2021.05.28 ON AIR

僕の思う日本語のブルースとポップ・ミュージック

Gumbo Roll 3 / JOE-GO (BSMF 1060)

Scheduled By Budget / MITSUYOSHI AZUMA AND THE SWINGING BOPPERS (Sony Music AICL-3699)

ばってんブルース / コージー大内 (MARUYOSHI-03)

Mooney Meets Kotez / Mooney And Kotez (Airplane AP1089)

ON AIR LIST
1.ロールパン/JOE-GO
2.ご機嫌目盛/吾妻光良とザ・スウィンギング・バッパーズ
3.おんぼろトレイン/コージー大内
4.冬の道/ムーニー&コテツ

70年代に日本語でブルーズを演奏する憂歌団が登場してから、黒人ブルースを日本語で自分流に変えて歌ったり、黒人ブルーズの曲のフォーマットだけ使って全く新しい日本語の歌詞を載せて歌う人が増えました。

去年開催された「なにわブルース・フェスティバル」では全曲英語でブルーズを歌ったのは僕のブルーズ・ザ・ブッチャーだけでした。ブルース・フェスとは銘打ってますが全くブルースと関係ない歌を歌うミュージシャンもいましたが・・・。とにかく英語でブルーズをカバーする人がすごく減って、日本語のブルースへの流れが強いのですが、アフリカン・アメリカンの民族音楽として生まれているブルーズという音楽をただ日本語でやるという安易さも最近感じます。

今日聞いてもらう日本のミュージシャンの曲はブルーズに影響を受けたものですが、それぞれが日本語でやる前にまた今でも黒人ブルーズや黒人音楽へのアプローチをしっかりやって来た人たちです。日本語のブルーズとひとまとめな言い方を僕は好きではなく、それぞれの日本語のオリジナル曲という感じで受け止めています。

最初にON AIRするのは東京の下町を中心に活動しているJOE-GO。1993年結成ですからもう28年ですか。僕が知ったのは2018年にリリースされたGUMBO ROLLというミニ・アルバムが出た頃でしたかね。

ギターと歌がガイくん(日本人ですけどね)、キーボードと歌のチャッピーくん(日本人ですけどね)、ベースと歌はミドケンくん、ハーモニカと歌がエイジくん、そしてドラムがケイゴくん

ちなみに英語表記になっているバンド名前のJOE-GOは、別に外国人がメンバーにいる訳でもなく、お酒を好きな人のことを「上戸」というところから取ってます。笑い上戸、泣き上戸というのと同じ上戸です。彼らもお酒大好きですからね。平均年齢どのくらいなんでしょう。もう28年も経っていて演奏はすごくしっかりしています。

では、2020年5月にリリースされたJOE-GOのGUMBO ROLLシリーズの三枚目から「ロールパン」

1.ロールパン/JOE-GO

僕はずっとバンドをやって来たんですが、最初は「ウエストロード・ブルースバンド」「ブルー・ヘヴン」「トリック・バッグ」そして今の「ブルーズ・ザ・ブッチャー」。途中でセッション・バンドもやったことありますし、ソロで活動することもありますが、基本的にぼくは自分のバンドが必要なんですよ。結局、なぜバンドをやるのかというとぼくのように不器用な歌手は一緒に演奏するメンバーがよく変わると上手く歌えないんですね。それと自分たちのバンド・サウンドを作りたいという気持ちもあります。そのためには同じメンバーである程度長くやらないとバンド・サウンドは作れない。もっと言えばメンバーが一人代わっただけでバンドのサウンドは変わってしまうんです。だれでもいいというわけではないんです。

次のバンドも長いです。吾妻光良とザ・スウィンギング・バッパーズ。結成は1979年でリーダーの吾妻くんが在籍していた早稲田大学の音楽サークルから始まっています。もう結成40年ですか・・。

吾妻くんはバッパーズの前に僕とブルー・ヘヴンというバンドをやっていまして、その頃彼に教えられた音楽的なことも多かったです。バッパーズはいわゆるオーケストラですからメンバーが多いです。12人もいます。でもメンバーがほとんど変わっていないところがすごいです。一番最初のアルバムは僕がプロデュースしたというか録音の世話係をしたんですが、それから40年バッパーズのメンバーもおっさんから初老になってしまいました。

では2019年5月にリリースされたアルバム”Scheduled By Budget”から

2.ご機嫌目盛/吾妻光良とザ・スウィンギング・バッパーズ

バッパーズはジャンプ・ブルーズ、ジャズ、ジャイヴ・ミュージックをルーツにそれらを日本語で演奏するというコンセプトなのですが、それも変わっていないところが素晴らしいです。

次のコージー大内くんも変わらない人です。

あまりお会いしたことはないのですが、いつも気になっている人です。コージーくんは2008年に「角打(かくち)ブルース」でレコードデビューしたのですが、ライトニン・ホプキンスのギター・スタイルにコージーくんの生まれ故郷大分県の日田市の日田弁という方言で歌うというのを始めました。これが「弁ブルース」(方言のなになに弁の弁)とよばれて評判になり、全国各地から方言でブルーズを歌う人が出て来ました。元祖弁ブルースのコージーくんがいいなと思うのは、その日田弁というのがブルーズのリズム合うんですね。特にコージーくんが習得したライトニンのリズムとムードにぴったりしてい。

2012年の『ばってんブルース」から

3.おんぼろトレイン/コージー大内

「おんぼろトレイン、乗せちっちくりー」と方言で歌われてますが、乗せてってくれということですがリズムに合うんですよね。面白いです。2016年にも「一番街」というアルバムを出してツアーもかなりやっているようです。

 

次のムーニーさんは1951年生まれだから僕より一つ下で、1972年に「アンクル・ムーニー」というジャグバンドをはじめたのが最初のようです。そのあと「チェイン・ザ・スリー・ギャング」「SHY&MOONEY」「Mad Words」「Mooney&his Lucky Rythm」などのバンドをやって来ていわゆるジャグ・ミュージックの日本の元祖です。全国のJugbandを集め行うイベント 「横浜Jugband Festival」プロデュースもされてます。僕もジャグではないのに出させてもらったことがあります。あと若いバンドのプロデュースやCMソングを提供されたりいろんなところで活躍されています。

今日聞くのは去年、ハーモニカのKOTEZくんとデュオでリリースされたアルバム「Mooney Meets Kotez」からオールド・ジャズ・テイストの曲で「冬の道」

4.冬の道/ムーニー&コテツ

今日聞いた人たちは英語のカバーとオリジナルと両方やってます。音楽はどんな表現をしても自由なのですが、僕らがやっているブルーズとかR&Bとかジャグ、ジャイヴという音楽は長い歴史の中で作られたもので、それを土台に何か新しいものを作ろうとする前にまずその土台になる音楽をマスターしなければ、土台の弱い所に家を建てるようなものです。

ムーニーさんも吾妻くんもみんな最初はしっかりまずカバーをやってます。それは聞くとわかります。音楽に厚みがあります。今はオリジナル、オリジナルと言いますが、それは果たして本当にオリジナリティのあるオリジナルなのだろうかと自問するべきだと思います。逆にカバーをしていてもそこにオリジナリティを出すことはできます。昨今、すぐ日本語のブルーズということを言いますが、そもそも日本語のブルーズってあるのでしょうか。じゃそこには演歌の新宿ブルースや伊勢佐木町ブルースは入るのか、それはなぜ別なのか同じ音楽なのに・・・。だから僕はまとめて日本語の歌という括りでいちいち日本語のブルーズとか日本語のフォークとか日本語のロックとか言わなくてもいいのではないかと思います。つまり大きな意味での日本のポップスだと思っています。日本語のブルーズというとブルーズを好きな人しか聞かない、買わない可能性があります。より多くの人に聞いてもらうには日本語の・・・という分類ではなく、大きな分類に入れた方が聞いてもらえるのではないでしょうか。この話はまたしたいと思っています。

2021.05.21 ON AIR

Down Home Blues/Miami Atlanta&The South Eastern States(Wienerworld WNRCD5112)

ON AIR LIST
1.Why Did You Go / Ray Charles
2.I Keep On Drinkin’/Curly Weaver
3.Slappiin’ The Boogie / John Lee
4.No Good Woman Blues / Rudy Greene
5.After Hours/Earl Hooker

今日はこの前ON AIRしたDown Home Bluesシリーズのマイアミ・アトランタ・南東部編です。CD三枚組で83曲入ってます。しかもまたあまり知らないブルーズマンがたくさん収録されてます。
ところで皆さんはアメリカのマイアミというと何を思い出します?
僕はオレンジやグレープフルーツなど果物の産地とお金持ちがたくさん住んでるリゾート地というイメージですかね。マイアミはアメリカの南東部の最南端の州フロリダのまた南にある街で海を渡ればバハマ、キューバはすぐ近く。なんとなく陽気なファンキーな街のイメージを勝手に持っています。現在はIC,コンピューターなどの工業都市としても活気のあるらしい。
このアルバムに収録されているブルーズが録音された40年代から50年代あたりは果物の生産が盛んなところということで黒人労働者も集まり自然と音楽シーンも盛り上がっていたようです。

このDown Home Bluesシリーズはどれも僕も知らないブルーズマンがたくさん収録されているのですが、とりあえずまず知ってる人ということでレイ・チャールズ。まだレイが売れる前の1951年マイアミで録音されたレイ・チャールズの初期の作品です。レイはウエストコーストで本格的にプロの世界に入ったのですが、ルイジアナでの録音があったり、ロウエル・フルソンのツアーに参加したりと盲目というハンディを背負ってましたがその才能は評価され始めてました。
歌の内容は「彼女が行ってしまったのでずっと泣き続けてる。たった一人の彼女だったのになぜオレを残して行ってしまったんだ」と、別れた女に未練たっぷりのブルーズで最後には「さよならベイビー、寂しい長い夜だ」と言いながら「オレのこと気になるならオレは家にいるからね」と、女の方にしたら「知らんがなそんなん」でしょうね。
1.Why Did You Go / Ray Charles
やっぱり歌がエモーショナルで素晴らしいです。
この後、レイはニューヨークへ行きアトランティック・レコードと契約して”I’ve Got A Woman”,”Hallelujah I Love Her So”,”What’d I Say”などの大ヒットを連発して世界的なミュージシャンになります。

こういうあまり知らないミュージシャンばかり入っているコンピレーション盤を買う時のきっかけのひとつが知ってる曲が入ってるというポイント。しかし、同名異曲ということも多々あるのですが・・次の曲今回は当たりでした。
以前リトル・ブラザー・モンゴメリーというブルーズマンのバージョンでON AIRしたことのある”I Keep On Drinkin”という僕の好きな曲が収録されているのを見つけました。しかし、歌っているカーリー・ウィーバーというブルーズマンは全く知らない。ウィーバーはギターを弾きながら歌っているのですが、一緒にやっているもう一人のギタリスト、ブラインド・ウィリー・マクテルは有名ブルーズマン。そのブラインド・ウィリー・マクテルも自分のソロでこの曲を録音しています。
「辛い日々に女ともうまく行かず、憂鬱から逃れるために呑み続けてしまう。でも、いつの日かオレの裏口にもお日様が当たるだろうよ」
2.I Keep On Drinkin’/Curly Weaver

このアルバムの曲と演奏者のクレジットを見ていたらジョン・リーという名前を見つけ、「おお、あの偉大なブギの王様ジョン・リー・フッカーか」と思いきやフッカーはなく、ただジョン・リーだった。ブルーズには同名異人というのも結構ある。このジョン・リーの弾き語りブギがなかなかいい。リズムがグルーヴしていて途中のソロを少し入れる技もなかなかのもの。
歌はダウンホームでおおらかな感じ。
3.Slappiin’ The Boogie / John Lee
ついついフッカーと言いそうになりますが、ジョン・リーです。

次はピアノのブギの曲です。歌っているルディ・グリーンというブルーズマンも全く知らない。とにかくバックのピアノが素晴らしくルディ・グリーン本人が弾いているのかと思ったら本人は歌とギター。ピアノは有名なセシル・ギャントだった。セシル・ギャントは1944年に”I Wonder”という曲を大ヒットさせたピアニスト・ブルーズマンで主にウエストコーストで40年代から50年代に活躍した。スローのメロウな曲からブギまでとにかく素晴らしいピアニストだ。セシル・ギャントのピアノも素晴らしいですがグリーンのジャンプ風の歌もなかなかのものです。
1946年録音
4.No Good Woman Blues /Rudy Greene
ピアノのグルーヴ感が半端ないです。
今のルディ・グリーンはルイジアナの生まれでフロリダにちょっと住んでいた頃に録音した曲でした。
ギターはTボーン・ウォーカーの影響を受けてますね。
ライナー・ノーツを読むと40年間ぐらいの音楽人生の中で12枚のシングルを出したけどこれと言ったヒットには結びつかず1976年にフロリダで50歳で亡くなっています。

最後にちょっと面白いテイクです。この番組でアール・フッカーは何度もON AIRしたことありますが、今日聞くのはドラムと二人だけでやっているアウトテイクみたいなものですが、ブルーズのインストではいろんな人がやっているAfter Hours
5.After Hours/Earl Hooker
はっきりいうとドラムいらないですね。ドラムの人に悪いですけど。アール・フッカー一人の方が良かったかな。

このDown Home Blues/Miami Atlanta&The South Eastern StatesはCD三枚組で83曲ですから当分の間楽しめそうです。

2021.05.14 ON AIR

シカゴ・ブルーズの名ギタリスト、エディ・テイラーのスタジオ仕事集

Eddie Taylor In Session/Diary Of Chicago Bluesman 1953-1957 (Jasmine JASMCD 3070)

ON AIR LIST
1.You Got Me Dizzy/Jimmy Reed
2.Ride’Em On Down / Eddie Taylor
3.Dimples/John Lee Hooker
4.Ice Cream Man/John Brim
5.Big Town Playboy/Eddie Taylor

ここ数年イギリスの「ジャスミン」というレーベルがブルーズのいい感じのコンピレーション・アルバムを出してまして、今回聴くのはシカゴのブルーズ・ギタリスト&シンガーのエディ・テイラーのスタジオ・ワークを集めたコンピ盤。エディ・テイラーは1977年12月に来日してご覧になった方もいらっしゃると思いますが、ぼくがエディ・テイラーの名前を意識したのはブルーズのヒット・メイカーとしてシカゴだけでなく全米にその名前を知られたジミー・リードのアルバムでした。
ジミー・リードのブルーズは全体にダウンホームでありながらどこかポップな味わいがあり、メロディもはっきりしていて歌詞もわかりやすい、途中のハーモニカのソロもワンパターンと言って良いほどの定番で、ジミー・リードの親しみのある緩やかな歌は一緒に口ずさみたくなるものです。つまりイナたいがどこかポップ。そしてついつい腰が浮いて踊りだしたくなる唯一無二のグルーヴがあります。それをリズムで支えていたのがエディ・テイラーでした。
まあ、縁の下の力持ち。有名旅館のしっかりした番頭はんという感じですね。
まずはそのジミー・リードのR&Bチャート3位まで上がった1956年のヒット曲。ドラムがこれまた名手のアール・フィリップスでエディ・テイラーのギター、そして歌とギターとハーモニカがジミー・リード
しっかりベース・パターンをやってグルーヴを出しているのがエディ・テイラー
「聴いてくれやベイビー、ちゃんとしたこと言うてんねん。オレは朝家を出るけど一晩中遊んでられへん。何でか言うたらオマエにクラクラしてる。ホレてんねん。自分のことがわからんくらいクラクラしてるんや。ほんまやて、オマエにホレたように他の女を好きになったことはない。グラグラや、めっちゃホレてんねん」
1.You Got Me Dizzy/Jimmy Reed

実はエディ・テイラーとジミー・リードは同じミシシッピーの田舎の幼なじみでジミー・リードにギターを教えたのはエディ・テイラーでした。そして大人になって二人は別々にシカゴにやってきて、二人ともプロのみゅーじしゃんをめざしていたのですがジミーがVee Jayレコードでレコーディングをすることが決まった時、スタジオに現れたのが幼なじみのエディでした。以来、ジミーの録音には必ずと言って良いほどエディが参加してジミーの音楽を支えた。何曲も長い間やりライヴも一緒にやってたみたいですから仲がよかったんでしょうね。
次のはエディがメインで歌う曲にジミーが参加しているものです。ドラムと三人でベースもいないんですが、ベースがいないことが全く気にならないグルーヴの素晴らしさですが、エディとジミーの二人のシャッフルのビートが本当に気持ちのいい曲です。ローリング・ストーンズもカバーしています。
2.Ride’Em On Down / Eddie Taylor

エディ・テイラーはVee Jayレコードのレコーディングに数多く参加しているのですが、偉大なジョン・リー・フッカーのVeeJay録音にも参加しています。ジョン・リーは60年代の初期にVeeJayと契約して”Boom Boom”のようなヒットを出してイギリスのロック・ミュージシャンにも取り上げられ次第に世界的に認知されるブルーズマンになっていきます。次の曲もアメリカのチャートには出なかったけれどイギリスのチャートには上がった曲です。次の曲もイギリスのアニマルズやスベンサー・デイヴィス・グループ、ドクター・フィールグッドなどに愛されカバーされた曲です。これにもエディ・テイラーが参加しています。
「君の歩き方が好きやねん。めちゃ好きやねん。俺はオマエをしっかり見てるで。ほっぺにえくぼあるよね。いいよね。ずっとオマエを見てるよ」
3.Dimples/John Lee Hooker

1977年にエディ・テイラーはギターのルイス・マイヤーズそしてルイスの弟のベースのデイヴ・マイヤーズ、ドラムのオディ・ペインと共に日本ツアーをしました。実はその時にこの番組のキーステーションであるアップル・ウエーブがある弘前でもライヴをやっています。弘前で「ブルーズン」というブルーズ・バーをやっておられた正井さんという方を中心に有志が集まりエディのライヴを弘前で開催しました。そのツアーの中では一番小さい街が弘前だったと思います。今思うエディ・テイラーを弘前で聞きたいという強い熱意に頭が下がります。
僕はこの来日のライヴ・アルバムになった京都で聴いたのですが、その三年前の1974年にルイス・マイヤーズとデイヴ・マイヤーズはロバート・Jr.ロックウッドと日本に来ていました。それでまあ「日本ではオレの方が人気があるんだぞ」とルイスは思ったのかも知れませんが、エディ・テイラーとステージで張り合ってしまいライヴ自体はあまりいいものではありませんでした。でも、エディのシャッフルのビートを聞けただけでも僕は嬉しかったんですが。

このエディ・テイラーのコンピレーション・アルバムの最初に収録されているジョン・ブリムの有名曲、シカゴ・ブルーズの有名曲でもありますが、「アイスクリーム・マン」
これにもエディが参加していました。「夏になったら涼しくなるものが欲しいやろ。君のためにその涼しくなるものを持ってんのやけど逃さん方がええで。オレは君のアイスクリーム屋や。通り過ぎる前によびとめてや。オレが持ってる味に君が絶対満足するから」とまあアイスクリームにかけたちょっとエロい歌ですが、名曲やとぼくは思います。
4.Ice Cream Man/John Brim
このアイスクリーム屋はハードロックのヴァン・ヘイレンがカバーしています。You Tubeに出ているので探してみてください。なかなかいい感じでした。

次の曲名がビッグ・タウン・プレイボーイで実際エディがプレイボーイだったかどうかはわかりませんが、まあ働かないで女性に食べさせてもらっている男の歌です。
「朝、あいつがあんた仕事探して来てよ。シカゴはええとこやけどめちゃ景気悪いねん。あんた先に行ってるけどそこが私の嫌いなとこや(I Don’t Want You Go Ahead.That’s One Thing I Don’t Enjoy/ここの意味が今いちよくわからない)。大丈夫や、あんたは大都会のプレイボーイやから」そのあとも「一日中街をふらふらして夜中に帰って来てとか、あんたなんかやりたい放題やって一文の値打ちもないで」と女性の愚痴が続くんですが最後はあんたは大都会のプレイボーイやからで終わってしまう。
働かない男やけど女性に優しくてええ男やというところで許されている男の歌でしようか。
5.Big Town Playboy/Eddie Taylor

このジャスミン・レコードからリリースされたエディ・テイラーのアルバムですが、初めてエディを聞く人にはいいかも知れません。

2021.05.07 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード vol.32
ルイジアナ・ブルーズ vil.3

「ニューオリンズR&Bの土台を作った偉大なピアニスト/プロフェッサー・ロングヘア」

21 Blues Giants/Professor Longhair (P-Vine PCD-3758)

NEW ORLEANS PIANO/Professor Longhair(Atlantic Jazz 7225-2)

Crawfish Fiesta/Professor Longhair (Alligator/King KICP 2581)

ON AIR LIST
1.Mardi Gras In New Orleans/Professor Longhair And His Shuffling Hungarians
2.Tipitina/Professor Longhair
3.Big Chief/Professor Longhair
4.Bald Head/Professor Longhair

今年はニューオリンズの年初めの「マルディグラ」のお祭りも春の「ジャズ・ヘリテイジ・コンサート」も中止となりました。
それでもニューオリンズの人たちは自分たちの家を飾ったりハウスパーティを楽しんだようです。
今日のブルーズ・スタンダード特集はルイジアナ編ということでプロフェッサー・ロングヘアの名曲をお送りします。

プロフェッサー・ロングヘアの曲はもう何度もこの番組でON AIRしていますが、今回は曲を中心に後世にも残る彼のスタンダード名曲を紹介します。
プロフェッサー・ロングヘアは通称「フェス」と呼ばれていたのでここからはフェスと記します。

デビュー録音は1949年。当時のフェスのバンド「シャッフリング・ハンガリアンズ」でした。
最初に聞いてもらうこの曲はフェスの代表曲のひとつであり、ニューオリンズ・ミュージックを代表する一曲でもあります。
「マルディグラを見にニューオリンズへ行くんだよ。カーニバルがどんなのか知りたいんだ。チケットも持ってる。ニューオリンズに着いたらズールーキングに会いたいんだ」
マルディグラというのは先ほども少し触れた1月から2月にかけて催されるお祭りでいわゆる謝肉祭と呼ばれるものです。ストリートでパレードがあったり舞踏会やいろんな催しがあり呑んで食べて踊って歌ってのどんちゃん騒ぎが続きます。最後の日は「ファット・チューズディ」と呼ばれ翌日から行われる禁欲的な日々を前に呑んで食べるので「でぶっちょの火曜日」。最後の狂乱のお祭りがくりひろげられます。歌詞にでてくるズールー・キングというのはアフリカのズールー族をリスペクトしたその王様のこと。やはりこういう所にもアフリカン・アメリカンの原点であるアフリカへの憧れがあるように思います。
マルディグラはニューオリンズのというよりアメリカを代表するカーニバルで、映画の「イージー・ライダー」もマルディグラに行くストーリーでした。アメリカ人にとっては一生一回は行って見たいと思っているカーニバル。

1.Mardi Gras In New Orleans/Professor Longhair And His Shuffling Hungarians
最初に口笛から始まりましたが、この口笛もフェスの音楽に欠かせないものでいろんな曲で使われています。この口笛だけでファンキーなムードになっています。
フェスは30年代から活躍していたのに初録音が1949年ですからかなり時間がかかってます。ニューオリンズのクラブ界隈のミュージシャンの間ではすでに独創的なフェスの演奏は評判になっていましたが、なかなか世に出る機会がなかった人です。
その独創性は次の曲でもしっかり聴くことができます。

「ティピティーナス」という有名なクラブの名前は次のフェスの「ティピティーナ」という曲名からつけられました。歌の内容は他愛のないパーティ・ソングでティピティーナというのは女性の名前で、「ティピティーナ、一緒に楽しもうぜ」というだけの歌ですが、カリブのルンバのリズムとブルーズのブギのテイストが混じった独特のフェスのピアノ・サウンドでこれがニューオリンズR&Bのサウンドとグルーヴ、ニューオリンズ・ファンクの元のひとつです。また、ニューオリンズのピアニストにとっては二つ、三つのリズムがミックスされたこういうポリリズムのフェスの音楽は教科書のようなもので、ずっと受け継がれています。
毎年クラブ「ティピティーナス」では「プロフェッサーロングヘア・ピアノナイト」というライヴが催されてニューオリンズのピアニストたちがフェスの偉業を称え、ピアノプレイを競い合います。
2.Tipitina/Professor Longhair
素晴らしいです。フェスの気取らない歌声とファンキーなピアノ、そしてカリブからのルンバのリズム、ニューオリンズならではのダウンホームなテイストがたまらない。
聞いてもらっているようにいわゆるシカゴブルーズのオーティス・スパンやメンフィス・スリムのようなブルーズ・ピアノとは全く違うピアノ・スタイルです。
次の曲のように普通のシャッフルのリズムを基本としたブルーズもあるのですが、その中にやっぱりニューオリンズの匂いがただよってます。よく「陽気なニューオリンズ」という表現を見かけますが、陽気、つまりファンキーなだけでなく、そこに独特の叙情が今の曲に漂っています。

実はフェスが本格的に認められるようになったのは70年代に入ってからです。50年代には同じニューオリンズのファッツ・ドミノがR&Rブームの波にも乗り世界的にも知られましたが、フェスもほぼ同世代のミュージシャンなのに広く知られることはなかった。60年代にはリー・ドーシー、アニーK・ドゥ、アーマ・トーマス、クリス・ケナー、アーロン・ネヴィルなど全米ヒットを出すニューオリンズのR&Bシンガーたちが次々と登場したのですが、フェスはそのシーンにも登場しませんでした。60年代はミュージシャンというよりギャンブラーとして裏の世界で生きていたような有様でした。今から思えばその60年代あたりにもたくさんレコーディングの機会があれば、もっとフェスの音楽が残っていたと思います。
次の「ビッグ・チーフ」もニューオリンズR&Bを代表する曲。作ったのは同じニューオリンズのアール・キングです。
聞くのはフェスの最後のアルバムとなった80年アリゲーターレコードからリリースのアルバム 「クロウフィッシュ・フィエスタ」
3.Big Chief/Professor Longhair
1980年1月に録音して二ヶ月後にフェスは天国へ行ってしまいました。歌もピアノもこれが最後とは思えないほど力がありソウルフルです。そしてフェスを中心に作られているビートのグルーヴはやはり唯一無二のニューオリンズ・サウンドです。

シャッフルのビートとニューオリンズのマーチングのビートがミックスされ、そこにフェスの歌に呼応するコーラスがあってまさにニューオリンズのカーニバルのムードがいっぱい。
そして、途中のフェスのピアノ・ソロのファンキーなこと!
4.Bald Head/Professor Longhair
なかなか広く知られなかったフェスの音楽は晩年そして亡くなってからますますその評価が高まっています。
そして、今日ON AIRした曲はどれもニューオリンズのスタンダード曲としてずっと歌い継がれているものです。