2020.09.25 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.24
戦後エレクトリック・シカゴブルーズvol.4
サニーボーイ・ウィリアムスン2 vol.2

The Real Folk Blues/Sonny Boy Williamson (Chess/MCA MVCM-22021)

Bummer Road/Sonny Boy Williamson(Chess/Universal UiCY-93316)

King Biscuit Time/Sonny Boy Williamson(Arhoolie/P-Vine PCD-24117)

The Sky Is Crying/Elmore James (Sphere/P-Vine PCD-23790)

ON AIR LIST
1.One Way Out/Sonny Boy Williamson
2.One Way Out/Elmore James
3.Unseen Eye/Sonny Boy Williamson
4.Pontiac Blues/Sonny Boy Williamson
5.Mighty Long Time/Sonny Boy Williamson

前回に引き続きサニーボーイ・ウィリアムスン(アレック・ライス・ミラー)から聞いてみましょう。最初の曲は”One Way Out”
僕はロックのオールマン・ブラザーズがカバ-しているのを最初に聴きました。黒人ブルーズに入るすこし前です。サニーボーイを知ってオリジナルはサニーボーイかと思っていたのですが、実はそれよりほんの少し前にエルモア・ジェイムズがレコーディングしています。サニーボーイがチェスレコードで録音したのが1961年9月。エルモアは同じ年の2月か3月にスフィア・レコードで録音してますからエルモアの方が少し早いのですが、作ったのは誰かとクレジットを見るとエルモアの方はエルモア・ジェイムズになっていてサニーボーイの方はサニーボーイとエルモアと両方名前がクレジットされています。たぶん、これはエルモアの作品だと思います。
歌の内容がですね、旦那が家におらんうちにこの男はその嫁さんと不倫濃厚接触するためにその家におったんですね。するとそこへ旦那が帰ってきてしもた。隠れたんですが逃げるにも逃げられへんがなという歌です。
1.One Way Out/Sonny Boy Williamson
サニーボーイとエルモアは若い頃からミシシッピのデルタ一帯で旅をしていた仲なので、たぶんお互いの曲を自分のレパートリーにしたり、歌詞の一部を自分の歌で使ったりということはよくあったんでしょう。実はそこにロバート・ジョンソンも加わって3人で旅っていうのもあったらしいのですが、一緒に旅したいようなしたくないような3人ですが・・・めちゃ怖いですよね。
エルモアのOne Way Outも聞いてみましょうか。エルモアの”The Sky Is Crying”という名盤に収録されているのですが、エルモアはこんな感じです。
2.One Way Out/Elmore James
同じ曲とは思えないですが、リズムもエルモアはシャッフルでやっているし、歌がもうまったく違います。この歌もすごいです。エルモアというと何かとスライドギターと言われますが、こういう普通の押弦スタイルだと意外とB.B.King スタイルのモダンな感じで弾くんですが、こういうスタイルも上手いです。

次は気怠いムードで始まるサニーボーイのハーモニカが本当に素晴らしい。バックのギターはロバートJr.ロックウッドとルーサー・タッカーですが、曲全体に彩りを添えるロックウッドのモダンなギターは見事です。彼のギターでこの曲は更にグレードアップした感じです。ドラム、フレッド・ビロウ、ピアノがオーティス・スパン、ベースがウィリー・ディクソン。鉄壁のチェスレコードのレコーディング・メンバー。1957年、時代的にブルーズ全体が下降していく中、この曲はエレクトリック・シカゴブルーズが円熟した、その極みのサウンドを聞かせてくれます。
「自分のやることには気をつけた方がいいよ。見えない目がオマエを見続けてるいるからな」といかにもサニーボーイらしい思わせぶりな内容です。
3.Unseen Eye/Sonny Boy Williamson
ディープだけどモダンな絶妙の味わい。

では、以前このブルーズスタンダード曲集のメンフィス編でサニーボーイの”Eyesight To The Blind”をOn Airしましたが、シカゴに出てくる前に南部に居た頃の彼の名曲がまだあるので聞いてみましょう。
車をネタにしたブルーズの曲はたくさんあります。次の「ポンティアック・ブルーズ」は50年代最初に流行った車でキャデラックなんかより少し安い車で黒人に人気のあった車種です。「あんたのことも好きやけどポンティアックには首ったけ」という彼女を乗せてドライヴする話で、最後にハイウェイ49をぶっ飛ばすと彼女が「あんた、すべてが最高やわ」というその光景が目に浮かぶような歌です。
4.Pontiac Blues/Sonny Boy Williamson
今日の最後は大好きな曲で、ジェイムズ・コットンがカバーしているのを以前ON AIRしました。
「本当に長い時間が過ぎた。オレがあいつと会ってから長い時間過ぎた。眠れない夜も長く続いた。長い時が過ぎた。部屋のカーペットも色褪せてしまった。もし、あいつが戻ってきたら、オレはもう離しはしない」
5.Mighty Long Time/Sonny Boy Williamson
サニーボーイ・ウィリアムスンはバンドのメンバーにギャラを払わないでひとり占めして逃げてしまうようなひどい人でしたが、彼の曲、歌、ハーモニカはやはりブルーズそのもので、ブルーズという音楽の素晴らしさを味わうことができます。サニーボーイは酔っぱらってスタジオに来て「ウィスキーはないのか」と言って、その場で適当に歌を作ってしまう人でした。生きていることがブルーズそのものである彼がわざわざ曲を作る時間をもうける必要などなかったのでしょう。言葉を発してハーモニカを吹けばそれはもうブルーズだったのです。

2020.09.18 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.23
戦後エレクトリック・シカゴブルーズvol.4
サニーボーイ・ウィリアムスン2 vol.1 

Sonny Boy Williamson Sings Down And Out Blues/Sonny Boy Williamson (Chess/MCA MVCM-22006)

The Real Folk Blues/Sonny Boy Williamson(Chess/MCA MVCM-22021)

More Real Folk Blues/Sonny Boy Williamson(Chess/MCA MVCM-22022)

 

ON AIR LIST
1.Don’t Star Me Talkin’/Sonny Boy Williamson
2.Cross My Heart/Sonny Boy Williamson
3.Help Me/Sonny Boy Williamson
4.Nine Below Zero/Sonny Boy Williamson

サニー・ボーイ・ウィリアムスンという名前が出るたびに毎回説明してますが、ブルーズ界には同じサニー・ボーイ・ウィリアムスンという名前のブルーズマンがふたりいます。
しかもふたりともハーモニカ・プレイヤーだからややこしい。それで便宜上サニー・ボーイ・ウィリアムスン1と2と呼んでいます。戦前にシカゴで活躍したサニーボーイ・ウィリアムスン(本名ジョン・リー・ウィリアムソン)が本名ジョン・リー・ウィリアムソン1で、以前このブルーズ・スタンダード曲集でON AIRした””Good Morning Little School Girl”が代表曲。
今日聞くのは戦後になってシカゴで活躍した本名アレック”ライスミラー”ウィリアムスン、サニーボーイ2の方です。

このサニーボーイ2の方はずっとアーカンソー州のヘレナを中心に南部で活動していてシカゴに来たのは1955年くらいです。彼はサニーボーイ・ウィリアムスンというブルーズマンがすでにシカゴで売れていることを知ってわざと名前を同じにして南部で稼いでいたのですが、1948年にサニーボーイ1がシカゴで殺されて死んだのでそれでシカゴに出てきたのではないかと思われます。歌もハーモニカもまったく芸風が違うのですが、まあ名前をパックているから会いたくはなかったでしょうね。ところがこの2の方が売れて有名になったので現在ではサニーボーイというとこの2の方を指すことが多いです。
まずは一曲、これはもう誰もが認めるブルーズスタンダード曲でサニーボーイの最も売れた曲でもあります。「オレにしゃべらせんでくれよ。知ってること全部バラしてしまうからな」まあ脅しみたいなブルーズですが、街で女たちが浮気したり金借りたりしてるの知ってるよみたいな歌です。オレにしゃべらせんなよって怖いです。
1.Don’t Star Me Talkin’/Sonny Boy Williamson
この曲がシカゴに来てチェスレコードで最初に録音した曲で、ギターがジミー・ロジャースとマディ・ウォーターズ、ベースにウィリー・ディスクソン、ピアノにオーティス・スパン、ドラムにフレッド・ビロウと当時のシカゴブルーズの最高のメンバーで、南部で超人気のサニーボーイを迎えたわけです。1955年。すでにヒットを出してシカゴの大物になっているマディがバックを務めるくらいですから。
この曲は”Down And Out Blues”というアルバムに収録されていますが、このアルバムで僕がイチオシでブルーズ・スタンダードに選びたいのが次の”Cross My Heart”
イントロのハーモニカとギターの絡みが生み出す緊張感が素晴らしいです。エレクトリック・シカゴブルーズが完全に成熟したサウンドとグルーヴ作り出した名曲です。ギターはロバート・Jr.ロックウッドとルーサー・タッカー。ロックウッドのイントロと歌の合間のオブリガードは名人芸です。
2.Cross My Heart/Sonny Boy Williamson
戦後のシカゴ・ブルーズはリトル・ウォルターがハーモニカの音をアンプに入れてエレクトリック化して成功したので、エレクトリック・ハーモニカのプレイヤーが増えたのですが、サニーボーイはずっと歌のマイクで吹く生音のハーモニカ・プレイヤーでした。エレクトリックしても個性は出るのですが、この生音こそが僕はブルーズ・ハーモニカの神髄ではないかと思ってます。
あとで番組のHPを見てもらうと分かりますが、このアルバム”Down And Out Blues”のジャケットがホームレスっぽいおっさんがストリートで横たわっている写真なのですが、このおっさんはサニーボーイではありません。このおっさんをサニーボーイと思ってこのアルバムを買った後輩がいまして、僕に「ホトケさん、サニーボーイってホームレスやったんですね」って電話してきたことがありました。インパクトの強いジャケットです。
次の曲聞いて「これ、ブッカーTとMG’sのグリーン・オニオンやん」って思った人、正解です。MG’sのインスト曲”グリーン・オニオン”が大ヒットしたのが1962年で、次のサニーボーイの”Help Me”が翌年63年リリースで、しかもオルガンを使ったサウンドもリフのパターンも同じですからパクったと言われて仕方ないです。でも、サニーボーイの強い個性のある歌があるので僕はグリーン・オニオンより10倍くらい好きですけど。
「ひとりではなんもできへんねん、そやから助けてくれよ。もし、助けてくれんかったら他の女に手出してしまうで」とこれまた脅しみたいな歌ですが、おもしろいです
3.Help Me/Sonny Boy Williamson
サニーボーイは40年代にアーカンソー州のヘレナにあるKFFAというラジオ局で「King Biscuit Time」という番組を任されて、この番組が南部一帯ですごい人気になりました。B.B.キングはじめジェイムズ・コットンなど多くのブルーズマンが少年時代にこの番組を聞いていたそうです。だからすごい人なんですけどメンバーにギャラ渡さないで持ち逃げしたり、大酒飲みでホラ吹きで、わけのわからん人やったらしいです。
次の曲名の”Nine Below Zero”は零下9度という意味。「お金も愛もすべてオマエにあげたのに、オマエは他の男とできてしもてオレを零下9度の外に追い出そうとする。めっちゃ惨めや」ブルーズの中のブルーズみたいな歌です。
4.Nine Below Zero/Sonny Boy Williamson
ミディアムテンポのシャッフルリズムが始まった途端に出てくる音がもう「わーっブルーズ」いう感じで、語りのような歌というか嘆きのような歌とそのあとのハーモニカとそれにからむルーサー・タッカーとロックウッドのバックギターが醸し出すすべてがブルーズです。
僕はハーモニカを吹くブルーズマンの中ではこのサニーボーイがいちばん好きなので、カバーして歌いたい曲がたくさんあるのですがなんとも言えない語りのような歌のような独特の歌の印象が強過ぎて難しいです。
まだブルーズスタンダードの曲として選びたい曲があるので来週もサニーボーイです。

2020.09.11 ON AIR

踊らずにいられないリトル・リチャードのライヴ盤

Cast A Long Shadow/Little Richard(BSMF-7610)

ON AIR LIST
1.Lucille/Little Richard
2.Tutti Frutti/Little Richard
3.Send Me Some Lovin’i/Little Richard
4.Long Tall Sallyi/Little Richard
5.Good Golly Miss Molly/Little Richard
6.Whole Lotta Shakin’ Goin’ On/Little Richard

R&Rのパイオニアと言えばチャック・ベリーとリトル・リチャードですが、そのリトル・リチャードのライヴ盤”Little Richard’s Greatest Hits”とスタジオ盤”The Explosive Little Richard”の2イン1のアルバムが日本のBSMFレコードから”Cast A Long Shadow”というタイトルで7/22にリリースされました。今日はそのライヴアルバムの方を聞きます。
エピックレコードの傘下のオーケー・レーベルからこのライヴ盤がリリースされた1967年頃は、R&Rのリバイバル・ブームが始まりリトル・リチャード、チャック・ベリー、ボ・ディドリー、ファッツ・ドミノたちが一緒にコンサートもやった時代でした。音楽的にはもうリトル・リチャードたちの50年代の音楽は昔の音楽という時代でした。でも、60年代初期にはイギリスでデビュー直前のビートルズとツアーをやったり、ライヴはずっと続けていてアルバムもリリースはしていましたが、ヒット曲は出ませんでした。
今日聴くライヴ音源はコンサートとかクラブの録音ではなく、スタジオにファンを招いて録音したようです。
本当はアルバムを最初から最後まで全曲聞いてもらってリトル・リチャードのライヴを味わってもらいたいところですが、それはアルバムを買ってください。
最初に”Welcome Ok Club”とMCが言ってますが、これはオーケーのスタジオをクラブに見立てて言ってるのだと思います。
1.Lucille/Little Richard
さすがリトル・リチャード、のっけから突っ走ってます。オリジナルはちょうどこのライヴアルバムの10年前1957年。R&Bチャート1位、ポップチャート21位。リトル・リチャードを代表する一曲です。オリジナルのスタジオ録音よりテンポが早いのですが、スタジオ盤ではこのリズムのリフがユニゾンで鳴っているため低音のヘヴィな感じが最高です。
ビートルズのポール・マッカートニーはリトル・リチャード好きで有名ですが、ポールはビートルズでも自分のバンド「ウイングス」でもそれからソロでもこの歌を歌っています。余っ程好きなんでしょうね。
次はリトル・リチャードの最初のヒット、1955年リリースでR&Bチャート2位ポップで29位。この曲がR&Rの夜明けの一曲でこれ以降57年にかけて彼は”Long Tall Sally,” “Rip It Up,” “The Girl Can’t Help It,”さっきの “Lucille,” そして”Jenny Jenny.とヒットを連発し、それらの曲はR&Rの遺産としていまも歌い継がれています。
2.Tutti Frutti/Little Richard

僕の深読みですが、なぜこの67年にこういうライヴ・アルバムを出したのかと思うに、R&Rのブームはとっくに去っていたのでたぶんレコード会社は彼をどうプロデュースしていいのかわからなかったのだと思います。それでとりあえず昔のヒット曲を歌っているライヴ盤をリリースしょうということになったのだと思います。67年というとビートルズが名盤と言われる「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」をリリースし、ジミ・ヘンドリックスがデビューして「Are You Experienced?」と続けて「Axis: Bold As Love」を発表、クリームも二枚目の「カラフル・クリーム」をリリース。サイケデリック・ロックそしてニューロックと呼ばれる時代に入っていました。黒人音楽はアーサー・コンレイの”Sweet Soul Music”という曲がヒットしたようにソウル・ミュージックが全盛になり、アレサの”I Never Loved a Man the Way I love You/あなただけを愛して”それからジェイムズ・ブラウンの”Cold Sweat”がリリースされてファンク・ミュージックの進撃も始まる頃。
そういう音楽的な状況を考えると「ロックンロールの王様」という大看板を持ってしまっているリトル・リチャードをどう売っていこうかというのは難しいところです。少しソウルっぽい曲を歌ったこともあるのですが、本人がそういうのを好きではなかったようです。
歌唱力は抜群にあり次の曲なんかも個性的ないい歌を聞かせてくれているのですが、67年ではこのスタイルはオールディズの扱いになります。でも、そんなこと関係なく素晴らしいです。
3.Send Me Some Lovin’i/Little Richard
いまのがこのライヴアルバムで唯一のスローの曲です。あとは全部アップのダンスナンバーです
次の歌なんかライヴで聞いたらもう踊るしかないでしょう。これもビートルズがカバーしていたR&Rの名曲です。
4.Long Tall Sally/Little Richard
もうすごい声です。グレート・ビッグ・ヴォイスです。
ずっと聞くとわかるのですが、サックスとかギターのソロがほとんどありません。全部自分のピアノか歌で始まって歌で終わるという徹底の仕方もすごいです。
次の曲はCCRのジョン・フォガティがカバーしていて、それもまた素晴らしいのですが、リトル・リチャードの歌が始まった途端のサァーッと世界が開けるようなインパクトはすごいです。
普通の歌手じゃないです。
5.Good Golly Miss Molly/Little Richard

5月9日に87才で亡くなってしまったリトル・リチャードですが、こうやって聞いてみると見事にワン・アンド・オンリーな存在です。聞く者の心を奮い立たせる彼の歌は熱狂と興奮の喜びを与えてくれて、彼がポール・マッカートニーやジョン・フォガティ、オーティス・レディングなど後進のミュージシャンに与えた影響は計り知れません。R&Rという呼ばれ方でひとくくりにされていますが、彼のようなR&Rを作った人は彼以外にいません。
次の曲は白人のR&Rシンガー、ジェリー・リー・ルイスで有名になりましたが、もともとはブルーズの女性シンガー、ビッグ・メイベルが歌ったものです。リトル・リチャードはまるで自分のオリジナルのように歌っています。
ライヴは佳境でめちゃ盛り上がってます。
6.Whole Lotta Shakin’ Goin’ On/Little Richard

リトル・リチャードは同性愛者だったのですが、その事をたぶんいちばん最初にカミングアウトしたミュージシャンだったと思います。いつも自分の音楽に誇りをもった立派なミュージシャンでした。
僕は20代の中頃、これをカセットでもらってすごく大切に聞いてたのですが、ツアー最中にどこかでなくしまして、そのあとアルバムを手に入れたのですがそれも知合いのブルーズ・バーに貸したらなくなってしまいまして・・だから自分にとってはもうすごく嬉しい今回のリリースです。

“Cast A Long Shadow”と言うタイトルで日本のBSMFレコードからリリースされています。興味のある方はあとでこの番組のHPを見て参考にしてください。いまなら手に入ると思います。

2020.09.04 ON AIR

モダン・ゴスペル・カルテットの素晴らしさvol.2

They Sing Praises (Legacy/Columbia CK 67007)

They Sing Praises (Legacy/Columbia CK 67007)

The Gospel Train Is Coming (MCA VICTOR MVCE-24003)

The Gospel Train Is Coming (MCA VICTOR MVCE-24003)

The Gospel Sound Of Sprit Feel/ 入門ゴスペル・サウンド (P-Vine UPCD-57)

The Gospel Sound Of Sprit Feel/ 入門ゴスペル・サウンド (P-Vine UPCD-57)

ON AIR LIST
1.Prayer Wheel/The Dixie Hummingbirds
2.In the Morning/The Dixie Hummingbirds
3.One Day/The Angelic Gospel Singers And The Dixie Hummingbirds
4.Sinner Man/Julius Cheeks and The Sensational Nightingales

先週のソウル・スターラズはじめゴスペル・カルテットの歴史上には素晴らしいグループがたくさんあるのですが、今日最初のグループは「The Dixie Hummingbirds」1928年にサウスキャロライナで高校生のジェイムズ・デイヴィスがクラスメイトを誘って結成されました。この高校生でゴスペルカルテットを結成というのが多いのですが、放課後の部活みたいな感覚でしょうか。まあ、ブルーズなんか歌うよりゴスペルの方が親の許可も出るだろうし、近所の人たちも「神様の歌を歌っているえらい子たちだね」と褒めてくれそうだ。
最初は「ステェアリング・ハイスクール・カルテット」という名前だったのが、自由にどこにでも飛び回れる鳥のようにという想いを込めて「ディキシー・ハミングバーズ」と改名しました。
ハミングバードはハチドリのことですね。鳥の中でいちばん小さい鳥と言われていて、蜂のようにブーンブーンって羽根の音を立てるのでハチドリと呼ばれてます。英語のハミングはみなさん知ってように口を閉じて「ムー」って歌うことですが、欧米では蜂の羽音ではなくハミングに聴こえるんでしょうね。ディキシーはアメリカンの南部の州のことをディキシー、ディキシーランドと呼びます。「ディキシーランド・ジャズ」と呼ばれるジャズを知っている方もいると思います。このディキシーという言葉が最近の人種差別反対運動の「ブラック・ライヴズ・マター」の中で使えなくなりました。元々ディキシーランドというのはテキサスやルイジアナなど南部の州のことを指す言葉で、僕なんかはすごくいい愛称だと思っていたのですが、南部の州が黒人奴隷制存続を主張しアメリカ連合国を作ってそれが南北戦争につながったことから、人種差別を想い出させるとして最近使えなくなりました。カントリー・ミュージックのディキシー・チックスというグループも「チックス」と名前を変えてしまいました。そうなるとこのディキシー・ハミングバーズの名前はどうなるんでしょう。ただのハミングバーズになるんでしょうか。
「The Dixie Humingbirds」にはアイラ・タッカーというゴスペルカルテット界の屈指のリード・シンガーがいたのですが、そのアイラの歌がゴスペルなのに僕にはソウルみたいに聴こえた一曲です。
1.Prayer Wheel/The Dixie Hummingbirds
曲の最後の方はソウルのオーティス・レディングやウイルソン・ピケットを聞いているのと同じような高揚感を感じます。彼らのライヴはテンションが高くて聴衆が熱狂して失神するということがよくあったそうですが納得の歌唱です。
いまの曲はブルーズっぽいテイストがあり、ブルーズシンガーのボビー・ブランドもアイラ・タッカーの影響を受けたというのがなんとなくわかります。
もう一曲。
「朝、暗い雲が消え去ってあなたに会えるだろう。そしてこんにちはと言い、川に降りていき、私たちは新しく復活する。朝早くに」
2.In the Morning/The Dixie Hummingbirds
この曲のようにバックにギター、ベース、ドラムが付いてしまうともうR&Bですね。歌詞のYouが神様を表していますが、これをShe(彼女)にしたら本当にR&Bです。アイラ・タッカーの歌は強力です。2分32秒で終わりましたが5分くらいは聞きたいです。きっとライヴではガンガンに盛り上がるんだと思います。
アイラ・タッカーは12才から歌い始めているのですが、家が貧しくてお母さんが靴のセールスをして生計を立てていました。その母から与えられた見本の靴(見本の靴は片足しかない)を左右違う靴を履いて学校に行ってたそうです。でも、アイラは「恥ずかしいなんて思わなかった」と言ってます。そして、子供の頃からいろんな家を一軒一軒まわって”Amazing Grace”などを歌ってお金をもらっていました。彼の近所には年取った盲目のブラインド・シミーというブルーズシンガーがいてその人の世話もしていたそうです。アイラはそのシミーのことを「最高のブルーズシンガー」と言ってます。この話でゴスペルとブルーズが貧しい黒人の生活の中で同じように歌われていたことがわかります。アイラ・タッカー、12,3才のころの話です。
次はディキシー・ハミングバーズが女性のゴスペルグルーブの「アンジェリック・ゴスペルシンガーズ」と一緒に歌っている録音です。これも強力な曲ですが、アンジェリック・ゴスペルシンガーズはフィラデルフィアで結成されて”Touch Me, Lord Jesus” という曲が1949年にミリオンセラーになった有名なグループ。メンバーの交代がありながらも2005年くらいまで続いてたようです。リーダーのマーガレット・アリソンが2008年に亡くなってグループは完全に終わったようです。
1950年代はじめ頃にハミングバーズとアンジェリックは一緒にツアーもしていたようですが、ふたつのグループが強力な掛け合いのゴスペル・シンギングを毎晩繰り広げていたのでしょう。
3.One Day/The Angelic Gospel Singers And The Dixie Hummingbirds

リードのアイラ・タッカーはずっと歌っていましたが2008年に天に召されました。ハミングバーズはあまり活動していないようですが、グループとしてはまだ存続してます。どうするんでしょう、グループの名前。ハミングバーズになるんでしょうか。気になります。

アイラ・タッカーを更に熱唱型にしたのがアイラと同じサウス・キャロライナ出身のジュリアス・チークス。アイラより4才年下でアイラを尊敬していたそうです。ソウルのウィルソン・ピケットやジェイムズ・ブラウンはジュリアス・チークスの歌い方をマネしたと言われています。いわゆるハード・ゴスペル・シャウター。
南部のブルーズマンが子供の頃、貧しくて綿花畑で綿花を摘む仕事を子供の頃からやらされていたという話をいままでたくさんしてきましたが、ゴスペル・シンガーになった人たちも小さい頃の境遇はまったく同じです。「ゴスペル・サウンド」という有名な本に書いてあるのですが、チークスの家は貧しくて12人の兄弟がいたけれどお母さんは全員立派に育てたということです。チークスは成功したある日お母さんに50ドル渡すと「これを全部くれるつもりじゃないよね」とお母さんが言いました。50ドルは大きなお金だったのです。すると横にいたチークスの親友のサム・クックがお母さんのポケットに30ドルを入れたそうです。するとお母さんはその心遣いに泣き出してしまったらしいです。お金にずっと苦労してきたので感極まったのでしょう。
では、ジュリアス・チークスが在籍したカルテット、センセーショナル・ナイチィンゲーイルズです。ゴスペル・カルテットにはリードがふたりいる場合もよくあるのですが、次の曲はアーネスト・ジェイムズがリードで歌い始め、途中からチークスがリードを代わりテンションを上げていくのですが、「明日のことを考えないシャウト」と僕は呼んでるのですが強烈なチークスのシャウトが聞けます。
4.Sinner Man/Julius Cheeks and The Sensational Nightingales
鋼鉄のような強い歌声です。ジェイムズ・ブラウンが歌うようなファンクのルーツも感じます。
ナイティンゲールとは夜にも鳴くので「夜鳴きウグイス」と言われる鳥のことで美しい声で鳴くらしいのですがチークスの声はシャウトする夜鳴きウグイスです。
そういえば、僕の好きなソウルシンガーのオーティス・クレイもセンセーショナル・ナイチィンゲーイルズのメンバーだったことがあります。
ブルーズやソウルとも密接な関係を持ちながら生き続けてきたゴスペルをこの番組でまた聴きたいと思っています

2020.08.28 ON AIR

モダン・ゴスペル・カルテットの素晴らしさ/
The Soul StirrersとThe Pilgrim Travelers

Shine On Me/The Soul Stirrers Featuring R.H.Harris (Specialty SPCD-7013-2)

Shine On Me/The Soul Stirrers Featuring R.H.Harris (Specialty SPCD-7013-2)

Walking Rhythm/The Pilgrim Travelers (Specialty CDCHD 463)

Walking Rhythm/The Pilgrim Travelers (Specialty CDCHD 463)

ON AIR LIST
1.By And By/The Soul Stirrers
2.I Have A Right To The Tree Of Life/The Soul Stirrers
3.Shine On Me/The Soul Stirrers
4.Stretch Out/The Pilgrim Travelers
5.Everybody’s Gonna Have A Wonderful Time Up There (Gospel Boogie)/The Pilgrim Travelers

先日、Twitterを通してリスナーの方からゴスペル・カルテットを特集して欲しいというメールをいただきました。リクエストをいただくのは嬉しいです。
今日はまずこの前特集したサム・クックも在籍していたゴスペル・カルテットのパイオニアのグループであるソウル・スターラーズを聞いてみましょう。
サム・クックがスターラーズに加入したのは1951年ですが、その前に在籍していたR.H.ハリスというゴスペル史上に残る偉大なシンガーをリードにしていたスターラーズはサムが加入する前からすでにとても人気のあるグループでした。サムもR.H.ハリスを尊敬し彼の歌い方を研究し、ハリスに直接教えを受けたこともあったようです。ハリスはゴスペルの歌唱においてアドリブを始めるなど画期的なことを成し遂げた人で、ゴスペルを志すシンガーたちに多大な影響を与えました。
ソウル・スターラズのスターラーというのは飲み物を混ぜるマドラーの意味もあるのですが、騒ぎを起こすとか、騒ぎを煽る煽動者という意味もあります。だから「魂を煽動する人たち」という意味で「魂を揺さぶる人たち」という言い方がいいかも知れません。
ゴスペル・カルテットのカルテットというのは歌がベース、バリトン、テナーに分かれてテナーとパリトンはふたりいる場合もあり、ギターが入っているグルーブもあり、リードシンガーがふたりいる場合もあります。大体4人から6人くらいの編成です。1930年代から50年代にかけてたくさんのカルテットが生まれました。
ではアルバム”Shine On”の一曲目に収録されている曲です
「つらい試練がすべての人の中にある。でも、神様が私達を約束の土地へ導いてくださる方法が私達にはわからない。でも神様は導いてくれる。神様にずっと従っていればやがてもっとよくわかるようになるだろう」神様への信仰が揺るぎなければ、やがて約束の地へ私達は行けるだろうという信仰の心を強く持つようにということでしょうね。
1.By And By/The Soul Stirrers

ゴスペル・カルテットは伴奏なしで歌うことが多く、全員のリズム、グルーヴ感が一致することがとても大切です。次の曲など聞いていると違うリズム・パターンが三つ合わさって見事なポリリズムになっています。その中をリードヴォーカルのハリスの歌が自由に空を飛んでいるように聴こえます。こういうアップテンポの曲でのアンサンブルの素晴らしさもスターラズの魅力です。
2.I Have A Right To The Tree Of Life/The Soul Stirrers
スターラズはテキサス出身のグループで結成は1926年でバリトンを歌っているロイ・クレインが自分が行ってた教会の10代の仲間で作ったものです。ゴスペル・カルテットはメンバーがよく変るのですが、この録音の時のスターラーズのメンバーはロイ・クレイン、ポール・フォスター、トーマス・ブラスター、R.Bロビンソン、ジェッシー・ファ-リィそしてR.H.ハリス。彼らはすごく人気があったのでブルーズマンやR&Bのミュージシャンと同じようにツアーをしました。ゴスペルは黒人社会では大きなビジネスになる音楽で、テキサスの片田舎のグルーブだったスターラーズは成功した典型的な例です。
しかしツアーが多過ぎて家庭にいられなかったことを後悔したリードのハリスはスターラーズを辞めてしまい、その後釜に選ばれたのがサム・クックでした。

次の歌はスターラーズのハーモニーの厚さとそれをバックに高音部に舞い上がるハリスの素晴らしいリードの両方聞くことができる名演だと思います。タイトルの”Shine On Me”と言う言葉は、この番組でも何度かON AIRしているブラインド・ウィリー・ジョンソンが歌っているLet Your Light Shine On Me(あなたの光で私を照らしてください)のようにゴスペルにはよく出てくる言葉です。
この歌もドロシー・ノーウッドはじめたくさんのゴスペルシンガーに歌われていますが、僕はこのスターラーズのバージョンがいちばん好きです。
3.Shine On Me/The Soul Stirrers

今日はスターラーズやハリスの影響を受けたカルテットとして同じテキサスで結成されたビルグリム・トラヴェラーズも聞いてみましょう。ビルグリム・トラヴェラーズはテキサス、ヒューストンの教会で結成されたカルテット。ロスに移って1947年にスペシャルティ・レコードと契約してそこから次第に有名になるのですが、そのビルグリム・トラヴェラーズを売り出した時のキャッチコピーが”Walking Rhythm Spirituals,”というもので、この”Walking Rhythm Spirituals,”というのは何かと言うと彼らの足音、つまりストンピング・リズムがレコードに入ってます。ブルーズのジョン・リー・フッカーなんかも足音のリズムを入れてますけどね。
4.Stretch Out/The Pilgrim Travelers ビルグリム・トラヴェラーズ
足音聴こえましたか? このグループはカイロ・ターナーとキース・バーバーというふたりの強力なダブル・リードで人気がありました。
さっきのスターラーズよりちょっとポップなテイストがあるんですが、次の曲などはブルーズというかR&Bのテイストを持っています。歌詞さえ違えばアカペラのコーラスグループです。しかも「ゴスペル・ブギ」なんていうサブ・タイトルが付いています。
5.Everybody’s Gonna Have A Wonderful Time Up There (Gospel Boogie)/The Pilgrim Travelers
ゴスペルもブルーズと同じように奥深い音楽ですが、いまの曲のようなちょっとポップ感のあるところから入ると入りやすいかも知れません。
来週もゴスペル・カルテットをお送りします。