ソウルの女王アレサ・フランクリンのブルーズ
ON AIR LIST
1.Drinking Again/Aretha Franklin
2.Evil Gal Blues/Aretha Franklin
3.Dr. Feelgood (Love Is A Serious Business)/Aretha Franklin
4.I Never Loved A Man The Way I Love You/Aretha Franklin
5.Today I Sing The Blues/Aretha Franklin
「ソウルの女王」は誰?と訊いてほとんどの人はアレサ・フランクリンと答えると思います。60年代にソウルという音楽が生まれてから今日までたくさんの女性ソウルシンガーが出ましたが、やはり女王はいまだにアレサ・フランクリンだと思います。
その女王の本当の姿を描いた評伝「リスペクト」という本をここしばらく読んでいたんですが、これがなかなか興味深く面白い本でちょっと分厚い本ですが最後まで楽しく読みました。
アレサがソウルの女王と呼ばれるようになったのは1967年にアトランティック・レコードと契約して”Respect”,”I Never Loved A Man””Chains Of Fool”とか大ヒットが出てからなんですが、それ以前に契約していたコロンビア・レコードではずっとヒットが出なかったんです。コロンビアはジャズ・シンガーとしてアレサを売ろうとしてたんですが、それが花開かなかったんですね。
今日はソウルの大ヒット曲のアレサではなくブルーズを歌っているアレサを聴いてみようと思います。
まずはコロンビア時代のブルーズです。
「またお酒を飲んでる あなたが私のことを愛してくれてた時のことを思いながら。時間をもてあましている。あなたがここにいてくれたらいいのに・・」別れた男のことを思い出しながら酒に溺れている女のブルーズです。
Drinking Again
やっぱり歌うまいですね。ゴスペル出身なのでゴスペルテイストがいっぱいですけどね。いまの曲をエスター・フィリップスやエタ・ジェイムズのようなもう少しブルーズテイストの強い女性歌手が歌うとまた違うものになると思うんですが、やはりアレサはゴスペル味でした。
アレサは牧師さんの子供として生まれ天才ゴスペルシンガーと呼ばれて、小さい頃からお父さん自慢の少女でした。牧師さんとか教会関係の方の中にはジャズやブルーズのような世俗の歌を歌うのを嫌う方も多かった時代に、アレサのお父さんはアレサがポップの世界に行くことを止めるどころか後押しした人でした。
いろんなジャズ・シンガーの中でアレサが小さい頃から好きだったのが、ジャズ・ブルーズシンガーのダイナ・ワシントンでした。ダイナのトリビュート・アルバムを出したくらいだから、かなり好きだったと思いす。では、アレサが歌うダイナ・ワシントンを聞いてみましょう。
「私は悪い女なのよ。ほっといてちょうだい。あんたのポケットを空にして(つまりお金を全部使わせてしまう)惨めな気持ちにさせてしまうから。幸せになりたいなら私に関わらないほうがいいよ。朝ご飯にキャビアが欲しいし、毎晩シャンパンも欲しい・・・」と、まあ私は金のかかる悪い女なのよという歌で、でも、魅力的でついつい関わる男がおるんでしょうね。気をつけてください。
Evil Gal Blues
実はアレサは自分で素晴らしいブルーズの曲を書いているんですが、それがドクター・フィールグッド
「私が彼といる時は誰も近寄って来て欲しくない。時々友達と会って遊ぶのもええんやけど。(つまりふたりっきりでいたい)
彼と愛し合うやから誰かとおしゃべりしてる時間はないんよ。
お医者さんなんかいらんよ。だって、彼がフィールグッド(気持ちいい)という名の医者やからね。
私の病気も痛みも治してくれるんよ。めっちゃ気持ちよくしてくれる」なかなかセクシーな歌詞です
Dr. Feelgood
次はアレサがアトランティックに67年に移籍して初めてのシングル”I Never Loved A Man”(貴方だけを愛して)。R&Bチャート1位になった曲です。今日はそのデモ・テープバージョンでアレサが住んでいるデトロイトの自宅でとったデモを聞きましょう。ニューヨークにいるプロデューサー、ジェリー・ウェクスラーに送ったアレンジもなにもしていないアレサがピアノを弾いているデモ・バージョンです。
ブルーズとゴスペルが見事にミックスのされたこれがソウルミュージックなんだと思います。ウソばっかりついている男で友達はあんな男やめた方がええよって言ってるのにその男をすごく愛してしまって離れられない・・・という・・こういう女性いますよね。あの男はやめた方がええと思ってる男にハマっていく女性、気をつけてください。
I Never Loved A Man The Way I Love You
最後の曲。コロンビア時代にも録音したものをアトランティックでもう一度録音したもの。こちらの方が断然いいです。
「なんの前触れもなくブルーズは今朝やってきて私の寂しい部屋を取り巻いた。彼が私達は終わりだと言うまでの悲しく、寂しい気持ちをいままで知らなかった。昨日、私はラブソングを歌っていたのに今日私はブルーズを歌っている」
Today I Sing The Blues
アレサは今年75才になります。先頃キャロル・キングのケネディ・センター・オーナーズ受賞式のゲストに登場し、「ナチュラル・ウーマン」を歌ってましたが、もう圧巻の歌でした。いまも衰えていない女王アレサを見せつけていました。YouTubeに出ているのでみてください。同席したオバマ大統領が涙を流すシーンも見られます。本当に素晴らしい歌でした。
最初に話した今年になって出版されたデイヴィッド・リッツが書いたアレサの評伝本、「リスペクト」も興味のある方は読んでみてください。