2026.05.08 ON AIR

チャック・ベリー生誕100年記念 vol.3

「もっと深くチャックを知ろう」

ON AIR LIST
1.Driftin`Blues/Chuck Berry
2.No Particular Place To Go/Chuck Berry
3.You Never Can Tell /Chuck Berry
4.Carol/Chuck Berry
5.No Money Down/Chuck Berry

特集、チャック・ベリー生誕100年記念の3回目最後ですが、「ロックンロールの王様」と呼ばれたチャック・ベリーは実はブルーズマンになりたくて、それもマディ・ウォーターズのバンドに入りたくてシカゴのチェス・レコードに来たのです。しかしオーディションをやってみたらマディが「どうもシカゴ・ブルーズっていう感じやないな、君は。まあチェスの社長に紹介したるわ」ということになったそうです。そうして最初の録音まで漕ぎ着けたのがデビュー・ヒットした「メイベリーン」あまりブルーズ色の濃くない、白人のカントリーを元にした曲でした。でも、それが大ヒット。そこから「ロックンロールの王様」と呼ばれるほどヒットを出すことになるのですが、「ブルーズマンになりたい。ブルーズを歌いたい」というチャックの気持ちはどうなったんだろうと気になるところですが・・・。
チャックのアルバムを聴いているとロックン・ロール曲の間にブルーズの曲が入っています。オリジナルもありますがカバーもあります。あまり話題にならないのはチャックのブルーズがヒットしなかったからです。でも本人はやってみたかったんでしょう。
聴いてもらうのは1960年、デビューして5年目”Rockin’At THe Hope”に収録されたチャールズ・ブラウンの名曲ブルーズです

1.Driftin`Blues/Chuck Berry

偉そうに言わせてもらうとまあ、悪くはないですが普通ですね。
それで55年から58年あたりの3年間はロックンロールのブームもありヒット曲を連発します。60年代になるとブームの少し退いて勢いは落ちましたが、新しくデビューしてきたビートルズやストーンズなどがチャックの曲をカバーしたことでヒット曲は出なくても話題にはなり、ライヴ・コンサートにも引っ張りだこでした。しかし・・62年の2月からチャックは一年半ほど刑務所に入ってました。これはほんまなのかと思いますが、14歳の女性を連れ回して売春を強要したという罪で逮捕され有罪になったのですが・・ちょっと信じがたいことですが・・。まあ若い10代の頃には窃盗で何年間かムショに入り、年取ってからは脱税でも入っていて計三回刑務所のお世話になってます。その2回目の刑務所にいた時に作った曲が次の曲。
出所してきた翌年リリース。アメリカで10位、イギリスで3位まで上がった曲。これも面白い歌詞ですが、多分知り合ったばかりの彼女と車でデートとなって彼女も肩に頭を載せてくるくらいいいムードになり、軽くキスしてさぁいよいよという時に彼女のシートベルトが外れないというなんとも無様な結果に終わった話です。そりゃギター・プレイもワイルドになりますわな。

2.No Particular Place To Go/Chuck Berry

なかなかアバンギャルドなギター・ソロですが音質もワイルドで三連符で攻めてくるフレイズもブルーズ・テイストがあって僕は好きです。
好きと言えばチャックの曲の中で格別好きなのが同じ64年にリリースされた”You Never Can Tell” これもアメリカでチャート14位、イギリスで23位とまだまだ意気軒昂なチャックです。
チャックは刑務所に入っている時に詩集を読んだり、会計学の勉強をしたり、新しい曲を作ったりと時間を有効に使っていたようで、出所するとすぐレコーディングしてます。
この曲は映画「パルプフィクション」で使われていたのでご存知の方もいると思います。映画の中ではジョン・トラペルトとユマ・サーマンがダンスコンテストで踊るときに流れる曲ですごく印象に残るシーンでした。この曲の歌詞はまだ若い2人が周りに色々言われたけど結婚して、結局うまく行ったという話でまあ「人生ってわからないよ」ということです。

3.You Never Can Tell /Chuck Berry

僕は中学生の頃からビートルズやローリング・ストーンズが好きで、でも彼らがチャック・ベリーの曲をカバーしていたことは知らずビートルズがカバーしていた”Rock And Roll Music”や”Roll Over Beethoven”そしてストーンズがカバーしていた”Memphis, Tennessee”や次の”Carol”を聞いてもチャック・ベリーを探そう、聞いてみたいとは思わなかったんですね。あの頃、オリジナルのチャックを聞いていたらまた自分の音楽人生も変わっていたかもしれません。では僕が中学2年かなストーンズがファースト・アルバムでカバーしているのをかっこいいと思って毎日聞いていたCarolのオリジナルです。

4.Carol/Chuck Berry

今のキャロルは映画「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」でイントロを弾いたストーンズのキース・リチャーズにチャックが何度もダメだししてやり直させるシーンがありました。ギターの弦のベンド・アップの感じがちょっと違うだけなのですが、キースはむくれてましたがチャックは気になったんでしょうね。チャックにとってはすごく大切なベンドのタイミングだったのでしょう。

最初マディ・ウォーターズのようなブルーズマンになりたくてシカゴのチェスレコードの門を叩いたチャック・ベリーでしたが、マディにもチェスの社長にも「君はブルーズに向いてないよ」と言われてしまいます。本人もしばらくして自分にはマディのようなディーブなブルーズ・フィーリングがないと気づいて、逆にその軽さがロックロールというダンスミュージックに身を結んだのだからすごいです。最後にそれでもやはり土台はブルーズということがわかるチャックのブルース曲です。
タイトルの”No Money Down”は「頭金なし」という意味で、ボロいフォードに乗っていたら”No Money Down”「頭金なし」という看板のカーショップを見つけて「よし、最新装備のキャデラックを買ってこのボロいフォードとはお別れだ」という歌です。

5.No Money Down/Chuck Berry

やっぱりいいです、チャック・ベリー。ロックロールの王様だけでなくなかなか奥深い音楽性を持ったミュージシャンなので聴くたびになんか発見があったりします。ぼくはブルーズ&ソウルレコーズという雑誌で連載エッセイ書いていて今回はチャック・ベリーのことを書いたのでそちらも読んでみてください。皆さんも一度、チャックの音楽と向き合って楽しんでください。生誕100年を迎えたチャック・ベリーの特集を三回続けてお送りしました。The R&R Is Alright!!!

2026.05.01 ON AIR

チャック・ベリー生誕100年記念 vol.2

「もっと深くチャックを知ろう」

ON AIR LIST
1.Rock And Roll Music/Chuck Berry
2.Roll Over Beethoven/Chuck Berry
3.Sweet Little Sixteen/Chuck Berry
4.School Days/Chuck Berry
5.Johnny B. Goode/Chuck Berry

チャック・ベリーは「ロックン・ロールの王様」と呼ばれるのに相応しい音楽を残したミュージシャンですが、何がすごいかというとまずソングライターとしての作詞作曲の能力、そしてギタープレイの独創性とそのテクニック、ステージ・パフォーマンスの素晴らしさが挙げられます。今日は「ロックン・ロールの王様」チャックのこれぞ「ロックン・ロール」という曲に焦点を当てようと思います。
まずはチャック・ベリーの2枚目のアルバム”One Dozen Berrys”から1957年リリースの”Rock And Roll Music”。ビートルズもカバーしたこの曲。「聞かせてくれよロックンロール・ミュージック」と始まる一番から各フレイズの語尾がMusic、Choose It,Lose It, Use It,と見事に言葉の韻を踏んでいます。そのあともMelody,SymphonyとかTracks,SaxとかJubilee,Jamboree,そして
Tango Mambo Congoと韻を踏んだ言葉が見事に続きます。この曲だけでなくチャックの歌詞を追いかけて読んでみると彼はかなり知的な人だと思います。とにかく語彙力の豊富さがとてつもないです。そして彼の軽やかなグルーヴのギターとそれを支えるバックの演奏能力の高さも聞いてください。Tang ,Mamboに入ったところのリズムの変化も見事です。
「モダンジャズとかマンボやタンゴやあかんのよ。R&Rやないとね。俺と踊りたかったらR&Rやないとねあかんよ」

1.Rock And Roll Music/Chuck Berry

僕は中学2年の時、1964年にリリースされたビートルズのアルバム”Beatles For Sale”でこの曲を初めて聞いて大好きな曲になったのですが、チャックのオリジナルを聴いたのは10年後の23,4才の頃でした。あとからこの曲を歌ったジョン・レノンがチャックの大ファンだということも知りましたがそのビートルズのカバーも素晴らしいです。
そしてこの曲ははっきりロックンロールと曲名、歌詞に出して結果的にロックンロールの始まりを宣言したような曲となりました。本当に名曲です。

次に選んだチャックのR&R名曲は今の曲の前の年1956年リリース
「ベートーベンをぶっとばせ」という邦題がありますが、Roll Overは転がすという意味ですが、「ベートーベンなんか転がしてどっかへやってしまえ!かっこいいのはリズム&ブルーズだ」みたいなことだと思います。そして、ここでもDJとプレイ、ヒューズとブルーズのように見事に韻を踏んでいます。やはりこの韻 を踏むところがより一層曲にグルーヴ感を出しています。そしてイントロのギターのスピード感の素晴らしさ。

2.Roll Over Beethoven/Chuck Berry

現在ロックン・ロールといえば普通8ビートで演奏することになっていますが、この曲でチャックのギターのリフは8ビートをカッティングしてるんが、後のメンバーはまだ2ビート・シャッフルな感じで演奏しています。この8ビートの導入で次第に全体が8ビートになっていったわけですが。これがチャックの革命的なところでもありロックンロールの誕生でもあります。

次はSweet Little Sixteenだから「素敵な16才」とでも訳すのか。R&R好きなおませな女の子がお化粧してハイヒール履いてちょっと大人ぶってR&Rを演奏しているクラブに行きたいとおとんに甘えてお願いして、おとんにおかんを説得してもらうという話。みんながこの素敵な16才と踊りたがってるというあたりが青春ですわ。これもバックの演奏が素晴らしい。ちなみにB.B.キングの曲にも”Sweet Sixteen”という曲がありますが、16才という年齢はアメリカでは日本より大人的な扱いなんだと思います。別にロリコンの歌ではない大人の入り口の歌です。1958年リリース、R&Bチャート一位、ポップチャート2位。

3.Sweet Little Sixteen/Chuck Berry

次の曲は”School Days”のタイトル通り学校生活を歌ったものです。朝起きたら学校へ行って一応一生懸命勉強、昼休みに食堂行って急いでメシ食って、3時になったら学校終わって近所のジュークジョイントでジュークボックスでロックンロール聴いて女の子と踊る。ロックンロール最高や。
こういうティーン・エイジの気持ちを歌ったことでチャックはたくさんのヒットを出したのですが、これも本当に10代の高校生あたりの気持ちにぴったりくるのがわかります。僕はお袋が作ってくれた弁当を午前中に授業中に隠れ食いして、昼は購買でパンと牛乳買って食べて校舎裏で悪い仲間とタバコ吸って、部活終わったら学校前のお好み焼き屋でまた食べて、部活ないときはジャズ喫茶かレコード屋に直行、最初から学校サボるときはジャズ喫茶と映画館に潜んでました。そんなMy School Daysでした。

4.School Days/Chuck Berry

歌とギターのオブリガードが呼応しているところも素晴らしいSchool Days
次はもう何も言うことがないほど有名な曲で映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で知っている人も多いと思います。ビートルズ、ビーチボーイズ始めカバーもたくさんあります。ルイジアナの田舎から出てきた少年がギターが上手くてやがて有名になるよと言う歌詞。イントロのギターはロックン・ロールの定番。そしてこれも見事に韻を踏んだ歌詞です。この曲をカバーするギタリストはたくさんいますが、イントロのギターを正しいフレイズでチャックのような軽やかなスピード感を持って弾いている人はほとんどいません。

5.Johnny B. Goode/Chuck Berry

チャックの曲の中では最も知られている曲だと思います。
とにかく、作詞作曲のすば抜けた能力、ギター・プレイの革新性とリズムの素晴らしさ、8ビートの導入でR&Rの基礎を作ったことなどとにかくいろんな意味で革命的なチャック・ベリーですが、彼のレコードをリリースしていたのはシカゴ・ブルーズの名門レーベル「チェス・レコード」でした。
僕はブルーズにハマってマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフがいるブルーズのレコード・レーベル「チェス」がチャック・ベリーもリリースしていたことがちょっと驚きでした。そしてチャックの録音のバックをマディの録音と同じベースのウィリー・ディクソンやドラムのフレッド・ビロウ、ギターのジミー・ロジャースたちがやっていたのも驚きでした。
故郷のセントルイスからマディのバンドに入ってブルースをやるのが夢でシカゴに来たのにブルースではなく、ロックン・ロールの王様になったチャックの話はまた来週。

2026.04.24 ON AIR

チャック・ベリー生誕100年記念 vol.1

「もっと深くチャックを知ろう」

ON AIR LIST
1.Maybellene/Chuck Berry
2.Wee Wee Hours/Chuck Berry
3.Deep Feeling/Chuck Berry
4.Havana Moon/Chuck Berry
5.Too Much Monkey Business/Chuck Berry

今年は「ロックンロール王様」チャック・ベリーの生誕100年だそうです。それで以前やったチャック・ベリー特集よりもっと深掘りしてみようということで何回かに分けてON AIRします。
まずは1955年に大ヒットしたデビュー曲の「メイベリーン」この曲は今日聴くチャックのファースト・アルバム”After School Session”には収録されていませんが、R&Bチャート一位に輝いた曲です。デビュー曲でチャート一位です。

1.Maybellene/Chuck Berry

2ビートのダンス・ビートで白人のカントリー&ウエスタンがベースになっている曲で、ギターソロで少しグルーヴが激しくなるメリハリもありポップス性もあります。チャックの歌も白人シンガーかなと思う声質のあっさり味で白人層に売れたのも納得。実際ラジオでこの曲を聞いた人たちの中にはチャックを白人だと思った人がたくさんいてコンサート見に行ったら黒人やったということもあったそうです。
歌詞の内容も他の男のキャデラックに乗った彼女のメイベリーンを見かけてフォードで追いかけるという他愛ないティーンエイジャーの青春映画の一コマみたいなものですが、これがまた白人若者にウケたんですね。
しかし、実はチャック本人はシングルのA面に「メイベリーン」ではなくB面になった「ウィーウィー・アワーズ」を入れたかったそうです。この曲は最初オーディションの曲としてチャックがチェスレコードに送ったものですが、別れた彼女のことを夜明け前の小さな部屋で思い出して、君は本当に愛する唯一の人だったと後悔しているブルーズ曲。

2.Wee Wee Hours/Chuck Berry

チャックが好きだったウエストコーストのブルーズマン、チャールズ・ブラウン風味のブルーズでした。ウエストコーストにいたT.ボーン・ウォーカーもチャックのアイドルでした。
チャックはチェスレコードですでに有名だったブルーズマン、マディ・ウォーターズが好きでチェスに入りたかったくらいですから、当然ブルーズマンを目指していて今のようなブルーズの曲をA面にしてもらいたかったわけです。
それがレコード会社の意向でB面になったわけですが、僕も好きな曲ですがどっちが売れるかと言えばやはり「メイベリーン」でしょうね。
もう一曲ブルースのインストルメンタル曲を聴いてみてください。これはチャックがカントリーやハワイアン・ミュージックで使われるラップ・スティールギターでスライドギターをしているのですが、このインストがすごくムードがあり僕は好きです。スライド・ギターも上手いチャックを聴いてください。

3.Deep Feeling/Chuck Berry

こういう曲を聴くと「ロックンロールの王様」という看板ではないチャックの別な音楽性がわかると思います。チャック・ベリーの音楽性は多岐にわたっていてブルーズ、R&B、カントリー&ウエスタン、ジャズそして今から聞いてもらうラテン・ビートもチャックがよく使ったものです。タイトルの「ハバナ・ムーン」のハバナはキューバの首都ですが、ハバナの港で月を眺めながらラム酒を呑んで彼女がアメリカから帰ってくる船を待っているという歌詞なんですが、最後は彼女がくる前に酔っ払って寝てしまい気づいたら彼女はもう帰ってしまったというグダグダの歌です。

4.Havana Moon/Chuck Berry

こういうラテン・ビートを使った背景には50年代のラテン・ミュージックのアメリカでの流行がありアメリカのボビュラー・ミュージックのひとつのビートとして定着しました。つまりロックン・ロールだけでなく最新の音楽を聞きいろんな音楽の可能性をチャックが持っていたことがわかります。そしてほとんどの曲がチャックのオリジナルであり、特にその作詞の能力はずば抜けた才能です。次の歌もとにかく言葉が多くて7番まであるのですが繰り返しがなく全部違う歌詞です。詞の内容は世の中は理不尽でうまくいかない、ひどいことばっかやなぁという歌です。曲名のToo Much Monkey Businessのモンキー・ビジネスはインチキや不正、ごまかしという意味でトゥ・マッチですからごまかしやインチキばっかや世の中は・・・と怒り、嘆いている歌です。
イントロからチャックのギターのキレが素晴らしいです。

5.Too Much Monkey Business/Chuck Berry

チャックが子供の頃はジャンプ・ブルースのルイ・ジョーダンが大人気でこういうノベルティ・ソング、つまり物語風の長い歌詞を作って歌っていて、その影響ですね。こういう言葉をよく知らないと作れない歌詞を作れたチャックはかなりインテリジェンスのある人だと思います。
今回はまだチャックの才能のほんの一端しか紹介できていません。彼のことをひと口で「ロックンロールの王様」と呼びますが、その音楽性は多様で深いものがあります。次回はチャックのR&Rづくしでお送りします。”Hey、Hey The R&R Is Alright”

2026.04.17 ON AIR

中古盤放浪記 vol.15

ジュニア・ウエルズの初期録音

ON AIR LIST
1.Come On In This House/Junior Wells
2.Little By Little/Junior Wells
3.Messin’ With The Kids/Junior Wells
4.It Hurts Me Too/Junior Wells
5.Universal Rock/Junior Wells

先週はバディ・ガイの若き日の録音を聞きましたが、そのバディとコンビを組むことも多かったジュニア・ウエルズの若き日の録音が今回の特集。
ブルーズのハーモニカ・プレイヤーと言えば、天才と呼ばれるリトル・ウォルターを筆頭にサニーボーイ・ウィリアムスンのI(ジョン・リー・ウィリアムスン)とII(アレックス・ミラー)のふたり、ジェイムズ・コットン、ウォルター・ホートン、ビリーボーイ・アーノルド、キャリー・ベル、スヌーキー・プライヤー、シェイキー・ジェイクなどなど錚々たるメンバーが浮かぶが、今回聴くジュニア・ウェルズのハーモニカも私は好きだ。そして歌も個性的で魅力的だ。
そう言えば日本に来たブルーズマンで最初のハーモニカ・プレイヤーはジュニア・ウエルズだった。いやその前にThe Acesでやって来たルイス・マイヤーズもハーモニカを吹いたがどちらかと言えばギタリストの印象が強い。ジュニアはその時バディ・ガイとの初来日だった。ふたりは60年代からコンビを組むことが多く、印象に残るアルバムもいくつかある。
今回聞いてもらうのはジュニア・ウエルズが1957年から63年にプロフィール、チーフ、USAといった小さなマイナーレーベルに残したシングルをコンピレーションしたアルバム。若き日のジュニア・ウエルズ。まずは彼の代表曲の一つでもあるこの曲。
この当時のギターはアール・フッカー、ベースはウィリー・ディクソン、ベースはデイヴ・マイヤーズ
「出ていった彼女に君が泣いていても楽にはならないだろう。だからこの家に戻って来てくれ。そうしたら僕は心から愛するよ。僕には他の女ができて、君には他の男ができたけど頼むからこのいつも家に戻って来てくれ」とヨリを戻したい歌ですが・・どうでしょう。戻りますかね。

1.Come On In This House/Junior Wells

歌にもハーモニカにもなんとも言えない独特の臭さがあるジュニアですが、どこかチンピラ風なストリートの匂いがあるところが魅力です。実際彼はピストルを持ってバーにいるようなヤバい写真も残っているのだが、そういうラフでタフな場所で彼は生きて来たわけだからブルーズにもそういうテイストは出てしまうリアル・ブルーズ。

次はジュニア・ウエルズ的R&Bテイストを入れ込むとこうなるみたいな個性的なブルーズで彼の代表曲。
一晩中出かけて帰って来ない彼女、キスをしょうとしてもイヤがる彼女、少しずつおまえを失っていくのがわかる。少しずつおまえの愛が遠ざかっていく、なんとなく嫌われてしもたな・・という歌。

2.Little By Little/Junior Wells

コーラスが入っている感じやシャッフルビートだけど三連符が効いている三連シャッフルなど少しポップで新しい感じがする60年代初期のシカゴ・モダン・ブルーズ。マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフなどシカゴ・ブルーズの大物の後に出てきたこういうモダン・ブルーズに気づいたのはプロデューサーでもあったウィリー・ディクソン。
次も人気のある曲でジュニアのやんちゃな感じでてます。

3.Messin’ With The Kids/Junior Wells

次はエルモア・ジェイムズのオリジナルですが本当にたくさんのブルーズマンがカバーしている。私もカバーしてますがみんな少し切ない歌詞に男は胸が打たれるのだと思う。愛する女性が愛してる男に心を傷つけれるのを見ると自分の心も傷つけられると始まり、彼は別の女性を愛しているのにあなたは彼にべったりとくっついて彼を愛している。あなたと彼がうまくいかないであなたが傷つけられるとあなたを愛している私も傷つくんだ。にっちもさっちもどうにもならない関係のブルーズ。

4.It Hurts Me Too/Junior Wells

この時代のジュニアのギタリストはまだバディ・ガイではなくてアール・フッカーがメインで参加していますが、至る所にギター名人アール・フッカーの技が出てます。
次の曲はとにかくリズム・セクションのドラムのフレッド・ビロウとベースのジャック・マイヤーズのふたりにギターのアール・フッカーで作るリズムの切れとグルーヴがすごくて、ジュニアはあまり目立ってないのですがどうしても聴いてもらいたい一曲。

5.Universal Rock/Junior Wells

せんじつ、このアルバムを中古でなぜ買ったのかと言えばジャケットのデザインです。かっこいいと言うより「イナタかっこいい」まあB級感の良さでしょうか。それで買ったんですが、家に帰ってレコード棚を見たら同じ音源のP-Vine レコード版がありました。CD版もありました。またトホホでした。今度バディとジュニアのコンビのアルバムも聞きます。来週からは生誕100年のチャック・ベリーを三週連続です。

 

2026.04.10 ON AIR

リクエストにお応えしてバディ・ガイ

ON AIR LIST
1.This Is The End/Buddy Guy
2.You Sure Can’t Do/Buddy Guy
3.First Time I Met The Blues/Buddy Guy
4.I Got My Eyes On You/Buddy Guy

去年の11月に番組のHPにリスナーの方からメールをいただきました。クリームさんという方からです。
「永井さん、こんばんは たまたま 永井さんみつけました ブルースのラジオ番組 あんまりないので うれしいです ブルース聴きたかったら ラーメン屋さんで よく 聴きにいきました。リクエストはバディガイの曲を何かかけてくれますか? まだ現役で 最近新作アルバム出ましたよね よろしくお願いします」とのこと。

メール、ありがとうございます。去年の8月だったと思いますが”Ain’t Done With The Blues”(邦題が終わりなきブルースの旅)をリリースしたバディは現在89歳です。ブルーズマンとしては本当に長いキャリアをもつバディで、アルバムも相当数リリースしていますが、今回は私が個人的に好きな曲をON AIRさせてもらおうと思ってます。まずバディの初期の録音から聞いてみましょうか。
バディは1958年にアーティスティックというレーベルでレコード・デビューしたのですが、その頃の録音でいかにもバディ・ガイらしい曲です。歌もギターもまっすぐに突っ込んでいくすごく気持ちのいいプレイです。

1.This Is The End/Buddy Guy

ギターはやはり先輩のB.B.キングのモダン・ブルーズ・ギターの影響を受けたスクィーズ・スタイルのギターですが、実はソロとオブリを弾いているのはオーティス・ラッシュです。歌とギターのオブリガードが重なっているところがあるのでもう1人ギタリストがいることがわかります。その美雨1人がオーティス・ラッシュで聞こえてくるフレイズもいかにもラッシュです。
バディの歌は高めの声で押し押しで歌われるのでヒステリックだとか言われてましたが、まあこれがバディの歌の個性ですから。僕は気持ちいいくらいまっすぐなプレイで歌もギターもこの時代のバディは好きです。
バディはルイジアナの生まれ育ちですから当然10代の頃は偉大なギター・スリムに強い影響を受けたと思います。次の曲はそのギター・スリムの超有名ブルーズ”The Things That I Used To Do”のメロディをいただいて自分の歌詞をつけた曲。

2.You Sure Can’t Do/Buddy Guy

ギター・スタイルにもギター・スリムのテイストを出しています。

私が初めてバディ・ガイを聞いたのは1972年NHKのテレビで放映されたドキュメント映像だった。イギリスのTV局BBCが制作したシカゴに住む黒人たちの生活を捉えながらそれを取り巻く政治や社会そして文化を映像にしたものだった。その中にシカゴのクラブで歌うマディ・ウォーターズが現れ、その横でギターを弾いていたのがバディ・ガイ。ちなみにハーモニカはジュニア・ウエルズ。そのシーンはそれまでロックを聴いていた自分の音楽の概念を覆す熱いマグマのようなものを私の心に残した。そして雪が積もるシカゴの街のシーンの後ろで流れていたのがバディ・ガイのこの曲。

3.First Time I Met The Blues/Buddy Guy

これがまさに自分の中のバディ・ガイ。
このクールにブチギレているバディのプレイが好きだった。そしてこの曲のタイトル通り、これが私の「初めてブルーズに出会った時」でこの映像に出たバディやマディ、ジュニアの名前を紙に書いてレコードを探す日々が始まった。
50年代半ばに若きバディはコブラレコードの傘下にあったアーティスティック・レーベルで最初に聞いた2曲のシングルをリリースしたが、同じコブラにいたオーティス・ラッシュほどのヒットがなくその後チェスと契約。しかしチェスではマディやハウリン・ウルフのレコーディングセッションに呼ばれるだけで8年間在籍してリリースされたアルバムは”Left My Blues In San Francisco”一枚。つまりチェスにはバック・ミュージシャンとしての扱いしかされなかった。しかしその60年代、65年に参加したジュニア・ウエルズの名盤”Hoodoo Man Blues”での好サポートはいま聴いても素晴らしい。ちなみにこの時チェスと契約していたためクレジットはバディ・ガイの名前は表記できなくて「フレンドリー・チャップ」となっている。そしてチェスからバンガードレコードに移籍したのが1968年。ここでもこれと言ったヒットはなかったが”This Is Buddy Guy”というアルバムは彼のライヴを知りたくてよく聴いてました。

4.I Got My Eyes On You/Buddy Guy

うーん、かっこいい。彼のエキセントリックな歌声は好き嫌いは分かれるところで、実際ずっと聴いていると疲れて飽きてしまうところもありますがブルーズが持つインパクトは充分で魅力的。ギターもシャープでいい。
ライヴのせいかチューニングがゆるくて気持ち悪いところもあるが、それよりブルーズ衝動が優って本領発揮。
バディ・ガイは来日ライヴで2,3度一緒になったこともあり、決して嫌いなブルーズマンではないのだが、いつ頃からかライヴでダラダラとギター・ソロを弾いて歌をしっかり歌わなくなった。しかもギターの音もやけに歪んだラウドな音になり、一体何を弾いているのかわからなくなり、ブルーズというよりロックに彼自身が傾いてしまった。そのあたりからあまり聞かなくなってしまった。でも、アルバムとしてはいいものもあるのでまた近々特集します。クリームさんリクエストありがとう!来週はバディの相棒、ジュニア・ウエルズの特集です。お楽しみに!