スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集 第二回
Johnnie Taylor
「南部の黒人たちの生活に根ざし圧倒的な支持を得たブルーズン・ソウル・シンガー、ジョニー・テイラーvol.1」
ON AIR LIST
1.Part Time Love/Little Johnny Taylor
2.Part Time Love/Johnnie Taylor
3.Who’s Makin’ Love/Johnnie Taylor
4.Jody’s Got Your Girl And Gone (Live)/Johnnie Taylor
5.Hello Sundown/Johnnie Taylor
ブルーズという音楽はヴォーカル・ミュージックです。ギターやハーモニカが前面で脚光を浴びることもありますがインストルメンタル・ミュージックではないのです。例えばB.B.キングのギタープレイは確かに多くのギタリストに大きな影響を与えましたが、B.B.がデビューして喝采を浴びたのはまずその歌が素晴らしかったからです。ブラック・ミュージックの世界では歌の力が最も重要です。しかし日本ではギターを弾かない歌だけのブルーズマンは大御所ボビー・ブランドはじめZ.Z.ヒル、ジュニア・パーカー、ジョニー・テイラーなどあまり人気がありません。そのことに長年腹立たしく思ってきたのですが楽器を弾かない歌だけで素晴らしいブルーズを残したスタンダップ・ブルーズ・シンガーたちの特集の2回目ジョニー・テイラーです。
1938年生まれのジョニー・テイラーは名門ゴスペル・グループ、「ソウル・スターラーズ」のサム・クックの後釜に抜擢された実力のあるシンガー。61年、そのサムが立ち上げた「サー・レーベル」からデビュー。そこから2000年に66才で亡くなるまでコンスタントにアルバムを出し続け、ヒットも多くブラック・ミュージックの最前線で活躍したシンガーでした。
前回のリトル・ジョニー・テイラーから今日はジョニー・テイラー。名前にリトルが付いているかどうかだけで歌っているジャンルが二人ともブルーズ&ソウル、二人ともゴスペル出身、活動した年代もほぼ同じ、二人とも似た芸風・・ということで前回聴いたリトル・ジョニー・テイラーのこの曲をまずちょっとだけ聴いてみよう。
1.Part Time Love/Little Johnny Taylor
この同じ曲をジョニー・テイラーも録音しているので今度はそのジョニー・テイラーのヴァージョンを。
2.Part Time Love/Johnnie Taylor
オリジナルの先に聞いたリトル・ジョニー・テイラーの歌はすごくパワフルでやや攻撃的、後のジョニー・テイラーはテンポも遅くしてなんとなく気だるいと違いはあるのですが似てるところもあります。二人ともゴスペル出身で歌い方がやはりゴスペル・テイストなところですね。。
先週聴いたリトル・ジョニー・テイラーは1943年生まれ。ジョニー・テイラーは38年生まれで5才ほど年上ですがほぼ同時代に活躍した二人。今の曲は1963年にリトル・ジョニー・テイラーがシングルで歌ってR&Bチャート1位(ポップチャート13位)になり、6年後の69年にジョニー・テイラーがリリースしたアルバム”Raw Blues”に収録されていますがシングルで出したかは不明です。しかし、ジョニー・テイラーも1968年に次のこの”Who’s Makin’ Love”がR&Bチャート1位(ポップ・チャートは5位)。お互いに60年代中頃から70年代にかけて活躍しています。ただ、今日聴くジョニー・テイラーの方が名前が知られたのは所属していたレコード会社がオーティス・レディングやルーファス・トーマス、アルバート・キングがいたメンフィスの有名レーベル「スタックス」
そしていまの”Who’s Makin’ Love”が映画「ブルース・ブラザーズ」で使われたり、76年には”Disco Lady”が300万枚というメガヒットになったり、晩年も南部マラコ・レコードからコンスタントに黒人に支持されたアルバムをリリースしました。なのでジョニー・テイラーの方が名前を知られているとうことはあります。では、68年のその大ヒット。
「あんたが外で誰かと浮気しているときにあんたの嫁さんは誰と浮気してるんやろね」という恐ろしいけど笑える歌です。先週から不倫ソング続きですが、今週もこんな感じで・・
3.Who’s Makin’ Love/Johnnie Taylor
次は1971年ジョニー・テイラーの2度目のR&Bチャート1位に輝いた曲です。曲名は「ジョディはお前の女を奪って連れ去ってしまった」ですが、ジョディとは間男のことで女性の浮気相手のことをジョディと呼んでいます。要するに「一生懸命働いて出世して金儲けしょうと頑張ってる間に留守の家に入った間男(ジョディ)があんたの女を取ってしまうよ」と。まあ、前の歌と題材は似てますが、これも大ヒットしたということはよっぽどアメリカの黒人たちは不倫ソングが好きなんですね。
ではライヴ・バージョンで黒人クラブの感じを味わってください。
4.Jody’s Got Your Girl And Gone (Live)/Johnnie Taylor
でも、アメリカの映画とかドラマを見てると男は仕事をバリバリやって金をいっぱい稼がないと行けないし、子供たちとも遊んで女房といる時間もちゃんと作らないといけない・・大変です。いつもスキンシップしたり、もちろんレディ・ファーストだし、「愛してる」ってしょっちゅう言わなあかんし、金稼がなあかんし・・私には無理です。
では最後も不倫ソングです。
タイトルは「やあ、日没」
昼間は会えないが日が沈むと会える女性と密会してるわけです。悪いことやとわかってるけど会わずにはいられないと。だから夕暮れになって日が沈むのをいつも待っているわけです。
5.Hello Sundown/Johnnie Taylor
We Know It’s Wrongと悪いのはわかってると。
ジョニー・テイラーの絶妙な歌の表現です。大人の男のブルーズをそれも不倫の歌をこれだけ品良く表現できるシンガーもいないです。有名なところではビリー・ポールの”Me & Mrs.Jones”という曲も密会のソウルですが、あとは”Dark End Of The Street”とストリートの暗くなった奥で密会するという有名な歌もあります。日本で密会ソングやと島津ゆたかさんという歌手の「ホテル」いう歌謡曲くらいですか。
また、来週!