2026.03.20 ON AIR

70年代のブルーズ3大キングの行方

グラミー賞を獲得した70年代のB.B.King Vol.1

ON AIR LIST
1.The Thrill Is Gone/Roy Hawkins
2.The Thrill Is Gone/B.B.King
3.So Excited/B.B.King
4.Key To My Kingdom/B.B.King
5.You’re Losin’ Me/B.B.King

70年代の三大キングの話、今日はB.B.キングです。
B.B.キングは1957年のデビューアルバム”Singing The Blues”からほぼ毎年のようにアルバムをリリースしていました。ヒット曲も他の二人よりダントツに多くてまさにブルーズ界のキングはB.B.キングでした。しかし、それは同胞の黒人たちに対してであり、白人のファンを取り込むことには他の二人より遅れを取っていました。前も聞いてもらいましたが、フレディ・キングは1960年に”Hide Away”がR&Bチャート5位、ポップチャートでも29位に入り、またその曲をエリック・クラプトンがカバーしたことから広く名前が知られることになりました。アルバート・キングもエリック・クラプトン在籍の「クリーム」に”Born Under A Bad Sign”がカバーされたり、68年にはロックの殿堂「フィルモア」でライヴ録音した”Live Wire/Blues Power”をリリースしてその熱いライヴ・パフォーマンスが高く評価されロック・ファンにも知られることになりました。そんな中、B.B.キングは白人層での認知度が上がらず内心焦っていたようです。
そんな中、1969年にリリースしたアルバム”Completely Well”に収録された”The Thrill Is Gone”がヒットします。
この曲のオリジナルは1951年にロイ・ホーキンズというブルーズマンが歌ったマイナー調のミディアム・スローテンポの曲でR&Bチャートの6位まで上がったそうですが、ぼくはそんなにいい曲とも思えないです。B.B.は好きだったらしくいつか録音したいと思っていたということです。それをビル・シムジクというイーグルスを手がけたどちらかというとロックのプロデューサーが大幅にアレンジしました。
それがグラミー賞(最優秀R&Bボーカル・パフォーマンス賞)を獲得します。これはブルーズマンとしては初めてのグラミーで当時ブルーズ界ではかなりの驚きがありました。
リスナーの皆さんは原曲を聴く機会もほとんどないと思うのでロイ・ホーキンスの1951年のオリジナルをちょっと聴いてみましょうか。

1.The Thrill Is Gone/Roy Hawkins

古い歌謡曲みたいでしょ?戦前のね。僕はあまり好きやないんてせすよ。これをプロデューサーのビル・シムジクがアレンジしてストリングスも入れ、B.B.の素晴らしい歌唱力でグラミー賞を獲得しました。

2.The Thrill Is Gone/B.B.King

エレキ・ピアノにストリングスとゴージャスなアレンジですが、一部のブルース・ファンからは「こんなストリングスなんか入っててブルーズちゃう」という批判も多くありました。まあストリングス入れたらブルーズちゃういのも変ですよね。サックスいいけどよくて同じ楽器のひとつであるストリングスはダメというのもなぁ・・。
激しいショー・ビジネスの世界を生きてきたB.B.は初めての全米ヒットにめちゃくちゃ嬉しかったようです。しかもグラミーまで受賞したのですから。そしてこの大ヒットがなければB.B.は日本に来ることもなかったかもしれないし、私もB.B.の前座をやることもなかったです。とにかくこの曲がB.B.を「世界のB.B.キング」にした曲です。
この”Completely Well”というアルバムは当時のニューヨークの腕利きのスタジオ・ミュージシャンたちがバックを務めてます。ベースにジェリー・ジェモット、ドラムにハービー・ラヴェル、ギターのヒュー・マクラッケンなど。ソウル・ファンクのテイストが濃い音作りですが意外とB.B.はグルーヴにハマってやってます。「君のことを考えるとワクワクする。いつも素敵な君を抱きしめていたい」

3.So Excited/B.B.King

アルバムの一曲目に入っていてオープニングにふさわしいワクワクする曲ですね。リズム・セクションの作るファンク・グルーヴが素晴らしい。B.Bはこの曲を当時ライヴでもよく歌ってましたが、B.B.はファンクのことを「ブルーズがスピリットを失わずにいかにして現代に適応していくか、その見本とも言えるのがファンクだ」と言ってます。つまりブルーズとファンクは太く繋がっているものなんです。
この1970年頃はT.ボーン・ウォーカーもフレディ・キングも先週ON AIRしたアルバート・キングもみんな8ビート、16ビートのファンク・ブルーズに挑戦していた時代でした。
僕はこのアルバムに”Key To My Kingdom”というすごく好きな曲ありまして、日本語に訳すと「私の王国の鍵」です。「お金やゴールドや名声を私は求めていない。私の王国への鍵は君の瞳の輝き。君の愛は僕の王冠」B.B.の素晴らしい歌声が聴ける熱烈なラブソングです。

4.Key To My Kingdom/B.B.King

このアルバムは一曲一曲しっかりアレンジされていて、たぶんベースのジェリー・ジェモットやギターのヒュー・マクラッケンもヘッド・アレンジでアイデアを出していると思いますが、当時の黒人ミュージシャンにとってはB.B.キングのレコーディングに参加できるのは名誉なことだったらしいです。

5.You’re Losin’ Me/B.B.King

今日聴いてもらったB.B.キングの”Completely Well”がリリースされた1969年という年はブルーズやロックやラテンやファンク、ジャズなどいろんな音楽が互いに影響し、融合し合う時代でクロスオーバー・ミュージックと呼ばれました。それはのちにフュージョンと呼ばれる音楽に変わっていくのですが、そういう時代の流れにB.B.キングは対応できたということだと思います。B.B.にとって新たなところへ出ていくきっかけになった重要なアルバムでした。

2026.03.13 ON AIR

70年代のブルーズ3大キングの行方

アルバート・キング vol.2/スタックス・レコード倒産後のアルバート

ON AIR LIST
1.Cold Women With Warm Hearts/Albert King
2.Cadillac Assembly Line/Albert King
3.Get Out of My Life, Woman/Albert King
4.The Very Thought Of You/Albert King
5.I Get Evil /Albert King

60年代半ばにスタックス・レコードと契約したことでヒットも出てアルバート・キングは順風満帆に70年代に入りました。スタックスはR&Bからソウルそしてゴスペルを扱うレコード会社で、オーティス・レディング、サム&デイヴ、ステイプル・シンガーズ、ジョニー・テイラー、アイザック・ヘイズなどなどソウルのスターたちが在籍していました。またスタックスレコードにはブッカーT&MG’sはじめ素晴らしいスタジオ・ミュージシャンがいて、プロデューサーも作詞作曲陣もいてしっかりした録音体制ができていました。そして配給やプロモーションの体制もできていて、ブルーズのマイナー・レーベルとは違うしっかりした会社でした。そんなスタックスで順調にアルバムを出していたのですが、1975年にスタックスは倒産してしまいます。
しかしアルバートは幸運なことにすぐに「ユートピア」というレーベルと契約できて3年間で3枚のアルバムをリリースします。その中で私がいちばんいいと思ったのが76年”Truckload Of Lovin”です。そこからまず一曲。「あったかい心を持った冷たい女」というタイトルですが、誰にでも愛想よくするような女やなくて、冷たそうに見えるんやけど実はあったかいハートを持ってる女がええよな」という曲

1.Cold Women With Warm Hearts/Albert King

スタックス時代のアルバムに比べるとこのユートピアというレーベルで録音されたアルバムはアルバートが少しおとなしい感じがします。録音の問題ですがギターの音も小さめでいつものギターのネックを折るような豪快さに欠けている気がします。
70年代の中後期のロスアンゼルスの録音でバックはキーボードにジョー・サンプル、ドラムにジェイムズ・ギャドソン、ベースにチャック・レイニー、ギターにワウワウ・ワトソンと、ウエストコーストの一流スタジオ・ミュージシャンたちで申し分ないんですが、敏腕のミュージシャンたちで録音したからヒットするわけでもないんですね。いいアルバムなんですけどね。
次は「キャデラックの組み立て工程」とでも訳すのでしょうか。
「ミシガンのデトロイトに行くんだ。お前を連れて行くことはできないんだ。もうコットンを摘む畑仕事は嫌なんだ。だからデトロイトに行ってキャデラックの自動車工場で働くんだ」40年代50年代多くの南部の黒人たちが朝から晩まで綿花を摘む畑仕事が嫌になり、より良い生活を求めて北部のデトロイトやシカゴにたくさん移住したことを思い描くような歌です。

2.Cadillac Assembly Line/Albert King

これも決して悪くはないのですが、スタックスに比べるとディープな感覚に欠けているような気がします。やっぱりロスのスタジオ・ミュージシャンたちですからどことなく行儀のいい、スマートな演奏になってます。でも、そういうところから新しいアルバート・キングができればよかったのですが・・そうはならなかった。
それで次は”TOMATO”(トマト)というレーベルに移籍します。このトマトで3枚リリースしたのですが、その中で気を惹かれるのが79年にリリースした”New Orleans Heat”というアルバム。プロデュースはニューオリンズ・ミュージックの大御所、アレン・トゥーサン。バックはザ・ミーターズのギター、レオ・ノセンテリ、ベースのジョージ・ボーターなどニューオリンズの錚々たるメンバーです。一曲目に入っているのが1965年にアレン・トゥーサンが書いてリー・ドーシーが歌ってヒットした曲。「もう愛していないのならオレの人生から出て行ってくれ」

3.Get Out Of My Life, Woman/Albert King

いつも言うんですが、アルバート・キングはギターのことがよく話題になるのですが、実は歌もすごくいいんですよ。やっぱり体が2メートル近くある巨漢ですからゆったりとしていて、響くええ声してるんですよ。聞いてもらうのはスタックスの最初のアルバム”Born Under A Bad Sign”に収録されていた曲のリメイクですが、ちょっと新しいアレンジです。

4.The Very Thought Of You/Albert King

5.I Get Evil /Albert King

この1970年代中期はアルバートはまだ50才過ぎた男ざかりですよ。自分の音楽的なスタイルも完全に確立されて、ブルーズマンとしての地位もしっかりできてロック・ファンたちの人気もあり、海外ツアーも始まっていた。日本にも78年にB.B.キングとのカップリング・コンサートで初めてやってきました。さっき2メートルくらいある巨漢と言いましたが、この時B.B.キングが小さく見えました。私、会って握手したときに見上げましたから。
80年代に向かって時代的に黒人音楽の主流はやっぱりソウル、ファンクなんですが、レコーディングのリズム・トラックも打ち込みになったりコンピューター・ミュージックになっていき、ブルーズのような音楽は少し一線からは遠ざかっていきます。日常のライヴとしてブルーズは機能していたのですが、チャートのヒットからは残念ながら遠ざかってしまった。
この”New Orleans Heat”はいいアルバムですよ。
80年代以降は「ファンタジー」というレーベルから二枚リリースしたのがオリジナル・アルバムの最後。あとは過去の曲のリメイクとか昔のアルバムからのコンピレーションでした。
アルバートは92年にライヴ後に心臓発作で亡くなりました。

2026.03.06 ON AIR

70年代のブルーズ3大キングの行方

スタックス・レコードで花開いたアルバート・キングの70年代

ON AIR LIST
1.Killing Floor~I’ll Play The Blues For You/Albert King
2.Don’t Burn Down The Bridge (‘cause You Might Wanna Come Back Across)/Albert King
3.I Believe To My Soul/Albert King
4.I Wanna Get Funky/Albert King

3月17日からギターの上村秀右と関西方面にデュオ・ツアーをやります。自分の50周年記念のツアーで小さなお店も含めてたくさん回ってみようかなと思っています。来て欲しいと言うご要望があれば番組のホームページからメールください。行ったことのないところも行ってみたいと思ってます。

ブルーズの三大キングと言われたB.B.キング、アルバート・キング、フレディ・キングの70年以降の活動と曲の話で今回はアルバート・キング。
60年代のアルバート・キングを振り返ると、1967年にリリースされたアルバート・キングの『ボーン・アンダー・ザ・バッド・サイン』というアルバムがありました。これはアルバートが契約したスタックス・レコードとの最初のアルバムでした。そんなに売れたわけではなかったのですが、当時から現在までブルースとロックにいろんな影響を与えた名盤です。
スタックスというレーベルは主にソウル・ミュージックのレーベルだったのでアルバートは少し異色の存在でした。スタックスにはステイプル・シンガーズ、アイザック・ヘイズ、エモーションズ、ルーファス・トーマス、ジョニー・テイラーなど当時人気のあったソウル・シンガー達が揃ってまして、アルバート・キングともう一人リトル・ミルトンがブルーズ派でした。そのスタックスのミュージシャンが集まって1972年にロスの黒人街ワッツで開かれた10万人を集めたイベントがワッツ・タックスでした。
では、そのワッツ・タックスのライヴ・アルバムからアルバート・キングを2曲ライヴのまま続けて聴いてください。

1.Killing Floor/Albert King

2.I’ll Play The Blues For You/Albert King

このワッツ・タックスのアルバムは若い頃によく聴きました。とにかく72年頃になると僕はブルーズだけでなくソウル、ファンク、ゴスペルと完全に黒人音楽に自分の志向が変わってしまい、ロックのレコードはあまり聞かなくなってしまいました。当時同じ関西でバンドを始めたキー坊(上田正樹先輩)のサウス・トゥ・サウスのメンバーはじめ関西の黒人音楽を演奏するバンドはみんなこのアルバムに影響を受けました。ぜひ聴いてもらいたい一枚です。
アルバート・キングはその前68年の有名な”Live Wire/Blues Power”はじめライヴアルバムがいくつかあるのですが、やはりライヴの素晴らしさが彼の売りのひとつでした。特にダイナミックなギター・ソロはB.B.キングやフレディ・キングとはまた違う魅力的なトーンとフレイズで特にそのタイミングの素晴らしさは唯一のものだと思います。それでそのいくつかあるアルバートのライヴアルバムの中で皆さんに聴いてもらいたいアルバムが73年の”Blues at Sunrise”です。これはスイスのモントルーの有名な「モントルー・ジャズ・フェスティバル」でのライヴ・アルバムです。73年ですからいま聞いたワッツ・タックスの翌年でI’ll Play The Blues For Youがヒットした頃です。
女性と別れ際の歌ですかね「戻ってきたくなった時のために二人にかかっている橋を燃やさないでくれ」

3.Don’t Burn Down The Bridge (‘cause You Might Wanna Come Back Across)/Albert King

えげつないギターでしたが、アルバートのギターの影響を受けたギタリストはジミ・ヘンドリックスはじめスティーヴィー・レイボーン、山岸潤史などたくさんいます。でも誰もアルバートのようには弾けません。例えばエリック・クラプトンはフレディ・キングのように弾くことはしますがアルバートのようには弾かないです。アルバート・キングはアルバート・キングしか弾けないんです。それはなぜか・・ギターが左利きということもあるのですが、チューニングが変則チューニングで未だにはっきりどういうチューニングだったのかははっきりしていません。つまりアルバートが誰にもそのチューニングを教えなかったからです。使っている弦が普通より細い弦だったというのはわかっているし、彼はほとんどコードを弾かなかったというのは映像を見ていると分かりますが・・まあ謎の多いギタリストです。
そして実は歌が上手いです。190センチくらいある体の大きな人でしたから、声量もあるのですが声質がまろやかで「スモーキー・ヴォイス」なんて呼ばれています。次の曲はレイ・チャールズの曲でちょっと難しい歌ですが、すごくいい感じの自分流に歌いこなしています。

4.I Believe To My Soul/Albert King

歌がいい感じなんですが、結局ギターをガンガン弾いてしまうのでえぐいギターの印象が強くなるという困ったもんです、アルバートくん。
次の曲もレイド・バックしている歌ですごくいい感じです。

5.I Wanna Get Funky/Albert King

アルバートはやはり南部ミシシッピの生まれで、育ったのもアーカンソーですからアルバートは「ダウンホーム」な感じを持ってます。そう言えばアルバートはダウンホーム・ブルーズで有名なジミー・リードのバンドでドラムを叩いていた頃もありました。ギターもフレイズはたくさんあるわけではないんですが、タイミングの違いを使って違うフレイズに聞こえます。そしてスケールが大きくてそのノリが気持ちいいんです。
スタックスレコードにいた8年間で10枚ほどアルバムを出したのですが、75年にスタックスレコードが倒産してしまいます。もう大手のレコード会社はブルーズをあまりリリースしない時代になりましたが、幸運なことにアルバートはすぐに「ユートピア」というレコード会社と契約します。まだまだアルバート・キングは売れるブルーズマンと評価されていたのでしょう。この会社では2年間で4枚のアルバムをリリースします。そして「ユートピア」と切れた後もすぐに「トマト」というレーベルに移り、70年代はライヴ盤や企画ものを含めてほぼ毎年のようにアルバムが出ています。
来週は「ユートピア」と「トマト」のレーベルで録音された曲を聴きます。まだまだ続くアルバート・キング!

 

2026.02.27 ON AIR

70年代のフレディ・キングVol.2 /RSOレコード時代

ON AIR LIST
1.Pack It Up/Freddie King
2,Sugar Sweet/Freddie King
3.Shake Your Bootie/Freddie King
4.Aint Nobodys Business/Freddie King

前回は70年代初期シェルター・レコード時代のフレディ・キングを聞いてもらいましたが、そのシェルターからアルバム3枚をリリースした後、今度はRSOレコードに移籍します。1974年のことです。RSOというレコード会社はエリック・クラプトンとビー・ジーズが在籍したことで知られてますが、特にクラプトンの全米1位になったアルバム『461オーシャン・ブールバード』のリリースで有名になりました。大ヒットした”I Shot The Sheriff”も収録されているアルバムです。たぶん、そのクラプトンつながりでフレディもRSOで録音することになったのではと思います。後にクラプトンはB.B.キングとデュオのアルバムを出したりしてB.B.からの影響を語ったりしてますが、一番影響を受けたのは、特にギターのいちばんの影響はフレディ・キングからでしょう。

それではRSOからフレディが出した最初のアルバム”Burglar”からまず一曲。ブルーズというよりファンクとロックの色合いの濃いサウンドとグルーヴですが、このあたりで何か新しいブルーズを模索したのかも知れません。

1.Pack It Up/Freddie King

しっかりアレンジされてもフレディは自由にやっている感じです。1974年ですからやはりソウル、ファンクの影響は出てきますし、ギターもラウドですが意外とフレディに合ってフイットしてる曲だと思います。

ではクラプトンが参加している曲を聴いてみましょうか。途中のギター・ソロのどちらかがクラプトンだと思うのですが、僕にはわかりません。みなさん、わかりますか。

2,Sugar Sweet/Freddie King

このアルバムの参加ミュージシャンを見てみるとギターにボビー・テンチの名前があります。イギリスのミュージシャンでボブ・テンチとも呼ばれますが、彼はジェフ・ベック・グループのヴォーカリストとして記憶している方もいると思います。ハンブル・パイというバンドに参加したこともあるギタリスト、ヴォーカリストです。あとクレジットで目を引くのはドラムのスティーヴ・フェローンですね。フェローンは最初アベレージ・ホワイト・バンドで名前が知られそのあとはチャカ・カーン、エリック・クラプトン、ブライアン・メイ、アニタ・ベーカーなどイギリス、アメリカ両方で活躍したドラマーです。このRSOレコードのフレディ・キングの録音ではファンキーナンバーを彼が叩いてます。
次もファンキーなダンス・ナンバーですが、曲名のShake Your Bootieのブーティはお尻のことですからまあお尻を揺らして踊るという意味ですが、もちろんちょっとエロい意味も漂ってます。

3.Shake Your Bootie/Freddie King

次は30年代からベッシー・スミス、ビリー・ホリディ、ジミー・ウィザースプーンそしてB.B.キングなど歌い継がれてきたブルーズのスタンダードです。
1975年テキサス、ダラスのライヴ録音からです。

4.Ain’t Nobody’s Business/Freddie King

3大キングのアルバート・キングやB.B.キングより10歳ほど年下のフレディ・キングは70年代はまだ30代後半から40代でした。だから流行りのファンク、ソウルの影響を受けるのも当然でその上に70年代のロックの影響もありました。そういういろんなテイストを入れ込んだ独自のブルーズを作って新しい展開をしたいと思っていたのではないかと思います。でも1976年に心不全で急死してしまいます。42歳と言う若さでした。三大キングでいちばん若かったフレディが一番先に亡くなると言う・・なんとも残念なことでした。

次回からはB.B.キングとアルバート・キングの70年代以後の録音を聞きます。

2026.02.20 ON AIR

70年代のフレディ・キング/シェルター・レコード時代

ON AIR LIST
1.Going Down/Freddie King
2.Lowdown In Lodi/Freddie King
3.Same Old Blues/Freddie King
4.Big Legged Woman/Freddie King
5.Woman Across The River/Freddie King

今回からブルーズの3大キングと呼ばれるフレデイ・キング、アルバート・キング、B.B.キングの60年代後半から70年代に特化して聴いて見ようと思います。
60年代中頃から黒人音楽はいよいよソウルとファンクの時代に入りブルーズの居場所が少なくなって行きます。ブルーズは古い音楽と思われるようになり、モダン・ブルーズの三大キングと呼ばれるフレディもB.B.もアルバートもそれぞれ自分の音楽の居場所を作らなくてはならなくなります。
今日はまずフレディ・キング。
フレディは前回話しましたが、60年代後半にアトランティック系列のレーベル「コティリオン」からファンキーな匂いのする二枚のアルバムをリリースしました。セールス的には伸びませんでした。そしてすぐに1970年に「シェルター・レコード」と契約します。その一枚目が71年リリースの”Getting Ready”というアルバムです。そのアルバムに収録されてロックのジェフ・ベックがすぐにカバーしたこの曲から

1.Going Down/Freddie King

サウンド的にはかなりブルーズロック的なアプローチで一部のブルーズ・ファンからは敬遠されましたが、フレディ自身はこのシェルター時代の録音が好きだったそうです。そしてこの曲はジェフ・ベックが取り上げたことで白人ロックファンにも人気で70年代のフレディ・キングを代表する一曲となりました。
当時サザン・ロックというアメリカ南部の匂いがするロックが流行っていたのですが、その流れの中にいた重要なミュージシャンがピアニストでありシンガー・ソング・ライターでもあったレオン・ラッセルでした。そのレオン・ラッセルが立ち上げたレーベルが「シェルター・レコード」です。なので自然とブルーズ・ロック的なそしてサザン・ロック的な演奏と録音になっています。次の曲もそういうサザンロックの匂いがする曲です。オリジナルは僕も大好きなクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)です。

2.Lowdown In Lodi/Freddie King

歌もギターもはち切れんばかりのパワフルさですが、思い出してみたらフレディはこの頃まだ30代後半なのでバリバリです。当時のフレディのライヴ映像を見て「これギターのネックが折れるんとちゃうか」と思ったことがあるくらいチョーキングにめちゃ力入ってます。彼は金属製のピックを使っているのでギターの音が少しギラギラしてるのもサウンドの特徴です。
この頃の映像でフレディが野外ロックコンサートに出演しているものがあるのですが、出てきて曲が始まりギターを弾いた途端に音が大きすぎたのかいきなりギターアンプが飛んで音が出なくなるというのがあって笑いましたが。とにかくパワーがありすぎというかもう抑えきれないパワフルさでは3大キングで一番かもです。
そして、フレディのシェルター・レコード時代といえばやはりこの曲を外せない。”Same Old Blues”です。一曲目のGoing Down同様にシンガー・ソング・ライターのドン・ニックスが書いた曲です。ちなみに1枚目のアルバム”Getting Ready”はそのドン・ニックスとレオン・ラッセルが共同プロデューサーになっています。
ではSame Old Blues「朝から降り続く雨、暗い部屋の中に座っていると涙が雨のように落ちてくる。いつもの苦しみいつものブルーズだ。太陽は雨になり自分の笑いは苦痛に変わった。いつものブルーズだ」

3.Same Old Blues/Freddie King

70年代のフレディを代表する曲でぼくもカバーして歌っていますがいい曲です。でも、何度歌っても難しい曲です。

70年代になるとブルーズにも流行りのファンクのテイストが入り、B.B.もアルバートも3人ともファンクテイストのブルーズを歌うようになるのですが、次の曲のようにフレディはそこにロックのテイストも入っているところがミソです。
ファンキーなブルーズ曲でイスラエル・トルバートという盲目のシンガーが1970年にヒットさせた曲のカバーです。

4.Big Legged Woman/Freddie King

フレディはこのシェルター・レコードで”Getting Ready”,”Taxes Cannonball”,”Woman Across The River”と3枚のアルバムをリリースしてロック・コンサートにも出演して新たな白人ロック・ファンも獲得しました。一部のブルーズ・ファンからこのあたりのアルバムは敬遠されていますが、フレディ本人はこのシェルター・レコード時代は自由にやれて気に入ってたようです。考えてみれば50年代60年代の黒人ブルーズマンはやはりレコード会社の方針に従わなければアルバムを作れず、自分の考えは言えなかったのだと思います。このシェルター時代の録音は全ていいとぼくは思わないのですが、レオン・ラッセルはじめフレディを尊敬するスタッフに囲まれてフレディはのびのびとやっている感じがします。
もう一曲シェルター時代から。

5.Woman Across The River/Freddie King

74年にフレディ・キングのブルーズが大好きだったエリック・クラプトンが自分の在籍したイギリスのレーベル”RSO”レコードへフレディを呼んでレコーディングを始めます。来週はそのRS0時代、若くして亡くなる前のフレディ・キングを聴きます。