2025.02.14 ON AIR

★祝来日!メイヴィス・ステイプルズ大特集「メイヴィスと黒人音楽の歴史」Vol.3

ステイプル・シンガーズのスタックスレコード黄金時代

ON AIR LIST
1.Respect Yourself/The Staple Singers
2.I’ll Take You There/The Staple Singers
3.If You’re Ready (Come Go With Me)/The Staple Singers
4.Touch A Hand,Make A Friend/The Staple Singers

来日するソウル・ゴスペル・シンガーのレジェンド、メイヴィス・ステイプルズ特集の3回目
1970年にメンバーの移動があり息子のパーヴィスがグループを離れて代わりに姉妹のイヴォンヌが参加。ファミリー・グループという姿勢は変わらないまま70年代へ。
時代は黒人たちが自分らしさを表現し権利を堂々と主張するブラック・パワー、ブラック・イズ・ビューティフルの時代に突入。そんな時代背景の中、ステイプル・シンガーズが歌ったこの曲が大ヒット。彼らにとってチャート2位まで上がった初めての大きなヒットとなりました。「おまえが誰も彼もバカにして尊敬しないのなら誰もおまえのことを尊敬してくれないだろう。まずは自分に誇りを持って尊敬できる人間にならなきゃ」と歌ったこの曲は黒人として誇りを持ってしっかり生きていこうとメッセージした曲でした。1971年リリース。

1.Respect Yourself/The Staple Singers

この曲はゴスペルやメッセージ・ソングを歌って来た誠実なイメージのグループのステイプル・シンガーズ”にぴったりの曲。お父さんポップスの温かい説得力のある歌声から始まり、その後に続くメイヴィスの濃厚なゴスペル・ヴォイスでグルーヴが盛り上がって行く・・という素晴らしい出来になっています。
いまのRespect Yourselfの後にリリースされたのがチャート一位に輝いたI’ll Take You Thereでした。
黒人としての誇りや尊厳を大切に同じ黒人同胞に救いの手を差し伸べようとする次の歌は強い共感を得ました。
「誰も泣いていない誰も心配することのない場所にあなたを連れて行ってあげよう」

2.I’ll Take You There/The Staple Singers

この曲は二つのコードの繰り返しですが、そして歌詞も多くないんですがバンドのグルーヴとメイヴィスの歌のグルーヴとコーラスの素晴らしさで全くコード二つと感じさせない曲になってます。
今の2曲を含むアルバム”Be Atitude Respect Yourself”でステイプル・シンガーズは70年代の優れたソウル・グループとして歴史に残ることになりました。ゴスペル・ルーツのグループが60年代にフォーク・ソングやメッセージ・ソングを取り入れ、そこに70年代の新しい黒人の認識を示唆する曲がヒットしました。名盤です。プロデュースはスタックスレコードの共同経営者だったアル・ベル。録音はマッスルショールズ、フェイム・スタジオ。

1973年にはスタックス・レコードからの三枚目”Be What You Are”がリリース
このアルバムは前作の”Be Atitude Respect Yourself”からのコンセプトを引き継いだ内容でヒューマンな歌が歌われている。
同時代のビル・ウィザースの”Grandma’s Hands”をこのアルバムでカバーしているが、そのビル・ウィザースやカーティス・メイフィールドに通じるメッセージを感じる次の曲がチャート9位まで上がった。
とてもポジティヴな歌で「もし用意ができてるならさぁ私と一緒に行こう」

3.If You’re Ready (Come Go With Me)/The Staple Singers

初期のゴスペルの核心を失わずに70年代という時代のソウル・ミュージックに新しいスタイルを作り、それが共感を得てヒットしてメジャーになったゴスペルグループはいないと思います。
もう一曲メッセージソングです。
「新しい時代の息吹を感じないか。変化が起こっている。さあ、手を伸ばして、手に触れて、友達を作ろう。私たちは世界をよりよい場所にする道を進んでいるんだ」

4.Touch A Hand,Make A Friend/The Staple Singers

ヒットに恵まれた70年代のステイプルズ・シンガーズでしたが、いつも彼らの心にあるのはゴスペルでそれは揺るがないものでした。ずっと誠実な姿勢を変えなかった本当に尊敬するグループです。メイヴィスはインタビューでもよくパパ、パパとお父さんのことを話題に出すんですが本当にお父さんを中心に結束の強いグループで、メイヴィスはグループをいちばん大切に活動していたのでソロ活動への強い動きはしませんでした。
来週は80年代のメイヴィス・ステイプルズの歩みを聞いてみます。

2025.02.07 ON AIR

祝来日!メイヴィス・ステイプルズ大特集「メイヴィスと黒人音楽の歴史」Vol.2

フォーク、ゴスペル、メッセージソング時代のステイプル・シンガーズ

ON AIR LIST
1.Freedom Highway/The Staple Singers
2.We Shall Overcome /The Staple Singers
3.For What It’s Worth/The Staple Singers
4.The Weight/The Staple Singers
5.How Many Times/Mavis Staples

3月に来日するメイヴィス・ステイプルズの大特集2回目です。
ステイプル・シンガーズはゴスペル・グループですが50年代後半から60年代にはキング牧師に傾倒し黒人の公民権運動にも積極的に参加しました。人種差別の反対や戦争反対などをテーマにしたメッセージ・ソングも歌い始めたのはその頃でした。
今日最初の曲は公平な選挙権を求めて、また人種差別反対の趣旨の元、キング牧師の主導のもとにセルマからモンゴメリまでの大きなデモ行進が1965年3月7日から25日にかけて行われました。この曲は行進参加者に捧げられた曲で「自由のハイウェイを行進しよう。来る日も来る日も前に進もう。私の決心は固い 私はもう引き返さない。自由のハイウェイを行進しよう」という内容です。シカゴの教会で行われたライヴから。

1.Freedom Highway/The Staple Singers

60年代の黒人音楽はR&Bがソウルと呼ばれるものに変わっていく時代で北部のモータウンレコード、南部のスタックスレコード、ニューヨークのアトランティックレコードなどが中心となって華やかな黒人音楽のシーンを作り、白人層もそこに魅力を感じて行った時代でした。
政治社会的には60年代は黒人公民権運動やベトナム戦争の反戦運動が盛り上がり、そんな中でよく歌われたのが次の有名曲”We Shall Over Come”日本語のタイトルは「勝利を我らに」ですが、直訳すると「私たちは打ち勝つ」。自分たちを励まし気持ちを鼓舞する内容で広くヒットし日本語でも歌われました。ご存知の方も多いと思います。

2.We Shall Overcome (Live)/The Staple Singers

この教会でのライヴ・アルバム”Freedom Highway”は60年代のステイプル・シンガーズのライヴ・ステージを聴くことができる貴重なものです。
60年代初めに白人層にも人気が出てきてゲイリー・クレイマーという敏腕マネージャーがつくようになります。クレイマーは当時の白人のフォーク・ソング・ブームを見透してフォークをステイプル・シンガーに歌わせました。次のバッファロー・スプリングフィールド(ニール・ヤング、スティーヴン・スティルス参加)の”For What It’s Worth”などのカバーやボブ・ディランの曲のカバーなども始めました。この時期に日本の民謡「ソーラン節」も録音しています。
次第に白人の若者ファンが増えロックコンサートにもオファーされロックの殿堂「フィルモア」にも出演しましたが、それが宗教的でなく商業主義的と捉えられ黒人教会では逆に反発を受けることにもなりました。60年代はまだまだゴスペル・シンガーが聖なるゴスペル以外の曲を歌うことに反感を持つ同胞黒人も多く、ステイプル・シンガーズもこの当時ある黒人教会で全く無視され拍手もなかったという話も残っています。
バッファロー・スプリングフィールドがヒットさせた”For What It’s Worth”なのですが、これは1966年に 10時以降の外出禁止令やロスで行われたデモへの弾圧に抗議してバッファロー・スプリングフィールドのメンバーであったステファン・スティルスによって作られたメッセージ・ソング。

3.For What It’s Worth/The Staple Singers

60年代中頃にメンフィスの「スタックス・レコード」と契約してゴスペルとフォークにメッセージ・ソングが混じったアルバムをブッカー・T&MG’sのギタリスト、スティーヴ・クロッパーのプロデュースでリリースするのですが、これがなんとも中途半端なもので選曲もあまりステイプル・シンガーズに寄り添っているとは言えないものだと感じました。
それが1968年リリースされたアルバム”Soul Folk In Action”と続けてリリースされた”We’ll Get Over”でした。”Soul Folk In Action”でのいちばん印象に残る曲はのちにザ・バンドのラストコンサート「ラスト・ワルツ」でステイプル・シンガーズが歌い、メイヴィスがいまも歌い続けているこの曲です。

4.The Weight/The Staple Singers

いい曲なんですが、この歌の内容はいろんな人の名前や宗教的な言葉も出てきてなんと理解したらいいのか難しいのですが、「自分が背負っている人生の重荷を下ろせよ」という風に僕は捉えてます。
スティーヴ・クロッパーはメイヴィスの初ソロ・アルバムもプロデュースしています。まあ、スタックスと契約していた関係でクロッパー・プロデュースになったのだと思いますが、ゴスペル界ではアレサ・フランクリンと双璧といっていい逸材のメイヴィスのプロデュースが成功したとは言い難いものでした。それでもメイヴィスは歌唱力が抜群にあるのでかろうじていい歌を聴かせていますが・・。
そして2枚目のソロ”Only For The Lonely”ではプロデューサーが変わります。敏腕プロデューサーとして名高いドン・ディヴィスに代わり録音スタジオもマッスル・ショールズに移りドラムのロジャー・ホーキンスやベース、デヴィッド・フッドといった当時の最先端のサザン・ソウルを作っていた連中が参加していいアルバムになりました。そのアルバムから。
「あなたは何度私の心を踏みつければいいのか。私は何度泣けばいいのか。私は何度試されるのか。私が這って戻ってくると思うのか」というひどい目に遭わされた男に向かって歌っている歌。メイヴィスのコントラルトの重い声が生かされたいい曲。

5.How Many Times/Mavis Staples

さてメイヴィス・ステイプルズ特集、来週はいよいよスタックスレコードでソウル・コーラスグループとしてステイプル・シンガーズが大きく花を開いた70年代に突入します。いまに残る名曲の数々をON AIRします。ではまた来週。Hey,Hey,The Blues Is Alright

2025.01.31 ON AIR

祝来日!メイヴィス・ステイプルズ大特集「メイヴィスと黒人音楽の歴史」Vol.1

ゴスペルから始まったメイヴィス・ステイプルズ

ON AIR LIST
1.Unclouded Day/The Staple Singers
2.Will The Circle Be Unbroken/The Staple Singers
3.Glory, Glory, Hallelujah!/The Staple Singers
4.Wade In The Water/The Staple Singers

85才になるゴスペル・ソウル・シンガーのメイヴィス・ステイプルズが三月に来日します。3/11,12,13と三日間ビルボード東京。そろそろツアーも止める年齢になってきているのでこれが最後の来日公演になるかも知れませんが、私は自分のバンドのツアーが入っていて今回観ることができません。でも、たくさんの人にメイヴィスのライヴを観てもらいたいのでこの際メイヴィス・ステイプルズの大特集をすることにしました。そしてメイヴィスの音楽人生を辿ることは黒人音楽の歴史の豊かな時代を辿ることにもなります。
メイヴィス・ステイプルズは1939年生まれで11才からゴスペルを歌いキャリアをスタートさせ、74年間も歌い続けてきた真のレジェンドです。1939年は第二次世界大戦が始まった年でブルーズではルイ・ジョーダン、ラッキー・ミリンダー、ジョー・リギンスなどジャンプ・ブルーズが人気になり、次に生まれてくるR&BやR&Rの土台ができた時代が40年代ですね。メイヴィスはゴスペルの人ですからマヘリア・ジャクソン、クララ・ウォードなどゴスペル・シンガーを尊敬し聴く一方でジャズのダイナ・ワシントンやサム・クックも好きなシンガーだったようです。
お父さんのローバック”ポップス”ステイプルズを中心として家族で作ったゴスペルグループ「ステイプル・シンガーズ」で初めて歌ったのが1953年。そしてグループの名前が知られるようになったのは50年代中頃にリリースした「Uncloudy Day」や「Will The Circle Be Broken」でした。まずはその「Uncloudy Day」から。お父さんのローバックのトレモロで揺らぐギターの音色で始まる独特のゴスペル・サウンドです。

1.Unclouded Day/The Staple Singers

今の歌はタイトルの”Unclouded Day”が「雲ひとつない日」で何度かHomeとLandが出てきて「雲ひとつない故郷」「雲ひとつない国」となるのですが、雲ひとつない晴れ渡った日の雲ひとつない晴れ渡った国というのは苦しいことのない日々と天国のことを歌っているのではないでしょうか。
今のトレモロがかかった揺らぐギターの音でブルージーな印象を受けた人もいると思いますが、お父さんのローバックはミシシッピ生まれでブルーズマンのチャーリー・パットンやサン・ハウスなどに影響されギターを弾き、最初はブルーズを歌っていました。このギターの音と家族で合わせるハーモニーがステイプルズのゴスペル・サウンドの個性となっています。
今の歌のソロをとったのはお父さんのローバック。ステイプル・シンガーズはお父さんがソロを取ることも多いのですが、次第にメイヴィスの歌が評判になりメイヴィスとお父さんがソロを取ることになります。次の曲もステイプルズの初期を代表する曲。これもお父さんのソロから歌が始まります。歌の内容はお母さんが亡くなり霊柩車で運ばれていくときに「頼むからゆっくり運転してくれ。母が逝くのを見たくないんだ」と葬儀屋に頼んでいる歌です。サークルとは絆のことで家族や友人の絆は永遠なのだろうかと歌っています。

2.Will The Circle Be Unbroken/The Staple Singers

歌詞の「ひとつひとつ、席が空いていく。ひとりひとり、みんなは旅立っていった」という最後の下りは今の僕の気持ちでもあります。

メイヴィスのお父さんのローバック・ステイプルズのあだ名はポップスつまり「お父ちゃん」という意味で、その意味の通り自分の子供達(最初は奥さんも参加していた)と作ったファミリー・ゴスペル・グループが「ステイプル・シンガーズ」でした。1948年頃のことです。先ほど言ったようにお父ちゃんは最初ブルーズを歌っていましたが10代の終わりくらいからはゴスペル・グループで歌いはじめ、1935年にシカゴに移住して働きながらゴスペル・グループ「トランベット・ジュビリーズ」に参加しました。そして1948年に自分の奥さんのオセオラと子供達と一緒に「ステイプル・シンガーズ」を結成します。そして50年代の初めからレコーディングを始め、50年代中頃には”This May Be the Last Time”そしてさっきの”Uncloudy Day”,”Will The Circle Be Unbroken”といった曲で知られるようになります。レコーディングが始まった頃には奥さんはメンバーから抜けて、息子のパーヴィスと娘のクレオサそしてメイヴィスというメンバーになります。もう一曲ステイプルズのゴスペルを聞いてみましょう。

3.Glory, Glory, Hallelujah!/The Staple Singers

次第にその歌の素晴らしさが評判になり「ステイプル・シンガーズ」の主要メンバーなっていくメイヴィス。その後メッセージ・ソング、フォークソング、そしてR&B、ソウルといろんな歌を歌うことになりますが、今も変わらず彼女の根底にあるのはゴスペルです。コントラルトと呼ばれる女性の声としてかなり低い音域が出るメイヴィスの歌声はとても個性的で私は聞いていてすごく落ち着くし和みます。
では最後にもう一曲
遠い昔から歌われソウル・コーラスグループTake 6などにも歌われている黒人霊歌です。「水の中を行け」という歌ですが、昔白人の地主から過酷な労働を課せられた黒人たちが逃げるときに犬に追いかけられるのを防ぐために臭いの着かない川の水の中を進んで行けという教えからきている曲です。

4.Wade In The Water/The Staple Singers

ソロを取るメイヴィスの若々しい素晴らしい歌声どうですか。
来日するメイヴィス・ステイプルズの大特集の一回目は彼女の歌のルーツであるステイプル・シンガーズ時代のゴスペルから聞いてもらいました。次週は60年代の公民権運動に喚起されたがステイプル・シンガーズゴスペルからフォークソングやメッセージ・ソングに傾倒していった頃の曲を聴こうと思います。
できるなら今回のメイヴィス・ステイプルズ特集は続けて聴いてもらいたいです。

2025.01.24 ON AIR

カントリー&ウエスタンをソウルにしたジニアス、レイ・チャールズの魅力その2

ON AIR LIST
1.Crying Time/Ray Charles
2.Let’s Go Get Stoned/Ray Charles
3.You Don’t Know Me/Ray Charles
4.Hey Good Lookin’/Ray Charles
5.Together Again/Ray Charles

先週に引き続き去年の10月と11月に日本のBSMFレコードから名盤再発掘シリーズでリリースされたレイ・チャールズのアルバム4枚から選んでON AIRします。60年代にABCレコードと契約して自分のレーベル「タンジェリンレコード」を立ち上げたレイ・チャールズは”I Can’t Stop Loving You”や”You Are My Sunshine”が大ヒットして、白人層まで広く知られるようになりました。その中で非常に重要なことはアルバムを製作する際の内容の決定権を黒人のレイが握ったことです。つまり自己の才能を開花させヒットを連発するレイに対して白人経営のレコード会社サイドはその才能を認め従うしかなかったということです。これは当時の黒人ミュージシャンの中では非常に珍しいことでした。その後もレイが歌うカントリー&ウエスタンや白人のボビュラーソングはヒットして続けざまに4枚のアルバムを出しました。今日の一曲目はカントリー&ウエスタンの偉人バック・オウエンスが歌っていた曲でレイはバックに自分のコーラス隊レイレッツを従えてゆったりとしたR&Bテイストにしています。
「君がドアを出て行くときにまた俺の泣く時が始まる」1965年リリース

1.Crying Time/Ray Charles

この曲を収録した同名のアルバムは66年にリリースされチャート15位まで上がりその年の最も売れたアルバムとなりました。
この曲、実は去年リリースされた山岸潤史とぼくが作ったCD”…Still Love With The Blues”が今年LPレコード盤としてリリースになるのでそこに収録される予定です。それは盟友の上田正樹先輩と才能のある女性歌手Yoshie.Nが参加してくれて三人で歌いました。ご期待ください。
次の曲もぼくの大好きな曲です。これも全米ナンバー1になった曲で作ったのは70年代デュオでも活躍したアシュフォード&シンプソン。最初に録音したのは有名なコーラス・グループ「コースターズ」でレイは翌年の66年にリリースしました。
曲名の”Let’s Go Get Stoned”は「一緒にハイになろう」という意味でStonedにはドラッグでハイになるという意味もありますが、ここではお酒でハイなろうという意味です。「彼女は部屋に入れてくれないけど、俺はちょっと金持ってるからジンを一本買って友達に電話してハイになろうやと言うよ。一日中一生懸命働いてもやることなすことうまいこと行かへん。そんな時帰る途中でいっぱいやってハイになろうや」毎日お勤めしている人たちのブルーズです。

2.Let’s Go Get Stoned/Ray Charles

ええ歌です。仕事終わっていっぱい飲みに行く人はこの曲思い出してください~Let’s Go Get Stoned~

次の曲は切ないです。タイトルをそのまま訳すと君は俺のことを知らない、つまり「君は俺のことをわかってないよ」なんですが、「彼女の方は会うと手を振ってハローと言ってくれる。でも鼓動が高まって俺は君とうまく喋れない。毎晩、君の彼が君を抱いてキスしているのを考えると苦しくなる。でも俺はただの友達なんよな。俺は君と君の隣で一緒に歩く彼よりも君のことを大切に思っているけど君は気づかない。そう君は俺のことなんか何にもわかっていないんよ」
片思いの切ない歌です。

3.You Don’t Know Me/Ray Charles

次の曲は一曲目のバック・オウエンスと並ぶカントリー&ウエスタンのレジェンド、ハンク・ウィリアムスがオリジナルの曲です。
ハンク・ウィリアムスのオリジナルがYou Tubeに上がっているのでそれを聞いてもらうといかにレイ・チャールズが個性的か、いかに才能があるかわかると思います。タイトルのHey Good Lookin’は”やあ、べっぴんさん”でしょうが、まあかわいい娘に声かけて「べっぴんさん、何料理してるん、一緒に作らへんか。二人で新しいレシピ見つけられるんとちゃうか。俺は車もあるし、ちょっと金も持ってる。だれとも付き合ってないし、恋人同士になれるんちゃうか。もう他のだれかを探さんでもええも君に惚れたから、ずっと一緒におるいうのもええんとちゃうか」とまあ大阪ミナミで飲んでる知り合いの男友達が女性を口説いている場面を思い出すような歌です。

4.Hey Good Lookin’/Ray Charles

もうレイの歌が絶好調で、こんな感じではだれも歌えません。ピアノも最高でした。
最後の曲です。
「また、一緒にいよう。涙が止まらない。もう寂しい一人の夜は終わり。俺の心の鍵は君の手の中にあるんや。二人がまた一緒になること以外に大切なことなんてない。二人の愛が息を吹きかえす。また一緒に」
最初にレイ・チャールズが”Together Again”と歌っただけでなんか泣けてきます。

5.Together Again/Ray Charles

BSMFレコードから再発されているレイ・チャールズの60年代のカントリーやボピュラーソングを歌ったアルバム4枚『Modern Sounds In Country And Western Music』VOL.1、VOL.2そして65年『Country & Western Meets R&B』と66年『Crying Time』を二週にわたって聞きました。すごくいいです。最近はよくジニアスって使う人がいるんですが、ジニアス(天才)なんて軽く言ってはだめだといつも思うんですよ。
でも何を歌ってもソウルフルになるというレイ・チャールズだけがぼくがジニアスと呼ぶシンガーです。興味のある方は珍しいアルバムなので今のうちにアルバムをゲットしてください。

 

2025.01.17 ON AIR

カントリー&ウエスタンをソウルにしたジニアス、レイ・チャールズの魅力

ON AIR LIST
1.I Can’t Stop Loving You/Ray Charles
2.Take These Chains From My Heart/Ray Charles
3.Careless Love/Ray Charles
4.You Are My Sunshine/Ray Charles
5.Born To Lose/Ray Charles

もっと早く紹介するべきだったのですが、去年の10月と11月に日本のBSMFレコードから名盤再発掘シリーズでレイ・チャールズのアルバムが4枚リリースされました。
1962年の『Modern Sounds In Country And Western Music』VOL.1、VOL.2そして65年『Country & Western Meets R&B』と66年『Crying Time』がリマスターされての再発です。レイ・チャールズが白人音楽であるカントリー&ウエスタンを自身のルーツであるゴスペルやブルーズのテイストを加えて新たに生命を吹き込んだ音楽になりました。またそれによってレイは白人聴衆にも受け入れられる存在となっていったのです。
50年代にアトランティックで「ホワッド・アイ・セイ」など多くのヒットを飛ばし、R&B界で頂点を極めソウル・ミュージックの先駆けとなったレイ・チャールズだが、60年代に入るとアトランティックを離れ、ABC/パラマウントと契約。そこでリリースしたポピュラー・ソング「我が心のジョージア」のカバーがナンバー1・ヒットを記録。そして1962年に立ち上げた自身のレコードレーベル「タンジェリン・レコード」からリリースしたのが白人のカントリー・ミュージックのカバーアルバム『Modern Sounds in Country and Western Music』が翌年のグラミー賞を受賞し、黒人ミュージシャン、さらにカントリーの中でも最も売れたアルバムとなった。そしてわずか6か月後にリリースされたVolume 2も前作同様、高い評価を受け多くのヒット・シングルを生みだしました。

今日最初の曲は元々はカントリー・ウエスタンの白人シンガー、ドン・ギブソンが作って歌った曲で1958年にリリースされた。700人以上のミュージシャンにカバーされたボビュラーすぎるほどポピュラーな曲で邦題が「愛さずにはいられない」。1962年リリース。

1.I Can’t Stop Loving You/Ray Charles

レイが白人のボピュラー・ソングをたくさん歌うきっかけになったのは1960年に発表した”Georgia On My Mind”が大ヒットしたことでした。日本でも邦題「我が心のジョージア」で大ヒットしました。このヒットで白人の曲を歌うとやり方によっては白人にも買ってもらえることがわかり、1962年に自身のレーベル「タンジェリン・レコード」を立ち上げたレイ・チャールズは白人の音楽であるカントリー&ウエスタンのカバー・アルバムを録音するようになります。その時レコード会社の幹部である白人たちは逆に「黒人なのに白人の音楽を歌って黒人に売れるわけはないだろう」とレイを説得したらしいです。でも、レイは黒人にも白人にも受け入れられるという確信があったようです。
50年代はアトランティック・レコードで黒人マーケット向けにアルバムをリリースしていたレイがここで一気にターゲットを変えたわけです。しかし、レイ自身の歌が変わるわけもなく白人の曲でもレイが歌うとゴスペルみたいに聞こえてしまうのですが、今のI Can’t Stop Loving Youでもそうですが、大げさなコーラスのアレンジ(恐らく白人のコーラス隊を使っている)が僕には要らないかなという感じです。でも、それがあるから白人層に売れたんでしょうね。

次の曲はカントリー &ウエスタンの大御所、ハンク・ウイリアムスが1952年に録音したのを1962年にリリース。レイのこのカバーも白人のポップチャートで8位、黒人のR&Bチャートで7位になり白人黒人両方でヒットした曲となりました。
「新しい恋人ができた彼女にもうぼくに愛がないのならこの鎖を解きほどいて僕を自由にしてくれ」という歌です。

2.Take These Chains From My Heart/Ray Charles

次の曲は1920年代からあり女性ブルーズシンガーの女王、ベッシー・スミスのテイクもあります。ダイナ・ワシントン、ナット・キング・コール、ブルック・ベントン、ブルーズ派ではスヌークス・イーグリン、ロックではヴァン・モリソンと多くのシンガーにカバーされています。ブルーズの範疇に入る曲ですがメロディが覚えやすく早くからボビュラーに取り上げられた曲です。

3.Careless Love/Ray Charles

1962年にチャート1位となった次の曲もアメリカのよく知られたボビュラー・ソングですが、レイが歌うと重みとグルーヴ感が増してやっぱりゴスペルのテイストが感じられます。タイトルの通り「君はぼくの太陽だ」なんですが、歌詞を見ていくと「彼女が他に好きな人ができてしまってぼくの夢は壊されてしまった。空が曇っていてもぼくを幸せにしてくれる太陽だったぼくの太陽を奪わないでくれ」まあ他愛ない曲ですがレイが歌うとディープな感じがします。チャート一位の大ヒットになった曲です。
昔、この曲を君は僕の太陽だと歌っている能天気なラヴ・ソングだと思っていたのですが、よく聞いたら失恋ソングでした。しっかり聞けということです、

4.You Are My Sunshine/Ray Charles

次の歌はちょっとヘヴィです。でも、このヘヴィさというのはレイが元々持っているブルーズの感覚にあるもので50年代のアトランティック・レコード時代のブルーズを聴くとわかる彼のテイストです。
「俺は負けるために生まれたんだ。人生には虚しさしかなく、全ての夢は俺を苦しめるだけ。君はオレのたった一つの望みだったけど俺は君さえ失うんだ」
かなり絶望的な歌ですが、何も所有することのない貧しいアフリカン・アメリカンの人たちのことを思うと財産や土地どころか日々のお金もない黒人にとっては彼女の愛を失うというのは本当に全てを無くしてしまう、生きる術がなくなってしまうということなんでしょう。

5.Born To Lose/Ray Charles

また来週もBSMFレコードからリリースされたレイ・チャールズの60年代の4枚のアルバムからレイの素晴らしい歌を聞きます。