2026.06.12 ON AIR

追悼:ジェイムズ・ギャドソン/In Memory Of James Gadson vol.3

ON AIR LIST
1.The Greatest Love/Band Of Pleasure feat.永井ホトケ隆
2.Woke Up This Morning/blues.the-butcher-590213 with James Gadson
3.Kansa City/blues.the-butcher-590213 with James Gadson
4.Linda Lou/blues.the-butcher-590213 with James Gadson
5.Got To Find My Baby/James Gadson

4月2日に亡くなってしまった親愛なる、そして偉大なドラマーのジェイムズ・ギャドソンの追悼放送の三回目となります。
今日はちょっと個人的な話をしてみようかなと思うのですが、前回そして前々回の放送でOn Airしたように僕は最初ビル・ウィザースのアルバムでジェイムズ・ギャドソンという素晴らしいドラマーがいることを知ったわけです。1973年頃でした。それから彼がマービン・ゲイやジャクソン5やダイアナ・ロスなど本当にたくさんのスタジオの仕事をしていることを徐々に知りました。そんな中、ギャドソンと初めて会ったのは90年代、ギターの山岸潤史の六本木のライヴ・セッションに誘われて行ったらそこでギャドソンを紹介されたのです。一緒に演奏もしました。でも演奏のことは「あのジェイムズ・ギャドソンだ」と舞い上がっていたのであまり覚えてません。それから彼が日本の来る時に何度か一緒にセッションさせてもらいました。
今日はまず思い出深いレコーディングの一曲を。1996年にビクターのJVCレーベルからリリースされた”JVC SOUL All STARS”というコンピレーション・アルバムに参加しました。その時バンドは山岸潤史が組んでいた「バンド・オブ・プレジャー」ドラムのジェイムズ・ギャドソンをはじめギターがデイヴィッド・T・ウォーカー、ベースが清水興、キーボードが続木徹そしてギターに山岸潤史。録音の2日前くらいに山岸から電話があり「ホトケ、歌いに来いへんか」と。それで急いで曲を決めて録音したのがこの曲でした。

1.The Greatest Love/Band Of Pleasure feat.永井ホトケ隆

オリジナルはニューオリンズのアーロン・ネヴィル。この録音のときにギャドソンはテンポとグルーヴのことを気遣ってくれて、ちょうどぼくとギャドソンが向かい合わせの位置にいたのですが、「俺のドラムから始めるからいい感じのグルーヴになったら好きなところで歌に入ってくれ」と言われました。ギターのデヴィッド・Tも素晴らしいソロを弾いてくれて、本当はもっとソロ弾いて欲しかったんですけどね。みんなでコーラスもやって本当にいい思い出です。

2013年にギャドソンがブルーズ・ザ・ブッチャーのライヴレコーディングに参加してくれて”The Sure Shot Live”というアルバムを作りました。録音は東京と大阪と二回ライヴをそのまま、オーバーダビングなしで録りました。70年代の初めにビル・ウィザースのアルバムでギャドソンのドラムに感動してから40年が過ぎ、その間にたくさんのギャドソンの録音をいろんなアルバムで聴いてきたし、ドラムの沼澤くんにとっては師匠とダブル・ドラムという初めての録音でいろんな意味でテンションの上がるライヴでした。
アルバムではギャドソンが3曲ブルーズを歌ってくれました。今日はアルバムから彼のその3曲を聴いてみようと思います。
まずはB.B.キングのオリジナル曲です。

2.Woke Up This Morning/blues.the-butcher-590213 with James Gadson

リハーサルの時にあまりにギャドソンの歌がよくて「もう全部歌ってくれませんか」と言ったら「なん言ってるんだ。おまえがボスだろう」って言われてしまいました。
ギャドソンはカンザス・シティの生まれで若い頃はドラムではなくて歌をやりたかったそうでドゥ・ワップのグループを組んでいたそうです。だからコーラスもめちゃ上手い人でした。次は生まれ故郷カンザス・シティのことを歌った有名なブルーズ曲でその名前の通り”Kansas City”いくつかバージョンがあるのですが、僕が歌っているのはリトル・リチャード・バージョンですが、ギャドソンは本家の一番ヒットした1959年のウィルバート・ハリソンのバージョンです

3.Kansa City/blues.the-butcher-590213 with James Gadson

カンザス・シティは1930年代には「カンザス・シティ・ジャズ」と呼ばれるジャズが盛んになった街で、カウント・ベイシー、ジェイ・マクシャン、ビッグ・ジョー・ターナー、チャーリー・パーカーなどたくさんのミュージシャンが活躍した街です。ギャドソンはそういう音楽が盛んな街に生まれ育った人でした。亡くなってしまって本人の意向でお墓は故郷のカンザスシティになるそうです。

4.Linda Lou/blues.the-butcher-590213 with James Gadson

このライヴ録音のときに初日、僕が演奏でちょっとしたミスをしてしまい休憩時間に楽屋で「すいません、間違ってしまって」とギャドソンに謝るとギャドソンは笑って「オレは三つくらい間違えたよ。気にすんな」と言ってくれました。本当はギャドソンは一つも間違えてないのにそう言って励ましてくれたのです。本当に懐の大きな優しい人でした。
最後は「ハイ・リアリティーズ」というハイ・レコードのコンピレーション盤に歌手として入っているギャドソンです。
この歌がもう本当にぼくは好きです。

5.Got To Find My Baby/James Gadson

僕も長い音楽人生の中でいろんな人と会ってきましたが、本当に素晴らしい人でした。音楽的にはもう歴史に残るドラマーであり歌手であります。皆さんもきっとどこかでギャドソンがドラムを叩いている曲をこれからも耳にすると思います。

ミスター・ジェイムズ・ギャドソン、あなたは背も高くて身体も大きな人でしたが、心も大きな人でした。優しくしていただき、録音のときは気を遣っていただきありがとうございました。あなたとこうして歌とビートと音を残せたことは私の一生の名誉です。私のことを最後までホトケと言えずに「ホトキ」と呼んでくれてたことも忘れません。また会えると思っていたのに本当に残念です。自信のない私に「おまえはブルーズを知っているからいい。ブルーズが何かって知っていることが大切なんだ」と言ってくれた言葉は本当に嬉しかったです。私はもう少し生きていると思うので頑張ります。ありがとうございました、ミスター・ジェイムズ・ギャドソン、安らかに。

 

2026.06.05 ON AIR

追悼:ジェイムズ・ギャドソン/In Memory Of James Gadson vol.2

ON AIR LIST
1.Dancing Machine/The Jackson 5
2.I Want You/Marvin Gaye(3:20 FO)
3.You Can Run But You Can’t Hide/Freddie King
4.Cold Women With Warm Hearts/Albert King
5.I’ve Always Been Lonely/B.B.King

「イン・メモリー・オブ・ジェイムズ・ギャドソン」と題して前回から4月2日に亡くなったドラムのジェイムズ・ギャドソンへの追悼をしています。
前回はぼくが初めてギャドソンのドラムを聞いたビル・ウィザースのアルバムから今に残る名曲とギャドソン自身が歌も歌っていた”The Watts 103rd Street Rhythm Band”時代の音源を聴きました。ビル・ウィザースのアルバムからヒット曲が何曲が出て「このドラムを叩いているのは誰なんだ」とギャドソンは超売れっ子ドラマーとしてレコーディングに引っ張りだこになります。大きなグルーヴがありながらもシャープであり、聴く者の体を揺らすそのリズムはバーナード・パーディや ジェイムズ・ブラウンの2人のドラム、クライド・スタブルフィールドやジャボ・スタークスのように本当に気持ちのいいリズムだ。それであまりにたくさんの録音に参加したものでギャドソン自身が参加したアルバムを覚えていないということもあった。
さすがに次の1974年の大ヒット曲は覚えていただろうけど。R&Bチャート1位、ポップチャートでも2位まで上がったこの曲。この曲のドラムがジェイムズ・ギャドソンだと知ったのはかなり後だった。

1.Dancing Machine/The Jackson 5

このジャクソン5の曲だけでなくダイアナ・ロスなどモータウンの録音もたくさん参加してます。大きなグルーヴでありながらスネアの鋭いショット、そして何より歌心のあるドラミングはギャドソンならではのもので当時のシンガーやプロデューサーが欲しがったのはよくわかります。
次のマービン・ゲイの大ヒット曲もドラムはジェイムズ・ギャドソン。どこかで聴いたことがあるかもしれません。

2.I Want You/Marvin Gaye(3:20 FO)

70年代半ばあたりでギャドソンが参加したレコーディングをざっと挙げるとダイアナ・ロス、テンプテーションズ、クインシー・ジョーンズ、ランディ・クロフォード、ハービー・ハンコック、ジャクソン5など。
それでこの番組はブルーズの番組なのでブルーズマンの録音に参加しているジェイムズ・ギャドソンを探してみました。なんとブルーズの3大キング全員のレコーディングに彼は参加してます。さすがです。
まずは1975年にRSOレコードに残されたフレディ・キングの”Lager Than Life”というアルバムからですが、翌年76年にフレディは心不全で亡くなりましたのでこのアルバムがフレディ・キングの遺作ということになります。曲は白人ブルーズマン、ポール・バターフィールドのオリジナルです。

3.You Can Run But You Can’t Hide/Freddie King

フレディ・キングはじめサウンド全体がブルーズ・ロック的ですが、ギャドソンは余計なフィルは入れずにタイトなドラミングでクールです。

次はアルバート・キングの1976年のアルバム”Truckload Of Lovin’”に参加しているギャドソンですが、スタックスレコードで有名になったアルバート・キングですが、そのスタックス以降のアルバムの中ではクオリティの高いアルバムで僕はすごく好きなアルバムです。
曲はシャッフル・ビートの曲ですがギャドソンの余計なリフを叩かない真っ直ぐなステディなビートが気持ちいい曲です。

4.Cold Women With Warm Hearts/Albert King

ブルーズでドラムやっている人はこのキャドソンのブルーズにおけるシャッフル・ビートを聞いてみるといいかもしれません。ちなみにこのアルバムのベースにはチャック・レイニー、ギターにワウワウ・ワトソン、キーボードにジョー・サンプルなど腕利きのミュージシャンが参加していて演奏のクオリティは高いです。
最後はB.B.キングのアルバムに参加しているギャドソンのドラムです。

5.I’ve Always Been Lonely/B.B.King

ジェイムズ・ギャドソンはカンザス・シティの生まれなのですが、1959年にウィルバート・ハリソンが歌った”Kansas City”という曲がヒットした頃、ギャドソンは20歳です。元々カンザス・シティという街は大きな都会で1920年代から30年代はカンザス・シティ・ジャズというのが流行りました。音楽のある街です。そのカンザス・シティ・ジャズの中にはカウント・ベイシー・オーケストラはじめビッグ・ジョー・ターナー、チャーリー・パーカー、ジェイ・マクシャーンなどがいました。
こうしてギャドソンが参加した曲を探していくと本当にキリがないのですが、ある時六本木のテンプスというソウル・バーで飲んでいる時に流れていた曲がギャドソンがドラムを担当していたのにギャドソンが「このドラム誰だろう?」って言いまして、みんなで「ギャドソン、あんたや」って笑ったことがありました。もうレコーディングしすぎて自分が参加したアルバムも覚えられなかったんでしょう。懐かしい思い出。

来週はギャドソンがぼくのバンド「ブルーズ・ザ・ブッチャー」のアルバム”The Sure Shot Live”に参加してくれたのでそれを中心に聞きたいと思います。

2026.05.29 ON AIR

追悼:ジェイムズ・ギャドソン/In Memory Of James Gadson vol.1

ON AIR LIST
1.Use Me/Bill Withers
2.Lean On Me/Bill Withers
3.Love Land/The Watts 103rd Street Rhythm Band (vol.James Gadson)
4.Who Is He?(And What Is He To You?)/Bill Withers

親愛なるドラマーのジェイムズ・ギャドソンが4月2日に亡くなった。86歳だった。体調があまり良くないという話を聞いていたが、まさかそれほどひどいとは思わず最初その知らせをSNSで見たときもフェイク・ニュースではないかと疑った。
ジェイムズ・ギャドソンと言っても知らない方もいると思うので最初にざっと紹介すると、1939年ミスーリ州のカンザスシティ生まれでお父さんがドラマーだったそうだ。でも、最初はドラムをやらずに歌を歌いたくてドゥ・ワップのコーラス・グループを結成して歌っていたという。歌が本当に素晴らしくてレコーディングもしている。しばらくしてドラマーになるのだが彼は左利きなのに右利きのドラムしかなくそれですごく練習したと言っていた。20代半ばにLAに移住して本格的にプロのドラマーとして活動を始めるのだが、私が最初にギャドソンのドラムを意識したのは1973年にリリースされたビル・ウィザースの今や名盤中の名盤と呼ばれているライヴアルバム”Bill Withers Live At Carnegie Hall”だった。LPレコード二枚組のDisc1の1曲目に針を載せた途端始まるすごく気持ちのいいファンクのグルーヴに「何だ、これ」という衝撃を受けた。
それがジェイムズ・ギャドソンのドラムでその曲というのがこれ”Use Me”。

1.Use Me/Bill Withers

そしてもう一曲これもソウルの名曲
曲名の”Lean On Me”のLean Onというのは「寄りかかる」だから「ぼくに寄りかかってくれよ」「誰にも心の痛みや悲しみを感じるときがある。でも私たちが賢いならば必ず明日は来ることを知っている。だから君が弱っている時にはぼくに寄りかかってくれ。ぼくは君の友達になる。ぼくも誰かに寄りかかるときがある」

2.Lean On Me/Bill Withers

互いに助け合おうという静かなメッセージ・ソングでいつ聴いても胸が熱くなりそして穏やかな気持ちにさせてくれる曲です。
このライヴアルバムはドラムのジェイムズ・ギャドソンの他に、メルヴィン・ダンロップがベース、ピアノがレイ・ジャクソンそしてギターがバノース・ブラックマンそしてパーカッションにボビー・ホールというメンバーで本当に信頼しあったバンドという感じがサウンドから感じられます。
ぼくはこのアルバムにギャドソンにサインをもらったのですが、その時「ぼくにとって大好きなアルバムで大切なアルバムです」と言ったらギャドソンが「ぼくにとってもとても大切なアルバムだ」と言ってました。
この名盤はじめビル・ウィザースの重要なアルバムに参加する以前にギャドソンは”The Watts 103rd Street Rhythm Band”というグループに参加していました。そのグループはチャールズ・ライトというシンガーが作ったソウル・ファンク・グループでギターがのちにアース・ウィンド・ファイアで活躍するアル・マッケイ、ベースが先ほどのビル・ウィザースのバンドにも参加していたメルヴィン・ダンロップ、そしてキーボードも同じバンドにいたレイ・ジャクソン、それにギャドソンという強力な腕利きメンバーが集まったグループでした。そして、このバンドでギャドソンがヴォーカルそしてもちろんドラムも担当した曲がヒットしました。それがこの曲。

3.Love Land/The Watts 103rd Street Rhythm Band (vol.James Gadson)

「恋人たちが集まるラブ・ランド(愛の場所)にぼくを連れて行ってくれ。あなたと手を繋いで歩きたい。ぼくの愛は本当なんだ」という愛に溢れた歌は実際ギャドソンに会って彼を知るにつけて、この歌は彼のことなんだと思うようになりました。
このThe Watts 103rd Street Rhythm Band が67年から71年まで続き、そして翌年1972年にビル・ウィザースのアルバム”Still Bill”に参加します。同じThe Watts 103rd Street Rhythm Bandにいたベースのメルヴィン・ダンロップ、そしてキーボードのレイ・ジャクソンも参加することになります。
このあたりからギャドソンはすごく注目されるドラマーになりスタジオのセッション・ドラマーとして本当に信じられないくらい多くのレコーディングに参加します。
Still Billに収録されているビル・ウィザースの曲
「通りすがりの男が自分をじっと見てきたので、ふと一緒にいた彼女をみると彼女は目を反らせて下を向いた。彼はただの通りすがりの男ではないよね。あなたは彼を知っているよね。彼は誰なんだ。あなたにとって誰なんだ」という通りすがりの男に彼女との不倫を感じたという曲。
ギャドソンのドラムはめちゃクールです。

4.Who Is He?(And What Is He To You?)/Bill Withers

ドラムのジェイムズ・ギャドソン,メルヴィン・ダンロップがベース、ピアノがレイ・ジャクソン、ギターがバノース・ブラックマンそしてパーカッションにボビー・ホール、そしてヴォーカルのビル・ウィザースというこのメンバーはバンドだったと思います。セッションではなくビジネスでもなくビルを中心に想いを一つにしたバンドだったと思います。おそらくギャドソンの長いドラマー人生の中でも最も心を熱くして音楽に向かった時代ではなかったかと思います。
でも、この素晴らしいミュージシャン達の結びつきもディスコ・ブームによるレコード会社の意向などで他のミュージシャンを使わざるを得なくなり、しかも踊れる曲を作れという方針もあり、ビルは次第に嫌気がさし音楽業界から身を引いて引退してしまうことになりました。やはりこのメンバーでやりたかったのだろうと思います。今頃、天国でギャドソンはビルに会っていると思います。
来週もジェイムズ・ギャドソン特集

2026.05.22 ON AIR

B.B.Kingの初期録音SP盤をシングル盤6枚組ボックスでP-Vineレコードがリリース

B.B.King RPM Singles vol.2

ON AIR LIST
1.She’s A Mean Woman/B.B.King
2.Hard Working Woman/B.B. King
3.3 O’Clock Blues/B.B. King
4.That Ain’t The Way To Do It/B.B. King
5.Don’t You Want A Man Like Me/B.B.King

先週の続きでP-Vineレコードから4月8日にリリースされたB.B.キングの初期のSP盤をシングル盤にした6枚組ボックスセットから聞きます。
1950年(私が生まれた年ですが)からRPMレコードで録音を開始したB.B.ですが、なかなかヒットには届きません。でもRPMレコードは約2年に渡り6枚のシングルをリリースし続けたわけです。もちろんシングル一枚で終わっているブルーズマンもたくさんいる中、やはりB.B.には特別な才能を感じていたのでしょう。メンフィスあたりのB.B.のライヴの評判がいいことも知っていたのでしょう。
まず一曲。”She’s A Mean Woman”
ブルーズの歌詞によく出てくる”Mean”ですが、「意地が悪い」と言う意味ですがそこから「汚い」とか「卑しい」と言う意味もあります。まあいい言葉ではないですが、次の歌は”She’s A Mean Woman”で「意地の悪い女」「邪悪な女」と言う意味で「彼女は俺に優しくしてくれないし、いつも嫌なことばかりする。もう家を出て行こうかと思うよ。あいつは毎日遊びに行って夜まで帰ってこない」
歌のイントロからその憂鬱な感じを絶妙な感じで出しているさすがB.B.キングです。

1.She’s A Mean Woman/B.B.King

今の2分30秒ほどの歌でさえB.B.が傑出したブルーズシンガーであることがわかります。

今の”She’s A Mean Woman”のB面に入れられたのが次のジャンプ・ブルーズ風の”Hard Working Woman”
“Hard Working Woman”ですから「働き者の女」ということで、お金をたくさん稼いでくれる女かと思いきや夜どこかへ行ってしまったりするんですが、「俺の彼女なんや」と言っとります。
ちなみにレコーディング・メンバーのクレジットを見るとドラムにアール・フォレストと書いてあるのですが、このアール・フォレストというドラマーが50年代から60年代にかけてメンフィスを中心に活躍していて、B.B.だけでなくジュニア・パーカー、ボビー・ブランド、ジョニー・エースと名だたるシンガー達の録音に参加したドラム名人です。
先週ON AIRした曲同様にこの曲でもフィニアス・ニューボーンJrが素晴らしいブギウギ・ピアノを弾いています。

2.Hard Working Woman/B.B. King

まだ20代中頃のB.B.のパワフルな溌剌とした歌が素晴らしいです。
そしてとうとうRPMで録音を始めてから6枚目のシングル”3 O’Clock Blues”が全米で評判になります。R&Bチャートで5週間連続一位。 B.B.キング26才。ミシシッピーの田舎から出てきてやっとヒット曲を出すことができたB.B.は世界のB.B.キングになる第一歩を踏み出したわけです。
「夜中の3時になっても眠れない。彼女がどこへ行ったのか探してみたけど見つからないんだ。もう終わりだ」と彼女への不信と嫉妬を滲ませたリアルなブルーズ。ギターはまだT.ボーン・ウォーカーの影響がモロに聞けるし、決して流暢ではないところがまたいい。歌に込められた不安なそして切迫した気持ちが多くの人の心に入った。

3.3 O’Clock Blues/B.B. King

実はこの曲はロウエル・フルソンの曲のカバー。他にもロウエル・フルソンの曲をB.B.はカバーしていますが、B.B.はフルソンにソングライターとして最大の賛辞を送っています。
そのB面の曲を聴いてください。
次の曲はB.B.が大きな影響を受けたルイ・ジョーダンの「カルドルニア」のムードがありますが、バックのミュージシャンたとのタイトな演奏がやはりクオリティを上げています。このRPMというレコード会社に入ったことが本当にラッキーだったと思います。素晴らしいスタジオ・ミュージシャン達が揃っていて、まだまだ未熟な完成されていないB.B.をすごくうまくブッシュしている。

4.That Ain’t The Way To Do It/B.B. King

もう一曲聴きましょうか。次の曲はミディアム・テンポのシャッフル・ビートを練習するのに最適な曲。こういうゆったりしたでもステディなブレないビートを演奏するのは本当に難しい。

5.Don’t You Want A Man Like Me/B.B.King

前回と今回、二回続けてP-Vineレコードが去る4月8日にリリースしたB.B.Kingの初期録音、RPMレコード時代のSP盤をシングル盤にした6枚組ボックスセットからお送りしました。当たり前ですがシングル盤は片面に一曲ずつしか入ってません。でも、それは一曲ずつを丁寧に聴くことに繋がっています。ぼく個人としては音のレベルも高くて臨場感はデジタルで聴くものとはまた違っています。昔、50年代の人たちがどんな感じでB.B.キングのブルーズを聴いていたのだろうというのもわかるような気がします。「B.B.King The First Six RPM Singles Box」少しお値段張りますが、おすすめです。

2026.05.15 ON AIR

B.B.Kingの初期録音SP盤をシングル盤6枚組ボックスにしてP-Vineレコードがリリース

B.B.King RPM Singles vol.1

ON AIR LIST
1.Mistreated Woman/B.B.King
2.B.B.Boogie/B.B.King
3.She’s Dynamite/B.B.King
4.My Baby’s Gone/B.B.King
5.Walkin’And Cryin’/B.B.King

ブルーズの王様と呼ばれるB.B.キング初期のRPMレコード時代の録音から6枚の7インチ・シングルがボックスセットとしてP-Vineレコードから4月8日にリリースされた。もちろん私のようなレコード好きにはたまらないシングルのボックスセットだが、50年代のモダン・ブルーズの花を咲かせた偉大なB.B.Kingのその第一歩をシングル盤でリリースというのはブルーズの音源としても意味のあることだと思う。
B.B.がRPMレコードで録音を始めた1950年はLP盤やシングル盤以前のSP盤というのが使われていた時代で、今回P-Vineレコードはそれをシングル盤に録音してリリースしたわけだ。しかしどこかSPのムード漂っているのが面白い。
1950年当時B.B.キングは25才。やっとメンフィスあたりで人気が出始め、地元のラジオ局でDJの仕事もしていたB.B.にとって自分のレコードがリリースされ、ラジオから流れるというのは大きな喜びだったと思う。
まず一曲。このボックスセットの1枚目、RPMでの最初のシングル。1950年のリリース

1.Mistreated Woman/B.B.King

実はRPMレコードでのこの最初のシングルでB.B.はギターを弾いていない。現在に至るモダン・ブルース・ギターの王様がギターを弾いてなかったというのは驚きだ。しかしそれはB.Bがまず歌手として評価されていたということだ。つまりレコード会社はギタリストではなくシンガーとしてのB.B.を求めていたということ。ギターはカルヴィン・ニューボーンというギタリストでこの録音でピアノを弾いているフィニアス・ニューボーンの弟。この2人の兄弟はジャズ・ミュージシャンとして有名だけどスタジオ・ミュージシャンとしてこういう録音の仕事もしていたのだろう。2人とも実にいいバッキングをしている。
次の曲もギターはカルヴィン・ニューボーンだが、ちょっと彼のアルバムを探そうかなと思うくらいいいギタリストだ。

2.B.B. Boogie/B.B.King

B.B.の歌のスタイルはすでに出来上がっていて、メンフィスでボビー・ブランドやジュニア・パーカーと並んだ傑出したシンガーだったというのも納得。そして2コーラスにわたるフィニアス・ニューボーンのブギウギ・ピアノがいい。
元々こどものころから教会で歌っていたゴスペルに根ざしたしっかりした発声とメリスマ、ファルセットなどの唱法を駆使するテクニックにも恵まれたB.B.の歌はスケールが大きい。ギターよりも歌を買われたのはよくわかる。
もう一つ、B.B.はラジオのDJをやっていたことで当時の流行の音楽を耳にすることができた。それが彼の音楽的な蓄積になっていったことは間違いないだろう。デルタ・ブルーズからジャズ、カントリー、スタンダードまで彼の中には相当な量の音楽が積み重ねられていたと思う。次の曲も20年代から40年代までヒット・メイカーであり人気ブルーズマンだったタンパ・レッドの曲のカバーだ。

3.She’s Dynamite/B.B.King

バック・バンドの演奏のクオリティの高さも素晴らしいが、B.B. の気合が漲っている歌の力に圧倒される。ポップな要素もあり売れてもおかしくない録音だ。

次の曲は2年後にヒットした彼のスタンダード曲となる”Woke Up This Morning”の元曲。B.B.はこういう流行っていたラテンのリズムを取り入れることにも前向きな気持ちがあった。

4.My Baby’s Gone/B.B.King

今回のSP盤からのシングル盤化というのはひとつ惹かれることとして音の生々しさがある。もちろん音の良し悪しというのはいつも言ってますが、その人の感覚なのでSPだからシングルだから音がいいと言っているわけではありません。ただ、これらのシングルがSPでリリースされた当時のサウンドにより近い音で聴くことができるわけです。それをぼくは生々しい音と感じています。つまりスタジオで演奏している生の音に近いということです。もっと言うと目の前でB.B.が歌っている、演奏していると言う感じだ。
後年に録音された“Darling You Know I Love You”,”Please Except My Love”や”Guess Who”でもわかるようにB.B.は素晴らしいバラード・シンガーでもある。次の曲でもギターを弾かないB.B.の歌手としての魅力が溢れているバラードだ。

5.Walkin’And Cryin’/B.B.King

T.ボーン・ウォーカーやロウエル・フルソンの影響を受けていただけでなく、いろんなミュージシャン、いろんな曲からの影響を受けて模索していた40年代から50年代のB.B.キングがとうとうチャート一位の曲をリリースします。それはまた来週。