2024.03.15 ON AIR

特集「ダウンホーム・ブルーズとは・・・」vol.3

見事なダウンホーム・ブルーズのコンピレーション・アルバム,CD4枚組全108曲

“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3”

ON AIR LIST
1.Pinetop’s Boogie Blues/Little Brother Montgomery
2.My Kind Of Baby/Little Walter
3.Sad Sad Day/Muddy Waters
4.Ride `Em On Down/Eddie Taylor
5.I Have Married/JB. Lenoir

今回はダウンホーム・ブルーズを聴くというシリーズの3回目です。特にシカゴのダウンホーム・ブルーズを集めたコンピアルバムの”DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3” という4枚組CDボックスが出たばかりなのでそれを使ってダウンホーム・ブルーズを聞いてもらっています。
50年代に入りブルーズのエレクトリック化が進んで行くのですが、エレキになってもどこかにダウンホーム、つまり故郷の南部の匂いを求めたアフリカン・アメリカンたちでした。
今回は私がすごく好きなピアノ・ブルーズマン、リトル・ブラザー・モンゴメリーから聞いてもらいます。
キツキツのブルーズではなく、ファンキーななんとなく楽しくなるリトル・ブラザーのブギのインストルメンタル曲

1.Pinetop’s Boogie Blues/Little Brother Montgomery

シカゴ・ブルーズだけでなくブルーズの歴史に名を残した名ハーモニカ・プレイヤー、リトル・ウォルター。”My Babe”や”Juke”始め数多くヒット出し、現在はブルーズのスタンダードとなっている曲も多くブルーズの森に入ると必ず出会うブルーズマン。
聞いてもらうのは1953年録音、ギターにジミー・ロジャースとデイヴ・マイヤーズ、ベースにウィリー・ディクソンそしてドラムにフレッド・ビロウという50年代シカゴ・ブルーズの精鋭による素晴らしい録音です。
「オレのタイプのベイビー、いつだって愛したくなるんだ」と歌うウォルターの溌剌とした歌とパワフルにグルーヴするハーモニカ。
本当にいい曲です。そしてビートをグイグイと推進するバンドが一体となった黄金期のシカゴ・ブルーズ。

2.My Kind Of Baby/Little Walter

リトル・ウォルターのハーモニカ・プレイは本当に素晴らしい。
やっぱりシカゴ・ダウン・ホーム・ブルーズといえばこの人にも出てもらわないと・・マディ・ウォーターズです。
マディのスライド・ギターにウォルター・ホートンのハーモニカとジミー・ロジャースのギター、ベースはなくてドラムだけという編成がより一層ダウンホーム感を出しています。全部のサウンドの混ざり具合が素晴らしくまさにシカゴ・ダウンホーム・ブルーズ。そしてマディの唯一無比の歌。「彼女がいなくなって悲しい日々が続く」

3.Sad Sad Day/Muddy Waters

シカゴ・ブルーズのトップに上り詰めた1953年のマディ。こういうスロー・ブルーズにおけるマディ・ウォーターズの歌声の存在感が抜群です。

シカゴ・ダウン・ホーム・ブルーズと言えばこの人も忘れてはいけない。エディ・テイラー。ヒット曲をたくさん出したジミー・リードのバッキング・ギタリストというよりジミー・リードの相方みたいなもんですが、聞いてもらう曲は逆にエディ・テイラーが主役の歌とギター、そしてバックでハイノート・ハーモニカの演奏をするジミー・リードとなってます。これもエディのギター、ジミー・リードのハーモニカにドラムだけというプリミティヴな構成でダウンホーム・テイストたっぷりの仕上がりになってます。ダウンホーム・ブルーズの典型のような曲です。

4.Ride ‘Em On Down/Eddie Taylor

ダウンホームはミシシッピ、アラバマ、アーカンソー、テキサスなど南部を意味していて、そこで生まれる濃厚なテイストですがリラックスして、くつろいでいられるムード、そういうムードを表しているブルーズがダウンホーム・ブルーズ。今のはまさにそれです。

次のJ.B.レノアは人種差別反対のブルーズや反戦のブルーズも歌った気骨あるブルーズマンで、ひどい差別を受けた南部に戻りたくないという歌も歌っていますが、その根底には南部を愛する気持ちがたくさんあったからではないかとぼくは思います。彼のブルーズにはそういう南部のテイストが溢れています。
イントロのガッガ、ガッガ、ガッガというシャッフルのリズムだけでダウンホーム感があります。ちなみにJ.Bレノア、声は高いですが女性ではありません。

5.I Have Married/JB. Lenoir

今日はダウンホーム・ブルーズのコンピレーション・アルバム,CD4枚組全108曲“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3” の三枚目からでした。

2024.03.08 ON AIR

特集「ダウンホーム・ブルーズとは・・・」vol.2

見事なダウンホーム・ブルーズのコンピレーション・アルバム,CD4枚組全108曲

“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3”

ON AIR LIST
1.Your Evil Ways/St. Louis Jimmy
2.Hoy Hoy/Little Johnny Jones
3.TV Mama/Big Joe Turner
4.Leaving Your Town/Sunnyland Slim
5.Pearly B/Robert Lockwood Jr.

前回はこの“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3” ボックスセットの一枚目から聞きましたが、今日は2枚目。この2枚目で8曲も収録されているセントルイス・ジミーというブルーズマン。
このセントルイス・ジミーがこのアルバムの趣旨であるダウンホーム・ブルーズにぴったりなんです。テンポもミディアム・テンポのゆったりしたグルーヴの曲が多く、歌い方も格別テクニックがあるとか音域が広いとかいうこともなく、淡々と歌うタイプで私は若い頃「セントルイス・ジミーは地味やなー」と茶化して言ったりしてたのですが、年を重ねてから聴くとその普通に歌われているブルーズに何とも言えぬ味わいがあり、その良さを知ると共にこういうことがダウンホームということなんかと合点が行くこともありました。では、1951年ピアノにルーズヴェルト・サイクス、ギターにロバート・ロックウッドJr.そしてベースにビッグ・クリフォードと優れたバック・ミュージシャンを従えた録音です。

1.Your Evil Ways/St. Louis Jimmy

セントルイス・ジミーは本名をジェイムズ・オーデンというのですが、生まれはナッシュビルでシカゴに出てくる前にセントルイスに移り住んでいたことからセントルイス・ジミーになったのですが、こういう出身の地名を芸名につけたブルーズマンが意外と多いです。メンフィス・スリム、女性のメンフィス・ミニー、ルイジアナ・レッド、カンザス・ジョーなど。セントルイス・ジミーには”Going Down Slow”というブルーズ史上に残るヒット、スタンダード曲があるのですが、彼は途中から事故で歌えなくなりマディ・ウォーターズなどに曲を提供するソングライターとなりました。
次はいまのセントルイス・ジミーより若い世代のピアノのリトル・ジョニー・ジョーンズ。エルモア・ジェイムズのバックなどで素晴らしいピアノを残してるリトル・ジョニー・ジョーンズ。聴いてもらう曲はそのエルモアのメンバーがバックを務めていてダウンホームでありながら時代の新しいR&Bのテイストもある曲。1953年録音
「彼女が出て行ってしまい俺は地獄の夢を見る。彼女は真珠のような白い歯を持っているけど心は冷たく黒く波打っている。あの娘はチェリーパイのような味のキスをする。俺は死ぬまで彼女を愛するよ」こんなことを言いながら夜な夜な女性を口説いていたんでしょうジョニー・ジョーンズ

2.Hoy Hoy/Little Johnny Jones

ブルーズとかR&Bのレコーディングは一日一人だけ録音するのではなく何人も録音することはよくあり、録音が早く済んでスタジオの時間が空いたのでバックバンドのだれかの録音をやるということもあり、そこからヒットが生まれることもありました。
次はちょっと面白い録音で歌ってるのはジャズ・ジャンプ・ブルーズのビッグ・ジョー・ターナーなんですがバックがいま聴いたジョニー・ジョーンズの録音メンバーと同じでギターにエルモア・ジェイムズ、ドラムにオディ・ペイン、サックスにJT.ブラウンでいまのジョニー・ジョーンズの2日前に録音されています。ジャンプ・ブルーズの歌なのにバックはダウンホーム・テイストで面白い味になってます。エルモアのスライド・ギターはやはり存在感抜群です。

3.TV Mama/Big Joe Turner

次はサニーランド・スリムの見事なピアノとバックのギター、ロバート・ロックウッドJr.の名人芸の絡みが素晴らしい一曲で、これぞモダン・ダウンホーム・ブルーズとも言える一曲。
ミシシッピで生まれメンフィスに住んだこともあり、イカサマ博打をやりながらピアノを弾き放浪していたサニーランドは1943年にシカゴに定着してます。しっかりした硬質な歌声と放浪したいろんな街で他のピアニストの技を学んだ多彩なピアノの音で独自の世界があります。

4.Leaving Your Town/Sunnyland Slim

ロバート・ロックウッドはいつも冷静沈着なギターをバックで弾いているイメージがあるのですが、次のロックウッドは弾けてます。
1951年 ロックウッド36歳くらいです。ギターの音の歪み具合もあるのですがアグレッシヴなロックウッドのプレイが聞けます。

5.Pearly B/Robert Lockwood Jr.

今日は前回に引き続き“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3”という4枚組のCDの2枚目を聞きました。番組のホームページで見て欲しいのですが、充実したブックレットも付いたこのボックスセットはダウンホームな50年代のシカゴ・ブルーズを知るのにすごくいいコンピレーション・ボックスです。
来週は三枚目を聴きます。

2024.03.01 0N AIR

特集「ダウンホーム・ブルーズとは・・・」vol.1

見事なダウンホーム・ブルーズのコンピレーション・アルバム,CD4枚組全108曲

“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3”

ON AIR LIST
1.Black Spider Blues/Robert Lockwood Jr
2.Bring Me Another Half Pint/Sonny Boy Williamson I
3.County Jail Blues/Big Maceo
4.I’m A Highway Man/Big Joe Williams

僕もこの番組で「ダウンホーム・ブルーズ」とか「ダウンホームなムード」とかよく言いますが、ダウンホームって何だ?と思っている人もいると思います。ざっくり言えばダウンホームというのは黒人(アフリカン・アメリカンの人たち)にとってのホーム・故郷、南部のことで、ダウンホーム・ブルーズは故郷の香りのするブルーズのことです。特に40年代50年代は南部のミシシッピ、アラバマ、アーカンソー、テキサス、ルイジアナといった南部の州からより良い生活を求めてシカゴやデトロイト、ニューヨークなど北部の都市に移り住んだ黒人たちがたくさんいてそんな彼らが南部の香りのするブルーズを懐かしんで望んだということです。

それで今回聴くのはWienerworld(ウィンナ・ワールド)というレコード会社から最近リリースされているその名も“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3”
以前に1と2がリリースされていてそれも紹介しましたが、また素晴らしいコンピレーション/選曲でVol.3の登場です。
こういうコンピレーション、つまり編集ものは編集する人のセンスが反映されるところが面白いところですが、このシリーズはとてもセンスがいいです。そしてダウンホーム・ブルーズがどんな音楽か聴いてもらえるコンピ盤です。
CD4枚組全108曲ですからめちゃ聞き応えあります。まずCD-1の1曲目を聞いてみましょうか。74年に来日して70年代の日本のブルーズ・ムーヴメントの大きなきっかけを作ったロバート・ロックウッドJrの若き日の録音です。
1941年ロックウッド26歳の録音です。曲名がブラック・スパイダー・ブルーズ(黒い蜘蛛のブルーズ)「お前は嫌な黒い蜘蛛だ。お前の蜘蛛の巣が町中に張られている。俺はお前の蜘蛛の巣を引き裂いてしまう赤い蜘蛛を手に入れるつもりさ」多分黒い蜘蛛は嫌な、意地の悪い女性のことで赤い蜘蛛はいい女性のことなんでしょう。

1.Black Spider Blues/Robert Lockwood Jr

ロバート・ロックウッドJrは有名なロバート・ジョンソンの義理の息子、つまりロックウッドのお母さんがロバート・ジョンソンの恋人だったわけです。それでロックウッドはジョンソンにギターを教えてもらった唯一のブルーズマンなんですが、随所にそのロバート・ジョンソンの影響があります。
次はサニーボーイ・ウィリアムスン
ブルーズ史上にはサニーボーイ・ウィリアムスンという名前のハーモニカ・ブルーズマンが二人いることは何度も話してきましたが、どちらかというと後から出てきた本名ライス・ミラーのサニーボーイ2の方が話題になることが多いのですが、ブルーズ・ハーモニカ・プレイヤーとしての功績はサニーボーイ1(本名ジョン・リー・ウィリアムスン)もかなり大きなものがあります。まだハーモニカの音をアンプを通していない生の音の時代ですが、ハーモニカのテクニック、残した楽曲の素晴らしさなどは2より大きいかも知れません。リトル・ウォルターもジェイムズ・コットンもジュニア・ウエルズもシカゴで活躍したハーモニカ・プレイヤーはみんな彼の影響を受けています。
曲はのちにジミー・ロジャースが吹き込んだ”Sloppy Drunk”(大酒飲み)の元歌ですね。

2.Bring Me Another Half Pint/Sonny Boy Williamson I

バンドのビートが生き生きスウイングしてます。ぼくは最近アンプを通したハーモニカよりこういう生のハーモニカの音の方が好きになってきました。やっぱりハーモニカ本来の柔らかい音がするんですよ。
次はたくさんのピアニストに影響を与えた偉大なブルーズ・ピアニスト、ビッグ・メイシオ。曲名が「カウンティ・ジェイル・ブルーズ」ですから郡の刑務所に入れられた歌ですが、何で刑務所に入れられたかは歌われてなくて「奴ら(たぶん白人)がやってきてオレを刑務所に入れたんや」と始まり「刑務所にいて人生のほとんどの時間が過ぎていく」と嘆いてます。昔は、いや今も白人による黒人に対する不当な扱いは日常茶飯事ですからこういうブルーズが歌われるのも当然だったのでしょう。

3.County Jail Blues/Big Maceo

ロバート・ロックウッドJr、サニーボーイ・ウィリアムスン1,ビッグ・メイシオとシカゴ・ダウンホーム・ブルーズの大物が続きましたが、次はかのボブ・ディランが憧れた放浪のブルーズマン、ビッグ・ジョー・ウィリアムス。
自分で作った9弦ギターは来日したときに僕も日比谷野音で間近で見させてもらいましたが、何がどうなってどんなチューニングなのか見ても演奏を聴いてもさっぱりわからない代物でした。彼には”Highway 49”という有名なブルーズがあるのですが、このアルバムに収録されているのも放浪のブルーズマンらしい「俺はハイウェイマン」と歌った放浪もの。「俺はハイウェイマン、つまり放浪の男。行くのを邪魔しないでくれ」

4.I’m A Highway Man/Big Joe Williams

歌声も豪快な放浪のフルーズマンらしいタフでラフなビック・ジョー・ウィリアムス。彼の名曲”Baby Please Don’t Go”は僕も去年リリースしたブルーズ・ザ・ブッチャーのアルパム”I Feel Like Going Home”でカバーさせてもらいました。
今日はダウンホーム・ブルーズのコンピレーション・アルバム,CD4枚組“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3” の1枚目を聞きました。
レアな音源も入ってCD4枚組全108曲で6000円ちょっと。英文ですが詳しい解説と写真のブックレットも付いているのでそんなに高くないと思います。来週もダウンホーム・ブルーズに親しんでいただきたいのでCDその2を紹介します。

2024.02.23 0N AIR

ブルーズ・ライヴ名盤 vol.11

70年代ファンク・ブルーズの強烈なライヴ

Live & On The Move/The James Cotton Band

ON AIR LIST
1.Cotton Boogie/The James Cotton Band
2.One More Mile/The James Cotton Band
3.Rocket88/ The James Cotton Band
4.Hot N’ Cold/ The James Cotton Band
5.Boogie Thing/ The James Cotton Band

黒人ブルーズマンの来日がほとんどなくなってきた現在、本場アメリカへ行って聴くしかない現状です。しかし、アメリカに行けば質のいいブルーズのライヴがたくさん聞けるかといえばレジェンド、あるいは実力のあるブルーズマンが鬼籍に入ってしまった今なかなか難しいものがあります。最近ブルーズに興味を持った若い人たちにとっては残念な状況です。なのでいいライヴ・アルバムを聴くことで少しはブルーズのライヴの素晴らしさを感じて欲しいとうことで今日聴くライヴ名盤はジェイムズ・コットン・バンドの76年のライヴ”Live & On The Move”
僕がこのバンドのライヴをロスアンゼルスで聞いたのはその前年の75年。”100%Cotton”というファンク・ブルーズの名盤をリリースした翌年だった。その時の話は何度もしているがまさに熱狂のファンクとブギのライヴで、ライヴが終わったあとしばらく頭がぼーっとしてえらいもんを見てしまったという感じだった。
ではこのライヴアルバムLive & On The Moveのイントロダクション。マネージャーによるバンド呼び出しMCからジェイムズ・コットンのハーモニカが炸裂するインストルメンタル・ナンバー

1.Cotton Boogie/The James Cotton Band

ジェイムズ・コットンは昔からこの手のブギをライヴでよく演奏しており、他のライヴ・アルバムにも収録されています。コットンのハーモニカの上手さがよくわかるインストですが、何がいいかってリズムです。リズムの良さは数多いるハーモニカ・プレイヤーの中でも随一だと思います。かっこいいフレイズを吹くことを追い求める前にまずリズムがよくなければそのフレイズのかっこよさも意味がなくなります。
コットンはミシシッピに生まれ50年代の初めにメンフィスに出て、53年に「サン・レコード」で初めてのソロ・レコーディングをして55年に当時盛り上がっていたシカゴに移り住みます。そして57年にマディ・ウォーターズのバンドに名手リトル・ウォルターの後釜として加入。ハーモニカの天才とも言われるウォルターの後ですからコットンも相当高く評価されていたんでしょう。何しろ当時シカゴ・ブルーズのトップのマディのバンドですから。
今日聞いてもらうコットン・バンドは70年代半ばブギとファンクで一世を風靡したのですが、そのファンクの極めつけが次の古いスロー・ブルーズを16ビートのド・ファンクにしたもの。

2.One More Mile/The James Cotton Band

この76年頃は黒人音楽ではソウルのマービン・ゲイ、ダイアナ・ロス、アース・ウィンド・アンド・ファイアーやソウルコーラス・グルーブのコモドアーズやオハイオ・プレイヤーズなどがヒットを出してた時代で、ブルーズ系はというとブルーズン・ソウルのジョニー・テイラーの”Disco Lady”がヒットしたくらいです。それもブルーズの曲ではないのですが。そういう状況の中でブルーズ・バンドを組んでそれまでなかったファンク・ブルーズを作り、ブギに新しいグルーヴを吹き込んだこのジェイムズ・コットン・バンドは当時かなりの衝撃でした。
この前ブギウギの特集の最後のR&R編の時にON AIRしたジャッキー・ブレストンの”Rocket88”を、コットンバンドはこんな風にシャープに仕上げて70年代ブギにしました。

3.Rocket88/ The James Cotton Band

このジェイムズ・コットン・バンドはコットンが70年代中頃にジョニー・ウィンターがプロデュースしたマディ・ウォーターズのバンドに参加したことで自然消滅した感じなのですが、すごく残念な感じです。もう少しやってれば何かまた新しい感覚のブルーズが生まれたかもしれないです。そういう可能性を持ったバンドでした。
ちょっと毛色の変わった次のような曲もやっていました。

4.Hot N’ Cold/ The James Cotton Band

このバンドはフロント・ブルーズマンして確かなキャリアと実力を持ち、なおかつファンキーでパワフルなキャラの時ジェイムズ・コットン、そしてギター職人としてたくさんの有名ブルーズマンの録音とライヴに参加してきたマット・マーフィ、そして若いベースのチャールズ・キャルミーズとドラムのケニー・ジョンソンの強力なリズム隊・・いいメンバーでした。
最後にもう1曲

5.Boogie Thing/ The James Cotton Band

2024.02.16 ON AIR

ブルーズ・ライヴ名盤 vol.10

BURNSIDE ON BURNSIDE/R.L.Burnside

ON AIR LIST
1.Shake ‘Em On Down/R.L. Burnside
2.Rollin’ & Tumblin’/R.L. Burnside
3.Walkin’ Blues/R.L. Burnside
4.Jumper On The Line/R.L. Burnside

久しぶりにブルーズ・ライヴ名盤の復活です。
1990年代にミシシッピでファット・ポッサム・レコードというレコード会社が設立され、北ミシシッピのヒル・カントリーと呼ばれる地域であまり知られずに息づいていたブルーズをリリースし始めました。そのブルーズはワン・コードで延々とグルーヴを続ける土着的なものが多く、あの種ループ感のあるものでヒップホップ好きも巻き込み閉塞感のあったブルーズ・シーンに大きな刺激を与えました。その大きなきっかけとなったのがロック・バンド、「ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン」が共演を求めたR.L.バーンサイドとのコラボでした。当時、オルテナティヴ・ロック、ガレージロックと呼ばれ人気のあったジョン・スペンサーが賞賛したことでバーンサイドに多くの興味が注がれました。このアルバムはそのバーンサイドの2001年1月のライヴ録音盤。
まずは1曲。北ミシシッピのバーンサイドたちブルーズマンの先達、偉大なフレッド・マクダウェルから伝わる重要なレパートリーのひとつ。衝撃的なライヴの始まり。

1.Shake ‘Em On Down/R.L. Burnside

同じリフをラウドな歪んだ音で繰り返して生まれてくる不思議なグルーヴにパンク・ロックやガレージ・ロックの白人ファンも惹きつけられたこのサウンド。もう一人のギターはバーンサイドと長年演奏を共にしているケニー・ブラウン、ドラムはこの当時22歳のバーンサイドの孫セドリック・バーンサイド。ギター爆音、ベースなしのこのトリオがロック・ファンにウケた理由がわかります。ブルーズではベースなしのこういうサウンドはシカゴのハウンドドッグ・テイラーのハウス・ロッカーズも同じでそんなに目新しいものではないのですが、ロック・ファンには新しいものを感じさせたのでしょう。
次はトラッドな南部のブルーズです。

2.Rollin’ & Tumblin’/R.L. Burnside

このライヴ・アルバムが録音されたのはアメリカ、オレゴン州のポートランドのクリスタル・ボールルームと記載されてます。ボールルームですからかなり大きな会場でしょう。このボールルームの87周年記念のイベントに呼ばれたようです。普段ミシシッピでやっている時はクラブとかライヴハウスのような場所ではなくジュークと呼ばれる小屋のようなところで、客も近所の知り合いという感じですから、この日は大きな場所でお客さんもたくさんいたので張り切っていたのでしょう。パワフルな演奏が続きます。
次はスライド・ギターのイントロが客席を突き刺すようなこれもサン・ハウス、ロバート・ジョンソンなど南部の定番ブルーズ。

3.Walkin’ Blues/R.L. Burnside

バーンサイドのブルーズは「催眠的なグルーヴ」とも呼ばれる一つのコードで同じフレイズ繰り返しをするのが特徴ですが、これは先輩のフレッド・マクダウエルがすでにやってたことなのですが、それをエレキの爆音で強力なドラムを入れたところに新しさがありました。
そしてもう一つバーンサイドの歌が実に生き生きとしていることです。やはり歌がいい。これだけのラウドなサウンドの中でも埋もれてしまわない歌です。
もう一曲、これも踊り狂うしかないような猥雑なグルーヴが続きます。

4.Jumper On The Line/R.L. Burnside

バーンサイドも亡くなってしまいましたが、今の北ミシシッピ、ヒルカントリーのブルーズはどうなってるのでしょう。もし、彼らのライヴ画像を見たかったらロック・ライターのロバート・パーマーとユーリズミックのデイヴ・スチュワートが中心になって制作した映画『ディープ・ブルース』を探して見てください。ブルーズとは何かの答えのひとつがそこにあると思います。
今回のブルーズ・ライヴ名盤はR.L.Burnsideの2001年のライヴ盤BURNSIDE ON BURNSIDEを聴きました。