メイヴィス・ステイプルズ大特集vol.7
来日するメイヴィス・ステイプルズの偉大な父、ポップス・ステイプルズ

ON AIR LIST
1.Father Father/Pops Staples
2.Jesus Is Going To Make Up (My Dying Bed)
3.People Get Ready/Pops Staples
4.Waiting For My Child/Pops Staples
5.Will The Circle Be Unbroken/The Staple Singers
来日するメイヴィス・ステイプルズの特集をずっとやってきたのですが、最後にメイヴィスの音楽を語る上で外せない彼女のお父さんローバック・ポップス・ステイプルズを聞こうと思います。メイヴィスが歌い始めたきっかけはお父さんと子供たちで作ったファミリー・ゴスペル・グループ「ステイプル・シンガーズ」だったのですが、1950年代の初めからお父さんが亡くなった2000年までグループは続きました。歌だけでなく精神的な大きな影響もお父さんから受けていてメイヴィスの口からはいつも「お父さん」という言葉が出てきます。
お父さんのローバックは1914年南部ミシシッピの生まれで当時のほとんどの黒人の子供たちと同じようにろくに学校にも通えず畑仕事を手伝わされていました。人種の差別と貧困は生まれた時からいつも彼につきまとっていました。少年の頃は当時の南部のスター・ブルーズマンだったチャーリー・パットンやサン・ハウスに憧れていましたが、同時にその頃ゴスペル・グループにも参加していました。B.B.キングなどもそうですが教会ではゴスペル・グループで歌い、お金を稼いだり女性にモテたいためにブルーズを酒場で歌うというのはよくあったことです。彼のギターがブルースっぽく感じるのはその頃に身につけたものでしょう。
ポップスは1935年21歳の時にシカゴに出てやはりゴスペル・グループに参加していましたが、1948年34歳のときに自分の息子や娘とファミリー・ゴスペル・グループ「ステイプル・シンガーズ」を結成します。最初は奥さんも参加していたそうですが録音としては残っていません。初レコーディングは1953年でポップス・ステイプルズは39歳、娘のメイヴィスは14歳でした。そこからずっとポップスが亡くなる2000年までステイプル・シンガーズは続きました。
それで今日はお父さんポップス・ステイプルズの1994年リリースの彼のソロとしては三枚目のアルバム”Farther Farther”を聞いてみます。
最初はそのタイトル曲”Farther Farther”。彼も娘たちのお父さんなのであだ名が「ポップス」(お父ちゃん)ですがこの曲名のFarther「お父さん」はイエスキリストのことでしょう。
1.Father Father/Pops Staples
このアルバムにはメイヴィスはじめ娘たちやいろんなミュージシャンが参加していますが、おそらくこの人、ライ・クーダーもポップスの影響を強く受けた一人だと思います。次の曲は古いゴスペル・ソングでライ・クーダーがプロデュースとギターを担当しています。「私が死ぬ時には神様が私の死のベッドを整えてくれるだろう。だから私が死ぬ時には悲しんで泣いて欲しくない」ずっと神様と一緒にいるから死ぬのは怖くない。だから死んでも泣かないでという歌だと思います。
2.Jesus Is Going To Make Up (My Dying Bed)/Pops Staples
ライ・クーダーの重いスライド・ギターが曲のムードを作っています。そして淡々とした静かなポップスの歌声が説得力を持って流れてきました。実にいい曲です。
次はポップスと同じように後世に残るメッセージ・ソングをたくさん作ったカーティス・メイフィールドの名曲です。
3.People Get Ready/Pops Staples
もうポップスの歌声があまりに良すぎて・・・。そんなに気張らなくてもそんなに音域がなくてもソウルフルに歌は歌えるという見本のような歌いっぷりです。マネのできないポップスならではの歌。トレモロのかかった揺らぐギターの音色も彼独特のものでそれとメイヴィスはじめ子供たちの歌声がミックスされたものがステイプル・シンガーズの特徴でした。
そしてゴスペルからソウルへ、いわゆる宗教の歌から世俗のソウル・ミュージックに舵を切った時もステイプル・シンガーズにはいつも品がありました。そして誇りと信念もその音楽の後ろにいつも感じられました。それは父ポップスがグループの礎を築いた時から今も活躍する娘メイヴィスの歌にしっかり残っています。
次は親が子供が帰ってくるのを待っているという歌です。「ひとりの女性に会ったら彼女がこんなことを言った。もしあなたがどこかで私の子供に会ったら帰ってくるのを私が待っていると伝えて欲しい。もし、帰ってこれないのなら手紙を書いて欲しい。どこかで手当てをしてくれる人もいなく病気になっているんじゃないか、助ける人もなく拘置所に入れられてるのではないか・・私は心配している。そして子供が帰ってくるのをずっと待っている」この曲はメイヴィスも歌っていますが、お父さんの心温まる歌もすごくいいです。
4.Waiting For My Child/Pops Staples
最後にやっぱりステイプル・シンガーズでこのメイヴィス・ステイプルズ来日大特集の最後を締めたいと思います。
5.Will The Circle Be Unbroken/The Staple Singers
今回はメイヴィスのお父さんローバックのソロ・アルバムを聴きました。彼の意志を受け継いだメイヴィス・ステイプルズにはまだまだ歌い続けてもらいたいです。