプロック」というジャンルで語られることが多いのですが、スワンプとは南部の湿地帯のことですからなんかジトジトした梅雨時のようなサウンドを思い浮かべる人いるかと思いますが、まああまり洗練されていない土臭いロックのことです。70年代の初中期にブルーズやリズム&ブルーズ、ゴスペルという黒人音楽とカントリー、ヒルビリーと言った白人音楽がミックスされたものです。その代表的なバンドがデラニー&ボニーです。そのデラニー&ボニーのサウンドに惚れ込んだのがクラプトンですが、ジェシィ・デイヴィスのことを気に入ったのがビートルズのジョージ・ハリソンです。その時代からレオン・ラッセル、ボブ・ディラン、デイヴ・メイソンなども加わりアメリカとイギリスのロックの交流が盛んになっていきます。
スワンプロックのテイストは同時代のサザンロックのオールマン・ブラザーズなんかも被ってます。

もう一曲。ネイティヴ・インディアンのトライヴであるカイオワ族のティーピーとはテントのことです。
5.Kiowa Teepee/Jesse Ed Davis

映画「RUMBLE」でもジェシィのことが取り上げられていますので機会があれば是非映画もご覧ください。
次回は現在最高のハーモニカ・プレイヤーのひとり、キム・ウィルソンのニューアルバムを聴きます。
Hey Hey The Blues Is Alright!

2021.01.08 ON AIR

ネイティヴ・インディアンの音楽がアメリカの音楽に残してきたもの~映画「ランブル」を観て

Link Wray & The Wraymen (Oldies ODR 6165)

THE COMPLETE RECORDED WORKS/Charlie Patton (P-VINE PCD2255)

Lighting And Thunder/The Golden Eagles (Rounder Records CD 2073)

Electric Lady Land/The Jimi Hendrix Experience (MVCE 24029)

ON AIR LIST
1.Rumble/Link Ray
2.Screamin’ And Hollerin’ The Blues/Charlie Patton
3.Shoo-Fly/The Golden Eagles featuring Monk Boudreaux
4.Gypsy Eyes/Jimi Hendrix

ネイティヴ・インディアンがアメリカの音楽に及ぼした影響を追求した映画「ランブル」が去年の10月から全国順次公開されたのですが、皆さんはご覧になりましたか。
とても興味深い、教えられることの多い映画でした。
ロックのジミ・ヘンドリックスやジェシ・エド・ディヴィス、またブルーズのT.ボーン・ウォーカーなどがインディアンの血を引いているというのは知っていましたが、実に多くのミュージシャンがネイティヴ・インディアン系であることを驚きました。

映画のタイトル「Rumble」は50年代の終わりから60年代にかけて活躍したギタリスト、リンク・レイの曲名から取ったものです。
リンク・レイはライヴ・ステージでのサウンドが歪んだ感じが欲しかったので、ギターアンプのスビーカーにわざわざ穴を開けて音を歪ませたそうです。今はディストーションというエフクターがありそれで音を歪ませているのですが、当時はエフェクターかせなかったので無茶なことをしたわけですが、これがギター・サウンドとしては革新的な音になったわけです。
現在のハード・ロック、ヘヴィ・メタルやパンクのサウンドの第一歩がこの曲と言われているのがわかるワイルドな曲です。
1958年。
1.Rumble/Link Ray
リンク・レイはお母さんがチェロキー族のネイティヴ・インディアンだったのですが、この曲のリズム、ビートの中にネイティヴ・インディアンのプリミティヴなビートが聞こえてきます。リンク・レイは肺が悪かったので歌うのが難しくて こういうギター・インストの曲をたくさん作りました。それにモロ影響を受けて、リンク・レイがいなかったらギターは弾いてなかったと公言しているのが映画にも出てきますが、ピート・タウンゼント。彼のバンド「ザ・フー」の曲を思い出してもらうとリンク・レイの影響がわかると思います。
そのほかレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジなどリンク・レイの影響を受けたロック・ギタリストはたくさんいます。

映画「ランブル」ではアメリカのボビュラー・ミュージックにインディアンの音楽が与えた影響と、インディアンの血をひくミュージシャンたちが無意識に自分の体の中にあるインディアンのグルーヴを音楽に残していることが解明されています。
デルタ・ブルーズのキングと呼ばれるチャーリー・パットンのブルーズの中にそれがあることを解明するシーンがぼくにとっては一番興味深かった。
チャーリー・パットンが活躍した1920年代から30年代時代には当然まだエレキ・ギターはなかったが、彼はアコースティック・ギターでギターのボディを叩いたり、高音部でチャーキングするワイルドなスキルを披露しています。全体的にパーカッシヴでリズムがよくてとてもダンサブル。聞いてもらう次の曲でもギターのボディを叩く音が聞こえます。
2.Screamin’ And Hollerin’ The Blues/Charlie Patton
チャーリー・パットンは自分に流れている血のことを尋ねられることが嫌いだったそうです。黒人なのかインディアンなのか白人の血も入っているのかとか聞かれる容貌なので・・でも、パットンはそういう時に「オレがいまここにいる。それだけで十分だろう」と言ったそうです。
本当にそうです。何人であろうが、どういう血を引いていようがその人間が今生きていてそこにいるだけで充分です。
「ランブル」の映画の中にひとり知っている人が出てきました。ニューオリンズのマルディグラ・インディアンのトライブのひとつ、ゴールデン・イーグルスのビッグチーフであるモンク・ブードロー。僕が90年代にニューオリンズに行くようになって最初に感動したのはこのゴールデン・イーグルスとワイルド・マグノリアスというインディアンのライヴでした。
聞いてもらうとわかるのですが、ギターとかピアノとか和音を出す楽器がなくてタンバリンとコンガにバスドラにカウベルという打楽器と歌だけというとてもプリミティヴな、ストレートでグルーヴのある演奏でエレクトリックな音に慣れてしまっている自分にとってとても新鮮で刺激的なサウンドでした。
3.Shoo-Fly/The Golden Eagles featuring Monk Boudreaux
モンクは日本にもきているので聞いたことがある人もいると思いますが、優しいとてもいい人でした。
こういう土着的なサウンドにエレクトリックな音を入れてよりバンド・サウンドにしたものもその後作られて、僕の盟友の今ニューオリンズで活動しているギターの山岸潤史が加入したワイルド・マグノリアスはエレクトリックサウンドを入れてある種ファンク化、マルディグラインディアン・ファンクしたことですごく人気が出ました。あの頃のニューオリンズは本当に楽しくて、僕はアメリカでいちばん好きな街がニューオリンズになりました。

ロックのジミ・ヘンドリックスはインディアンのトライブのひとつチェロキー・インディアンの血を引いていることを公言しており、彼の作った曲の中にはインディアン音楽の要素が入ってると言われています。次の曲は古いブルーズのフィールドハラー(畑で働くときに歌われる労働歌)がベースになっているのですが、どこかにインディアンのワイルドなグルーヴが入っている気がしませんか。
1968年リリースの「エレクトリック・レディ・ランド」から
4.Gypsy Eyes/Jimi Hendrix

映画の中では奴隷から逃亡した黒人たちが追ってくる白人たちから逃れるために、インディァンの部族に助けてもらってかくまわれた話も出てきます。インディアンはアメリカの先住民族にもかかわらず、後からヨーロッパからやってきた白人たちに土地を奪われ居住区という地域に住むことを強制させられるというひどい目にあったわけです。白人は黒人を奴隷としてアフリカから連れてきただけでなく、先住民のインディアンから土地をうばうという全く理不尽なこともやってきたわけです
映画でブルーズのハウリン・ウルフにもチョクトー族というインディアンの種族の血が流れていると知り驚きました。ウルフはアフリカン・アメリカンだと思っていました。しかし、彼が持っているすごくワイルドなフィーリングはリンク・レイやジミ・ヘンドリックスに似ているかも知れません。
今日は映画「ランブル」から映画に関係していいるミュージシャンの曲を聞きました。
ぜひDVDで出してもらいもう一度観たい映画です。

来週はネイティヴ・インディアンであること早くから隠さなかったギターの名手、ジェシ・ディヴィスの特集。
ジョージ・ハリソン、エリック・クラプトン、ローリング・ストーンズなど多くのミュージシャンに愛されたジェシ・エド・デイヴィスです。お楽しみに。

2021.01.01 ON AIR

2021年新年あけましておめでとうございます!

That’s What I Heard / Robert Cray Band (NOZZLE Records 72098CD)

Rawer Than Raw / Bobby Rush (Deep Rush Records/BSMF-2713)

Living On Mercy / Dan Penn (LMCD-219)

ON AIR LIST
1..Hot/Robert Cray
2.Burying Ground/Robert Cray
3.Down In Mississippi/Bobby Rush
4.Smokestack Lightning/Bobby Rush
5..I’ll See You In My Dreams/ Dan Penn

ブルーズの王様と呼ばれたB.B.キングは生前「全ての人がブルーズを持っている。黒人であろうが白人であろうがどんな人種でも、また貧しくてもお金を持っていても地球上の全ての人間にブルーズはある」と言いました。その言葉のように昨年から猛威をふるっているコロナ・ウィルスは地球上のすべての人にとって逃れられない大きなブルーズになっています。そして一つの大きな試練になっています。
この番組も本来ならキー・ステーションの弘前のアップルウェーブで収録しているのですが、去年の夏前から感染拡大を防ぐために住んでいる東京からリモート録音が続いています。
コロナ・ウィルスに対する考え方は人それぞれあると思うのですが、僕も高齢者ということもあり、また知り合いの医療関係者の方たちの苦労を考えると自然と自粛という方向になっています。弘前に行きたいのは山々ですが、リモート録音しているのも自粛の一つです。ライヴもお客さんを入れてのライヴはやってません。ツアーもやっていません。ほぼ月に一度の無観客配信ライヴだけです。普段も必要のない限り出歩くことはしていない。そこから生まれるストレスや不安はみなさんと同じようにあります。でも、思うように活動できないこの時間の中で自分が今までやってきた音楽活動を振り返り、これからのことを考え準備するための時間なのだと思っています。そして、リモートですがこの番組をやれることが自分自身の大きな活力になっています。そしていま日本でいちばん大きく充実したブルーズのラジオ番組のアーカイヴスを残そうと思っています。
今年もよろしくお願いします。

今日は去年リリースされたアルバムで紹介できなかったものや、去年印象に残ったアルバムから今日は聞いてみたいと思います。
ブルーズに関してはここ10年くらいの間にB.B.キングはじめレジェンドと言われたブルーズマンが亡くなってしまい、かと言ってこの番組で心から聞いてもらいたいと思う新人のアルバムも新譜も少ないのが現状です。
そんな中、もうすっかりベテランになったロバート・クレイが去年2月にリリースしたアルバム”That’s What I Heard”は本当に素晴らしかった。
ブルーズン・ソウルという言い方は70年代に始まった古い言葉だが、クレイのことを僕はブルーズとソウルの両方のテイストがあるブルーズン・ソウルの歌手だと思っている。最初の曲は60年代はじめ頃のR&Bスタイルのジャンプナンバーだがまったく古さがない。

1.Hot/Robert Cray
正直言うと昔私はクレイがあまり好きではなかった。一つの理由はなんでもソツなくて器用で、引っかかるものがなくてあまり好きではなかった。それがここ数年、そこからまた一皮剥けたと言うか円熟味が出てきた。でも変な大御所感みたいな感じで歌っている訳ではない。
もう一つ、このアルバムはプロデュースとドラムで参加しているスティーヴ・ジョーダンの力が大きいと思う。
この録音チームでもう一枚録音してほしいところだ。
次のようなゴスペルの曲も歌う力量があるブルーズシンガーは今はあまりいない。
オリジナルは1950年代に活躍したゴスペル・グループ、センセイショナル・ナイチンゲイルズ。

2.Burying Ground/Robert Cray
オールドスタイルという言い方で古いものという決めつけをしてしまう人がいるけれど歌手とプレイヤー、プロデューサー、アレンジャーそしてレコード会社のスタッフたちが古いことをやっていると思わなければ、それは新しい音楽なのだと僕は思う。逆に新しいことをやっているようで実はそれが少し前のものだと感じた瞬間にもう古いものになってしまうこともある。今の曲には今を生きているロバート・クレイとスティーヴ・ジョーダンはじめスタッフ全員の生きている感じがすごくする。生命力のある音楽だ。
ロバート・クレイは今年68歳、ますます磨きのかかったいいブルーズマンになってきた。ちょっと上から目線で申し訳ない。

次は87歳になったボビー・ラッシュ。去年リリースしたニューアルバム”Rawer Than Raw”は番組で紹介できなかったが、今回はアコースティック・アルバムで歌、ギター、ハーモニカ、そしてバスドラム代わりのフットストンプ(足音)を全て一人でやっている。
しかし、曲の半分をボビーが書いていて気力は全く衰えていない。まずはそのオリジナルを。

3.Down In Mississippi/Bobby Rush
歌、ギター、ハーモニカが格別上手い訳ではないのに曲全体から匂うものがブルーズという感じ。長い間クラブ・ツアーのチトリン・サーキットを回ってきたボビーの原点がわかるようなアルバムだ。

次はハウリン・ウルフのカバー。女にフラれて汽車に乗って街から去っていく歌だが、毎回出てくる”don’t ya hear me cryin’?”(俺が泣いているのが聞こえないのかい)という一節が切なくてと耳に残る。汽車の煙突のことを歌っているのだが「煙突の閃光」とでも言ったらいいのだろうか。

4.Smokestack Lightning/Bobby Rush
今年はずっと聴いてきたダン・ペンが新しいアルバム”Living On Mercy”をリリースしてくれたのも嬉しかった。変わらないいつもの歌声に彼独特のゆったりした曲がちりばめられたアルバムで、これでホッとした人も多かったのではないかと思う。

5.I’ll See You In My Dreams/ Dan Penn
コロナ・ウィルスの収束が早く来ることを願ってます。コロナ・ウィルスを甘く見ないで一人一人ができることで感染を防ぎましょう。人間生きててなんぼのもんです。
今年もよろしく!
Hey,Hey,The Blues Is Alright!

2020.12.25 ON AIR

クリスマス・スベシャル

BLUE BLUE CHRISTMAS (P-VINE PCD-1619)

Soul Christmas (Atco /ワーナー P-11437) LP

Soulful Christmas / Aaron Neville’s (A&M 31454-0127-2)

A Christmas Celebration Of Hope / B.B.King (MCA 112 756-2)

ON AIR LIST
1.Merry Christmas Baby/Charles Brown
2.Back Door Santa/Clarence Carter
3.Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow/Aaron Neville
4.Christmas In Heaven/B.B. King

今年も一年このブルーズ・パワーを聞いていただきありがとうございます。コロナ感染でこの番組の収録も現在リモート収録となっていますが、やはりスタジオに行って収録したいというのが本音です。
個人的にはライヴ、そしてツアーがほとんどなくなってしまい大きな打撃を受けていますが、それはぼくだけでなく他のミュージシャンのみなさん、コンサート会場、ライヴハウスで働くみなさん、もっと言えばほとんどの職種のみなさんが同じ境遇にいるわけです。
そんな中、今日はクリスマスです。年を重ねると年々クリスマスのようなイベントがどうでもよくなってしまいますが、クリスマスソングは好きです。でも、この番組はブルーズ・パワーなので他のラジオ番組のクリスマスソングとはちょっと違うブルーズのクリスマスソングをまず聞いてください。

1947年チャールズ・ブラウンの大ヒット・クリスマスソングです。
「クリスマスにはお前がダイヤモンドをくれるし、天国にいるような気分さ。ラジオからはご機嫌な音楽が流れ最高の気分。でも、今朝はまだ酒飲んでないからクリスマスツリーのようにしっかり立っているよ」という最後がやっぱりブルーズらしい歌詞になってます。
1.Merry Christmas Baby/Charles Brown
チャールズ・ブラウンはウエストコーストで活躍したピアノ・ブルーズプレイヤーで、いわばブルーズのナット・キング・コールです。ナイトクラブで都会的な少し洒落たジャズ風味のブルーズを歌いすごく人気がありました。

今の曲よりもっとブルーズっぽいというか、子供には聞かせられない曲が次のR&Bのシンガー・ソングライター、クラレンス・カーターの”Back Door Santa”
ブルーズにはBack Door Manという曲があるのですが、Back Doorは裏口つまり裏口から入ってくる男、Back Door Manは旦那さんがいない時に裏口からやってくるつまり間男。つまり人妻と密通、不倫する男のことです。この”Back Door Santa”は間男サンタとなります。「みんなは俺を間男サンタって呼ぶ。夜明け前にはトンズラするんやけどね。旦那がいない間に彼女たちを喜ばせてやるんよ。
本物のサンタは年に1回しか行かないけど俺は呼ばれたらプレゼント持っていつでも行くよ。子どもたちを追っ払うために小銭もポケットに用意している」
こんなクリスマス・ソングですがどうぞ
2.Back Door Santa/Clarence Carter
途中で時々クラレンス・カーターが「ホッホッホ」と笑うのが面白いのですが、こういう不倫、浮気について昨今めちゃ厳しくなっているのであまり言えませんがこの歌の大らかな感じがいいですね。

次はニューオリンズの、というよりアメリカ音楽界の宝の歌声、アーロン・ネヴィル。アーロンは1993年に「アーロン・ネヴィルズ・ソウルフル・クリスマス」というアルバムをリリースしています。
その中からスタンダードなクリスマス・ソングです。
3.Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow/Aaron Neville
ブルーズ、ソウル系の黒人ミュージシャン達のクリスマス・アルバムというのはたくさんあるんですよ。テンプテーションズやグラディス・ナイト、ミラクルズ、アル・グリーンはアルバムもリリースしていますし、ブルーズマンのクリスマス・シングルは本当にたくさんあって、フレディ・キング、アルバート・キング、ライトニン・ホプキンズやサニーボーイ・ウイリアムスンのクリスマス・ブルーズもあります。
欧米の人たちにとってクリスマスはやはり一年でいちばん大切な日ですから、日本人みたいにチャラい感じではなくて精神的なものだと思います。
最後はB.B.キングの2001年のクリスマス・アルバム” A Christmas Celebration Of Hope”からChristmas In Heaven
「12月は変わらずこの町は同じようだ。町の広場の木のライトまだ灯り、赤や白や緑がいたるところで輝いている、そしてここに君がいてくれたらと願う。通りは雪が舞い落ちて建物は全て白く覆れる。天国のクリスマスってどんなものなだろうと思う」
天国にいるB.Bに聞いて見たいですね「天国のクリスマスってどんなものですか」って。
4.Christmas In Heaven/B.B. King
「私にとってクリスマス・アルバムを録音することは長い間の夢だった」とアルバムにB.B.キングの言葉が残されています。
何でしょうね、クリスマス・ソングには楽しく、賑やかな曲もあるのにこういう切ない曲もあり、寂しい気分にもなります。
僕も経験してますが寂しいクリスマスの日もありました。特に若いころ、クリスマス・ケーキどころかお金がなくてボロアパートに一人いてインスタント・ラーメン食べながら、テレビのクリスマス番組をぼーっと見てました。悲しかったのかも知れませんが、ラーメン食べて寝たらもうクリスマスは終わっていて、次の日はまた朝早くからアルバイトに行ってました。とにかく生きるためのお金が一番大切でクリスマスに寂しいとか悲しいとか思ってる余裕もなく、減っている腹を満たすために家賃を払うために生きているような感じでした。世の中にはクリスマスの夜に恋人と高いホテルに泊まって高いディナーを食べる人もいますが、キリスト様は御自分の誕生日にそんなことを願ってはいないと思います。願っているのはすべての人にささやかな幸せがあることだと思います。メリー・クリスマス!良いお年を!

2020.12.18 ON AIR

「78才とはとても思えないパワフルでソウルフルなドン・ブライアントの新譜」

You Make Me Feel/Don Bryant (Fat Possum Records CDSOL-5483)

ON AIR LIST
1.Your Love Is To Blame/Don Bryant
2.99 Pound/Don Bryant
3.A Woman’s Touch/Don Bryant
4.I Die A Little Each Day/Don Bryant
5.Walk All Over God’s Heaven/Don Bryant

4年前に74才でニューアルバム”Don’t Give Up On Love”を発表したドン・ブライアントが78才になった今年またニューアルバムをリリース!
高齢になるとまず声が出るのかという心配があるが、1曲目の最初の歌声を聞いて「バリバリやん」と78才の力強い歌唱にまず安堵。
安定した歌声で78才とは思えない。そして彼の実直な歌い方に「ああ、サザン・ソウル」と胸が熱くなる。
シャウトからファルセットまで喉がまったく衰えていないどころか歌の表現がまた深くなったように思える。
1曲目は新曲の”Your Love Is To Blame”。いまも曲を作る意欲が彼にはあり、それを最初に持ってくる誇りと気力に頭が下がる。
1.Your Love Is To Blame/Don Bryant
ドンは今更説明することもなく、60年代からメンフィス・ソウルの優れたソングライターとしても高く評価されている。ジョン・レノンが”One Of The Best Soul Records Of All Time”と言った名曲”I Can’t Stand The Rain”は奥さんのアン・ピープルズとの共作で、他にも”A Love Vibration”、”99 Pounds”など奥さんのアン・ピープルズに書いた曲があり、今回のアルバムではその”99 Pounds”が歌われている。
2.99 Pound/Don Bryant
今の曲は奥さんアン・ピープルズの1972年のアルバム”Straight From The Heart”に入っている。
70年代メンフィス・ソウルのトップ女性シンガーとして奥さんが売れた頃は、シンガーとしての活動は少し控えて裏方として彼女をサポートしていた。奥さんのアン・ピーブルズは素晴らしい歌手でチャーミングな女性で人気もすごくあり、70年代メンフィス・ソウルのクイーンだった。いまは病で彼女はリタイアしてしまい、もうステージを見ることもできないし、アルバムもリリースされない。でも、ドンはいい時も悪い時もずっと彼女に寄り添って生きてきた。そして、こうして長いアンとの人生の中で生まれて来る愛の歌をいまも僕たちに届けてくれている。

次の曲はドンが書いた新曲です
「何も育たない庭のように、家庭ではない家のように私は感じる。メロディのない歌のように、いつもひとりでいる男のように感じる。私に必要なものそれは女性のふれあいだ」僕はこの歌を聞いた時にひとりでいる中高年の男を思い描いた。死別したのか離婚したのか、理由はわからないが年老いてひとり暮らす男には燃えるような恋ではなくそっと手に触れてくれるような柔らかい愛が必要なのだ。静かにでも心のこもったふれあいが・・。
3.A Woman’s Touch/Don Bryant

1978年にO.V.ライトの来日公演がO.V.の体調不良ため中止になり、そのピンチヒッターとして来日したのがオーティス・クレイだった。O.Vへの期待が大きかったためにファンの間ではオーティス・クレイってどうなん?という感じで来日公園を迎えた。しかし、それは素晴らしいオーティスのソウル・ショーだった。自分が好きな、自分が信じた音楽にやはり間違いはないんだと確信させてくれたライヴだった。そのライヴでオーティスが歌った次の曲を作ったのがドン・ブライアントだ。
「列車が駅を出て行ってからぼくの人生は坂を下っていくようなものだ。流す涙に慰めもない。生きる気力を君はうばいさってしまった。君がいなくなってから僕は少しずつ死んでいくようなものだ。帰ってきてくれないか、ベイビー」 
4.I Die A Little Each Day/Don Bryant
本当にいい曲を作ります。
ドンはソウル・シンガーとしては大きなスターになった人ではなかったのですが、この晩年になってからの彼の頑張りは素晴らしいです。やっぱりいい曲を書く人でいい歌を歌う人です。
そして、今回のこのアルバムを後ろで支えているドラムのハワード・グライムス、オルガンのチャールズ・ホッジズ、キーボードのアーチー・ターナー・・とかってのメンフィス・サウンドの要たちが元気でいまも演奏していることが何より嬉しい。コロナが収まったらもう一度彼らと一緒に来日して欲しい、ドン・ブライアント。
もう一曲。
5.Walk All Over God’s Heaven/Don Bryant
78歳、現役。