2018.09.07 ON AIR

クラプトンも憧れたブルーズの偉人-Big Bill Broonzy

The Father Of Chicago Blues Guitar/Big Bill Broonzy(P-Vine PCD2804)
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ON AIR LIST
1.Back Water Blues/Big Bill Broonzy
2.Hey,Hey/Big Bill Broonzy
3.Pig Meat Strut/Big Bill Broonzy
4.Mississippi River Blues/Big Bill Broonzy
5.I’m Feeling Low Down /Washboard Sam(g.Big Bill Broonzy)

 
今日はまずこれを聴いてください。
1.Back Water Blues/Big Bill Broonzy
5日間も雨が降り続け川が氾濫して家から出られなくなって途方に暮れる男の歌ですが、実は前々回この番組でON AIRしたエリック・クラプトンのアルバム”Life In 12 Bars”のアルバムの最初に入っていたのが、いまのビッグ・ビル・ブルーンジーの”Back Water Blues”でした。クラプトンのアルバムなのにクラプトンの音源ではなく、彼が強い影響を受けたビッグ・ビルをわざと収録したわけです。
クラプトンはレイラのアルバムで”Key To The Highway”をカバーしていますが、たぶんそれもビッグ・ビルのバージョンを聴いたのだと思います。

ビッグ・ビル・ブルーンジーは1898年ミシシッピー生まれで、アーカンソーで育っています。生粋の南部育ちで多くの当時の黒人の子供たちと同じように子供の頃から畑仕事にかり出される毎日でした。最初に手にした楽器はバイオリンやったそうです。その後ギターを手にしたんですがバイオリンやっていたので覚えが早かったのか1927年には初録音となります。
それから57年の最後の録音まで自己名義だけで500曲は録音したという30年代から40年代のブルーズの大スターです。実際僕はビッグ・ビルの5枚組CDというのを持っているんですが、それだけでも127曲入ってます。それだけでなく、彼はいろんなシンガーのバックでもギターを弾いているのでもうめっちゃたくさん録音が残されています。1927年から57年って30年間もずっと録音しているからすごいです。
つまり、ブルーズギターの名人です。
その名人が軽く弾いたみたいな曲が次のクラプトンもアルバム「アンプラグド」でカバーしたこの曲
2.Hey,Hey/Big Bill Broonzy
何がいいってリズムがいいですね。ギターのリズムがもう抜群です。

30年代40年代にビッグ・ビルと同じようなブルーズギターの名人はブラインド・ブレイク、ロニー・ジョンソン、スクラッパー・ブラックウェルと他にもいるんですが、エレキ・ギターを早くから取り入れて、50年代にマディ・ウォーターズたちのエレクトリック・シカゴ・ブルーズのルーツを作ったのはビッグ・ビルです。
その上、マディのような南部から出てくる後輩のブルーズマンの面倒もよくみて、マディはいろんな面で支えてもらいビッグ・ビル亡き後にトリビュート・アルバムをリリースしています。
30から40年代シカゴ・ブルーズの心優しいボスという感じです。
いまのは1951年の録音でいわゆる白人のフォーク・ブルース・ブームに合わせて、フォーク・ブルース調のちょっと軽めの演奏になってます。そういうブームに自分のスタイルを合わせていったことに批判する人も多いのですが、黒人ブルーズマンとして生きていくのにそのくらいのことやるでしょと言いたい。御飯食べなきゃいけない、子供育てなければいけない、ローン払わなアカンわけですから。
では、ずっとさかのぼって彼の初期の録音を聴いてみましょうか。フランク・ブラスウェルというもうひとりのギターとデュオ演奏です。レコーディング・デビューして三年目1930年の録音です。
3.Pig Meat Strut/Big Bill Broonzy
これはやっぱりね、踊りますよ。完全にダンス・ミュージックです。当時、まだエレキギターが普及する前にこういうアコギひとつで、あるいはアコギのデュオで踊らせないと仕事なかった。
リズムがいい、グルーヴ感が出せるというのは重要なことだったんです。いまも重要ですけどね。しかも細かい単弦のソロもリズムに乗って見事に弾いているとこがやはり名人。
ビッグ・ビルこの時32才、飛ぶ鳥を落とす勢いでしょう。

ビッグ・ビルのギターのことばかり話してきたけど実は僕は彼の歌も好きで、ビッグ・ビルというくらいで大きな身体から歌われる余裕の歌です。素朴で無理のないスムーズな歌い方で好きです。曲調はKey To The Highwayと同じ8小節ブルーズです。そのジャズ・ジラムのKey To The Highwayでもビッグ・ビルはギターを弾いているのだけど、アプローチがまた違います。
4.Mississippi River Blues/Big Bill Broonzy
堂々とした歌声です。

次の曲はウォッシュボード・サムの録音にビッグ・ビルが参加したものですが、このウォッシュボード・サムと余程相性がよかったのかかなりの曲数を一緒にやってます。
ウォッシュボード・サムはその名前の通りウォッシュボード(洗濯板)で、洗濯板をこすってリズムを刻みながらブルーズを歌うんですが、これがすごい人気者で百何十曲という録音が残っている。
このサムとビッグビルのグルーヴ感はファンクと言ってもいいくらいファンキーで、ダンサブル。
5.I’m Feeling Low Down /Washboard Sam(g.Big Bill Broonzy)

たぶん目の前でふたりのライヴ観たらめちゃ楽しいやろと思います。
この前クラプトンのアルバムを聴いてからちょっとビッグ・ビルが気になっていたので今日はブルーズギターの名人、ビッグ・ビル・ブルーンジーを聴きました。