5月にニューアルバム”From Here”をリリースしたいま聴いてもらいたい女性シンガー、Yoshie.N
From Here /Yoshie.N(MSR-004)

ON AIR LIST
1.Fields Of Gold/Yoshie.N
2.People Get Ready/Yoshie.N
3.Nobody Knows You When You’re Down and Out/Yoshie.N
4.Do Right Woman,Do right man/Yoshie.N
私は女性シンガーに対して結構好き嫌いがはっきりしている。好きでないシンガーは取り上げていないのですが、先ごろ来日したメイヴィス・ステイプルズのように好きだと何度もON AIRしてしまいます。歌が上手いとか音域がどうのこうのという前に私にとってはその歌声の声質が大切なのです。どんなに上手い、素晴らしいと言われている歌手でもその声質が自分の好みではないと心に入ってきません。それはギターはじめ楽器の音質も同じで音質は私にとって決定的な要素です。ライヴで演奏する場合、プレイヤーは自分の好きな音質で演奏するわけですがその音質がずっと私にとっては好きではないということもあります。長くなりましたが、ギターやエレクトリックな楽器はアンプなどでその音質を変えることができますが、歌声の質を変えることはできません。それで声質は決定的な要素になってしまいます。
今回紹介する女性歌手Yoshie.Nさん(いつもヨシエちゃんと呼んでいるのでヨシエちゃんと言いますね)の声質はその歌い方とも相まってとてもなめらかでナチュラルで気持ちのいい歌声です。
では、Yoshie.Nさんの先月リリースされた新しいアルバム”From Here”からまず一曲
1.Fields Of Gold/Yoshie.N
この曲は1993年にスティングがリリースした彼の5枚目のアルバム”テン・サマナーズ・テイルズ (Ten Summoner’s Tales)”に収録されています。
原曲の美しさを失わず無理のないヨシエちゃんの自然な歌唱で聞いていて本当に気持ちのいい歌声です。
アルバムの一曲目に収録されていてとても印象に残ります。
このアルバムはいつもライヴを一緒にやっているピアノの堺敦生くんとヨシエちゃんの二人で録音されたデュオ・アルバムで、アレンジも二人で行われたそうです。
普段からライヴを一緒にやっているので息もピッタリで4時間でアルバムの11曲を収録したそうです。
プロデューサーは上田正樹先輩
このアルバムのライナーにもヨシエちゃんが「師匠上田正樹さん」と書いているようにヨシエちゃんの才能を見抜いたのはキー坊(上田正樹)。キー坊(上田正樹)のライヴでコーラスも担当しています。僕が最初に彼女の歌声を聞いたのもそのコーラスの時だったのですが、時々ソロのパートをキー坊に回される時に彼女の歌声の良さに気づきました。それから何度かステージを一緒させてもらううちに彼女のソロが聴きたくてソロ・ライヴも聞きに行ったりしています。
今のFields Of Goldはオリジナルのスティング以外に聞いたことないのですが、他にカバーしているシンガーっているんでしょうか。
ちなみにスティングとヨシエちゃんは誕生日が同じだそうです。
次は少しエモーショナルな彼女の歌です。ソウル・ミュージックの偉人、カーティス・メイフィールドがコーラスグルーブ「インプレッションズ」時代の1965年に発表した名曲でこれはアレサ・フランクリン、ディオンヌ・わーウイック、ジェフ・ベックとロッド・スチュワートなどカバーがたくさんあります。
2.People Get Ready/Yoshie.N
黒人公民権運動が盛り上がった60年代半ばにカーティス・メイフィールドが聖書の内容を引用しながらいつか人種差別や貧困のない日がくることを祈って書いた曲です。
ヨシエちゃんの気持ちが盛り上がってエモーショナルな歌に向かっていくのは、当然その歌詞も理解しているからだと思います。このアルバム”From Here”にはブルーズの曲も何曲か収録されているので聞いてみます。
クラシック・ブルーズと呼ばれる20,30年代に活躍した女性ブルーズ・シンガー、ベッシー・スミスが広くヒットさせた曲ですが、作ったのは1923年ジミー・コックスというピアニストです。
金を持っているときには気前よくみんなに酒を奢ったりして豪勢にやっていたが自分が落ちぶれたら誰も見向きもしてくれないといういつの世の中にもある話です。
3.Nobody Knows You When You’re Down and Out/Yoshie.N
あとヨシエちゃんの歌のいいところはギミックなところがないことです。変にフェイクしたりしないところもいいです。
次の曲はアレサ・フランクリンが1967年にリリースした有名な”Do Right Woman, Do Right Man”です。これはエタ・ジェイムズ、ウィリー・ネルソン、ディオンヌ・ワーウィックなど幅広くカバーされ、曲を作ったダン・ペン自身のヴァージョンもあります。
歌詞の内容は「正しいことをする女性を求めるのなら、あなたも正しいことをする男にならなくてはいけない」「女性は男の遊び道具ではないし一人の生き生きとした血の流れる人間なんだから」と現在の性暴力や性差別へりプロテストにも繋がる不滅の名曲です。
4.Do Right Woman,Do right man/Yoshie.N
なんかね、ジワジワくるんですよ。すごいインパクトで最初からドーンとくるシンガーもいるんですがヨシエちゃんの歌はジワジワなんです。だから是非ライヴに行っていただきたいのですが、ライヴで最後まで聞くとそのジワジワが広がって最後にジーンとします。
今回ヨシエちゃんにとっては4枚目のアルバムになるそうですが、今回一曲をのぞいてカバー曲にしたのは今まで自分を育ててくれた曲たちへの感謝と敬意の気持ち、そしてそれらを継承していく思いを込めたそうです。
このアルバムにはブルーズが”Stormy Monday”,”Blues Before Sunrise”とさっきの”Nobody Knows You When You’re Down and Out”と三曲入っているのですが、一曲だけ入っているヨシエちゃん自身のオリジナル”Who Is The Blues?”もブルーズっぽい曲です。
こういうルーツ・ミュージックをしっかり歌いながらもオリジナルを歌うという人は少なくなってきています。彼女の歌を聴いていると底辺がしっかりしているなと感じます。アルバム・タイトル”From Here”の通りここから彼女がどこへいくのかすごく楽しみです。
一度是非ライヴで彼女の魅力的な歌声を体験してください。
そう言えば6月21日に東京高円寺JIROKICHIの50周年記念ライヴでヨシエちゃんとキー坊(上田正樹先輩)と僕そしてピアノの堺くんのライヴがあります。ぜひお越しください。
Yoshie.N公式HP / https://yoshie-n.com/index.html