2017.01.27ON AIR

60年代ブリティッシュ・ブルーズロック vol.2

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ON AIR LIST
1.Driving Sideways/John Mayall & The Bluesbreakers
2.Oh Pretty Woman/John Mayall & The Bluesbreakers
3.Little By Little/John Mayall & The Bluesbreakers with Paul Batterfield
4.Ridin’ On The L And N/John Mayall & The Bluesbreakers with Paul Batterfield
5.I Can’t Quit You Baby/John Mayall & The Bluesbreakers

 

 

 

前回に引き続き60年代ブリティッシュブルーズのその2回目
ブリティッシュ・ブルーズ先駆けのジョン・メイオール・ブルーズブレイカーズに加入して名盤に素晴らしいブルーズギターを残したエリック・クラプトン。そしてクラプトン脱退後に加入したピーター・グリーンというクラプトンに劣らない優れたギタリストの加入。そのアルバム「ハードロード」もまた素晴らしくてブルーズブレイカーズはイギリスでトップのブルーズバンドになります。しかし、またすぐにピーター・グリーンも脱退。しかし、ジョン・メイオールは慌てず騒がずまたもうひとり腕利きのギタリスト、ミック・テイラーを連れてきます。ミック・テイラー・・そうのちにローリング・ストーンズのギタリストになるあのミック・テイラー。彼が19才でブレイカーズに入ったその一曲をまず。フレディ・キングのインストルメンタルのカバー。
1.Driving Sideways/John Mayall & The Bluesbreakers
ミック・テイラー19才。しかも1967年という時代を考えるとちょっと驚異です。次はアルバート・キングの有名なアルバム”Born Under A Bad Sign”からのカバーです
2.Oh Pretty Woman/John Mayall & The Bluesbreakers
ギター、いい音してますね。クラプトンだけやなくて60年代のイギリスにはピーター・グリーンもそうですが、ブルーズがうまいギタリストたくさんいたんですよ。
さて、ギタリストのことが話題になりがちなブルーズ・ブレイカーズですが、肝心のバンマスのジョン・メイオールはコロコロとギタリストが変ることにどう思っていたのかというと、メイオール自身もやりたいことがコロコロ変わる人で、変ると言うてもブルーズというルーツは変らないですが、ジャズ風のアルバムだしたり、カントリーブルース風の弾き語りやったり、ホーンセクション入れてR&B風にしたりとまあやりたいことがいろいろあって、いろいろやってしまう人なんですよ。
だから、メンバーが辞めていくことにもあまり執着ないというか、去る者は追わず的な人らしいです。いまも健在で83才。すごいことに1963年に結成されたブルーズブレイカーズはいまだに解散はしていない。

先週ON AIrしたブルーズブレイカーズのアルバム”Hard Road”のボーナス・トラックにアメリカの白人ブルーズマン、ポール・バターフィールドとの録音が4曲収録されてました。バターフィールドはアメリカでのメイオールみたいな人でブルーズバンドを取り仕切っていた第一人者。しかもシカゴで。
いろいろ調べたのですが、わからないのはなぜバターフィールドが1966年にロンドンにいたのかで・・自分のバンドでツアーに来ていたわけでもなさそうです。イギリスがブルーズで盛り上がっているので、個人的にわざわざロンドンに来たのでしょうか。自分もアメリカ白人でブルーズ・フリークですからイギリス白人のブルーズはどんなんやと来たんだと思います。

では、イギリスの白人ブルーズのボスとアメリカの白人ブルーズのボスの共演を聴いてください。ジュニア・ウエルズのカバーから。歌はふたりでうたってますが、ハーモニカはポール・バターフィールド
3.Little By Little/John Mayall & The Bluesbreakers with Paul Batterfield
お互いに存在感を譲らずみたいなところがいいですね。
この時お互いにどう思ったんでしょうかね・・・お互いに白人のブルーズのファウンダー創設者として志は同じですからね。
バターフィールド・ブルーズバンドは64年に結成されて65年に最初のアルバムがリリースされてますから、イギリスにいてブルーズにアンテナを張っているメイオールが知らないわけはないです。しかもそのファースト・アルバムの評価はすごく高かったし、ボブ・ディランのバックをニューポートのフォーク・フェスでバックもやってますから、そういうニュースは入ってると思います。
もう一曲
4.Ridin’ On The L And N/John Mayall & The Bluesbreakers with Paul Batterfield
1960年代の半ばに海を隔ててお互い白人で、黒人ブルーズを好きになった者同志がセッションしたものが、こうして音が残っているのがいいですね。
最後にもう一曲アルバム「Crusdade」からオーティス・ラッシュのカバーですが、ミック・テイラーのギターソロもいいですし、ジョン・メイオールの歌もじっくり歌っていて落ち着いてます。
5.I Can’t Quit You Baby/John Mayall & The Bluesbreakers
ミック・テイラーはブルーズ・ブレイカーズを69年に脱退。ローリング・ストーンズに加入しますが、70年代半ばまでのストーンズを代表するアルバム「Let It Bleed」「Sticky Fingers」「メイン・ストリームのならず者」などは間違いなくミック・テイラーのギターの功績が大きいです。

2017.01.20 ON AIR

激動の60年代ブリティッシュ・ブルーズロック vol.1

Alexis Koner(Blues Incorporated)

Alexis Koner(Blues Incorporated)

Bluesbreakers With Eric Clapton/John Mayall & The Blues Breakers

Bluesbreakers With Eric Clapton/John Mayall & The Blues Breakers

Hard Road//John Mayall & The Blues Breakers

Hard Road//John Mayall & The Blues Breakers

 

ON AIR LIST
1.She Fooled Me/Blues Incorporated
2.Hideaway/John Mayall & The Blues Breakers
3.All Your Love/John Mayall & The Blues Breakers
4.Someday After A While (You’ll Be Sorry)/John Mayall & The Blues Breakers
5.Looking Back/John Mayall & The Bluesbreakers

昨年末のローリング・ストーンズのブルーズカバー・アルバム”Blue And Lonesome”のリリースから、僕の周りでは再び60年代のブリティッシュ・ブルーズのことがよく話題になる昨今です。それで60年代ブリティッシュ・ブルーズロックをしばらく特集してみようかなと思ってます。

いつも60年代ブリティッシュ・ブルーズロックの話となるとローリング・ストーンズやヤードバーズあたりから話を始める人が多いのですが、実はイギリスのブルーズの父、またはヨーロッパのブルーズのゴッドファーザーと呼ばれているアレクシス・コーナーを忘れてはいけない。
イギリスのブルーズの先駆けとして有名な「ブルーズ・インコーポレイテッド」というバンドをつくり、そこにはのちのストーンズのドラムになるチャーリー・ワッツやクリームのドラムになるジンジャー・ベイカー、ベースのジャック・ブルースが参加していました。そして、彼が作った“イーリング・ジャズ・クラブ”というクラブには夜な夜なミック・ジャガーやキース・リチャーズが現れてはセッションし、そんな中からローリング・ストーンズはじめイギリスのブルーズ好きの若者が育っていきました。つまり、ブルーズという音楽を演奏する土台のようなものをアレクシス・コーナーは作ったわけです。
She Fooled Me/Blues Incorporated

アレクシス・コーナーのブルーズに対する情熱を受け継いでいったのが、ジョン・メイオールだと思う。ジョン・メイオール&ブルーズブレイカーズはイギリスのブルーズの広まりとその後のブルーズロックの誕生にとても大きな役割を果たしたバンドでした。66年リリース、ジョン・メイオール&ブルーズブレイカーズの代表的なアルバム”Bluesbreakers With Eric Clapton”より一曲。
エリック・クラプトン21才のギター・プレイです。
Hideaway/John Mayall & The Blues Breakers
オリジナルは61年リリースのフレディ・キングですが、当時のクラプトンのアイドルは間違いなくフレディだったでしょう。

アルバム”Bluesbreakers With Eric Clapton”は1966年のリリースで、実はその年にシカゴのブルーズマンたちがイギリスに公演に行ってるのですが、その中にオーティス・ラッシュもいました。ジョン・メイオールやクラプトンはその時、ラッシュの演奏聞いたのかも知れません。次はそのオーティス・ラッシュのカバーです。クラプトンは21才と思えないキレキレのギターを弾いてます。
All Your Love/John Mayall & The Blues Breakers

クラプトンがブルース・ブレイカーズにいたのはわずか半年くらいだったのですが、この残されたアルバムはブリティッシュ・ブルーズを代表するアルバムとして聞き継がれるものになりました。そして、クラプトンのあとにギターで参加したのがこれまた才能あふれたピーター・グリーン。まだ20才でした。彼が参加した”Hard Road”というアルバムも優れた一枚です。
Someday After A While (You’ll Be Sorry)/John Mayall & The Blues Breakers
ピーター・グリーンの鋭いギター・ワークが気持ちいいですね。

ヤードバーズ時代に「クラプトンは神だ」と言ったロンドンの若者たちがいたそうですが、ブルーズ・ギターリストという観点から聴くとピーター・グリーンの方がブルーズの匂いがあり、ピーターの方が好きだという人も多いです。僕の印象で言うとクラプトンは非常にきれいな、美しいブルーズギターを弾く人で、ピーターはよりオーセンティックなディープなブルーズギターを弾く人です。
もう一曲ピーター在籍のブルーズブレイカーズを。
Looking Back/John Mayall & The Bluesbreakers

2017.01.13 ONAIR

「50年代半ば充実していくB.B.キングのブルーズ」
The Complete RPM/Kent Recording Box 1950-1965 [CD 4: Sweet Little Angel 〈RPM 451 – Kent 307〉]
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ON AIR LIST
1.Crying Won’t Help You/B.B.King
2.Sweet Little Angel/B.B.King
3.On My Word Of Honor/B.B.King
4.I Need You So Bad/B.B.King
5.Troubles Troubles Troubles/B.B.King

 

 

 

 

2015年12月にリリースされたB.B.キングの1950年から65年の15年間に残したRPM&ケントレーベルの音源17組CDボックスから、今日は”Sweet Little Angel”とタイトルされた4枚目を聴きます。このアルバムの頃、デビューから5年が過ぎてB.B.は30才から32才。心技体とも充実の時期。
まずは先達タンパ・レッドのカバーから「どこへ行こうが、何をしょうが、何を言おうが、自分撒いた種は自分で刈るんだよ。もう泣いたってどうしょうもないよ」相手の女にずっとひどい目に合わされて今更泣いたってあかんよと女を突き放したブルーズ
1.Crying Won’t Help You/B.B.King
最後に「ホォ!」って声が出たB.B.ですが、やはり気持ちのノッたいいテイクだったんでしょう。ファルセットの自然な使い方と言い、情感の盛り上がりといいやはり並の歌手ではないです。デビューの頃はT.ボーン・ウォーカーの影響を強くうかがわせたギターも、チョーキングを巧みにまじえた自分のスタイルをほぼ確立した時期で歌、ギターともに素晴らしいです。

次はB.B.を代表する1956年の大ヒット曲です
「俺にはかわいい天使がおるんよ。彼女が羽根を広げるのを見るんが好きなんや。その羽で包まれると、めっちゃ幸せなんよ。彼女に5セントくれへんか言うたら、25ドルもくれたんや。彼女と別れたら俺は死んでまうよ。もう愛してへんって言うんやったらその理由を言うてくれや」羽根を広げるというところを妄想するとちょっとセクシーな意味なのかな・・ともおっさんは思います。
Sweet Little Angel/B.B.King
看板曲となったこの曲をB.B.は生涯大切に歌っていたと思います。グラミーを穫った”The Thrill Is Gone”もそうですが、B.B.は自分を有名にしてくれた曲、自分の世界を広げてくれたヒット曲に対して心からありがたいと思っていて大切にしていました。

次はB.B.キングがブルーズ・シンガーとして素晴らしいだけでなく、普通にポップ・シンガーとしても成功しただろうと思える彼の歌唱力がわかる曲です。
On My Word Of Honor/B.B.King
レコード会社は歌唱力のあるB.B.をバラード・シンガーとして売ろうとしたフシがありますが、そういう要求を受け入れながらも自分のブルーズを失わなかったところがミュージシャンとして素晴らしいところです。それにしても下手に歌うとただの陳腐なバラードになってしまうような曲を、彼はソウルフルに自分の想いを込めて立派に歌っています。

次の曲、僕はマジック・サムのアルバム「ウエストサイド・ソウル」で聴いたのが先やったと記憶しています。でも、B.B.なんですね最初は。これ歌ったことあるんですが難しい曲です。B.Bは意外とサラっと歌ってます。マジック・サムはもうすこし熱い感じで歌ってます。どっちもいいです。
I Need You So Bad/B.B.King
この50年代半ばにB.Bはヒット曲を出しながら、与えられた曲もこなし、ツアーも毎日のように繰り返していて本当に忙しい時期だったと思いますが、あとから見るとこの時期に末永くブルーズの王者として君臨する蓄積を獲得していたんだとわかります。

「トラブル、トラブル、トラブル・・ああこの世の中はやっかいなことばっかや。時々思うんやけどこれから先オレに何が起こるんやろ」いいことばかりではなく、ビジネス的なことや、いいメンバーの獲得、そして離婚も何度かしたB.B.もトラブルはたくさんあったのでした。
Troubles Troubles Troubles/B.B.King

またこの素晴らしい音源が詰まったボックスを聴きたいと思います!
I Miss You,B.B.

2017.01.06 ON AIR

HAPPY NEW YEAR  2017
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ON AIR LIST
1.Mannish Boy/Muddy Waters
2.How Blue Can You Get/B.B.King
3.Rocket 88/The James Cotton Band
4.Party Girl /T.Bone Walker
5.Mama He Treats Your Daughter Mean/Ruth Brown

あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします。
新年から直球ですが、正月のテレビってほんとに面白くないですよね。たぶん45年前もそんなことを言ってたんだと思います。その45年前に僕の人生を揺るがす大きなことがテレビでありました。
NHK・TVで「いまのシカゴ黒人とブルーズ」みたいな番組を新聞でみつけて、まあ暇つぶしに見たわけです。それはイギリスのテレビ局BBCが作った番組だったんですが、ドキュメント番組でいまは「シカゴ・ブルーズ」というタイトルでDVDで発売されてます。その番組は社会、政治的にその時代のアメリカ黒人の現状をリポートするものでしたが、途中で急にシカゴのクラブのシーンになりマディ・ウォーターズが歌っているシーンが出てきました。その時、それまで好きだったロックでは感じたことのない衝動が自分の心の中で生まれました。でも、それを言葉で言い表すのは45年経ったいまでも難しいものです。そして、しばらくするとバディ・ガイ、ジュニア・ウエルズ、 J.B.ハットーなどが登場しブルーズマンが歌うシーンを初めてしっかり見ました。
それがブルーズに惹かれた最初のきっかけでした。それからブルーズのレコードを探し始め、自分でも歌いたいという気持ちになったのでした。
正月になるといつもその時のことを想い出します。
今年も年の最初はそのマディをガツンと聴いて「ブルーズ初め」にします。
1955年ハーモニカ、リトル・ウォルター、ギター、ジミー・ロジャース、ドラム、フランシス・クレイ、ベース、ウィリー・ディクソン
鉄壁のシカゴ・ブルーズ!
Mannish Boy/Muddy Waters

それまでロックを歌っていた自分の音楽的な柱をブルーズにするきっかけがマディならブルーズと歩む運命を決定的にしたのがB.B.キングでした。初めてマディを聴いてブルーズの底なし沼に足を突っ込んでたった1年でB.B.キングのコンサートの前座に出ないかと話が来たのは、いまでも夢のようです。最後に一緒にセッションにも誘われたその時のB.B.と彼のバンドから受けた音楽的な衝撃は、僕の人生を変えてしまうのに充分なインパクトでした。前座をやらせてもらった前の年1971年にリリースされたライヴ・アルバム”Live In Cook County Jail”から
How Blue Can You Get/B.B.King

アメリカに行ってブルーズをもっと生で聴きたいという欲求が高まって、レコーディングした金やライヴの金を貯めて初めてアメリカへ・・1975年。その時ロスで観たのが、当時バリバリのファンク・ブルーズをやっていたジェイムズ・コットン。
1974年リリース、ファンク・ブルーズの名盤”100%コットン”から
Rocket 88/The James Cotton Band

初めてアメリカに行った同じ75年にT.ボーン・ウォーカーは亡くなっていて残念ながら彼のライヴを見ることはできなかった。
そのTボーンの1968年リリース。 ギターにメル・ブラウン、ドラムにポール・ハンフリーなど腕達者なバックが入りアルバムの”Funky Town”というタイトルどおりファンキーなテイスト。30年代から活動しているT.ボーンが60年代終わりの16ビート・ファンキー・グルーヴにうまくハマっているところが素晴らしい。
Party Girl /T.Bone Walker

初めてのアメリカで黒人街に行くのは最初怖かったのですが、どうしても観たいライヴがほとんど黒人街なので勇気を奮い立たせて行きました。すると、ストリートを歩くのは怖い時もあったけど、クラブに入るとお店の人とか話しかけてくる人が親切で優しくて、僕は白人のクラブにいるより居心地は良かった。そんなロスの黒人街ワッツのクラブで観たルース・ブラウンは圧倒的でした。その数年後に彼女にインタビューできたのもいい思い出です。
Mama He Treats Your Daughter Mean/Ruth Brown

今年もよろしくです。今回は新年のご挨拶がてら僕がブルーズを好きになった頃の曲を聴きました。
Hey!Hey!The Blues Is Alright!