2015.11.27 ON AIR 『Muddy Waters 生誕100年記念』On Air vol.2

Trouble No More Singles 1955-1959 (Chess/UNIVERSAL MUSIC UICY-76543)
The Real Folk Blues(Chess/UNIVERSAL MUSIC UICY-75951)
Hard Again (Blue Sky Records 34449)

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ON AIR TRACK LIST
1.You Shook Me : Muddy Waters
2.Trouble No More : Muddy Waters
3.Rollin’ & Tumblin’ : Muddy Waters
4.I’m Ready : Muddy Waters
5.I Can’t Be Satisfied : Muddy Waters

今日は前回からの続きでマディ・ウォーターズの生誕100年を祝うON Airです。
マディ・ウォーターズはシカゴ・エレクトリック・ブルーズを作り上げたブルーズ史上にとって重要なブルーズマン。
前回はローリングストーンズがマディから受けた影響を話してほとんど終わってしまったが、今回はストーンズ以外のマディの影響を受けたロックバンドの話をまじえながら進めます。
まずは”You Shook Me”
1969年のレッド・ツェッペリンのファースト「レッド・ツェッペリン」にはオーティス・ラッシュが歌った”I Can’t Quit You Baby”とマディの”You Shook Me”がカバーされています。”You Shook Me”はその前年68年リリースのジェフ・ベック・グループのファーストにもカバーされてましたが、ブリティッシュのブルーズ好きには人気のある曲です。
元々はギターのアール・フッカーがスライド・ギターのインストルメンタルで出したものに、あとからマディに歌をかぶせさせたもので、一回の録音で二度美味しい目をする・・・・いかにも商売上手のチェス・レコードらしいやり方です。
「一晩中、オマエに揺らされて、オレの幸せな家庭はめちゃめちゃ。オレの哀れな嫁はんと子供はどうしてんのやろ。」というまあズブズブにハマった不倫のブルーズです。
“Trouble No More “はアメリカのブルーズロックバンド「オールマン・ブラザーズ・バンド」が1969年リリースの彼らのファースト”The Allman brothers Band”に収録。彼らが素晴らしくデフォルメしたマディの”Hoochie Coochie Man”も僕は好きです。
では、そのオールマンの録音の14年前1955年録音のマディのオリジナルを聴いてみましょう。ピアノ/オーティス・スパン、ギター/ジミー・ロジャース、ベース/ウィリー・ディクソン、ドラム/フランシス・クレイという鉄壁のメンバーにハーモニカはリトル・ウォルターと双璧のウォルター・ホートン。
Rollin’ & Tumblin’ は僕もカバーしていますが元はマディより古いトラッドなミシシッピー・ブルーズ。
1966年に結成された「キャンドヒート」というウエストコーストのブルーズ・フリークが作ったブルーズ・バンドがありました。彼らは1967年のファースト・アルバム「キャンドヒート」でRollin’ & Tumblinをカバー。キャンドヒートは古いカントリーブルーズに見識があったグループですから、こういうマディの初期のアーシーなブルーズを選んだのかも知れません。ミシシッピー・デルタ・ブルーズのテイストがいっぱいの素晴らしくロックしているマディのブルーズです。
次はロックバンド「フリー」のヴォーカルだったポール・ロジャーズがソロアルバムでカバーしているI’m Ready。
聴いてもらうマディのオリジナルは脂の乗り切ってギトギト感いっぱいでエロティックです。
最後はジョニー・ウィンターがマディへのリスペクトいっぱいにプロデュースした1977年のマディのアルバム”Hard Again” 。このアルバムはグラミーの最優秀トラディショナル・フォーク・アルバム賞を受賞してマディは再び注目されました。
そのアルバムからI Can’t Be Satisfied を。

ロック・ミュージシャン、ジョニー・ウィンターやストーンズのおかげもあってマディは幸せな晩年を過ごせたのではないかと思います。
やはりマディの中にはロックに通じるロックするグルーヴや、セクシャルなイメージ、アグレッシヴな歌があるからこそ白人のロック・ミュージシャンたちに愛されたのだと思います。ロックが好きな若い人たちに一度じっくりマディ・ウォーターズ聴いてもらいたい。たくさん得るものがあると思います。
では、また。Hey,Hey,The Blues Is Alright!

2015.11.20 ON AIR 『Muddy Waters 生誕100年記念』 vol.1

One More Mile / Chess Collectibles, Vol. 1
(Chess:MCA/ Universal Music UICY-3421/2)
The Best Of Muddy Waters
(Chess:MCA/ Universal Music UICY-3199)

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ON AIR TRACK LIST
1.I Want To Be Loved : Muddy Waters
2.Rollin’ Stone : Muddy Waters
3.I Just Want To Make Love To You : Muddy Waters
4.Oh Yeah! : Muddy Waters
5.Tiger In Your Tank : Muddy Waters

今年はシカゴ・ブルーズの偉人、マディ・ウォーターズが生まれて100年ということでトリビュート・アルバムが出されたり、音楽雑誌でマディの生涯や音楽的な功績が取り上げられたりしていますが、僕も9/12に東京下北沢のガーデンというライヴハウスで、シーナ&ロケッツとサンハウスのみなさんとで『マディ・ウォーターズ生誕100年記念ライヴ』をやりました。今日はその偉大なマディの音源をロックの側面から観てみたいと思います。
恐らくローリング・ストーンズがロックバンドとしては、マディのシカゴ・エレクトリック・ブルーズのサウンドの影響を最も強く受けたバンドだと思います。
1曲目はそのローリング・ストーンズが最初のシングルのB面でカバーした曲です。1955年のリリース。曲を作ったのはベースのウィリー・ディクソン、録音参加ミュージシャンはギター/ジミー・ロジャース、ハーモニカ/リトル・ウォルター、ピアノ/オーティス・スパン、ドラムス/フランシス・クレイ という文句なしのシカゴ・ブルーズ・サウンドを作り出したメンバー!I Want To Be Loved !
ローリング・ストーンズというバンドの名前がマディ・ウォーターズの曲名から取られたものであることを知っている人は結構いると思いますが、その原曲を聴いたことのある人は以外と少ないのかも知れません。『もし。オレが青く深い海にいるナマズだったら、オレをつり上げようとするいい女がたくさんいることだろう。女たちがオレのあとをたくさん付いて来る。女がいうには旦那が出ていったところだからウチにおいでよ』とまあ不倫のブルーズです。ちょっとエロいマディの歌声をお楽しみください。Rollin’ Stone !
もう一曲ローリング・ストーンズがその初期にカバーしているマディの曲で”I Just Wanna Make Love To You”があるのですが、ストーンズのカバーは1964年かなりアップテンポにアレンジしているのですが、やはりいまから聴いてもらうマディのオリジナル・テンポは難しかったのかも知れません。マディのオリジナルはストーンズの約10年前で1953年。リトル・ウォルターのハーモニカが最高です!
1954年の録音でマディは全盛期を迎えて完璧なブルーズ・サウンズをつくることに成功しています。シカゴに出てきて約10年、マディはシカゴで押しも押されもしないエレクトリック・シカゴ・ブルーズの王者となってました。ギター/ジミー・ロジャース、マディ・ウォターズ、ハーモニカ/リトル・ウォルター、ピアノ/オーティス・スパン、ドラムス/フレッド・ビロウ、ベース/ウィリー・ディクソンという鉄壁のメンバーです。
今日の最後は1960年いよいよイギリス、ヨーロッパそして世界にその名前を知られて行く油の乗ったマディを聴いてください。アグレッシヴ・ブルーズギターを弾くパット・ヘアのプレイも聞き物です。Tiger In Your Tank !「オマエのタンクにタイガー(ガソリン)をぶちこみたいぜ」という自信満々のエロいマディです。
来週もマディ生誕100年を記念してシカゴブルーズの王者、マディ・ウォーターズを聴きたいと思います。

2015.11.13 ON AIR 「名シンガー、ベン.E キングを偲んで」

Ben.E.KIng : Stand By Me The Ben E.KIng Collection
(RHINO WARNER WQCP-1224)

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ON AIR TRACK LIST
1.Stand By Me:Ben.E.KIng
2.Save The Last Dance For Me:Ben.E.KIng
3.Young Boy Blues:Ben.E.KIng
4.Don’t Play That Song:Ben E. King
5.Supernatural Thing:Ben E. King

 

 

 

 

今日はちょっとアナログ・レコード・シリーズをお休みして、今年4月に77才で亡くなったBen E. Kingを偲んで彼の代表曲を聴こうと思います。
Ben.E.KIngという名前を知らない人でも、いまから聴いてもらう”Stand By Me”という曲を知っている人は多いと思います。この曲のオリジナル・シンガーがBen.E.KIngです。まずはそのオリジナルの”Stand By Me”ですが、多くのカバーがたくさんありますがやっぱりオリジナルはいいです。1961年、4週間に渡りチャートのトップになりました。循環コードの繰り返しで下手をするとつまらない、陳腐な曲になってしまうのですが、やはり彼の歌が並の歌手ではないです。キングはソロになる前にドリフターズ(日本のやないですよ。念のため)というコーラスグループにいました。そのドリフターズ時代の曲が次の”Save The Last Dance For Me”。岩谷時子さんが日本語の詞をつけて「ラストダンスはワタシに」というタイトルで越路吹雪さんが歌われて大ヒットしたことがあり、越路さんがシャンソンをたくさん歌われていたことから、この曲もシャンソンと思われている方も多いかと思いますが、これがオリジナルです。内容は「他の男と踊ってもいいし、他の男に微笑んでもいい、でも家に送っていくのは僕だよ。パーティの最後のダンスは僕と踊るために取っておいてくれよ」
これを作詞した有名な作詞家ドク・ポマスは実は足が不自由でダンスを奥さんと躍れなかったところからこの歌が生まれたと言われています。
そう思うととても切ない歌に思えます。
Ben.E.KIngの曲の中で僕がすごく好きなのが次のYoung Boy Bluesです。
「新しい誰かにキスするたびに君にキスしてるんだと思おうとしている自分。自分の傷ついた気持ちをだますことはできない。ワタシたちはずっと離れたまま。ヤングボーイ・ブルーズに取り憑かれたてから毎晩が千年のように長く感じられるんだ。どこへ行ったらいいのか。何をしたらいいのかわからない。君を失くしてから途方に暮れて、寂しいんだ」これも切ないですね。
“Don’t Play That Song”は1962年の大ヒットで1970年にはソウルの女王アレサ・フランクリンがカバーしてR&Bチャートで三週間1位となりました。そのカバーも素晴らしくいいです。
「その曲をかけるのは頼むからやめてくれ。お前と過ごした日々を想い出してしまうから。胸が痛むよ。
初めてのデートはお前がまだ17才でキスをした。こんなひどいことをオマエがするとは思わなかった。オレにウソをついたんよね。どこへでも一緒に行くわと言った言葉もウソだったんだね。ああ、その曲をかけるのはやめてくれ」想い出して胸が痛むような歌が誰にもあると思います。
そして、最後は彼の70年代に入ってからの起死回生の大ヒット”Supernatural Thing” ファンクテイストのかっこいい曲です。

2015.11.6 ON AIR 「アナログレコードでブルーズを聴こうシリーズ」第18回

15 hits / Little Willie John(KING 5004X)

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ON AIR TRACK LIST
1.Fever:Little Willie John
2.All Around The World:Little Willie John
3.Talk To Me:Little Willie John
4.Let Them Talk:Little Willie John
5.I Need Love So Bad:Little Willie John

 

 

 

 

今日はどうしてもみなさんに聴いて欲しいシンガー、リトル・ウィリー・ジョンをアナログレコードでON AIRです。
時代的にはブルーズからリズム&ブルーズが生まれ、それがソウル・ミュージックへと移行していく50年代半ばから60年代にかけて活躍したシンガーです。同時代にはかのサム・クックがいましたが、サムと双璧の素晴らしいシンガーだと僕は思っています。
1曲目の”Fever”は1958年に女性ジャズシンガーのペギー・リーがカバーしてヒットし有名になった曲ですが、オリジナルはこのリトル・ウィリー・ジョン。マドンナさんも歌ってます。ブルーズ系ではバディ・ガイがライヴで血管切れそうに歌ってます。
黒人ミュージシャンの間では名歌手として語り継がれていて、ジェイムズ・ブラウンはトリビュート・アルバムまで出しているし、2曲目のAll Around The Worldもリトル・ミルトン、ルース・ブラウンなどがカバーしています。
3曲目のTalk To Meは僕がウィリー・ジョンを聴いた最初の曲で、いちばん好きな曲です。昔カバー・レコーディングもしました。「僕に話してくれ、君のこと知りたいんだ。聴かせてくれ、優しく話してくれ、愛してるんだよ」とまあ歌詞は他愛ないラブソングものなんですが、そのスムーズな歌いぶりにサム・クックを初めて聴いた時のような感動がありました。次のLet Them Talkも素晴らしいバラードです。
最後のI Need Love So BadもB.B.キングほかたくさんの黒人ミュージシャンがカバーしているブルーズ・バラードの定番の一曲です。
「夜の中へ連れていってくれる誰かの手が欲しい、僕を強く抱きしめてくれる誰かの腕が欲しい。夜が始まりそして夜露が落ちる時、君のことがものすごく欲しいんだ」いいですね。
リトル・ウィリー・ジョンがあまり知られていないのは、彼が31才という若さで亡くなったこともあると思います。彼はリトルと呼ばれていたのですが、背が低くくてそのことにコンプレックスを持っていたようです。それで酒好きになりすごく短気な性格になってしまい、いつもナイフやピストルを持っているヤバいやつになってしまい、とうとう64年に人を刺し殺してしまって刑務所送りになりました。そして四年後の68年にその刑務所で亡くなってしまいました。本当にこんなに歌えるのに残念です。
今日ON AIRしたアルバムだけでなく、他の代表的なアルバムの写真も掲載しておきます。探してくださいね、リトル・ウィリー・ジョン!