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2021.09.24 ON AIR

アフリカン・アメリカンのミュージシャンが歌ったボブ・ディランの曲をコンピレーションした興味深いアルバム

How Many Roads Black America Sings Bob Dylan (ACE CDCHD 1278)

ON AIR LIST
1.Blowin’ In The Wind / O.V.Wright
2.Like A Rolling Stone / Major Harris
3.I Shall Be Released / Freddie Scott
4.Lay Lady Lay / The Isley Brothers
5.Just Like A Woman/Nina Simone

この”How Many Roads Black America Sings Bob Dylan”と言うアルバムは黒人ミュージシャンが取り上げたボブ・ディランの曲を集めたコンピレーション・アルバムです。ソウル、ジャズ、ブルーズ、ゴスペルとあらゆるジャンルの黒人ミュージシャンにディランの曲が支持され、白人のシンガー・ソングライターの中では飛び抜けてたくさんの曲がカバーされ録音されています。
ディランの曲が多くの黒人ミュージシャンに支持された理由は、60年代にディランが黒人公民権運動や人種差別撤廃運動またベトナム戦争反対運動に参加しメッセージソングを作って歌っていたことにあります。また黒人プルーズはじめ黒人音楽に理解が深かったディランの音楽性も黒人たちはわかっていたと思います。最初の曲はこの前O.V.ライトの特集の時にON AIRしましたが、このアルバムの最初に入っていて僕もこのO.V.のバージョンが好きなので再度ON AIRします。サム・クック、スティービー・ワンダーなど黒人シンガーのカバーがいくつかある「風に吹かれて」
1.Blowin’ In The Wind / O.V.Wright
ディランのオリジナルは1963年のリリース、今のO.V.は68年のリリース。「男は男と呼んでもらうためにどれだけ多くの道を歩けばいいのか。砂の中で眠るために白い鳩はどれだけ多くの海を渡られなければならないのか。その答えは吹いている風の中にある」と人間が生きていく厳しさを歌った曲です。

ソウル・シンガーのメジャー・ハリスは音楽一家に生まれたのでこどもの頃から音楽活動していたようです。60年代の終わりに「デルフォニックス」と言うコーラス・グループのメンバーとして知られるようになり”La La(Means I Love You)”が大ヒットしました。ソロになってからも”Love Won’t Let Me Wait”などいくつもヒットを出しましたが、1969年にシングルだけでオケーレコードからリリースされたのがディランのカバー曲”Like A Rolling Stone “
ディランのオリジナルは1965年にリリースされたアルバム「追憶のハイウェイ61」(Highway 61 Revisitedに収録) 歌の内容は知っている方も多いと思いますが、ダイヤを身につけて、高い酒を飲んで贅沢な生活をしてホームレスを馬鹿にしていたような女が落ちぶれていく歌です。どんな気持ちだ転がる石のように落ちていく気分は?誰にも見向きされなくなったのはどんな気持ちだと皮肉を込めて虚飾に満ちた生活を批判した歌です
2.Like A Rolling Stone / Major Harris
この曲はジミ・ヘンドリックスが素晴らしいロックにアレンジしたヴァージョンもありますが、メジャー・ハリスのソウルフルな歌もいいです。

次のI Shall Be Releasedは刑務所に入れられた囚人が解放を願う歌という人もいれば、自己精神の解放の歌だという人もいる。また宗教的な歌だとする人もいます。ディランの歌詞はいろんな風に捉えられていてそれがまた魅力でもあります。今すぐに僕は解放される、自由になるという最後の歌詞が印象に残ります。歌ってるのはソウル・シンガーのフレディ・スコット。1963年にキャロル・キングが作った”Hey Girl”を歌ってヒットして有名になり、1970年にこのI Shall Be Releasedのタイトル・アルバムをリリースしています。
3.I Shall Be Released / Freddie Scott

次の原曲はディランが1969年にリリースしたアルバム “Nashville Skyline” に収録されています。
これは好きな彼女に一緒に寝ようと誘っている歌です。パーティかなんかやってるんですかね、二階に行ってオレの大きなベッドで寝ようよ、君を抱きたいと歌ってます。
歌っているのはソウル・ファンク・グループ、アイズレー・ブラザーズ。50年代初期に結成されたグループでビートルズがカバーした”Twist And Shout”などヒットがたくさんあるグループです。
4.Lay Lady Lay / The Isley Brothers

最後はニーナ・シモンです。僕はニーナのこの”Just Like A Woman”が収録されているアルバム”Here Comes The Sun”をリリースされた直後1971年に京都のジャズ喫茶で聞きました。アルバムのタイトル曲がビートルズだったこともあったし、その”Here Comes The Sun”もすごく良くて、今から聞いてもらうディランのカバー”Just Like A Woman”もすごく胸に残る歌でした。高校生くらいからニーナ・シモンはジャズ喫茶で聞いていたのですが、この曲で僕はニーナ・シモンのファンになり彼女のアルバムのコレクションをはじめました。
この歌も複雑な内容ですが愛した女性との別れの歌です。女性はかなりフリーキーな女性でドラッグにもハマっている感じですが、もうこの女と別れなければと歌ってます。サビのJust Like A Womanの最後でどうしようもない女なんですが、But She Breaks Just A Little Girl(でも彼女は小さな少女のように壊れてしまう)というところが切ないです。
5.Just Like A Woman/Nina Simone

このHow Many Roads Black America Sings Bob Dylanはいいアルバムです。他にもステイプル・シンガーズ、ボビー・ウーマック、ソロモン・バーク、エスター・フィリップスなどが収録されています。
ボブ・ディランというシンガー・ソングライターが音楽界に与えた影響の大きさを改めて知った思いです。

2021.09.17 ON AIR

この夏、私のヘビー・ローテーションだったロス・ロボスの新譜”Native Son”vol.2

Los Lobos / Native Son (NEW WEST NW 6516)

ON AIR LIST
1.Los Chucos Suaves / Los Lobos
2.Dichoso / Los Lobos
3.Flat Top Joint / Los Lobos
4.Love Special Delivery / Los Lobos
5.Jamaica Say You Will / Los Lobos

前回に引き続きロス・ロボスのニュー・アルバム”Native Son”特集
この夏、ヘヴィ・ローテーションでよく聞いたアルバムでした。タイトル曲の”Native Son”を除いて他の曲は全てカバー曲。
今回のアルバムはロス・ロボスのメンバーが子供の頃から青春時代を過ごした頃の思い出深い曲のカバー集ですが、やはり彼らがチカーノと呼ばれるメキシコ系アメリカ人なのでチカーノ音楽の先輩たちの曲も録音されています。
最初の曲名はLos Chucos Suaves(ロス・チュコス・スワベス)スペイン語なので発音が正確にあっているかどうかわからないのですが・・。
ロス・ロボスのメンバーと同じメキシコ系アメリカ人のチカーノの伝説的なミュージシャン、ギタリスト ラロ・ゲレーロの曲。「チカーノ・ミュージックの父」と呼ばれるゲレーロは彼らにとっては尊敬する大先輩で、ゲレーロとは95年にコラボで”Papa’s Dream”というアルバムも作っているんですが、残念ながら僕は聞いていません。どうも子供用のアルバムみたいです。ライ・クーダーのアルバム「チャヴェス・ラヴィーン」でもゲスト参加したゲレーロはこの曲を歌ってました。
1.Los Chucos Suaves / Los Lobos

次の曲「ディチョソ」はこのアルバムの中でもめちゃくちゃ好きな曲です。好きな人と2人でいたらチーク・ダンスでもしてください。もちろん1人で踊ってもいいんですが。  
原曲はアフロ・キューバン・ジャズ、ラテン・ソウルのパーカッショニストとして有名なウィリー・ボボです。
ウィリー・ボボはマイルス・デイヴィス、ウィントン・ケリー、ハービー・ハンコックなど素晴らしいジャズマンのアルバムに参加し、ステファン・スティルスなどロックからもちろんラテンのファニア・オールスターズなどのアルバムにも参加してます。いい曲です。
2.Dichoso / Los Lobos
ぼくはこういうラテンの曲が好きなのですが、小学校5年生の頃に亡くなった父に連れられて有名な「ミカド」というキャバレーに連れられて行ったことがあります。父もなんでそんなところに子供の私を連れて行ったのかわからないんですが、その時ステージがあって生演奏、つまりライヴ演奏をやっていたわけです。そのバンドがラテン・ジャズの「有馬徹とノーチェクバーナ」というオーケストラで、歌が坂本スミ子さんとアイ・ジョージさんでお二人ともラテンの曲を歌ってました。子供心になんかすごいなぁと思ったのですが、後から聞いたらお二人ともめちゃくちゃ歌のうまい人で、坂本スミ子さんは本場からも誘いがあったそうです。その頃からうちで父親がラテンもののレコードを時々聞いてたのでそういう音がどこか心に残っているのかなぁと思うのですが・・。

次もロスのロックというよりロカビリーのバンドでザ・ブラスターズのカバーです。ブラスターズは元々ブルーズが好きなバンドでハウリン・ウルフのカバー、ビリーボーイ・アーノルドのブルーズのカバーなども録音しています。ロス・ロボスとは仲がいいみたいでブラスターズは79年結成ですから、後輩バンドですね。
曲はブラスターズのデイヴ・アルビンが作ったものです。
3.Flat Top Joint / Los Lobos

次は60年代のロスのバンドでThee Midnighters(ジー・ミッドナイターズ)の曲のカバーです。ちょっと余談になりますが、このバンドはTheではなくてTheeと頭についていいるのですが、これは古い英語で聖書などに出てくる言葉ですが、古い日本語でいうと汝とかそなたとか、つまりあなたという意味ですが、なんでそういうバンド名にしたのか
このミッドナイターズはロス・ロボスと同じイースト・LA出身のメキシコ系のチカーノの大先輩バンドにあたり、リード・ヴォーカルのリトル・ウィリーGは実力も人気もすごくあり、ソロでも活動してました。
4.Love Special Delivery / Los Lobos

最後、オリジナルはシンガーソングライターのジャクソン・ブラウンの曲です。これは1972年彼のファースト・アルバムの最初に収録されていて
ジャマイカと呼んでいた好きだった女の子と毎日草むらに寝転んだりして遊んでいた。また明日もくるよって言ってくれよ。お父さんが船の船長さんなんですかね。彼女はお父さんに連れられて航海に出てしまったみたいな歌です。Sweetな少年時代の思い出のラブ・ソング
5.Jamaica Say You Will / Los Lobos
最後にwe will sail until our waters have run dry「海の水が枯れてしまうまで僕たちは海を航海しよう」と歌っているのはどういう意味なんだろうと思いますが、彼女はもういないわけですから・・。だから彼女がいたらそうしたかったという願望を最後に歌ったのでしょうか。

2021.09.10 ON AIR

この夏、私のヘビー・ローテーションだったロス・ロボスの新譜”Native Son”vol.1

Los Lobos / Native Son (NEW WEST NW 6516)

ON AIR LIST
1.Native Son / Los Lobos
2.Farmer John / Los Lobos
3.Sail On, Sailor / Los Lobos
4.Never No More / Los Lobos
5.The World Is A Ghetto / Los Lobos

1973年に結成されたロス・ロボスのキャリアは48年、もうすぐ半世紀になる。彼らがレコードデビューしたのは78年。ポピュラーな存在になったのは1987年に映画「ラ・バンバ」の同名曲をサウンド・トラックで歌い大ヒットしてからだ。ぼくはそれより少し前84年のメジャー・デビュー作”How Will the Wolf Survive?”を聞いた時からすごく好みのバンドでハマってしまった。
ロス・ロボスは「チカーノ」と呼ばれるメキシコ系アメリカ人たちのバンドで、高校の同級生バンドから始まっていて最初はフォーク・ギターでメキシコのフォークソングなどを歌っていたみたいです。そして次第にそのメキシコの音楽のテイストとロックやブルース、R&B,フォークなどアメリカンミュージックを融合させた独特なサウンドとビートを持ったバンドになっていった。今までアルバムは20枚以上リリースされ、そのほとんどが高いクオリティを持ったアルバムで今はもう押しも押されもしないアメリカの王道ロックバンドとして名を馳せている。
今回は一曲だけ彼らのオリジナルであとはイーストLAで育った彼らが少年時代、青春時代から愛聴してきたLA出身のミュージシャン達の曲のカバー・アルバム。タイトルは”Native Son”
全曲素晴らしい。
ぼくも古いブルーズやR&Bのカバーを歌っているが、1930年代の歌でも50年代の曲でも自分が歌いたいと思った曲を「古い」と思ったことはありません。古い歌を歌っているという意識ではなく、自分にとっては出会ったばかりの「新しい曲」なのです。そして昔の曲だから新しい感じでアレンジして歌おうとも思いません。それはそのままで自分にとっては新しく衝撃的でアレンジなどする必要がないのです。今回のこのアルバムを聴いてロス・ロボスが全曲ほとんどアレンジしてないなのを聴いて「やっぱり」と思いました。
一曲目はまず今回の唯一のオリジナル曲
恐らく自分たちが育った街の風景を歌った曲だと思います
「山から海に流れていくコンクリートの川があり、空に届かんばかりのタワーが私の周りにある
家からストリートにラジオからの音楽が流れている。それは「もう一度あなたの腕に連れて行って,あなたに会えなくて寂しい」と歌っている
どこで横たわって寝ようが、どんなに遠くに行こうが、あなたに連れ戻される日を私は夢見る。私は故郷の子供なのですよ」
1.Native Son / Los Lobos

次の曲はロッキン・ブルーズのデュオ「ドン&デューイ」でぼくは知っているのですが、まさか大好きなこの曲をロス・ロボスで聞くことができるとは思いませんでした。
ハーモニーのあるR&Bでちょっとポップ風味も有り楽しい曲です。Famer Johnは「農夫のジョン」ですけどこれはジョンさんにあなたの娘さんに惚れてしまいましたという歌です。
2.Farmer John / Los Lobos
ほとんどオリジナルそのままですが、それでもロス・ロボスのサウンドとビートになっていて彼らのオリジナリティが出ています。
余談ですが、以前ロックバンドのJ.ガイルズとハーモニカのマジック・ディックがサニー・ボーイ・ウィリアムスンなどのブルーズのカバー・アルバムをリリースして来日した時にインタビューしました。その”Blues Time”というアルバムもほとんど原曲のまま、何もアレンジしないで録音されていたので「ほとんどオリジナルのままですが、アレンジしょうとは思わなかったのですか?」と質問したところ「完全に出来上がっている素晴らしい曲をどうやってアレンジするんだい。アレンジの仕様なんかない素晴らしい曲なんだ」と言ってました。J.ガイルズ言うように完成されている曲ですから下手にアレンジすると台無しになることの方が多いと思います。多分ロス・ロボスもそういう考えだと思います。

次の曲もオリジナルとほとんど変わってないです。
ロス・ロボスにしては意外な選曲だと思いましたが、ビーチボーイズのカバーです。ビーチ・ボーイズとロス・ロボスがぼくの中では結びつかなくて・・でも「ビーチボーイズなしで南カリフォルニアの音楽のカバーなんて有りえるか?」とライナーに書いてます。
「すごく困難なことばかりで大変な思いをしながら船の航海を続けなければいけないが、Salor(水夫よ)、航海を続けて前に進んで行くんだ」という歌。
3.Sail On, Sailor / Los Lobos
リズムもシャッフルでビーチボーイズの曲の中ではブルーズっぽい曲です。やはり60年代イギリスのビートルズに対抗できた唯一のアメリカのロックバンドはビーチボーイズでその素晴らしいコーラスとサウンドでカリフォルニア、ロスアンゼルスに憧れを持った日本人も多かった時代です。やはり若かったロス・ロボスのメンバーもラジオやジュークボックスから流れてくるビーチ・ボーイズに魅了されたと思います。

次の曲はブルーズの偉大なソングライターでありシンガーでもあるパーシー・メイフィールドの曲です。ルイジアナに生まれてテキサスで活動していたメイフィールドは42年にロスに移り住んで、1950年の大ヒット”Please Send Me Someone To Love”以降彼の曲はレイ・チャールズなど多くのシンガーに歌われるようになりました。ロスで生まれ育ったロス・ロボスのメンバーにとっては地元の大ブルース・スターだったのでしょう。
「お前は一度俺を傷つけたけれど。もう2度とお前にチャンスはないんだよ」と、他の男に行ってしまい裏切られた彼女にもう2度とお前とはごめんだと言うブルーズ。
4.Never No More / Los Lobos

次の曲のオリジナルバンド”WAR”は自分にとって70年代初中期夢中になったバンドの一つ。来日公演もアメリカでもライヴを観た大好きなバンドでした。黒人白人など人種が混じったバンドで人種差別撤廃や戦争反対などの社会的メッセージを含んだ歌詞で評判を呼びました。音楽的にもアフリカやレゲエやファンクの要素がミックスされた独特なサウンドとビートで、ロス・ロボスが影響を受けただろうというのはよくわかります。
”WAR”が1972年リリースして翌年チャート一位になったアルバム「世界はゲットーだ/The World Is A Ghetto」のタイトル曲を今回カバーしています。
「世界は荒れ果てた街だけれどパラダイスはどこかにあるはず、だから諦めないで・・」
5.The World Is A Ghetto / Los Lobos

この「Native Son」はとても気持ちのいいアルバムです。それはメンバーが心から好きな曲をストレートに演奏し全く無理がないからです。カバー・アルバムとしては大成功の一枚だと思います。来週はチカーノであるロス・ロボスの原点になった曲も踏まえてこのニューアルバムの続きをお送りします。

2021.09.03 ON AIR

ブルーズ・スタンダード曲集 vol.34
ミシシッピ・デルタ・ブルーズの偉人/ブッカ・ホワイトとトミー・ジョンソン

Perchman Farm / Bukka White(SONY SRCS 7392)

Big Road Blues/Tommy Johnson (P-Vine PCD-15032)

ON AIR LIST
1.Shake ‘Em On Down/Bukka White
2.Perchman Farm Blues/Bukka White
3.Big Road Blues/Tommy Johnson
4.Canned Heat Blues/Tommy Johnson

以前、このブルーズ・スタンダード特集のミシシッピ・デルタ・ブルーズ編でチャーリー・パットンやサン・ハウスの曲を取り上げ、今年に入ってからロバート・ジョンソンの曲を二回に渡ってON AIRしましたが今日は同じミシシッピ・デルタ・ブルーズの偉人、ブッカ・ホワイトの名曲です。
ブッカ・ホワイト(1906-1977)は同じミシシッピのブルーズマン、サン・ハウスたちと同年代の偉大なブルーズマンですが彼がブルーズに残した名曲の音楽的功績も大きいものがあります。
彼はB.B.キングのいとこでB.B.がブルーズマンになるべく故郷ミシシッピを出た時、最初に面倒をみてくれたのが19歳年上のブッカ・ホワイトだった。すでにブッカはスライドギターを巧みに操る名の知られたブルーズマンだった。B.B.はブッカが弾くスライドギターに憧れて教えてもらったけれどとうとう弾くことができずスライド・ギターを断念したと語っている。B.B.のギター奏法の特徴であるギターの弦に強くビブラートをかけて音を震わせる方法は、スライド・バーでビブラートをかけるのをスライドバーではなくて指でやったものだったのです。

1937年録音のブッカ・ホワイトとというブルーズマンを代表する、そしてミシシッピ・ブルーズの名曲をまず聞いてください。
「おまえは本当にいい女だよ」と始まるこの歌は男女の営みのことで、ブルーズでShakeと出てくると大体セックスの歌です。「オレは叫ぶよ」というくらいいい女何でしょう。「メシも作ってくれてベッドへ連れてってくれる」と歌ってます。最後の方にGeorgia women got the best jellyroll(ジョージアの女性は最高のジェリーロールを持ってるよ) なんて歌詞が出てくるのでジョージアの女性となんかいいことになったんでしょう。
1.Shake ‘Em On Down/Bukka White
この歌は北ミシシッピーあたりではトラッドな曲になり、フレッド・マクダウエル、R.L.バーンサイド、ドクター・ロス、比較的新しいところではノース・ミシシッピ・オールスターズなどたくさんのブルーズマンが歌っています。

今日聞いてもらっているブッカ・ホワイトの名盤”PERCHMAN FARM”を聞いてもらえば彼のブルーズマンとしての概観がわかります。ブッカの顔のアップのジャケ写ですが、ここまでアップにせんでもええんとちゃうか・・と言いたくなる超アップですが。
そのタイトル曲です
「パーチマン・ファーム」とはパーチマン刑務所のことです。Farmって普通僕らは「農場」と思いますが、刑務所に入れられた罪人たちが農園で働かされるのでそう呼ぶのかも知れません。ミシシッピにあるこのパーチマン・ファームは他のブルーズの歌詞にも名前が出てくるのですが、当時の黒人たちの間ではひどい扱いをされると有名な刑務所でした。今でも白人警官による黒人への対処が劣悪でニュースになり問題になりますが、ブッカ・ホワイトが若かった戦前はもう本当に残忍な扱いをする刑務所として有名だったようです。ブッカもこの刑務所に二年間入ってました。恨まれていた相手を逆にピストルで撃って重症を負わせた罪でした。でも、ブッカはブルーズマンとして名前が知られていたせいかあまりひどい扱いは受けず、刑務所で演奏をして所長たちに気に入られていたそうです。「芸は身を助く」ですか。
「夜が明けて朝になると仕事をやらされる。刑務所暮らしはめちゃ悪くはないけど、女房に会いたいし家に帰りたい」と歌ってます。
2.Perchman Farm Blues/Bukka White

同じミシシッピ州のブルーズでもその地域によってそれぞれ特色があります。州都のジャクソンはミシシッピ最大の街で当然多くのブルーズマンが行き交ったところです。そのジャクソンを代表するブルーズマンがトミー・ジョンソン。1928年に録音された次の二曲には広大なミシシッピの大地や吹き抜ける風や人気ない寂しさも感じさせる素晴らしい曲です。
最初は「ビッグロード・ブルーズ」
「この広い道を一人っきりで行かなければいけないなんて、お前が一緒に行ってくれないなら他の女を探すしかないなぁ」と南部を放浪して生きたブルーズマンらし曲です。
3.Big Road Blues/Tommy Johnson
僕もミシシッピーの南を車で回ったことがありますが、街から外れて陽が暮れると本当に暗闇で風の音と草木が揺れる音そして動物が吠える声しか聞こえなくて怖かったです。昼間に移動するにしても僕は車でしたが、昔のブルーズマンはヒッチハイクだったり、列車に飛び乗ったり、歩いたわけですから一人だとかなり心細買ったと思います。そういう南部の風景とか土地の匂いとか気候などがブルーズマンの内面にも影響して、作る曲にもその感情が現れたと思います。間違いなくブルーズの名曲「Big Road Blues」

以前、60年代ウエスコーストの白人ブルーズバンド「キャンドヒート」の特集をやったときに彼らのバンド名がトミー・ジョンソンの曲からつけられた話をしましたが、その曲を聴いて見ましょう。
4.Canned Heat Blues/Tommy Johnson
キャンドヒートとは工業用のアルコールのことでトミー・ジョンソンは酒が好きでアルコール依存症にもなっていたのでお金がないと工業用のアルコールも飲んだらしいです。
「キャンドヒート、俺を殺さないでくれ」とキャンドヒートが体に悪いことを歌いながら「朝起きるとキャンドヒートのことが心にいっぱい」と歌ってます。僕の友達で朝起きるとまずビールを飲む男がいましたが、工業用アルコールではもうどうしょうもないです。

今日はアメリカ南部、ミシシッピ・ブルーズの偉大な2人、ブッカ・ホワイトとトミー・ジョンソンが残した名曲ブルーズを聞きました。
遠い昔、アメリカ南部の風景の中をギターを持って歩き、ヒッチハイクし貨物列車に飛び乗り、タフにラフに生きたブルーズマンたちの名曲でした。

 

2021.08.27 ON AIR

ゴスペル界の先駆者として多くの人に愛されたシスター・ロゼッタ・サープ

Sister Rosetta Tharpe/The Original Soul Sister (PROPER PROPERBOX51)

ON AIR LIST
1.Rock Me /Sister Rosetta Tharpe
2.This Train /Sister Rosetta Tharpe
3.Trouble In Mind /Sister Rosetta Tharpe
4.Didn’t It Rain / Sister Rosetta Tharpe
5.Strange Things Happening Every day /Sister Rosetta Tharpe

今日はリスナーのマメザウさんという方からリクエスト頂いたシスター・ロゼッタ・サープをOn Airします。
ゴスペルだけでなくジャズやブルーズなど他のジャンルとの共演も多かった女性ゴスペル・シンガーの大人気者、シスター・ロゼッタ・サープ
歌だけでなくギターを弾く女性シンガーのパイオニアでもあり、彼女は男性ギタリストも顔負けのギター名人でもある。しかし、彼女が活躍を始めた40年代特にゴスペル界はとても保守的で女性シンガーがギターを弾いて歌うことにも批判的で、教会以外の劇場やナイトクラブ、テレビなどでもゴスペルを歌う彼女に対する批判も多くありました。
とにかくいろんな意味でシスター・ロゼッタ・サープはゴスペル界のパイオニアでした。
1915年にアーカンソー州で生まれたロゼッタのお母さんはゴスペル・サーキットでは「マザー・ベル」と呼ばれる名の知れたシンガーでした。6才でギターをマスターした彼女は子供の頃から母とゴスペル大会で歌っていた根っからのゴスペル・シンガーです。ちなみに彼女が属したキリスト教のプロテスタントの一派サンクティファイド派は早くからコルネットやピアノ、ギターなどの楽器を取り入れることやその時流行っている音楽の要素を取り入れることを良しとした一派でした。もちろん教会でいろんな楽器を持ち込むことに批判的な人たちもたくさんいました。
その後シカゴに移住し独特のビブラートやフレイジングの歌とブルーズから影響を受けた卓越したギターの技とパフォーマンスで人気が出たロゼッタは1938年デッカ・レコードからデビュー。
そのデビュー曲は有名なゴスペル曲”Precious Lord”を作ったトーマス・ドーシーが書いた”Rock Me”
この曲はゴスペルで初めてのミリオンセラーです。
神様に「私たちの愛のゆりかごで私を揺らしてください。そして私をあなたの祝福された家に連れていってください」
1.Rock Me /Sister Rosetta Tharpe

Rock Meと同時に録音されたのが次の彼女のオリジナルの”This Train”
途中で彼女が弾く素晴らしいギター・ソロもよく聞いてください。
2.This Train /Sister Rosetta Tharpe
この曲はのちにブルーズのリトル・ウォルターが歌詞を変えて歌ってチャート一位になった”My Babe”の元歌でもあります。このあたりにもブルーズとゴスペルが密接した関係にあることがわかります。
今の二曲がスマッシュ・ヒットしてロゼッタの才能に目をつけたのが当時の黒人音楽のスーパー・スターのキャブ・キャロウェイや白人のジャズプレイヤー、ベニー・グッドマン。
彼女の古い映像が今YOUTUBEで見ることができますが、シンガー&ギタリストとしての才能だけでなくその存在とパフォーマンスがとてもファンキーで、それまでのゴスペルシンガーのイメージとは違うショー的な楽しさがあります。そのあたりにショー・ビジネスの人たちが惹かれて共演を申し込んだのだと思われます。

次はブルーズのトラッドな曲です。
3.Trouble In Mind /Sister Rosetta Tharpe
ラッキー・ミリンダー楽団とは何年も一緒にツアーを回ったり、レコーディングしてジャズ的な歌やブルーズも歌ったのですが、実はその間も彼女は本来のゴスペルをやりたいと思っていたようです。
次の”Didn’t It Rain”はマヘリア・ジャクソンなどゴスペル・シンガーがよく歌う曲で、「雨は降らなかったのか」というタイトルですが、これは40日40夜雨が降り続けたという聖書の創世記にある「ノアの箱船」の話をルーツにしたものです。神様が正しく生きない人間を戒める為に40日40夜ずっと雨を降らせ、ノアの家族と動物など生き物だけは箱船で生き残るという話です。ここにもブルーズとの関連があり、マディ・ウォーターズのブルーズ”40Days And 40 Nights”もこの話を元にしています。そして、黒人音楽、特にゴスペルはやはり聖書を理解していないとわからないことが多いです。
4.Didn’t It Rain / Sister Rosetta Tharpe
1947年録音 一緒に歌っていたのはゴスペル・シンガーでありピアノ・プレイヤーでもあるマリー・ナイト

エルビス・プレスリーやキース・リチャーズ、エリック・クラプトンなども彼女に影響を受けたと語っていますが、彼女は“God Mother Of Rock & Roll”「ロックンロールの母」とも呼ばれてロックンロールの殿堂入りもしています。
シスター・ロゼッタはゴスペルの世界からは非難もされましたが、ゴスペルという音楽を白人にも知らしめた最初の黒人女性ゴスペルシンガーでもありました。そして彼女のあとを追うように同じゴスペルシンガーのクララ・ウォードがナイトクラブでゴスペルを歌うことを始めました。もちろんマヘリア・ジャクソンのようにそういうショー・ビジネスの世界では歌わないゴスペル・シンガーも多くいます。
でも、やはり黒人音楽の根っこを掘っていくとブルーズやジャズそしてゴスペルは同じ土地の同じ水を吸って互いに影響しあいながら大きくなっていったのだと思います。
もう一曲
「不思議なことが毎日起こっている。神様は聖なる光で暗闇に明かりに与える。目の見えない者に視力を与えた」
イントロと途中のギターソロもすごいですが、とても親しみやすいメロディと掛け合いのコーラスなどあって多くの人に受けたのがわかります。
歌詞が違えば普通にR&Bとしてヒットするような曲ですが、実際ビルボードのチャートのトップ10に入りました。ゴスペル曲が普通のチャートに入るのは本当に珍しいことです。
5.Strange Things Happening Every day /Sister Rosetta Tharpe
毎日不思議なことが起こると神様の力を賛美した歌です。

まだまだいい曲がたくさんあるシスター・ロゼッタ・サープなのでまたON AIRします。You Tubeで彼女の映像がいくつか出ていますのでぜひ見てください。本当に素晴らしいです。