WHAT'S NEW

2021年05月14日
       
2021年05月07日
       
2021年04月30日
       
2021年04月26日
       
2021年04月23日
       
2021年04月17日
       
2021年04月16日
       
2021年04月09日
       
2021年04月09日
       
2021年04月08日
       

2021.05.14 ON AIR

シカゴ・ブルーズの名ギタリスト、エディ・テイラーのスタジオ仕事集

Eddie Taylor In Session/Diary Of Chicago Bluesman 1953-1957 (Jasmine JASMCD 3070)

ON AIR LIST
1.You Got Me Dizzy/Jimmy Reed
2.Ride’Em On Down / Eddie Taylor
3.Dimples/John Lee Hooker
4.Ice Cream Man/John Brim
5.Big Town Playboy/Eddie Taylor

ここ数年イギリスの「ジャスミン」というレーベルがブルーズのいい感じのコンピレーション・アルバムを出してまして、今回聴くのはシカゴのブルーズ・ギタリスト&シンガーのエディ・テイラーのスタジオ・ワークを集めたコンピ盤。エディ・テイラーは1977年12月に来日してご覧になった方もいらっしゃると思いますが、ぼくがエディ・テイラーの名前を意識したのはブルーズのヒット・メイカーとしてシカゴだけでなく全米にその名前を知られたジミー・リードのアルバムでした。
ジミー・リードのブルーズは全体にダウンホームでありながらどこかポップな味わいがあり、メロディもはっきりしていて歌詞もわかりやすい、途中のハーモニカのソロもワンパターンと言って良いほどの定番で、ジミー・リードの親しみのある緩やかな歌は一緒に口ずさみたくなるものです。つまりイナたいがどこかポップ。そしてついつい腰が浮いて踊りだしたくなる唯一無二のグルーヴがあります。それをリズムで支えていたのがエディ・テイラーでした。
まあ、縁の下の力持ち。有名旅館のしっかりした番頭はんという感じですね。
まずはそのジミー・リードのR&Bチャート3位まで上がった1956年のヒット曲。ドラムがこれまた名手のアール・フィリップスでエディ・テイラーのギター、そして歌とギターとハーモニカがジミー・リード
しっかりベース・パターンをやってグルーヴを出しているのがエディ・テイラー
「聴いてくれやベイビー、ちゃんとしたこと言うてんねん。オレは朝家を出るけど一晩中遊んでられへん。何でか言うたらオマエにクラクラしてる。ホレてんねん。自分のことがわからんくらいクラクラしてるんや。ほんまやて、オマエにホレたように他の女を好きになったことはない。グラグラや、めっちゃホレてんねん」
1.You Got Me Dizzy/Jimmy Reed

実はエディ・テイラーとジミー・リードは同じミシシッピーの田舎の幼なじみでジミー・リードにギターを教えたのはエディ・テイラーでした。そして大人になって二人は別々にシカゴにやってきて、二人ともプロのみゅーじしゃんをめざしていたのですがジミーがVee Jayレコードでレコーディングをすることが決まった時、スタジオに現れたのが幼なじみのエディでした。以来、ジミーの録音には必ずと言って良いほどエディが参加してジミーの音楽を支えた。何曲も長い間やりライヴも一緒にやってたみたいですから仲がよかったんでしょうね。
次のはエディがメインで歌う曲にジミーが参加しているものです。ドラムと三人でベースもいないんですが、ベースがいないことが全く気にならないグルーヴの素晴らしさですが、エディとジミーの二人のシャッフルのビートが本当に気持ちのいい曲です。ローリング・ストーンズもカバーしています。
2.Ride’Em On Down / Eddie Taylor

エディ・テイラーはVee Jayレコードのレコーディングに数多く参加しているのですが、偉大なジョン・リー・フッカーのVeeJay録音にも参加しています。ジョン・リーは60年代の初期にVeeJayと契約して”Boom Boom”のようなヒットを出してイギリスのロック・ミュージシャンにも取り上げられ次第に世界的に認知されるブルーズマンになっていきます。次の曲もアメリカのチャートには出なかったけれどイギリスのチャートには上がった曲です。次の曲もイギリスのアニマルズやスベンサー・デイヴィス・グループ、ドクター・フィールグッドなどに愛されカバーされた曲です。これにもエディ・テイラーが参加しています。
「君の歩き方が好きやねん。めちゃ好きやねん。俺はオマエをしっかり見てるで。ほっぺにえくぼあるよね。いいよね。ずっとオマエを見てるよ」
3.Dimples/John Lee Hooker

1977年にエディ・テイラーはギターのルイス・マイヤーズそしてルイスの弟のベースのデイヴ・マイヤーズ、ドラムのオディ・ペインと共に日本ツアーをしました。実はその時にこの番組のキーステーションであるアップル・ウエーブがある弘前でもライヴをやっています。弘前で「ブルーズン」というブルーズ・バーをやっておられた正井さんという方を中心に有志が集まりエディのライヴを弘前で開催しました。そのツアーの中では一番小さい街が弘前だったと思います。今思うエディ・テイラーを弘前で聞きたいという強い熱意に頭が下がります。
僕はこの来日のライヴ・アルバムになった京都で聴いたのですが、その三年前の1974年にルイス・マイヤーズとデイヴ・マイヤーズはロバート・Jr.ロックウッドと日本に来ていました。それでまあ「日本ではオレの方が人気があるんだぞ」とルイスは思ったのかも知れませんが、エディ・テイラーとステージで張り合ってしまいライヴ自体はあまりいいものではありませんでした。でも、エディのシャッフルのビートを聞けただけでも僕は嬉しかったんですが。

このエディ・テイラーのコンピレーション・アルバムの最初に収録されているジョン・ブリムの有名曲、シカゴ・ブルーズの有名曲でもありますが、「アイスクリーム・マン」
これにもエディが参加していました。「夏になったら涼しくなるものが欲しいやろ。君のためにその涼しくなるものを持ってんのやけど逃さん方がええで。オレは君のアイスクリーム屋や。通り過ぎる前によびとめてや。オレが持ってる味に君が絶対満足するから」とまあアイスクリームにかけたちょっとエロい歌ですが、名曲やとぼくは思います。
4.Ice Cream Man/John Brim
このアイスクリーム屋はハードロックのヴァン・ヘイレンがカバーしています。You Tubeに出ているので探してみてください。なかなかいい感じでした。

次の曲名がビッグ・タウン・プレイボーイで実際エディがプレイボーイだったかどうかはわかりませんが、まあ働かないで女性に食べさせてもらっている男の歌です。
「朝、あいつがあんた仕事探して来てよ。シカゴはええとこやけどめちゃ景気悪いねん。あんた先に行ってるけどそこが私の嫌いなとこや(I Don’t Want You Go Ahead.That’s One Thing I Don’t Enjoy/ここの意味が今いちよくわからない)。大丈夫や、あんたは大都会のプレイボーイやから」そのあとも「一日中街をふらふらして夜中に帰って来てとか、あんたなんかやりたい放題やって一文の値打ちもないで」と女性の愚痴が続くんですが最後はあんたは大都会のプレイボーイやからで終わってしまう。
働かない男やけど女性に優しくてええ男やというところで許されている男の歌でしようか。
5.Big Town Playboy/Eddie Taylor

このジャスミン・レコードからリリースされたエディ・テイラーのアルバムですが、初めてエディを聞く人にはいいかも知れません。

2021.05.07 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード vol.32
ルイジアナ・ブルーズ vil.3

「ニューオリンズR&Bの土台を作った偉大なピアニスト/プロフェッサー・ロングヘア」

21 Blues Giants/Professor Longhair (P-Vine PCD-3758)

NEW ORLEANS PIANO/Professor Longhair(Atlantic Jazz 7225-2)

Crawfish Fiesta/Professor Longhair (Alligator/King KICP 2581)

ON AIR LIST
1.Mardi Gras In New Orleans/Professor Longhair And His Shuffling Hungarians
2.Tipitina/Professor Longhair
3.Big Chief/Professor Longhair
4.Bald Head/Professor Longhair

今年はニューオリンズの年初めの「マルディグラ」のお祭りも春の「ジャズ・ヘリテイジ・コンサート」も中止となりました。
それでもニューオリンズの人たちは自分たちの家を飾ったりハウスパーティを楽しんだようです。
今日のブルーズ・スタンダード特集はルイジアナ編ということでプロフェッサー・ロングヘアの名曲をお送りします。

プロフェッサー・ロングヘアの曲はもう何度もこの番組でON AIRしていますが、今回は曲を中心に後世にも残る彼のスタンダード名曲を紹介します。
プロフェッサー・ロングヘアは通称「フェス」と呼ばれていたのでここからはフェスと記します。

デビュー録音は1949年。当時のフェスのバンド「シャッフリング・ハンガリアンズ」でした。
最初に聞いてもらうこの曲はフェスの代表曲のひとつであり、ニューオリンズ・ミュージックを代表する一曲でもあります。
「マルディグラを見にニューオリンズへ行くんだよ。カーニバルがどんなのか知りたいんだ。チケットも持ってる。ニューオリンズに着いたらズールーキングに会いたいんだ」
マルディグラというのは先ほども少し触れた1月から2月にかけて催されるお祭りでいわゆる謝肉祭と呼ばれるものです。ストリートでパレードがあったり舞踏会やいろんな催しがあり呑んで食べて踊って歌ってのどんちゃん騒ぎが続きます。最後の日は「ファット・チューズディ」と呼ばれ翌日から行われる禁欲的な日々を前に呑んで食べるので「でぶっちょの火曜日」。最後の狂乱のお祭りがくりひろげられます。歌詞にでてくるズールー・キングというのはアフリカのズールー族をリスペクトしたその王様のこと。やはりこういう所にもアフリカン・アメリカンの原点であるアフリカへの憧れがあるように思います。
マルディグラはニューオリンズのというよりアメリカを代表するカーニバルで、映画の「イージー・ライダー」もマルディグラに行くストーリーでした。アメリカ人にとっては一生一回は行って見たいと思っているカーニバル。

1.Mardi Gras In New Orleans/Professor Longhair And His Shuffling Hungarians
最初に口笛から始まりましたが、この口笛もフェスの音楽に欠かせないものでいろんな曲で使われています。この口笛だけでファンキーなムードになっています。
フェスは30年代から活躍していたのに初録音が1949年ですからかなり時間がかかってます。ニューオリンズのクラブ界隈のミュージシャンの間ではすでに独創的なフェスの演奏は評判になっていましたが、なかなか世に出る機会がなかった人です。
その独創性は次の曲でもしっかり聴くことができます。

「ティピティーナス」という有名なクラブの名前は次のフェスの「ティピティーナ」という曲名からつけられました。歌の内容は他愛のないパーティ・ソングでティピティーナというのは女性の名前で、「ティピティーナ、一緒に楽しもうぜ」というだけの歌ですが、カリブのルンバのリズムとブルーズのブギのテイストが混じった独特のフェスのピアノ・サウンドでこれがニューオリンズR&Bのサウンドとグルーヴ、ニューオリンズ・ファンクの元のひとつです。また、ニューオリンズのピアニストにとっては二つ、三つのリズムがミックスされたこういうポリリズムのフェスの音楽は教科書のようなもので、ずっと受け継がれています。
毎年クラブ「ティピティーナス」では「プロフェッサーロングヘア・ピアノナイト」というライヴが催されてニューオリンズのピアニストたちがフェスの偉業を称え、ピアノプレイを競い合います。
2.Tipitina/Professor Longhair
素晴らしいです。フェスの気取らない歌声とファンキーなピアノ、そしてカリブからのルンバのリズム、ニューオリンズならではのダウンホームなテイストがたまらない。
聞いてもらっているようにいわゆるシカゴブルーズのオーティス・スパンやメンフィス・スリムのようなブルーズ・ピアノとは全く違うピアノ・スタイルです。
次の曲のように普通のシャッフルのリズムを基本としたブルーズもあるのですが、その中にやっぱりニューオリンズの匂いがただよってます。よく「陽気なニューオリンズ」という表現を見かけますが、陽気、つまりファンキーなだけでなく、そこに独特の叙情が今の曲に漂っています。

実はフェスが本格的に認められるようになったのは70年代に入ってからです。50年代には同じニューオリンズのファッツ・ドミノがR&Rブームの波にも乗り世界的にも知られましたが、フェスもほぼ同世代のミュージシャンなのに広く知られることはなかった。60年代にはリー・ドーシー、アニーK・ドゥ、アーマ・トーマス、クリス・ケナー、アーロン・ネヴィルなど全米ヒットを出すニューオリンズのR&Bシンガーたちが次々と登場したのですが、フェスはそのシーンにも登場しませんでした。60年代はミュージシャンというよりギャンブラーとして裏の世界で生きていたような有様でした。今から思えばその60年代あたりにもたくさんレコーディングの機会があれば、もっとフェスの音楽が残っていたと思います。
次の「ビッグ・チーフ」もニューオリンズR&Bを代表する曲。作ったのは同じニューオリンズのアール・キングです。
聞くのはフェスの最後のアルバムとなった80年アリゲーターレコードからリリースのアルバム 「クロウフィッシュ・フィエスタ」
3.Big Chief/Professor Longhair
1980年1月に録音して二ヶ月後にフェスは天国へ行ってしまいました。歌もピアノもこれが最後とは思えないほど力がありソウルフルです。そしてフェスを中心に作られているビートのグルーヴはやはり唯一無二のニューオリンズ・サウンドです。

シャッフルのビートとニューオリンズのマーチングのビートがミックスされ、そこにフェスの歌に呼応するコーラスがあってまさにニューオリンズのカーニバルのムードがいっぱい。
そして、途中のフェスのピアノ・ソロのファンキーなこと!
4.Bald Head/Professor Longhair
なかなか広く知られなかったフェスの音楽は晩年そして亡くなってからますますその評価が高まっています。
そして、今日ON AIRした曲はどれもニューオリンズのスタンダード曲としてずっと歌い継がれているものです。

2021.04.30 ON AIR

昨年ON AIRした「New Moon Jelly Roll Freedom Rockers」の第二弾!

New Moon Jelly Roll Freedom Rockers Volume 2 (BSMF-2724)

ON AIR LIST
1.She’s About a Mover/Alvin Youngblood Hart
2.Can’t Stand to See You Go/Jim Dickinson
3.Messin’ with the Kid/Jim Dickinson
4.Blues For Yesterday/Charlie Musselwhite

昨年11月に番組でON AIRして好評だった「New Moon Jelly Roll Freedom Rockers」の第二弾が3/19にリリースされました。
メンバーは前回と同じで「ノース・ミシシッピ・オールスターズ」のルーサーとコーディのディッキンソン兄弟にこのアルバムを録音して亡くなってしまった父親のジム・ディッキンソン、そしてハーモニカのチャーリー・マッセルホワイト、アルヴィン・ヤングブラッド・ハートにジンボ・マシス。

まずアルヴィン・ヤングブラッドハートが歌っている曲を聴こうと思うのですが、これどこかで聞いたことある・・と思ったら今は亡きダグ・サームのデビューした頃のサー・ダグラス・クインテットで録音した65年のヒット曲ですね。いいところから選曲してきます。曲を書いたダグ・サームは60年代から活躍していていわゆるテックス・メックスと呼ばれるテキサスとメキシコの音楽がミックスしたような音楽をやってまして、ブルーズはもちろんカントリー&ウエスタン、ケイジャン、ヒルピリーなどのテイストも取り込んだ面白いアルバムを作ってきた人です。残念ながら99年に58歳で亡くなりました。
「いつも通りを歩いているキレイな女の子に見とれていたら、ある日あなた名前は何ていうの?と聞かれて有頂天になるという若い男の歌」です
1.She’s About a Mover/Alvin Youngblood Hart
テンションの高いアルヴィンの歌がいいですね。
この曲はビートルズのリンゴ・スター、ソウルのオーティス・クレイもカバーしてます。

このアルバム「New Moon Jelly Roll Freedom Rockers vol.2」は2007年に録音されていて、録音後にギターとプロデュースの役目もやっていたお父さんのジムが亡くなり14年間日の目を見なかったのですが、カナダのストーニー・プレインというレコード会社から去年リリースされました。その第二弾が今日聞いてもらっているアルバムです。
ルーサーとコーディのディッキンソン兄弟はこの番組でもON AIRしたメイヴィス・ステイプルズの最近のアルバムをプロデュースしたりするオルタナ系のミュージシャンで、ジンボ・マシスもその系統のミュージシャンです。チャーリー・マッセルホワイトは60年代のシカゴでブルーズを始めた白人のベテラン、ハーモニカ・プレイヤー、アルヴィン・ヤングブラッド・ハートはこのレコーディング・メンバーの中でたった一人のアフリカン・アメリカンで1963年のウエストコーストのオークランドに生まれてます。それで子供の頃におばあちゃんがいるミシシッビに夏休みに行ってそこでチャーリー・パットンなどの古いブルーズを聞いてからブルーズに入ったミュージシャン。

次はジミー・リードのダウンホームなブルーズをディキンソンのお父さんジムが歌ってます。ジミー・リードはいろんな曲をよくカバーされるブルーズマンですが、この曲をカバーしている人はあまりいません。
「彼女が去って行くのを見るのは耐えられない」という内容ですが、「初めて会った夜に俺のこと愛してるって言うたの覚えてるか」とか言うてるんですが、最後にはもし行ってしまうやったら電話くれよ。俺は待ってるよ。一人っきりで暮らしてるんや」とえらい情けない話になってます。でも、こういう場合、女性はもう帰ってきません。
2.Can’t Stand to See You Go/Jim Dickinson

このNew Moon Jelly Roll Freedom Rockersというのはジャム・セッションのバンドで継続してずっとやっていこうという感じでもなかったと思います。スタジオにメンバーが円を描くように座ってそれぞれの好きな曲を持ち寄って順番に録音したらしいです。まあ、お互い音楽のルーツがまずブルーズにあることはわかっているし、カバーの曲を録音するのでもみんな知っていてやっている感じです。そういうお互いのルーツが解り合っているとこういうジャム・セッションも楽しいと思います。
次の曲なんかもたぶんジム・ディキンソンが「ジュニア・ウエルズのMessin’ with the Kidを歌おうと思うんやけどどうかな」と言ったら。みんな「ああ、あの曲ね、いいね」という感じだったと思います。
3.Messin’ with the Kid/Jim Dickinson

次はチャーリー・マッセルホワイト。これは彼のオリジナルですね。チャーリーは最近エルビン・ビショップと二人でアルバムをリリースしたり今も精力的に活動していますが、そのエルビンとのアルバム「100 Years Of Blues」でもこの曲をやっています。今年77歳になると思いますが、いろんなミュージシャンとのコラボも多くて本当にいい感じで音楽を続けています。
「転がり落ちるようにハイウェイを行くんだ。日没に向かって転がり落ちて行く。昨日はずっとブルーズだった。辛い時間だったけど俺たちは楽しかった。」
チャーリーの歌が薄味なのでアルヴィン・ヤングブラッドハートの濃い味のスライドギターでいい感じになっています。
4.Blues For Yesterday/Charlie Musselwhite

このNew Moon Jelly Roll Freedom Rockersのvol.2は日本のBSMFレコードからリリースされています。第一弾を聞いていない方是非それも聞いてください。

2021.04.23 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.29
ミシシッピー・デルタ・ブルーズ Vol.3

永遠に歌い継がれるロバート・ジョンソンのスタンダード名曲その2

THE COMPLETE RECORDINGS/Robert Johnson (SME RECORDS SRCS 9457-8)

ON AIR LIST
1.Love In Vain / Robert Johnson
2.From Four Until Late / Robert Johnson
3.Preachin’ Blues / Robert Johnson
4.Me And The Devil Blues / Robert Johnson
5.Kind Hearted Woman / Robert Johnson

前回に引き続きロバート・ジョンソンが残していまも歌い継がれている彼の名曲の紹介ですが、今回は優れたソングライターでもある彼の楽曲に焦点を当てています。
僕がロバート・ジョンソンという名前を初めて知ったのは19歳の頃。オールマン・ブラザーズなどブルース・ロックに興味を持ち始めていた頃にたむろしていたロック喫茶のオーナーが「ブルース聞くならこれやで」と聞かせてくれたのがジョンソンのアルバムだった。しかし、当時まだロック・フリークだった僕は弾き語りの古いジョンソンのブルーズの魅力が全くわからなかった。そして、ほぼ同時期1970年、リリースされたばかりのローリング・ストーンズの”Get Yer Ya Ya’s Out!”に収録されていた”Love In Vain”の解説でロバート・ジョンソンの名前を見つけ、それがジョンソンの曲であると知りました。ストーンズのカバー・バージョンはエレキ・バンドのサウンドということもありすんなり聞くことができたのですが、今から聴く弾き語りのジョンソンのオリジナルを受け入れられるようになるにはそれから2年ほどかかりました。
「虚しき愛」と邦題がつけられたこの曲は列車で去っていく彼女を駅で見送り、彼女との愛が終わったことを歌った悲しい曲です。列車が駅に入って来て彼女の目を見つめながら泣きそうになってしまう男。そして列車が出発して列車を見送る男の目に入ったのは自分の憂鬱を表すようなブルーのライトと自分の心の中を表すような赤いライト。そして虚しい気持ちだけが残る・・映画のワンシーンのような実に素晴らしい歌詞です。
1.Love In Vain / Robert Johnson
ボブ・ディランが20世紀最高の歌詞と言ったこの”Love In Vain”
ロバート・ジョンソンのような戦前の黒人ブルーズマンは教育をまともに受けられなかったので文字を読めない、書けない人が多かったのですが、ジョンソンは紙に文字を書いていたという話もあり、ひょっとするとこの美しい歌詞なども言葉を選んで紙に書いて作詞したものかもしれないですね。

ジョンソンが次の曲を録音する1937年より15年前、1922年にジョニー・ダン・オリジナル・ジャズ・ハウンズという初期のジャズバンドが録音した”Four O’Clock Blues”という曲を元にしたのではないか、とか盲目のギター名人のブラインド・ブレイクの曲、またはジョンソンが好きだったピアニスト、リロイ・カーの曲から発想を得たのではないかとも言われています。つまり、ジョンソンの多くの曲には彼が聞いて来たそれまでの多くのブルーズ、ジャグ、ゴスペル、初期のジャズなどを自分の曲のテイストに取り込んでいます。自分の想いを歌にするだけでなくジョンソンには他の音楽も取り入れられる音楽的な力量とセンスがありました。次の曲はラグタイムのテイストですが、彼の曲の後ろには彼のミュージシャンとしての懐の深さを感じさせます。
この歌は「四時から夜遅くまで俺は手を握りしめて泣いていた」と始まる。いろんな男と騒いで楽しくやっている彼女に嫌気がさして俺はもうここから出ていくという歌。またしてもジョンソン得意の出ていく歌。
2.From Four Until Late / Robert Johnson

ジョンソンはデルタ・ブルーズの先輩であり師匠でもあるサン・ハウスの影響を強く受けていて、次の曲はサン・ハウスの曲が元になっています。のっけから「朝目が覚めたらブルーズが人間のように歩いてくる」とはじまります。こんな風にブルーズを人間に例えるいわゆる擬人化はブルーズの歌詞に時々見受けられるものです。やってくるブルーズが襲いかかって来て何もかもめちゃくちゃにしてしまう。怖いブルーズという存在に恐れを抱いている歌です。ブルーズという存在が不吉な、日本でいう何か悪い霊のような存在みたいに思えます。
この曲の聞きどころはジョンソンのリズム感のすばらしさが出ているギター・プレイ。グルーヴするワン・コードのギター・プレイにはのちに生まれるファンク・ミュージックの原型のようなものさえ感じられます。恐ろしいブルーズから逃げようとして走っているような曲の疾走感が素晴らしい。
3. Preachin’ Blues / Robert Johnson

ロバート・ジョンソンが悪魔に魂を渡した代わりにギターが上手くなったという有名な伝説があります。ギターの練習を夜中に墓場でやっていたとか、夜中に十字路で待っていると悪魔がやって来て命が短くなるのと引き換えにギターの上手さを悪魔から手に入れたというような話です。次は「俺と悪魔のブルーズ」というタイトルですが「朝早く悪魔がやって来てドアをノックした。俺はやあ、サタン、出かける時間だねと言った。俺は悪魔とかたを並べて歩いた。そして俺の女を気持ちが満足するまで殴ってやるんだ。俺の亡骸はハイウェイの横に埋めてくれ。そうすればグレイハウンドを捕まえて乗ることができるから」と、気持ちの悪い不気味な歌ですが、これもジョンソンならではの名曲です。実にこれも映画のように頭に映像が流れる歌詞です。
4.Me And The Devil Blues / Robert Johnson
「俺の女を気持ちが満足するまで殴ってやるんだ」というところの歌詞がとても不可解なのですが、日頃の不満、心に積もるイライラを女を殴ることでしか発散できないのか。それとも女性という存在に深い不信とか恨みがあるのか・・・本当のところがわかりません

次のKind Hearted Womanの日本盤に「心優しき女」というタイトルがついていたのでぼくは「心優しい女性にぞっこんホレているのに女性の方が何枚も上手で他にも男がいる」そういう歌なのだとずっと思っていたのですが、後からこのKind Hearted Womanというのは男を金で誘っていわゆるツバメ(ジゴロ)として自分の夜の相手にする女のことだとわかって驚きました。たぶんロバート・ジョンソンは放浪の旅の途中で何度もそういう女の世話になっていたようです。ある意味、「心優しき女」というタイトルとは真逆の意味です。「そういう女が何でもしてくれるんだけどあいつらは性格悪いよな」と歌った後に「オレはあの娘に夢中なのに、あの娘はオレを愛してないんだ」という歌詞が出てくるのですが、この場合のあの娘がその悪い女を指しているのかそれとも全く別の女のことを言っているのかは不明です。
この曲がジョンソンが1936年にテキサスのサン・アントニオで初めて録音した曲で実に85年前です。
5.Kind Hearted Woman / Robert Johnson
この曲はジョンソンが録音した後にマディ・ウォーターズ、ロバート・Jr.ロックウッド、ジョニー・シャインズ、エディ・テイラーといったブルーズマンがカバーし、ロックではジョニー・ウィンター、エリック・クラプトンなどがカバーしています。

2021.04.16 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.28
ミシシッピー・デルタ・ブルーズ Vol.2
永遠に歌い継がれるロバート・ジョンソンのスタンダード名曲その1

THE COMPLETE RECORDINGS/Robert Johnson (SME RECORDS SRCS 9457-8)

ON AIR LIST
1.Come On In My Kitchen / Robert Johnson
2.I Believe I’ll Dust My Broom / Robert Johnson
3.Walkin’ Blues / Robert Johnson
4.Ramblin’ On My Mind / Robert Johnson
5.If I Had Possession Over Judgment Day / Robert Johnson

このブルーズ・スタンダード・シリーズのミシシッピー・デルタ・ブルーズの第一回でロバート・ジョンソンの“Sweet Home Chicago”と”Cross Road Blues”を選んだ。
ジョンソンはまだ後世にも聞かれるだろう名曲がたくさんあり、今日のブルーズ・スタンダード・シリーズはロバート・ジョンソンの名曲、スタンダード曲だけを選曲します。
1911年に生まれ、38年に27歳の若さで亡くなったロバート・ジョンソンは29曲を録音しただけですが、この29曲の中にはブルーズ史上重要な曲が多くあります。
ジョンソンはウィスキーに毒を入れられ毒殺されるというセンセーショナルな死だったことや、写真も3枚ほどしかない放浪のブルーズマンだったことからミステリアスにと捉えられがちですが、「ブルーズの作詞作曲家」として最重要人物の一人です。

“Come On In My Kitchen”は人気のある曲でカバーもたくさんされています。ロックだとピーター・グリーン、エリック・クラプトン、デラニー&ボニー、レオン・ラッセル、ジョニー・ウインター、シンプリー・レッドなんかもカバーしていて、ジャズ系のカサンドラ・ウィルソンも絶妙のアレンジで歌っています。末端の私も録音したことがあります。
「雨が降りそうだから台所の中に入っておいでよ」と歌うこの歌が全体的に何を歌おうとしているのか正確に捉えるのは難しいのです。親友から奪い取った女がまた他の男と何処かへ行ってしまいやるせない気持ちの主人公。外には冬の冷たい風も吹き、雨も降りそう。そんな外にどうも思わせぶりな女性がいる。その女に台所に来ていいことしょうぜと誘っている。厳しい冬が来るけれどオマエ、蓄えがなくて冬を越せないだろう。だから台所に入って来いよ。つまりオレといれば心細くないぞ・・と口説いている歌のように思える。降りそうな雨、冬を迎える冷たい風、女に逃げられた男と気をもたせて外から男を見る女、夜が迫るミシシッピの広野の寂しい風景・・そういったものが映画のワンシーンのように心の中に広がる。
30年代綿花畑が広がる南部の田舎で貧しく頼る者も少ないアフリカン・アメリカンの心象が浮かんでくる名作。
1.Come On In My Kitchen / Robert Johnson
スライド・ギターの音色もあり曲全体の寂寥感が滲みでて来る優れた曲です。一緒に旅をしたことのあるブルーズマン、ジョニー・シャインズによると、ある夜、ジューク・ジョイントでジョンソンがこの曲を演奏していたところそこにいた男も女もみんな涙してしまったという話もあります。

次の曲もロバートJr.ロックウッド、ハウリン・ウルフ、ラッキー・ピーターソン、ピーター・グリーンとカバーの多い曲で私もカバーし録音していますが、私はエルモア・ジェイムズがバンドスタイルでカバーしたものを元にしました。
原曲のロバート・ジョンソンは弾き語りにも実は元があり、先輩のブルーズマン、ココモ・アーノルドの歌詞からいくつかを引用しています。ジョンソンは歌詞だけでなく、メロディや曲想もいろんな先達のブルーズマンの曲から引用しており、それまでのブルースの美味しいところを的確に取り入れる才能もありました。
“I Believe I’ll Dust My Broom “のI’ll Dust My Broomとは「俺は出て行く」という意味で「朝が来て目が覚めたら、俺は出て行くよ。お前の好きなあの黒い野郎を部屋に引きずり込むんだろう」と始まるこの曲は、いろんな男に色目を使う女性への不信感に溢れています。ジョンソンにはこういう女性に対する不信感がいつもあり、それゆえにその夜だけの女と一夜を過ごすとさっさと次の街へ行ってしまうということを繰り返したのではないだろうか。
2.I Believe I’ll Dust My Broom / Robert Johnson

次の”Walkin’ Blues”は高校生の頃聞いたポール・バターフィールド・ブルースバンドのカバーでした。これもマディ・ウォーターズ、ジョニー・シャインズ他ロックのボニー・レイット、グレイトフル・デッドにカバーされている。
これも旅に出る歌で「朝起きたら靴を探して出て行きたい気分だ。朝起きたら可愛いバニースもいないし、こんな寂しい家から出て行きたい。最悪の気分だ。貨車に飛び乗って何処かへ行こう。こういうブルーな気分も悪くはないとか言う奴もいるけど、これは最悪の気分だ。」
3.Walkin’ Blues / Robert Johnson
“Walkin’ Blues” は先輩のサン・ハウスの影響が感じられるワイルドな歌と演奏。
ザックザックとリズムを切りながらの見事なスライド・ギターのプレイが聞けるが、弾き語りのブルーズも当然ダンス・ミュージックであったわけでこのジョンソンのようなギターのグルーヴ感、リズムの良さは客を躍らせるのには不可欠だった。
それまではピアニストが左手でガッガ、ガッガ、ガッガ、ガッガとシャッフルのリズムを打ち出していたビートをジョンソンがギターでやったわけですが、このウォーキン・ベースと呼ばれる奏法は今では当たり前ですがブルース史上では画期的なことでした。
次の曲はそれがよくわかるグルーヴィーな曲です。
「放浪したい、ぶらぶらと何処かへいきたい。彼女とは別れたくないけどあいつはオレによくしてくれないからな。走って駅に行って一番電車に乗るんだ」とまたしても女への不信と旅に出る歌。
4.Ramblin’ On My Mind / Robert Johnson
エリック・クラプトンやキース・リチャーズがジョンソンの録音を初めて聴いた時にギタリストがもう一人いると思ったらしいのですが、僕も最初二人だと思ってました。いまの曲を聴いていてもそれを感じます。

次の曲はジョンソンの曲の中ではすごく有名というわけではないのだけど、戦前のこうした弾き語りのブルーズマンが何を歌っていたか教えてくれる一曲です。曲の音楽的な形式は古くからある”Rollin’ And Tumblin’”と同じものですが、歌詞の内容は難しいものです。曲名の「If I Had Possession Over Judgment Day」の Judgment Dayとは、キリスト教でこの世界の最後の日にイエス・キリストが人々に対して行う最後の審判のことで天国に送られる人と地獄に送られる人がいるというもの。だから曲名は「もしオレが最後の審判の日を自分のものにしたなら」となります。ある意味とても怖いタイトルであり、キリスト教から見るととんでもない不届きな考えということになるのでしょう。結局、「ホレていた女を他の男に取られて落ち込んで一晩中泣きあかし、その腹いせに最後の審判の日に神に代わって自分がその女を裁けるのなら、女が神に祈ることさえやらせないぞ」という復習のような歌ではないかと思います。
5.If I Had Possession Over Judgment Day / Robert Johnson
ブルーズにも当然ながらこういう宗教の言葉や神への気持ちが入った曲がいくつもあります。聖なるスピリチュアルズとかゴスペルという宗教歌と俗な歌であるブルーズと両方歌ったブルーズマンもたくさんいます。
アフリカン・アメリカンの日常に神、宗教がいかに根を張っているのかがこういう歌詞でもわかります。

次回もまだまだあるロバート・ジョンソンのスタンダード名曲集の第二回です。