カントリー&ウエスタンをソウルにしたジニアス、レイ・チャールズの魅力
ON AIR LIST
1.I Can’t Stop Loving You/Ray Charles
2.Take These Chains From My Heart/Ray Charles
3.Careless Love/Ray Charles
4.You Are My Sunshine/Ray Charles
5.Born To Lose/Ray Charles
もっと早く紹介するべきだったのですが、去年の10月と11月に日本のBSMFレコードから名盤再発掘シリーズでレイ・チャールズのアルバムが4枚リリースされました。
1962年の『Modern Sounds In Country And Western Music』VOL.1、VOL.2そして65年『Country & Western Meets R&B』と66年『Crying Time』がリマスターされての再発です。レイ・チャールズが白人音楽であるカントリー&ウエスタンを自身のルーツであるゴスペルやブルーズのテイストを加えて新たに生命を吹き込んだ音楽になりました。またそれによってレイは白人聴衆にも受け入れられる存在となっていったのです。
50年代にアトランティックで「ホワッド・アイ・セイ」など多くのヒットを飛ばし、R&B界で頂点を極めソウル・ミュージックの先駆けとなったレイ・チャールズだが、60年代に入るとアトランティックを離れ、ABC/パラマウントと契約。そこでリリースしたポピュラー・ソング「我が心のジョージア」のカバーがナンバー1・ヒットを記録。そして1962年に立ち上げた自身のレコードレーベル「タンジェリン・レコード」からリリースしたのが白人のカントリー・ミュージックのカバーアルバム『Modern Sounds in Country and Western Music』が翌年のグラミー賞を受賞し、黒人ミュージシャン、さらにカントリーの中でも最も売れたアルバムとなった。そしてわずか6か月後にリリースされたVolume 2も前作同様、高い評価を受け多くのヒット・シングルを生みだしました。
今日最初の曲は元々はカントリー・ウエスタンの白人シンガー、ドン・ギブソンが作って歌った曲で1958年にリリースされた。700人以上のミュージシャンにカバーされたボビュラーすぎるほどポピュラーな曲で邦題が「愛さずにはいられない」。1962年リリース。
1.I Can’t Stop Loving You/Ray Charles
レイが白人のボピュラー・ソングをたくさん歌うきっかけになったのは1960年に発表した”Georgia On My Mind”が大ヒットしたことでした。日本でも邦題「我が心のジョージア」で大ヒットしました。このヒットで白人の曲を歌うとやり方によっては白人にも買ってもらえることがわかり、1962年に自身のレーベル「タンジェリン・レコード」を立ち上げたレイ・チャールズは白人の音楽であるカントリー&ウエスタンのカバー・アルバムを録音するようになります。その時レコード会社の幹部である白人たちは逆に「黒人なのに白人の音楽を歌って黒人に売れるわけはないだろう」とレイを説得したらしいです。でも、レイは黒人にも白人にも受け入れられるという確信があったようです。
50年代はアトランティック・レコードで黒人マーケット向けにアルバムをリリースしていたレイがここで一気にターゲットを変えたわけです。しかし、レイ自身の歌が変わるわけもなく白人の曲でもレイが歌うとゴスペルみたいに聞こえてしまうのですが、今のI Can’t Stop Loving Youでもそうですが、大げさなコーラスのアレンジ(恐らく白人のコーラス隊を使っている)が僕には要らないかなという感じです。でも、それがあるから白人層に売れたんでしょうね。
次の曲はカントリー &ウエスタンの大御所、ハンク・ウイリアムスが1952年に録音したのを1962年にリリース。レイのこのカバーも白人のポップチャートで8位、黒人のR&Bチャートで7位になり白人黒人両方でヒットした曲となりました。
「新しい恋人ができた彼女にもうぼくに愛がないのならこの鎖を解きほどいて僕を自由にしてくれ」という歌です。
2.Take These Chains From My Heart/Ray Charles
次の曲は1920年代からあり女性ブルーズシンガーの女王、ベッシー・スミスのテイクもあります。ダイナ・ワシントン、ナット・キング・コール、ブルック・ベントン、ブルーズ派ではスヌークス・イーグリン、ロックではヴァン・モリソンと多くのシンガーにカバーされています。ブルーズの範疇に入る曲ですがメロディが覚えやすく早くからボビュラーに取り上げられた曲です。
3.Careless Love/Ray Charles
1962年にチャート1位となった次の曲もアメリカのよく知られたボビュラー・ソングですが、レイが歌うと重みとグルーヴ感が増してやっぱりゴスペルのテイストが感じられます。タイトルの通り「君はぼくの太陽だ」なんですが、歌詞を見ていくと「彼女が他に好きな人ができてしまってぼくの夢は壊されてしまった。空が曇っていてもぼくを幸せにしてくれる太陽だったぼくの太陽を奪わないでくれ」まあ他愛ない曲ですがレイが歌うとディープな感じがします。チャート一位の大ヒットになった曲です。
昔、この曲を君は僕の太陽だと歌っている能天気なラヴ・ソングだと思っていたのですが、よく聞いたら失恋ソングでした。しっかり聞けということです、
4.You Are My Sunshine/Ray Charles
次の歌はちょっとヘヴィです。でも、このヘヴィさというのはレイが元々持っているブルーズの感覚にあるもので50年代のアトランティック・レコード時代のブルーズを聴くとわかる彼のテイストです。
「俺は負けるために生まれたんだ。人生には虚しさしかなく、全ての夢は俺を苦しめるだけ。君はオレのたった一つの望みだったけど俺は君さえ失うんだ」
かなり絶望的な歌ですが、何も所有することのない貧しいアフリカン・アメリカンの人たちのことを思うと財産や土地どころか日々のお金もない黒人にとっては彼女の愛を失うというのは本当に全てを無くしてしまう、生きる術がなくなってしまうということなんでしょう。
5.Born To Lose/Ray Charles
また来週もBSMFレコードからリリースされたレイ・チャールズの60年代の4枚のアルバムからレイの素晴らしい歌を聞きます。