2016.07.29 ON AIR

ニューオリンズの隠れた名歌手 ジョン・ブッテ
ALL ABOUT EVERYTHING/JOHN BOUTTE (Boutteworks BW007)

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ON AIR LIST
1.No, No (the River)/John Boutte
2.The Grass Is Greener/John Boutte
3.All Around the World/John Boutte
4.Hallelujah/John Boutte

 

 

 

 

みなさんはジョン・ブッテというニューオリンズの歌手をご存知でしょうか。1958年生まれやから現在57才かな。一応ジャズシンガーという看板ですが、R&B、ソウル、ブルーズとなんでも歌えこなせる上手い人です。それほど広く知られていないのは大きなヒット曲がないからかも知れません。
今日は2012年リリースの彼のALL ABOUT EVERYTHINGというアルバムから聴いてみようと思います。
簡単な歌詞なんですが、いまいちどういう意味かわからない歌なんです。
「オレは河へ行って、振り向いたよ。なぜかいうたら溺れて死にたくないからね、河の水は冷たいし気持ちのいいもんじゃないよな。昔河へ行ったよ。でも嫌だ嫌だ。もう行きたくない。」自殺しようと河へ行ったけど水は冷たいし、溺れて死ぬのはいやや」と思い止まった歌ですかね。元々はファッツ・ドミノが歌った歌です。歌詞の内容はヘヴィやけど何か一緒に歌いたくなるニューオリンズっぽいファンキーな歌です。
No, No (the River)
こういうニューオリンズの音楽に訳もなく幸せな気分になります

この”ALL ABOUT EVERYTHING”にはキーボードのジョン・クリアリー、ドラムのハーリン・ライリーやレイモンド・ウィバーなどニューオリンズの錚々たるメンバーが参加しています。
いま聞いてもらったのはニューオリンズR&Bの流れをしっかり継承した歌でしたが、次の曲はニューオリンズ・ファンク系の曲です。これもやはりプロフェッサー・ロングヘアからアレン・トゥーサンそしてミーターズ、ネヴィル・ブラザーズに繋がるニューオリンズファンクの流れを感じます。
途中のトランペットのジェイムズ・アンドリューとトロンボーンのトロンボーン・ショーティーの掛け合いも聞き物です。
The Grass Is Greener

ここでジョン・ブッテのプロフィールを・・・
ジョン・ブッテはクレオールですからフランス系かスペイン系のミックスですが、とても端正な顔をしています。幼い頃からニューオリンズの音楽の中で育ち、トランペットなど楽器もいくつかやっていて、お姉さんはゴスペル・ジャズ・シンガーのリリアン・ブッテ。でも、本人は大学を卒業して、軍隊に四年いて普通の仕事に就いてミュージシャンになる気はなかったようですが、ひょんなことからスティーヴィー・ワンダーが彼の歌声を聞いて歌手になることを進めたということです。お姉さん、リリアンのツアーに参加したりしてソロ・デビューは35才の時です。
背が少し低いところから50年代のめっちゃ上手R&Bシンガー、リトル・ウィリー・ジョンを思い出させるところもあるなぁと思っていたら、本当にそのウィリー・ジョンの曲を歌ってました。
All Around the World

ジョン・ブッテのことを知りたくてニューオリンズにすんでいる友達の山岸潤史にメールしてみました。その返事には「ジョンブッテはもちろん以前何回も一緒にやったことあるし、サムクックが大好きな素晴らしいシンガー!や。最近はテレビドラマのTREMEのテーマ曲”TREME SONG”を歌って、それがいまやニューオリンズのスタンダードになるヒットでジョンは湖の向こう側のマンダビルに家買うた」と書いてありました。
では、また来週、ハレルヤ!

2016.07.22 ON AIR

Bob Dylan 新譜”Fallen Angels” スタンダード・カバーアルバムに込められた想い

Fallen Angels/Bob Dylan (Columbia 88985316001) アナログレコード
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ON AIR LIST
1.Young At Heart/Bob Dylan
2.All The Wayt/Bob Dylan
3.Skylarkt/Bob Dylan
4.On a Little Street in Singaporet/Bob Dylan
5.Come Rain Or Come Shinet/Bob Dylan

 

 

 

 

今日は5/25にリリースされたボブ・ディランの新譜”FALLEN ANGELS”をアナログレコードで聴きましょう!今回もレコードの中に小さなカードが入ってまして、そこにデジタル用にダウンロードする番号が書いてありまして、デジタルで聴きたい人はまあ自分でダウンロードやってくれという、まあ最近レコードを出しているミュージシャンはみんなそうなんですが、すっかりこういう形が定着しました。
前作『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』の続編のような内容で、ディランは再びジャズ・スタンダードのカバー・アルバムをリリース。
今回も自分のバンドと一緒にレイドバックしながら繊細なサウンドとゆったりしたグルーヴの中、ディランは気持ち良さそうに歌っています。
まずは一曲目、このアルバムの1曲目、フランク・シナトラが1953年に大ヒットさせた曲です
「もしも、君の心が若ければおとぎ話のようなことも本当になって起こるかも知れない。君の心が若ければ不可能に思えることにもむかうことができる。もし、その夢が破れて粉々に散ってしまっても笑っていられる。過ぎ行く毎日がますますエキサイティングになる。そして君の心に愛が生まれ始めるか、生まれるかも知れない。君の心が若ければ・・・」
Young At Heart

ディランは数年前にラジオの番組をやっていたんですが、選曲からDJもすべて自分でやって流し、一曲一曲について自分の思いや思い出を語っていました。On Airされる曲はブルーズからR&B,カントリー、ソウル、ファンク、ジャズ、スタンダードとアメリカン・ミュージックすべてでしたが、その曲に対する見識もあるし自分の思いもたくさんあってその語りを聞いているだけで素晴らしいものでした。そして、その時もフランク・シナトラについて語っていたのを覚えてますが、こんなにシナトラに影響されているとは思わなかったです。今回はすべてシナトラが歌った曲ではないですけど、やはりシナトラからジャズ・スタンダードへの道を知ったのだと思います。
「誰かがあなたを愛してくれるなら、ずっと愛してくれなければダメだよ。君を元気づけてくれる誰かが必要な時、君のそばにずっといる人じゃないとダメだよ。僕はずっと君のことを好きだけどね」
All The Way

次の曲はアメリカの偉大なポピュラー・ミュージックの作曲家であるホーギー・カーマイケルが書いた曲です。ホーギー・カーマイケルはレイ・チャールズが大ヒットさせた”Georgia On My Mind”そして永遠の名曲”Star Dust”、ブルージーな”Rockin’ Chair”そしてこれから聴いてもらうSkylarkと、いまも歌い継がれている曲がたくさんあります。ディランも子供から少年期にかけて彼の曲をたくさん聴いて、鼻歌のように歌っていたと思います。このスカイ・ラーク(ひばり)はホーギーが作曲、作詞がこれまたアメリカの偉大な作詞家ジョニー・マーサー
「(空を飛ぶひばりに向かって)ひばりよ、何か僕に言いたいことはないのか。教えてくれないか、僕の恋人になる人がどこにいるのか。霧がたちこめる草原でキスを待っている人はいなかったかな」すごくロマンティックな歌ですが、ディランはこういう歌も好きなんですね。
Skylark

僕の父親はジャズは聴いてなかったんですが、ナット・キング・コールやプラターズのレコードを買ってきては聴いてました。それは僕が小学生の頃のことなんですが、ラテン・ミュージックも流行っていて、僕はどういうわけかおやじに連れられてグランド・キャバレーと呼ばれる大きなキャバレーにおやじに連れられていって、坂本スミ子さんとアイ・ジョージさんがラテンを歌われるのを見ました。それはそれは素晴らしかったです。
ラジオでもジャズ・スタンダードやラテンミュージックが流れてましたが、アメリカにいるディランは小さい頃にもっともっとそういう歌をたくさん聴いてたんでしょう。
次の歌もシナトラが歌っている曲でなんか異国情緒がある曲です。寂しげな顔したすてきな女性とシンガポールの小さな通りで出会い恋に落ちたムードのある歌です。
On a Little Street in Singapore

年を取って来たディランは自分が愛したアメリカのポップ・ミュージックの中から消えていきそうないい曲を残したいでしょうね。歌のひとつひとつに彼の愛着をすごく感じます。そして、前回と同じようにディランのバンドのメンバーが素晴らしいサウンドを作っていることも大切なポイントで、本当にいいバンドです。本来、ホーンセクションが入っているところを自分たちの楽器だけで遜色のないサウンドを作っているところも素晴らしい。

これもいまも歌い継がれているスタンダード曲です。
「君のことが好きや、他の誰かが君を好きになるよりも好きや。雨が降っても、空が晴れても。山のように高く、河のように深く君が好きだ。曇りの日もあれば、太陽が輝く日もある。お金がある時もあればない時もある。でも、僕は君と一緒にいる。雨が降っても晴れてもね」
Come Rain Or Come Shine

今年75才になるディランがこれからどうなっていくのか、どんなアルバムをリリースしてくるのかすごく興味のあるところです。
アメリカではもう新しいツアーが始まっていると思います。ツアーを一緒に回るのはメイヴィス・ステイプルズだそうです。来年は是非、ふたりで来日して欲しいですね。

2016.07.15 ON AIR

Piano Bluesの夕べ

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American Folk Blues Festival ‘64

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OTIS SPAN/ Walking The Blue

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MEMPHIS SLIM/The Real Folk Blues

On AIR LIST
1.These Blues Keep Doggin’ Me/Lee Kanehira(single record)
2.Everytime I Get To Drinkin’/Sunnyland Slim
3.Midnight Hour Blues/Leroy Carr
4.It Must Have Been The Devil/Otis Spann
5.Havin’ Fun/Memphis Slim

今日はピアノ・ブルーズを味わってもらおうと思います。
実はこの番組でも以前ON AIRした日本の素晴らしいブルーズピアニスト、リーがこの度、アナログシングル盤を初めてリリースしました。残念ながら彼女のライヴ会場でしか買えないのですが、シカゴ・ブルーズスタイルのピアノとギターが絡み合いながらも、どちらも邪魔にならないとても上手くミックスされたサウンドが聞けます。ビリー・フリンさんのギターも聞き所が満載です。
では、リー・カネヒラでThese Blues Keep Doggin’ Me
というわけで今日はブルーズピアノを聴いてみようと思います。
いま聴いてもらったリーも好きなピアニストでサニーランド・スリムがいるのですが、サニーランドは本当にたくさんの録音が残っている人でマディ・ウォーターズ、J.Bルノア、ロバートロックウッド、サニーボーイ、リトル・ウォルター、シカゴ・ブルーズ系のブルーズマンとはほとんど一緒にやっていて、その他にもB.B.キングが好きだったドクター・クレイトン、メンフィスにいた頃はマット・マーフィとやっています。日本にも一度来てくれましたが、その時はもう70過ぎてましたが、素晴らしいピアノプレイでした。
聞いてもらうのは、「アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバル64」というアルバムから。語りから強烈なピアノの連打が始まり、張りつめた大きな声で歌うサニーランドの強烈なブルーズにびっくりしたのを覚えている。バックのヒューバート・サムリンのギターも素晴らしい。サニーランドの代表曲です。
Everytime I Get To Drinkin’

1930年代シティ・ブルーズの王様だったリロイ・カーのいまに残る名作中の名作。歌詞、メロディ、リロイ・カーのピアノ、スクラッパー・ブラックウェルのギターすべてが完璧な素晴らしいブルーズです。
「夜明けまでまだ時間がある真夜中、ブルーズがこっそりやってきてオマエの心を持っていってしまう。眠れないでずっとベッドに横たわっている。心の中にはいやなことばかり、そして気持ちは沈み込んでいく」リロイ・カーです
Midnight Hour Blues

ピアノは曲をゴージャスにしてくれるサウンドをつくる楽器のように思っていたのですが、ピアノは打楽器だと確信したのはこのオーティス・スパンのピアノを聴いてからです。ピアノは手でというか指で打楽器のように叩いてますからね。スパンのフレイズを弾けるピアニストでもスパンのリズムの素晴らしさ、彼の力強いグルーヴを表現できている人は少ないです。では、キャンディッドというレーベルの素晴らしいアルバム”Walkin’ The Blues”からその強烈なスパンのピアノと歌を聞いてください。
It Must Have Been The Devil

次に聴いてもらうメンフィス・スリムはすごくたくさんアルバムがリリースされているのでどれを買ったらいいのか、迷うくらいです。
50年代にギターのマット・マーフィが参加した”At The Gate Of Horn”というアルバムも素晴らしいし、60年代最初の”Memphis Slim U.S.A”というすごくいいんですが、今日はチェスレコードから1966年リリースの”The Real Folk Blues”というアルバムから選曲しました。
彼はヨーロッパにツアーに行った時にフランスが気に入って、というのもフランスではジャズマンやブルーズマンが人種の差別なく尊敬されるという素晴らしい風潮があって、彼はフランスにいて楽だったんでしょう。1962年から88年まで彼はパリに住み、73才パリで亡くなりました。
Havin’ Fun
今日はピアノ・ブルーズの夕べでした。最初に聴いてもらったリーちゃんのアナログシングル盤「Rie”Lee”Kanehira(v,pf) with Billy Flynn(g)
These Blues Keep Doggin’ Me/ Blues Is Everywhere」は、限定100枚でライヴ会場のみでの販売です。
詳しくはこちらをご覧ください→https://leebluespiano.wordpress.com

2016.07.08 ON AIR

ブルーズ・ザ・ブッチャーの新譜”Three O’Clock Blues”を聴く その2

Three O’Clock Blues/blues.the-butcher-590213(P=Vine records PCD-18815)
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ON AIR LIST
1.I Pity The Fool/blues.the-butcher-590213
2.Baker Shop Boogie/blues.the-butcher-590213
3.Straighten Up Baby/blues.the-butcher-590213
4.How Can You Been So Mean/blues.the-butcher-590213
5.No More Doggin’/blues.the-butcher-590213

 

 
6/15にリリースされた僕のバンド「ブルーズ・ザ・ブッチャー」のニューアルバム”Three O’Clock Blues”を手前味噌ですが、ON AIRします。リリース前に何曲か聞いてもらったので今日は違う曲でパート2です。
今回、僕らのアルバムはCDとレコードのLPと両方作りました。LPレコードは収録時間に限りがあるのでCDのようにたくさん曲を入れることができません。それでLPとCDとでは収録曲がちょっと違っています。僕としては両方聞いてもらいたいところです。LPレコードは前回と同じように完全限定なので、レコードを聞きたい方はお早めにゲットしてください。前回はこちらが予想したより3倍くらい早く売り切れました。
では、最初の曲は・・・ボビー・ブランドの”Two Steps From The Blues”という名盤に収録されている曲
女にもてあそばれているのを周りのみんなが見てバカにされているのを知っている。どうしょうもない恋に落ちてしまった男の歌です
I Pity The Fool

僕個人的にはずっとボビー・ブランドのこの曲を録音したいと思っていたのですごく嬉しいです。ブランドの曲はホーン・セクションが入って、しっかりアレンジされているのでなかなかカバーしずらいんですが、今回ホーンなしのブルーズ・ザ・ブッチャーのメンバーだけでやれたのは大きな収穫でした。
今回のアルバムのテーマはGo Back To Memphisで、ジャズ、ブルーズ、R&B,ソウルとアメリカの音楽の歴史の中でずっと大きなメッカであったメンフィスに由来するブルーズを取り上げました。次の曲はそんなメンフィスでブルーズ、ロックンロール、カントリーの名曲をたくさんリリースした「サン・レコード」のあまり名前の知られていない、でもいかにもメンフィス・ブルーズらしいウィリー・ニックスというブルーズマンが歌った曲です。
「オレはパン屋の女とつき合ってるんやけど、あいつは最高や。ベイカーショップブギ、まわりでいちばんええ。あいつは小麦粉もふくらし粉も持ってるけどオレのシュガー砂糖がないといけないんよ。オレがあいつのパン屋にいって全部売り切れててもあいつはオレにスウィートなジェリーロール(カステラ生地にゼリーを塗って巻いたロールケーキ)を取っといてくれるんよ。最高ベーカーショップブギ」
Baker Shop Boogie

次はメンバーのKOTEZくんが歌っている曲で、これもサンレコードにいいブルーズをたくさん残しているジェイムズ・コットンの1953年、コットン18才録音のブルーズ。今回KOTEZが録音に選んだ曲はファンキーなものが多かったですね。イナタファンキーというかアーシーな感じもあるファンキーな曲
これは「ちやんとせえよ、ベイビー」という曲です。
Straighten Up Baby

次の曲も1曲目のI Pity The Foolと同じでホーンセクションがバリバリ入っているジャンプ・ブルーズ・テイストの曲なんですが、そのホーンの部分をハーモニカとギターで作ってやってみました。
ジョニー・エースはバラードで有名な人なんですが、僕は昔から彼のジャンプ・ブルーズテイストもいいなぁと思ってました。これも録音できてよかったです。
「オマエ、あんまりにもひどないか、オレのこと愛してるいうてたのにオレがいなかなったら新しい男とすぐキスするんかい、オマエあんまりやろ」
How Can You Been So Mean

次はKOTEZくんが前からステージで歌っていたやはりメンフィスで活躍していたロスコー・ゴードンの曲です。この番組でも何度かロスコー・ゴードンをON AIRしていますが、いまから聴いてもらうシャッフルの裏のビートを強調したグルーヴが海を渡ってジャマイカに届いて、そのシャッフルからレゲエのビートが生まれました。その辺も思い出して聴いてみてください。
No More Doggin’

今回はメンフィスに由来するブルーズマンたちの曲を、原曲にドラム、ベースが入っていないアーシーなものからホーンセクションが入りしっかりアレンジされた曲までを、自分たちブルーズ・ザ・ブッチャー風に録音しました。去年はCDで出したInThe Basementのアナログレコードをリリースしましたが、今回はブルーズ・ザ・ブッチャーとしは7枚目になります。ほとんど毎年のように何かリリースできているのは、アルバムを買っていただいているみなさん、それからライヴで応援していただいているみなさんのおかげです。また、そして、ブルーズをともに発信しているこの番組のスポンサーの青南商事さん、アルバムジャケットの写真を毎回撮っていただいている写真家の菅原一剛さん、FMアップルウェーブさん、そして、この番組をON AIRしていただいているラジオ各局みなさんにもお礼を言います。ありがとうございます!そして、この番組を聴いてくださっているみなさん、この番組と同じようにブルーズ・ザ・ブッチャーもよろしくお願いします。今回のアルバム”Three O’Clock Blues”は自信作です。

2016.07.01 ON AIR

永遠に歌い継がれるエヴァンジェリスト、ブラインド・ウィリー・ジョンソン

God Don’t Never Change/The Songs Of Blind Willie Johnson(P-Vine Records PCD-25195)
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ON AIR LIST
1.The Soul Of A Man/Tom Waits
2.It’s Nobody’s Fault But Mine/Lucinda Williams
3.Mother’s Children Have A Hard Time/The Blind Boys Of Alabama
4.Trouble Will Soon Be Over/Sinead O’Connor
5.John The Revelator/Tom Waits

 

 

 

この場組でもON AIRしたことのある敬愛するブラインド・ウィリー・ジョンソン。そのブラインド・ウィリーへのトリビュート・アルバムがリリースされました。
ブラインド・ウィリー・ジョンソンは1920年から30年代にかけて活躍したエヴァンジェリスト。エヴァンジェリストとはひとりでギターを弾いてスピリチュアル、つまり神様の教えを歌う伝道師です。ブルーズマンとは歌っている内容が違います。しかし、サン・ハウス、チャーリー・パットンといった1920、30年代あたりのブルーズマンがブルーズを歌いながらもスピリチュアルズやゴスペルを歌うこともありました。俗(ブルーズ)な世界と聖(スピリチュアル、ゴスペル)なる世界の間で人間の心は揺れ動く・・・それを素直に歌っていたとも言えます。だから、黒人音楽のふたつの大きなルーツ、ブルーズとゴスペルは片方が世俗の音楽、片方が聖なる宗教の音楽でありながらその中にある音楽的要素には近いものもたくさんあります。
ブラインド・ウィリーの弾くスライド・ギターにもブルーズのテイストがあり、ブルーズを好きな人にもすごく人気があります。
ブラインド・ウィリーはブラインドつまり盲目なのですが、その音楽は歌もギターもパワフルでとてもエモーショナルでありながら繊細で、すごくピュアな精神を感じさせてくれる人です。
その彼の死後70年以上経ってもアメリカ、ヨーロッパでは、僕と同じように彼をリスペクトするミュージシャンがたくさんいます。
今回このトリビュートアルバムに参加したミュージシャンからもブラインド・ウィリーへの深い敬愛が感じられます。
まずはこのアルバムGod Don’t Never Change/The Songs Of Blind Willie Johnsonから一曲目、「誰か教えてくれないかい、人の人間の魂って何なんだ」という歌を強烈なトム・ウェイツの歌声で
The Soul 0f A Man
次はスピリチュアルの中では比較的よく知られているIt’s Nobody’s Fault But Mine
「もし、聖書を持っているのにそれを読まなかったら地獄に落ちるだろうけど、そうなったとしても誰のせいでもない自分が悪いのだ」つまり、聖書を読みましょう!という歌です。
この曲を歌っているのはルシンダ・ウィリアムズという女性シンガーで、もう60才過ぎてかなりキャリアの長い人ですが、カントリー色の強い人でウィリー・ネルソンとの共演もあります。僕は彼女のSweet Old Worldという曲が好きです。
It’s Nobody’s Fault But Mine

いま聴いてもらったルシンダ・ウィリアムズとその前のトム・ウェイツほか、このアルバムにはデレク・トラックスとスーザン・テディスキー、シネイド・オコナー、リッキー・リー・ジョーンズなどが参加していますが、次は1944年結成、70年以上続いている伝統のゴスペル・グループのファイヴ・ブラインド・ボーイズ・アラバマ。内容は「母親のいない子供はつらい日々を過ごすことになる。父親がいても姉や兄弟がいてもやはり母親がいないと子供はつらい生活をしなければならない。誰かがやさしくしてくれても誰も母親の代わりにはなれないんだ」この歌はつらい思いをする子供たちがたくさんいるいまの時代にも通じる内容だと思います。
Mother’s Children Have A Hard Time

つぎのシネイド・オコナーは社会的な発言や宗教的な物議もいろいろあったり、自殺未遂をしたり・・と、音楽以外の話題も多い女性シンガーですが、僕はひとりのシンガーとして彼女の歌声が好きです。「トラブルはもうすぐ終わるだろう。悲しみも薄れて嫌な事はなくなるよ。悲しみは消えるだろう」
Trouble Will Soon Be Over

最後に再びトム・ウェイツ
曲は聖書とかキリスト教の知識がないとわからない歌詞です。サン・ハウス他この歌を歌っている人は結構います。タイトルは救世主ジョンということです。
John The Revelator