2019.11.08 ON AIR

カントリー&ウエスタン・ミュージックの聖地ナッシュヴィルにもブルーズはあるんやで・・の巻

Let Me Tell You About The Blues Nashville(FANTASTIC VOYAGE FVTD078)

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ON AIR LIST
1.Nashville Jumps/Cecil Gant
2.Beer Bottle Boogie/Mr Swing (Rufus Thomas)
3.Don’t Do It/Christine Kittrell
4.Baby Let’s Play House/Artthur Gunter
5.Courtin’ In A Cadillac/Jerry McCain

みなさんはアメリカのナッシュヴィルという街をご存知でしょうか。僕も行ったことがないのですが、メンフィスと同じテネシー州にあってメンフィスが黒人音楽のブルーズやR&Bの街ならナッシュヴィルは白人の音楽、カントリー・ミュージックの聖地と言ってもよいカントリー・ミュージックが盛んな街で「グランド・オール・オプリー」という1925年から始まったカントリー・ミュージックのラジオ番組がいまも続いています。
だからテネシー州には白人の音楽と黒人の音楽の中心となった大きな街がふたつあるわけです。
僕のような黒人音楽好きはやはりメンフィスに気持ちが動きますが、今日聴くアルバムは「いやいや、ナッシュヴィルにもブルーズはあるんやで」ということでアルバムタイトルが「ナッシュヴィルのブルーズについてしゃぺらしてくれや」”Let Me Tell You About The Blues Nashville”というものです。
CD三枚組全75曲でずっしり聞き応えがあります。

そのトップに収録されているのが、ピアニストのセシル・ギャント。”I Wonder”という曲が1944年に大ヒットしてその名を知られるようになった人ですが、ウエストコーストで活躍していましたが、元々ナッシュヴィル生まれのミュージシャンだったんですね。”I Wonder”はスローブルーズですが、セシル・ギャントは甘いバラードからブギからジャイヴ、ジャンプまで幅広くいろんなピアノが弾ける名人です。
今日はこのアルバムのナッシュヴィルということでNashville Jumpsという彼のピアノの素晴らしさがわかる曲から
1.Nashville Jumps/Cecil Gant
リズムを繰り出すピアノの左手の重量感のある安定したグルーヴと、右手のタッチの強さもわかる多彩なオブリガードと見事なソロ。完璧です。このピアノひとつで踊れます。

ブレット・レコードいうレコード会社が1946年にナッシュヴィルに出来てそこからブルーズ、R&Bのミュージシャンの録音が始まりその最初に録音されたのが、いまのセシル・ギャント。最もやはりカントリー・ミュージックが強い土地なのでブレットはカントリーもリリースし、ゴスペルも出していました。
他にも当時のナッシュヴィルにはJ-Bとかテネシーというレーペルがあり、やがてブルーズ・ファンにはおなじみのエクセロというレコード会社が始まります。この3枚組CDの半分からあと。1953年くらいからざぁーっとエクセロで録音されたミュージシャンが出てきます。
テネシーの州都でもあるナッシュヴィルはカンバーランド川の川沿いにあり、古くから交易の要所で産業、商業が栄えた街で当然音楽も栄えたというわけです。

このアルバムには1940年代半ばから50年代半ばまでのナッシュヴィルで録音されたブルーズが収録されているのですが、CDの一枚目はいまのセシル・ギャントのようなピアニストが多いです。
2.Beer Bottle Boogie/Mr Swing (Rufus Thomas)
しっかりオーケストラ・アレンジされたジャズ・ジャンプ・ブルーズでのちに60年代にR&Bでダンス・ミュージックを70年代にファンク・グルーヴでダンス・ミュージックでみんなを踊らせた男、ルーファス・トーマスは40年代からすでにジャンプでみんなを踊らせていたと思うと・・めちゃすごいですね。この当時の芸名がミスター・スウィングですから、偉大ですルーファス・トーマス!

このアルバムを最初ざっと聴いている時に「ああ、この人の声が好き」と思ったのが次の女性シンガー、クリスティ-ン・キットレル
僕も初めて聴く女性シンガーで調べたら、ナッシュヴィルのローカル・シンガーで地元のレーベル「テネシー」に録音もしていて、人気があったのかニューオリンズあたりまでツアーに行ったり、1951年にはブルーズシンガーの大スター、ビッグ・ジョー・ターナーのバンドのツアーにも参加していたらしい。
3.Don’t Do It/Christine Kittrell
なんとも言えないキュートな歌声だと僕は思うのですが、いかがでしょう。アメリカの落ち着いたクラブでウィスキー飲みながらこういう女性シンガー聴きたいですね。
途中のサックス・ソロの音色もよかったです。しっかりアレンジされているけど窮屈な感じがしない、いいアレンジってそういうものだと思います。
今日聴いているようなコンピレーション・アルバムを聴く楽しさというのは、自分が知らなかったいまのクリスティーンのようなシンガーに出会えるということで、たった一曲でもそういう曲に出会えるというのは大切なことだと思います。なぜなら、そこからまた違う音楽に自分の音楽のフィールドが広がっていくわけですから。
次のブルーズマンは知ってます。アーサー・ガンター、なんか名前がゴツゴツしてますが、演奏は軽快でナッシュヴィルのせいかちょっとカントリー・ミュージックテイストもあります。これはエルヴィス・プレスリーがカバーして有名なった曲なんですが、プレスリーもそのカントリー・テイストを感じて選んだのかも知れません。
4.Baby Let’s Play House/Artthur Gunter
1954年のこのアーサー・ガンターあたりからそれまでとはちょっと色合いの違うイナタイブルーズが出てくるのですが、ナッシュヴィルと言えばブルーズ、R&Bで有名なエクセロというレコード会社がこの頃からリリースを始めます。正確に言うとエクセロが設立されたのは1953年。テネシーだけでなく、アラバマやルイジアナのブルーズもリリースするようになり、50年代の終わりにはエクセロの看板ブルーズマン、ライトニン・スリムとかレイジー・レスター、スリム・ハーポが活躍しました。
最後にアラバマのブルーズマン、私個人的に大好きなブルーズマン、ジェリー・マッケインを。南部のワイルドなサザン・ビートに乗った彼の歌うブルーズが風を切っているみたいで男らしく清々しい。
5.Courtin’ In A Cadillac/Jerry McCain

今日聴いたこの3枚組のLet Me Tell You About The Blues Nashvilleはまだレコード店とかネットにあると思うので興味のある方は是非。ホームページにジャケット写真とデータも出してますので見てください。
ナッシュヴィルはギブソンというギターメイカーがある街でもあり、他のギターメイカーもあるし、音楽の街なので一度行ってみたいと思っています。
今日は40年代半ばから50年代後半のナッシュヴィルのブルーズをコンピレーションしたアルバムLet Me Tell You About The Blues Nashvilleを聴きました。

2019.11.01 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.2
戦前シカゴ・ブルーズ

The King Of Chicago Blues Piano / Big Maceo (ARHOOLIE CD-7009)

The King Of Chicago Blues Piano / Big Maceo (ARHOOLIE CD-7009)

Farher Of Blues Harmonica / Sonny Boy Williamson (Golden Stars GSS-5431)

Farher Of Blues Harmonica / Sonny Boy Williamson (Golden Stars GSS-5431)

Warm Witty & Wise / Big Bill Broonzy (SME Record SRCS9461)

Warm Witty & Wise / Big Bill Broonzy (SME Record SRCS9461)

ON AIR LIST
1.Worried Life Blues/Big Maceo
2.Chicago Breakdown/Big Maceo
3.Good Morning Little School Girl/Sonny Boy Williamson
4.Early In The Morning/Sonny Boy Williamson
5.Key To The Highway/Jazz Gilum

前回から始めた「ブルーズ・スタンダード曲集」の二回目です。
僕も含めてですが、長い歳月ブルーズを聴いているとブルーズの有名なスタンダード曲はわかっていると思ってることがあります。
でも、自分も年を重ねるうちにひとつの曲の気づかなかった側面を知ったり、なぜその曲が長く多くの人に親しまれているのかがわかったり、その曲が生まれた経緯を理解したり・・ということがあります。
今日もON AIRする曲を知っている人もいると思いますが、いま一度この番組を通して聴いてみてください。
そして、初めて聴く人はもし気に入ったならそのブルーズマンのアルバムをゲットして聴いていただきたいです。
まあ、基本的に音楽に分類分けなんかどうでもいいのですが、自分の好きなブルーズを探すときの目安としてその分類をちょっと知っておくと便利です。
ブルーズという音楽の中でロックにも大きな影響を与えた戦後のエレクトリック・シカゴ・ブルーズから前回始めましたが、今回は「戦前」のシカゴ・ブルーズからスタンダードな曲を紹介します。
まずはブルーズのスタンダード曲に選ばれるのにふさわしいブルーズの名曲です。
彼女にフラれてしまい傷ついた男が「でも、いつの日かこれ以上苦しむことのない日が来るだろう」と歌っているのですが、そのいつの日かというのは死を意味していると思います。生きていく中で、失恋や別離や失敗をしてもいつの日かあの世に行くのだから、その日にはもう苦しみはなくなるんだという考え方に聴いていた多くの黒人たちは共感したのだと思います。
1.Worried Life Blues/Big Maceo
1942年録音。歌詞、曲としても素晴らしいですが、メイシオのピアノ・スタイルはのちのシカゴ・ブルーズのピアニスト、オーティス・スパンたちに引き継がれていきました。
ギターのタンパ・レッドのスライド・ギターも素晴らしいです。名曲であり名演です。

もう1曲ピッグ・メイシオで忘れられない曲でこのインストルメンタル曲もブルーズの名曲名演のひとつに入れてもいいと思います。左手でステディにグルーヴするブギ・ウギのリズムを強烈に打ち出しながら、右手で縦横無尽に繰り広げられるソロ。ブギウギ・ピアノの楽しさ満載の一曲。
1945年録音、チック・サンダースというドラマーとデュオです。
2.Chicago Breakdown/Big Maceo
パーティやクラブのダンスナンバーとして欠かせなかったブルーズのブギウギ曲。こういう曲でピアニストたちは技、テクニックの競い合いをしてたわけです。

次は後続のブルーズ・ハーモニカ・プレイヤーに大きな影響を与えたサニーボーイ・ウィリアムスン。いつも言ってますが、有名なサニーボーイ・ウィリアムスンはブルーズにふたりいます。しかもふたりともハーモニカ・プレイヤー。ふたりとも素晴らしいブルーズマン。ややこしいです。ひとりはこれから聴いてもらうジョン・リーウィリアムスン、もうひとりはライス・ミラー。先にシカゴにいて先に有名になったのがジョン・リー・ウィリアムスンの方なのでサニーボーイ1と呼ばれ、ライス・ミラーがサニーボーイ2と呼ばれています。どちらもブルーズにとっては重要なミュージシャンです。今日はそのサニーボーイ1のブルーズ・スタンダード・ナンバー。
「おはよう可愛い女子学生。僕と一緒に帰らへんか。パパとママには学校の友達やって言うたらええやん」と始まるんですが、これ・・おっさんが女子学生を誘ってる歌詞でいまやったらかなりヤバいんちゃいますか。続けて「彼女になってくれた、ダイヤの指輪買うたるで」ってこれ援交の歌ですね。1937年のアメリカではOKやった・・というかその後もマディ・ウォーターズ、ジュニア・ウエルズ、ライトニン・ホプキンス、ロックのヤードバーズ、ジョニー・ウィンター・・とかなりのカバーがあるんですが・・内容的にOKなんでしょうか。それとも、おっさんが可愛い女の子を可愛いなぁ、なんでも買ってやるよ・・・くらいの軽い歌なんでしようか。45年聴いていてもいまだに真意がはっきり分からない歌です。
3.Good Morning Little School Girl/Sonny Boy Williamson
アンプを通していない生のハーモニカの音の素朴な美しさがあっていいですね。ギターもアコースティックでひとりがジョー・ウィリアムス、もうひとりがロバート・リー・マッコイです。

次の曲は僕にとっては想い出深い曲で、最初に聴いたのはジュニア・ウエルズがアルバム”Hoodoo Man Blues”でカバーしたものでした。この曲が好きでいつか録音したいと思って録音できたのが、ウエストロード・ブルーズバンドの「ライヴ・イン・ニューヨーク」のアルバムでした。最初に出てくるインパクトのあるピアノはさっき聴いたビッグ・メイシオ。ギターが名手タンパ・レッド。チャールズ・サンダースのドラム。そしてハーモニカと歌のサニーボーイ・ウィリアムスン
4.Early In The Morning/Sonny Boy Williamson

いま聴いたサニーボーイ・ウィリアムスンとコンビも組んでいたのがビッグ・ビル・ブルーンジー。ビッグ・ビルはいろんなスタイルのギターを弾ける名人で自分のレコーディング以外にもレコーディング・ミュージシャンとしても活躍して、ミシシッピーからシカゴに来た多くのブルーズマンの中でも成功した人でした。そして、その後南部から出てきた後輩のマディ・ウォーターズなどの面倒もよく見た人格者でもありました。
とにかくたくさんの録音を残した人ですが、次のジャズ・ジラムの超有名8小節ブルーズもギターがビッグ・ビルです。彼のギターがこの曲の色合いというか、装飾をうまく作っていてすごく印象に残ります。
この曲もエリック・クラプトンはじめ多くのカバーがある誰もが認めるスタンダード曲だと思います。
5.Key To The Highway/Jazz Gilum

前回から始めた僕が選ぶブルーズ・スタンダード曲集ですが、まだまだたくさんのスタンダード曲があるので続けてではなくて何回にも分けてON AIRします。

2019.10.25 ONAIR

「番組13年目、始めます!ブルーズ・スタンダード曲集」

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.1
「シカゴ・エレクトリック・ブルーズ」

Chicago Bound/Jimmy Rogers(CHESS /P-VINE PLP-813)

Chicago Bound/Jimmy Rogers(CHESS /P-VINE PLP-813)

The Best Of Muddy Waters/Muddy Waters (CHESS 1427)

The Best Of Muddy Waters/Muddy Waters (CHESS 1427)

At Newport 1960/Muddy Waters(CHESS/VICTOR SJET=8237))

At Newport 1960/Muddy Waters(CHESS/VICTOR SJET=8237))

The Best Of Little Walter/Little Walter (CHESS MCA MVCM-22008)

The Best Of Little Walter/Little Walter (CHESS MCA MVCM-22008)

ON AIR LIST
1.That’s Alright/Jimmy Rogers
2.Juke/Little Walter
3.Hoochie Coochie Man/Muddy Waters
4.I’ve Got My Mojo Working/Muddy Waters
5.Walking By Myself/Jimmy Rogers

この番組も10月で13年目に突入しました。インターネットでもON AIRされていてたくさんの方に聴いていただけるようになり海外でも聴いてくれている方もいます。
それで最近いろんなところにライヴに行くと「お薦めのアルバム」とか「お薦めの曲」をラジオで教えてくださいとよく言われるので、今回から一曲単位でこれは聴いた方がいいと思うブルーズの曲、僕が思うブルーズのスタンダード曲をON AIRしょうと思います。
このHPも参考にしてブルーズの大海原に飛び込んでみてください。
初心者の方にわかりやすくブルーズという音楽を話していきたいと思います。

ブルーズはいろんなジャンル分けがされていて、シカゴ・ブルーズとかデトロイト・ブルーズ、テキサス・ブルーズ、サザン・ブルーズとかウエストコースト・ブルーズ、デルタ・ブルーズ、ルイジアナ・ブルーズとかアメリカの地域によって分類される場合もあれば、戦前(PRE WAR)ブルーズ、戦後のブルーズという時代で区切られる場合もあり、この場合の戦前というのは第二次世界大戦より前のブルーズを戦前ブルーズと呼んでいるのですが、そういう古いブルーズの中でも南部など田舎で生まれた初期のブルーズをカントリー・ブルーズと呼ぶこともあります。そして、都会で主に女性によって歌われた20年代30年代のブルーズをクラシック・ブルーズと呼んでいます。
そして、ブルーズが都会に住む黒人によって洗練化されていくと今度シティ・ブルーズと呼ばれるようになりました。
戦後エレキ化してバンド形態のサウンドになっていくと、今度はモダン・ブルーズと呼ばれるようになります。その他、40年代から50年代にジャズの影響を受けたダンサブルなブルーズありジャンプ・ジャイヴ・ブルーズという分類もあります。
まあ、基本的に分類分けなんかどうでもいいのですが、自分の好きなブルーズを探すときの目安としてこういう分類をちょっと知っておくと便利です。
そして、ブルーズへの入り方はいろいろで僕のようにロックを聴いていてブルーズにハマった人、最初からカントリー・ブルーズのロバート・ジョンソンにハマったという人もいます。それでどこからブルーズのスタンダード曲を紹介しょうかと考えたのですが、ブルーズという音楽を説明するのにわかりやすく、しかもブルーズの歴史の中で大きな比重を占める戦後のシカゴ・ブルーズから話します。

ブルーズにはひとつの音楽的定型、決まった形のフォーマットがあり、それは12小節でワン・コーラスになっていて三つのコードで構成されています。それがわかりやすいブルーズのスタンダード中のスタンダード、シカゴブルーズの名曲と言われているこの曲を聴いてください。
「お互いに愛し合ってたのに相手の女性に好きな男ができて、もうオレのことなんか愛してないんやろ。かまへんよ、大丈夫や。でもオマエは誰と愛し合ってるんやろ」という男の切ないブルーズ
1.That’s Alright/Jimmy Rogers
いまの曲はキーがEで最初の4小節がE次にA2小節、そしてEに戻って2小節 そして最後にBに行ってAからEへと戻って行くこれが一般的なブルーズの定型です。
いまのThat’s Alrightは1950年の録音でベースにビッグ・クロフォード、ハーモニカにリトル・ウォールターそれにジミー・ロジャースという3人編成です。
そのハーモニカのリトル・ウォルターが録音したいくつかのブルーズがシカゴだけでなく全国区ですごい人気になり、いまやブルーズのスタンダードとなって歌い継がれています。
ブルーズのハーモニカをやるなら必ず出会ってしまう有名インストルメンタル曲で1952年R&Bチャートで1位になりました。
2.Juke/Little Walter
軽快なシャッフル・リズムの曲でこういう曲がバーやクラブのジュークボックスに入っていて、50年代シカゴのクラブでみんながダンスしてたんですね。
いまの曲のバックはドラムがエルジン・エヴァンス、ギターが一曲目に聴いてもらったジミー・ロジャースとマディ・ウォーターズ。ベースはいません。戦後のシカゴブルーズにはベースがいないことがよくあってギターがペースの役割をやってます。さて、いまマディ・ウォーターズの名前が出ましたが、戦後シカゴ・ブルーズの主役のひとりがマディで、エレクトリックされたシカゴ・ブルーズサウンドを作ったのがマディのバンドでした。それはのちにローリング・ストーンズのようなブルーズに影響を受けたロックバンドの形として受け継がれていきます。形としてはギターがふたりにピアノ、ハーモニカ、ベース、ドラムという編成です。ストーンズも最初はイアン・スチュアートというピアニストがいましたからね。
マディ・ウォーターズのスタンダード曲
3.Hoochie Coochie Man/Muddy Waters
1953年の録音。
ハーモニカはビッグ・ウォルター・ホートン、ギターはジミー・ロジャース、ドラムはエルガー・エドモンズ、ピアノはオーティス・スパン、そして歌とギターのマディ・ウオーターズ。
戦後のモダン・シカゴ・ブルーズの完成品のような名曲で、サウンド、グルーヴ、曲、歌詞、そしてマディの歌。南部のミシシッピー・ブルーズの泥臭いルーツの上に当時の最新のエレキサウンドをほどこした素晴らしいブルーズです。タイトルのHoochie Coochie Manとは「精力絶倫男」のような意味で、まあ強い男を表しているわけですが、こういう性的なセクシャルなブルーズの表現も僕がブルーズを好きになったひとつの理由でした。歌詞が面白いというか、赤裸々な歌詞もあればすごく詩的な美しい詞もあり、それを同じような音楽形式で歌いながらみんながまったく違う表現をするのが面白いと思いました。この曲を作ったのはベーシストでもありソングライターでもあったウィリー・ディクソンですが、彼はスタジオの中で録音する時にメンバーをまとめるバンマス的役割とかプロデューサー的、アレンジャー的な役割もした人で、彼が果たした功績は大きいです。
もう一曲、マディが残したブルーズスタンダードが”I’ve Got My Mojo Working”。今日は1960年のニューポート・ジャズ・フェスティバルのライヴ録音からですが、これもいまのHoochie Coochie Manと関連する曲で「オレのモジョがオマエには聴かない。どうしたらいいかわからないくらいオマエにすごい惚れてるのに。オレはルイジアナに行ってモジョ(Mojo)を手に入れた、他の女には効くのにオマエには聴かない。」という歌詞ですが、Mojoというのは女性にモテたり、ギャンブルに勝てたりするというおまじないのひとつで、そのおまじないが大好きな女には効かないという。
4.I’ve Got My Mojo Working/Muddy Waters
後半に向かってリズムが前へ前へとプッシュされていくところがずごいです。いまのライヴ録音は現在映像も出ているのですが、ギターがパット・ヘア、ピアノがオーティス・スパン、ハーモニカがジェイムズ・コットン、ベースがアンドリュー・ステファンズ、ドラムがフランシス・クレイという鉄壁の布陣です。

どんなジャンルの音楽もそうですが、名曲が生まれるにはそれを作詞、作曲する人、歌手が優れていることが大切ですが、それを録音する時のミュージシャンたちも優れていないと後世に残る名曲はできません。この50年代のシカゴには南部から出てきた名プレイヤーがたくさんいました。ベースのビッグ・クロフォードやウィリー・ディクソン、そしてエレキベースの時代になってからジャック・マイヤーズ、デイヴ・マイヤーズ、ハーモニカのリトル・ウォルター、ジェイムズ・コットン、サニーボーイ・ウィリアムスン、ウォルター・ホートン、ジュニア・ウエルズ、ピアノのオーティス・スパン、サニーランド・スリム、パイントップ・パーキンス、そしてギターのロバート・Jr.ロックウッド、エディ・テイラー、ルイス・マイヤーズ、アール・フッカー、そしてさっき聴いてもらったジミー・ロジャース。ジミー・ロジャースのようにバック・ミュージシャンでありながらも自分でヒットを出すというブルーズマンもいました。しかし、ジミー・ロジャースは50年代エレクトリック・シカゴブルーズギターの基本を作った人で、B.B.キングのようなソロ・ギタリストとしてではなくまずサウンドを支える、サウンドを作るギタリストとして後世に残したものは本当に偉大です。
もう一曲いまも歌い継がれている彼のブルーズのスタンダードを聴いてください。
「ひとりで歩いていくよ。本当に君の恋人になりたかったことをわかって欲しいんだ。心の底から愛してる君を祖末になんかしないよ。君にすべての愛を捧げているのにこれ以上オレに何ができるんだよ」歌詞も最高です。
5.Walking By Myself/Jimmy Rogers
最初に言ったブルーズの定型より少し変っていますが、でもコードは三つです。
今日は永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダードの第1回としてThat’s Alright/Jimmy Rogers、Juke/Little Walter、Hoochie Coochie Man/Muddy Waters、I’ve Got My Mojo Working/Muddy Waters、.Walking By Myself/Jimmy Rogersの5曲を聴いてもらいました。
これからも断続的にこのブルーズスタンダード曲シリーズを行います。そして紹介しながらブルーズの素晴らしさ、楽しさをお伝えできればと思います。ご期待ください。

2019.10.18 ON AIR

御年80才のベニー・ターナー、御年85才のボビー・ラッシュ、叩き上げふたりのブルーズマン

My Brother's Blues/Benny Turner(Nola Blue NB 004)

My Brother’s Blues/Benny Turner(Nola Blue NB 004)

Sitting On Top Of The Blues/Bobby Rush (BSMF-2673)

ON AIR LIST
1.Big Legged Woman/Benny Turner
2.Same Old Blues/Benny Turner
3.Hey,Hey Bobby Rush/Bobby Rush
4.Bobby Rush Shuffle/Bobby Rush

大阪で毎年行われている「なにわブルースフェス」に等も呼んでいただきました。お客さんもSold Out状態の盛況でしたが、ステージから客席を見渡したときのお客さんの年齢層の高さ!衝撃的でした。
まあ、出演者も60才越えている人がいっばいから当然そうなります。
それで今日は久しぶりに一緒に演った山岸潤史からアメリカ土産にもらった御年80才!のベニー・ターナーのアルバムを聴きます。ベニー・ターナーと言っても、ブルーズ好きな人でもたぶんそれ誰?になるやろと思います。ベニーはフレディ・キングの弟でフレディ・キングのベーシスト。フレディがシェルター・レコードと契約してからのベースは彼で、映像も残っているので「ああ、あの人ね」と想い出す人もいると思います。アルバムタイトルは「My Brother’s Blues/オレの兄貴のブルーズ」で兄フレディをトリビュートした内容になってます。まずはフレディがシェルターレコード時代に残したファンク・ブルーズのこの曲。リードギターは山岸潤史です
1.Big Legged Woman/Benny Turner
ベニーのお兄さんのフレディ・キングが1972年の「テキサス・キャノンボール」というアルバムで録音した曲。この曲は、イスラエル・トルバートというアラバマ出身の盲目のシンガーがオリジナルで1970年にヒットさせたものです。このスタイルでたくさんのブルーズシンガーが歌ってます。足の太ももがむちっとしている女性がミニ・スカートを履いてるのが好きという・・・いまも昔も同じですわ。
今日のアルバムに収録されているのは60年から64年にフレディがフェデラル・レコードに残したものとシェルター以降の曲と半分ずつと言う感じ。
時々声が兄貴のフレディに似てますが、ベニーとフレディは五才違いでテキサスに生まれ、ベニーが11才の時に一家はシカゴに移住します。フレディは16才です。テキサスにいた頃からふたりはブルーズが好きで音楽やりたいと思っていたようです。シカゴにくると兄のフレディはクラブで演奏を始めてその才能を認められるようになります。弟のベニーはドゥ・ワップやゴスペルのグループに参加してジミー・リー・ロビソンというR&Bシンガーのバックでベースを始めます。
間もなく兄はキング・フェデラルというレコード会社からヒットを出して次第に全国区のミュージシャンになり、ベーニーは兄のバンドでベースを弾き始めます。
それだけでなくいろんなシンガーのバックでベースを引きながら、自分でも歌ってシングルの出したりするのですがあまりパッとしなかったようですね。
結局70年代以降、兄が76年に42才で亡くなるまで兄のバンドのベーシストとして活躍します。
このアルバムでは山岸が半分くらいの曲でギターを弾いているのですが、知合いのピアニスト吉弘知鶴子さんや、小牧恵子さんも何曲か参加しています。
では、山岸がいいソロを弾いている名曲のこれを聴いてください。
2..Same Old Blues/Benny Turner
高齢化のブルーズマンと言えば、いまのベニー・ターナーよりも更に上、御年85才のボビー・ラッシュがニューアルバムを出しました。ずっと黒人クラブのサーキットを毎晩のように演奏して回るブルーズ・ライフをしてきたボビー・ラッシュの存在は、同じようにツアーを続けている自分の励みになってきました。最近グラミーも受賞してボビーは少しは生活が楽になったのかな。
まず、その新譜”Sitting On Top Of The Blues”から一曲目
歌詞が「誰かにオレはどこにいるのかって訊かれる。世界中さ。そしてまた世界中にオレは行く。誰かに訊かれる名前は?って。オレの名前はブルーズマン。いくところどこでもオレはブルーズを歌う」
3.Hey,Hey Bobby Rush/Bobby Rush
ボビー・ラッシュらしいファンキーな楽しい曲です。いま聴いてもらったファンクとブルーズのミックスがボビーの音楽なのですが、聴いてもらったようにファンクと行ってもどこか土臭いアーシーなテイストがあります。そこがまたなんともいいところで・・・。次はボビーのハーモニカをフィーチャしたインスト曲。
4.Bobby Rush Shuffle/Bobby Rush
ハーモニカもテクニシャンというわけではなく、でもこれ見よがしに吹くわけでもなくもう本当にブルーズを感じさせてくれるいいハーモニカです。
ブルーズはよくその人の生活、人生を表すといいますけどボビーのブルーズ人生を感じさせる味わいのあるハーモニカです。

ベニー・ターナーの”My Brother’s Blues”はちょっと手に入れるのが難しいかも知れませんが探してみたください。ボビー・ラッシュの”Sitting On Top Of The Blues”は日本のBSMFレコードから10/23リリースですから是非聴いてください。
今日は80才と85才の叩き上げのブルーズマンふたり、ベニー・ターナーの2017年リリースのMy Brother’s Bluesとこの秋リリースのボビー・ラッシュの新譜を聴きました。日本でもアメリカでもイギリスでもミュージシャンの高齢化が進んでいますが、僕もなるべく長く歌いつづけたいと思っているので、またみなさんライヴにもお越しください。

2019.10.11 ONAIR

敬愛するJ.J.ケイル、遺作 “Stay Around”を聴く

STAY AROUND/J.J.Cale (BEC5543727)
 

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ON AIR LIST
1.Chasing You/J.J.Cale
2.Stay Around/J.J.Cale
3.Girl Of Mine/J.J.Cale
4.Maria/J.J.Cale
5.If We Try/J.J.Cale

今日は大好きなJ.J.ケイルです。
J.J.ケイルは2013年に亡くなっているのに、いまも亡くなった気がしません。たぶん、生きている時から「オレが・・」というような過剰な自己主張を感じさせない人だったからだろうと思います。
いつも、忘れた頃にアルバムを出してきて「おお、J.J.ケイルの新譜」と喜んだものです。マイペースでアルバムをつくり、ツアーをやり、ほんとにたまに大きなイベントに出るそんな感じでした。
かって70年代にレイド・バックという言葉が流行りました。まあ肩の力が抜けたリラックスしたという意味ですが、レイド・バックと言われた中でこの人ほどレイドバックはないんじゃないか僕は思います。それは今日聴いてもらう最後のアルバムまで少しも変ってません。時代とか流行のとか最新のとかそんなものとはほど遠いところに彼はいて、自分の好きな、信じた音楽をやり切ったミュージシャンでした。でも、オレはやり切ったぜとかそんな感じもないところがいいんですがね。
今日聴いてもらうのは、ケイルが亡くなってから奥さんでありバンドのメンバーでもあったクリスティーン・レイクランドとマネージャーであり友達だったマイク・カッパスがケイルが残した音源から曲を選び、ミックスして作ったアルバム「Stay Around」
まずは美しいギターの音色から始まり「ずっと旅を続けてるんだ、そしてもう戻るつもりはないよ」と歌い出す
1.Chasing You/J.J.Cale
この曲のプロモ・ビデオがネットでアップされてます。彼とバンドがツアーをしている映像とステージの映像がミックスされているのですが、音楽やってる楽しさと旅をしている楽しさが伝わってきて、ああ彼はこうして人生を楽しんでいたんだろうなと思いました。ライヴの会場もそんな大きなところではなくて、バンドもメンバーは最小限、みんなでバスに乗って本当にツアーバンドっていう感じです。

よく知られたことですが、彼が有名になったのは彼の作った「アフター・ミッドナイト」や「コカイン」をエリック・クラプトンがカバーしてヒットさせたからで、ケイル自身も前にインタビューで「クラプトンがヒットさせてくれたその印税でオレは次のアルバムが作れる」って言ってました。おもろいですね。なんかローリング・ストーンズがブルーズマンのフレッド・マクダウエルの”Yoy Gotta Move”をカバーしたらマクダウエルにある日印税がどかーんと入った話に似てます。ブルーズマンではないんですが、ケイルは佇まいがカントリーブルーズマンに似ています。

がむしゃらに歌うわけでもなく、がむしゃらにギターを弾くわけでもなく、その曲の大切なとろこをさっと伝えられる彼の演奏スタイルはちょっとマネできないです。そして、ずっと聴いていると音楽ってなんだろうということを自問してしまいます。よく肩の力を抜くって言いますが、ケイルみたいな人は最初から肩の力なんか入ってないんですね。
次はアルバムタイトル曲。朴訥に歌われていますが、美しいいい曲です。
「そばにいてくれ、もう一回愛し合おう」
2.Stay Around/J.J.Cale

1938年にオクラホマ州のオクラホマシティという街に生まれ、タルサという街で育った彼は10代からロックンロールやカントリーのバンドに入って地元で活動してました。
その頃知り合ったのがレオン・ラッセル。20才すぎの頃にはナッシュビルに住んでカントリーに入れ込んでやっていたけど、またタルサに戻り、1964年に今度はレオン・ラッセルとベースのカール・レイドル(クラプトンのデレク&ドミノスのベーシスト)と3人でロスに行きます。一旗上げに行ったのか。まあ、いろいろやったのですが、67年にまたタルサに帰ってきてしまいます。それで地元のクラブでボツボツやっていたところに成功したレオン・ラッセルが立ち上げた「ジェルター」というレコード会社でアルバムを出すことになったわけです。それが69年。34才。その翌年にさきほど話したクラプトンがケイルの「アフターミッドナイト」を録音するとチャートを上がって思わぬ印税がケイルの懐に入りました。
それからずっとタルサを中心にライヴをやり、ツアーに出て、まあまあコンスタントにアルバムを出して40年の音楽人生で13枚のアルバムをリリースしました。

次の曲はフォーク・ブルーズ・テイストとカントリーテイストがブレンドされた曲。
3.Girl Of Mine/J.J.Cale

弾き語りの曲でたぶん自分でギターをダビングしているんだと思います。
ケイルのバンドもレコーディングもすごく有名なミュージシャンがいるわけではなく、有名なゲストを入れるわけでもなくいつも淡々としてます。今回のアルバムだけでなく、まだまだあるだろう彼の未発表音源に期待したいところです。

4.Maria/J.J.Cale
J.J.ケイルにはカントリー、ブルーズ、フォークにちょっとジャズなどいろんな音楽のテイストがあるのですが、ジャンル分けしてどこかのカテゴリーに入れるのは難しいです。
J.J.ケイルはJ.J.ケイルです。でも、その彼の音楽にクラプトンだけでなく、ニール・ヤング、マーク・ノップラー、ジョン・メイヤーなどたくさんのミュージシャンが憧れ、カバーされている曲数はかなりの数あると思います。

いつもこんな人にはなれないなぁ・・と思うのがJ.J.ケイルです。でも、こんなにカッコつけてない、カッコいいミュージシャンいないです。いつもヨレヨレのTシャツ着ているようなイメージがあるんですが、たぶん新品のTシャツでもヨレヨレに見える人なんですけど、そこがすごくかっこいいですね。
いまも生きているように感じるのはこの世を去るときも彼はさりげなく大げさじゃなかったからでしょう。何か知らん間に逝ってしまっていたような・・いやまだ生きているような・・
自分の生き方を考えるときに、自分と音楽を考えるときにJ.J.ケイルが浮かんできます。
5.If We Try/J.J.Cale
夏の終わり、秋の始まりにJ.J.ケイルの美しいレイドバック・ミュージック、どうでしょうか。