50年代ウエストコースト・ブルーズの悲運のピアノ・ブルーズマン、ロイ・ホーキンス
The Thrill Is Gone/Roy Hawkins (P-VINE PCD-3055)
ON AIR LIST
1.The Thrill Is Gone/B.B.King
2.The Thrill Is Gone/Roy Hawkins
3.Highway 59/Roy Hawkins
4.Why Do Everything Happen To Me/Roy Hawkins
5.Hawk Shuffle/Roy Hawkins
6.Blues All Around Me/Roy Hawkins
今日はまずこれを聴いてください。
1.The Thrill Is Gone/B.B.King
B.B.キングで大ヒットしたブルーズ”The Thrill Is Gone
でも、このオリジナルを作り歌ったのが今日聴いてもらうロイ・ホーキンスというピアノを弾くブルーズマンだということはあまり知られていません。B.B.キングはこの曲でグラミー賞を獲得して世界のBBとして羽ばたき、B.Bのステージでは必ず演奏され、B.B自身も「この曲が私を有名にしてくれた」と語った曲です。しかし、ロイ・ホーキンスは長くアルバムもリリースされず悲運のうちに人生を閉じました。オリジナルのロイ・ホーキンスは40年代から50年代に活躍したブルーズマンで”The Thrill Is Gone”はB.B.がヒットさせる19年前1951年にこの曲のオリジナルをリリースしました。
2.The Thrill Is Gone/Roy Hawkins
元々曲調がマイナーということもありますが、B.B.のカバーに比べると暗い感じがします。それはこのロイ・ホーキンスの持っている声がヘヴィでダークということもあります。
曲の内容は「ひどい目に合わされて来た女と別れて、いつの日かオマエは後悔するだろう。まだ未練はあるけどオレは自由になった。すべては終わったんだよ」ホーキンスとB.Bは多少歌詞が違うんですが、ホーキンスの方は未練とか辛かった思いが強い気がしますが、B.B.の方が別れて自由になったんだというアピールが強く僕は感じます。
今日聴いてもらうアルバムはThe Thrill Is Gone/Roy Hawkins”というアルバムです。
1949年から1955年まで約6年間のロイ・ホーキンスが売れていた当時のシングルを集めたものです。ロイ・ホーキンスはピアノ・ブルーズマンで40年代後半ウエストコースト、カルフォルニアのオークランドのクラブで歌っていたところをスカウトされて初めて録音したのが1948年。50年代に入ってモダン、RPMといった黒人レーベルに録音をはじめ、いまのThe Thrill Is Goneともうひとつ大きなヒット”Why Do Everything Happen To Me”を出してウエストコーストのブルーズ・シーンで有名に。後輩のレイ・チャールズ もかなり影響を受けています。
40年代後半というと同じピアノ・ブルーズのチャールズ・ブラウンやモダンブルーズギターの父、T.ボーン・ウォーカーがめちゃ売れていた時代でウエストコースト・ブルーズ花盛りの時代。このロイさんにもそのふたりの影響がありますが、そのT.ボーンがギターで特別参加している曲です。もうイントロから「ああ、T.Bone・・・」とわかります。
3.Highway 59/Roy Hawkins
めちゃくちゃT.ボーンのギターがいいですね。ホーキンスの歌がちょっとT.ボーン風になってるのがおもろいです。ダンサブルなジャンプ・ブルーズですが、この時代のスタジオ・ミュージシャンってみんなめっちゃ上手い。
次は1950年R&Bチャート2位まで上がったヒットですが、これはホーキンスのオリジナルではないです。実はこの曲のレコーディング直前にロイ・ホーキンスは交通事故にあって右腕が使えなくなってしまい、以降は代わりのピアニストがスタジオに来て録音をすることになります。それで次の曲が皮肉にも「どうしてオレにばっかいろんなことが起こるんだろう。寂しく、心は悲しみにあふれている。一日中変なことがたくさん起きる。まるでオレのやっていることがすべて悪いことのようだ。悪運がオレに襲いかかるのでオレはまためげてしまう」
すごく重いブルーズですが、チャートの2位まであがりました。
4.Why Do Everything Happen To Me/Roy Hawkins
まさにブルーズっていう感じの曲ですが、この曲がチャートの2位まであがったということは、この歌に共鳴する人たちがたくさんいたということです。つまり、なんでオレばっかりうまいこといかんのやろと思っていた黒人の人たちがいたんですね。さっき聴いてもらったダンサブルな曲でクラブで憂さを晴らすんだけど、実際生活に戻るとブルーなことばかりという人たちがたくさんいたんですね。
次はホーキンスが事故に遭う前、まだ右腕が使えた頃のインスト曲でこういう早い曲も弾けた人ですから辛かったでしょうね。
5.Hawk Shuffle/Roy Hawkins
ホーキンスはピアニストとして片腕が使えなくなっても曲をつくる力と歌が歌えたことで、その後も録音は続くんですが、だんだんとお酒に溺れてしまい、最後のレコーディングは1961年でそのあと音楽をやめて亡くなるまで家具屋で働いていたそうです。
亡くなったのは1974年。B.B.がThe Thrill Is Goneでグラミーを獲得した三年後です。聴いたんでしょうかね、B.B.ヴァージョンを。たぶん聴いたでしょうね。ラジオでも流れていたし・・・。どんな気持ちで聴いたんでしょうね。
6.Blues All Around Me/Roy Hawkins
ブルーなロイ・ホーキンスらしい曲「オレの家は墓場やでベッドは墓石、ベイビーすぐ帰ってきてくれんかな、オレのまわりはブルーズばっかや、めっちゃブルーでどうしたらええねん」
今日は才能がありながら不運にみまわれた50年代に活躍したブルーズマン、ロイ・ホーキンスを聴きました。