2016.06.24 ON AIR

ソウルの女王アレサ・フランクリンのブルーズ

Aretha Sings The Blues/Aretha Franklin (Columbia CK40105)

Aretha Sings The Blues/Aretha Franklin (Columbia CK40105)

the delta meets detroit:aretha’s blues/Aretha Franklin (Atlantic/Rhino R2 72942)

the delta meets detroit:aretha’s blues/Aretha Franklin (Atlantic/Rhino R2 72942)

Rare&UNRELEASED RECORDINGS FROM THE GOLDEN REIGN OF THE QUEEN OF SOUL/Aretha Franklin (Atlantic/Rhino R2 272188)

Rare&UNRELEASED RECORDINGS FROM THE GOLDEN REIGN OF THE QUEEN OF SOUL/Aretha Franklin (Atlantic/Rhino R2 272188)

デイヴィッド・リッツ著 「アレサ・フランクリン/リスペクト」

デイヴィッド・リッツ著 「アレサ・フランクリン/リスペクト」

ON AIR LIST
1.Drinking Again/Aretha Franklin
2.Evil Gal Blues/Aretha Franklin
3.Dr. Feelgood (Love Is A Serious Business)/Aretha Franklin
4.I Never Loved A Man The Way I Love You/Aretha Franklin
5.Today I Sing The Blues/Aretha Franklin
「ソウルの女王」は誰?と訊いてほとんどの人はアレサ・フランクリンと答えると思います。60年代にソウルという音楽が生まれてから今日までたくさんの女性ソウルシンガーが出ましたが、やはり女王はいまだにアレサ・フランクリンだと思います。
その女王の本当の姿を描いた評伝「リスペクト」という本をここしばらく読んでいたんですが、これがなかなか興味深く面白い本でちょっと分厚い本ですが最後まで楽しく読みました。
アレサがソウルの女王と呼ばれるようになったのは1967年にアトランティック・レコードと契約して”Respect”,”I Never Loved A Man””Chains Of Fool”とか大ヒットが出てからなんですが、それ以前に契約していたコロンビア・レコードではずっとヒットが出なかったんです。コロンビアはジャズ・シンガーとしてアレサを売ろうとしてたんですが、それが花開かなかったんですね。
今日はソウルの大ヒット曲のアレサではなくブルーズを歌っているアレサを聴いてみようと思います。
まずはコロンビア時代のブルーズです。
「またお酒を飲んでる あなたが私のことを愛してくれてた時のことを思いながら。時間をもてあましている。あなたがここにいてくれたらいいのに・・」別れた男のことを思い出しながら酒に溺れている女のブルーズです。
Drinking Again

やっぱり歌うまいですね。ゴスペル出身なのでゴスペルテイストがいっぱいですけどね。いまの曲をエスター・フィリップスやエタ・ジェイムズのようなもう少しブルーズテイストの強い女性歌手が歌うとまた違うものになると思うんですが、やはりアレサはゴスペル味でした。
アレサは牧師さんの子供として生まれ天才ゴスペルシンガーと呼ばれて、小さい頃からお父さん自慢の少女でした。牧師さんとか教会関係の方の中にはジャズやブルーズのような世俗の歌を歌うのを嫌う方も多かった時代に、アレサのお父さんはアレサがポップの世界に行くことを止めるどころか後押しした人でした。
いろんなジャズ・シンガーの中でアレサが小さい頃から好きだったのが、ジャズ・ブルーズシンガーのダイナ・ワシントンでした。ダイナのトリビュート・アルバムを出したくらいだから、かなり好きだったと思いす。では、アレサが歌うダイナ・ワシントンを聞いてみましょう。
「私は悪い女なのよ。ほっといてちょうだい。あんたのポケットを空にして(つまりお金を全部使わせてしまう)惨めな気持ちにさせてしまうから。幸せになりたいなら私に関わらないほうがいいよ。朝ご飯にキャビアが欲しいし、毎晩シャンパンも欲しい・・・」と、まあ私は金のかかる悪い女なのよという歌で、でも、魅力的でついつい関わる男がおるんでしょうね。気をつけてください。
Evil Gal Blues

実はアレサは自分で素晴らしいブルーズの曲を書いているんですが、それがドクター・フィールグッド
「私が彼といる時は誰も近寄って来て欲しくない。時々友達と会って遊ぶのもええんやけど。(つまりふたりっきりでいたい)
彼と愛し合うやから誰かとおしゃべりしてる時間はないんよ。
お医者さんなんかいらんよ。だって、彼がフィールグッド(気持ちいい)という名の医者やからね。
私の病気も痛みも治してくれるんよ。めっちゃ気持ちよくしてくれる」なかなかセクシーな歌詞です
Dr. Feelgood

次はアレサがアトランティックに67年に移籍して初めてのシングル”I Never Loved A Man”(貴方だけを愛して)。R&Bチャート1位になった曲です。今日はそのデモ・テープバージョンでアレサが住んでいるデトロイトの自宅でとったデモを聞きましょう。ニューヨークにいるプロデューサー、ジェリー・ウェクスラーに送ったアレンジもなにもしていないアレサがピアノを弾いているデモ・バージョンです。
ブルーズとゴスペルが見事にミックスのされたこれがソウルミュージックなんだと思います。ウソばっかりついている男で友達はあんな男やめた方がええよって言ってるのにその男をすごく愛してしまって離れられない・・・という・・こういう女性いますよね。あの男はやめた方がええと思ってる男にハマっていく女性、気をつけてください。
I Never Loved A Man The Way I Love You

最後の曲。コロンビア時代にも録音したものをアトランティックでもう一度録音したもの。こちらの方が断然いいです。
「なんの前触れもなくブルーズは今朝やってきて私の寂しい部屋を取り巻いた。彼が私達は終わりだと言うまでの悲しく、寂しい気持ちをいままで知らなかった。昨日、私はラブソングを歌っていたのに今日私はブルーズを歌っている」
Today I Sing The Blues

アレサは今年75才になります。先頃キャロル・キングのケネディ・センター・オーナーズ受賞式のゲストに登場し、「ナチュラル・ウーマン」を歌ってましたが、もう圧巻の歌でした。いまも衰えていない女王アレサを見せつけていました。YouTubeに出ているのでみてください。同席したオバマ大統領が涙を流すシーンも見られます。本当に素晴らしい歌でした。
最初に話した今年になって出版されたデイヴィッド・リッツが書いたアレサの評伝本、「リスペクト」も興味のある方は読んでみてください。

2016.06.17 ON AIR

「ブルーズは死なないと歌った」ブルーズピアニスト オーティス・スパン

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the blues is where it’s at /Otis Spann (MCA )

Otis Spann Is The Blues/Otis Spann (Candid)

Otis Spann Is The Blues/Otis Spann (Candid)

Walking The Blues/Otis Spann (CANDID)

Walking The Blues/Otis Spann (CANDID)

Best Of The Vanguard Years/Otis Spann (Vanguard)

Best Of The Vanguard Years/Otis Spann (Vanguard)

 

ON AIR LIST
1.I Just Want To Make Love To You/Muddy Waters
2.Worried Life Blues/Otis Spann
3.Spann’s Stomp/Otis Spann
4.T’ Aint Nobody’s Biziness If I Do/Otis Spann
5.Baby Child/Otis Spann

ピアノのブルーズを聞きたいというリクエストをいただきました。それで今日はシカゴ・ブルーズのピアニストのオーティス・スパンを聴こうと思います。
いまシカゴ・ブルーズのピアニストと言いましたが、シカゴで活躍したピアニストは他にもたくさんいまして、ビッグ・メイシオ、エルモア・ジェイムズのバンドにいたジョニー・ジョーンズ、オーティス・スパンの後にマディのバンドに入ったパイントップ・パーキンス、メンフィス・スリム、ルーズヴェルト・サイクスとまあたくさんいます。
オーティス・スパンは1930年にミシシッピのジャクソンという街に生まれ、お父さんがピアニストで8才からピアノを弾いて14才くらいの時にはジャクソンあたりのバンドに入ってピアノを弾いていたようです。
この頃、彼が憧れていたのがビッグ・メイシオというピアニストでした。”Worried Life Blues”といういまやブルーズのスタンダードになっている、大ヒット曲があるビッグ・メイシオは「シカゴ・ブルーズピアノの王様」と呼ばれた人でした。憧れのビッグ・メイシオがシカゴで活躍していたこともあったのでしょう、17才くらいの時にスパンはシカゴに移り住みます。シカゴでいろんなセッション、ギグに参加している時に録音に呼ばれたのが、マディ・ウォーターズのレコーディングでした。
僕がスパンの名前を初めて知ったのもマディのアルバムからでした。そして、この曲のイントロのピアノも忘れられない印象的なものでした。
I Just Want To Make Love To You

最初に好きになったブルーズマンであるマディをおいかけてレコードを買ってるうちに、マディのいいアルバムには必ずと言ってよいほどスパンのピアノが入っていることがわかりました。つまり、スパンはマディの右腕的な非常に重要なメンバーだったのです。
マディのバンドのジミー・ロジャースやリトル・ウォルターはソロでも活躍して、レコードも出しているのにオーティス・スパンはないのかな・・・と思ってさがして見つけたのが、ギター名人ロバート・ロックウッドJrとデュオでやっている”Otis Span Is The Blues”というアルバムでした。このアルバムでスパンは、尊敬していたビッグ・メイシオの名曲を録音しているので聞いてみましょう
Worried Life Blues

次の曲はヴァンガードというレーベルに残した音源を集めたBest Of Vanguard Yearsと言うアルバムからスパンの力強いブギ・ピアノが聞けるインストルメンタルの一曲です。ピアノのタッチの強さとグルーヴ感がやはり半端なく素晴らしいです。
Spann’s Stomp

次の曲は1966年にマディのバンドのメンバーとしてライヴに行ったニューヨークのスタジオで、取り巻きや近しいファンの人たちを入れてスタジオ・ライヴとして録音したアルバム”The Blues Is Where It’s At”に収録されているスパンのブルーズ。ギターにルーサー・ジョンソンとサミー・ローホン、ハーモニカがジョージ・スミス、ドラムがフランシス・クレイ、ベースがマック・アーノルド、それに御大マディもギターで参加、そしてメインのオーティス・スパンの歌とピアノ。お酒も配られてリラックスした中にも濃いブルーズが演奏されてます。
T’ Aint Nobody’s Biziness If I Do

60年代の終わり頃になるとスパンはソロとしも忙しくなってきて1969年にマディのバンドを辞めます。そして、これからソロ活動をがんばろうかという時にガンになってしまい翌70年に亡くなってしまいました。最後はスパンのファンキーな曲です。
Baby Child

アルバムタイトルにもなってるんですが、「The Blues Never Die」そのブルーズは決して死なないというスパンの言葉が、この2016年でも生きているということが素晴らしいです。スパンに伝えたいですね「ブルーズは死んでないよ」と。

2016.06.10 ON AIR

ブルーズ・ザ・ブッチャー 
最新アルバム”Three O’Clock Blues”リリース!

blues.the-butcher-590213 “Three O’Clock Blues”
(P-VineRecords[CD]PCD-18815 [LP]PLP-6879)
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ON AIR LIST

1.Crosscut Saw/blues.the-butcher-590213
2.Cat Squirrel /blues.the-butcher-590213
3.Please Don’t Leave Me/blues.the-butcher-590213
4.Three O’Clock Blues/blues.the-butcher-590213

 

 

 

出ますよ!6/15新譜!
今日はもうすぐ発売になる自分のバンド「ブルーズ・ザ・ブッチャー」のニューアルバムをいち早くON AIR!
ブルーズ・ザ・ブッチャーとしては7作目。その前のブルーズ・パワーを加えると8作目のニューアルバムになる。
今回はテーマはメンフィス・ブルーズ、メンフィスで活躍したブルーズマンの曲をやってみようということになりました。
そのきっかけとなったのは、昨年B.B.キングが亡くなったことでした。僕は以前にも話しましたが、1972年大阪でB.B.キングの前座をやったことがブルーズという音楽に入り込む大きなきっかけとなりました。それで今度アルバム作る時には何かB.B.の曲を録音したいと思ってました。それが今回のアルバムタイトルにもなったThree O’Clock Bluesです。
B.B.はその長いキャリアの最初がミシシッピーの故郷から飛び出してきたメンフィスでした。それで今回はB>B.だけでなく多くのブルーズマンが活躍したメンフィスのブルーズをアルバムのテーマにしょうということになりました。
メンフィスにある「スタックス・レコード」で花開いたブルーズマン、アルバート・キングのこの曲を取り上げました。
Crosscut Saw

次の「キャット、スクアーラー」猫みたいな大きなリスのことです。歌詞の中に「キャット、スクアーラー」という言葉は出てこないんですが、「朝まで眠れないでお前の事がどこの男と寝ているか考えてた。オマエと男は木の巣の中にいていちゃいちゃしてるんやろ」つまり、自分の彼女と彼女が惚れてる男をリスに例えた歌です。レコーディングで始めてドブロ・ギターを使いました。
Cat Squirrel

では、ハーモニカのKOTEZくんの歌を聴いてみましよう。KOTEZくんもメンフィスのなかなか面白いブルーズを選曲してきて、いまから聴いてもらうのはタイトル通り「とにかく、行かんといくれやというのをずっと繰り返してる情けない男の歌です。
Please Don’t Leave Me

最後にアルバムのタイトル曲です。1951年B.B.キングの初めてのヒット曲で「夜中の3時になっても彼女がいないのでオレは眠れない」という歌です。やっと念願のB.B.のブルーズを録音できたのは本当に嬉しいです。
Three O’Clock Blues

今日は自分のブルーズ・ザ・ブッチャーの8作目のニューアルバム”Three O’Clock Blues”を聴きました。
去年はIn The Basementという一昨年リリースしたアルバムのアナログレコードをリリースして、ほぼ毎年なにかアルバムをリリースできていることに本当に感謝しています。ツアーに行く各地のみなさんがアルバムを買ってくれて、僕たちを後押ししてくれていることが最も大きな力です。僕らは日本におけるオーセンティックなブルーズバンドとして誇りをもってます。日本のブルーズ・シーンに個人的にいろいろ意見も僕はもってるんですが、やはり自分が自分のバンドでアルバムを出しつづけることがいちばんの意見であり、自分の答だと思っています。これからリリース・全国ツアーにも出るので是非どこかでお会いしましょう!ツアーズの詳細はこの番組のHP(http://blues-power.jp/hp2/)のHOTOKE’S BLOGを見てください。
アルバム、ゲットしてくださいね!
アルバム詳細はこちら→http://p-vine.jp/artists/blues-the-butcher-590213

2016.06.03 ON AIR

30年代の人気ブルーズマン、Jazz Gillumのゆるやかなブルーズ

JAZZ Gillum 1935-1947/Document Records DLP 522)

img01ON AIR LIST
1.Key To The Highway/Jazz Gillum
2.Midnight Special/Jazz Gillum
3.Keep On Sailing/Jazz Gillum
4.Hand Reader Blues/Jazz Gillum
5.Take A Little Walk With Me/Jazz Gillum

 

 

 

 

今日は(昔)いにしえのブルーズです。いにしえ言うても僕がON AIRしている曲は若い人にとっては全部いにしえやないか!になってしまうんですが、僕の中ではブルーズがエレキになる前のものが大体いにしえになってます。今日は1930年代から40年代にシカゴの人気者だったジャズ・ギラム。日本ではジャズ・ジラムという読み方をずっとされてきたんですが、英語としてはやはりギラムと呼ぶのが正しいと思うのでジャズ・ギラムと呼びます。
まずは彼を代表する曲で、エリック・クラプトン他たくさんのミュージシャンにカバーされ、いまも歌い継がれている名曲を。
Key To The Highway

歌もいいですけどギラムの哀愁のあるハーモニカもいいですね。
60年代のロックバンドCCRがカバーしていてそれで知ってる方も多いと思いますが、元々はフォーク・ブルーズシンガーのレッド・ベリーが元々あった民謡に歌詞をつけたと言われています。
ミッドナイト・スペシャルとは夜行列車の意味ですが、レッド・ベリーは刑務所生活をしていたことがあります。その時に夜行列車のライトが刑務所の壁を照らすのを見て、きつい労働をさせられる刑務所を出て自由になりたい気持ちをこの歌に託したと言われています。
Midnight Special

シカゴ・ブルーズというとマディ・ウォーターズなどのエレクトリックされた50年代のシカゴ・ブルーズを思い出しますが、それ以前のシカゴ・ブルーズのボスはこのジャズ・ギラムの録音でもギターを弾いているビッグ・ビル・ブルーンジー。
歌の間に入るギターやピアノのオブリーガードの感じは後輩マディたちのブルーズと同じですね。
Keep On Sailing

次の曲も戦後のシカゴ・ブルーズを代表するひとりで、マディはじめシカゴ・エレクトリック・ブルーズの立役者のひとりジミー・ロジャーズの「スラピー・ドランク」という曲を思い出させるスイングするビートが気持ちいい。これもこの時代にすでにその形やビートはできていたんですね。
Hand Reader Blues

このアルバムの裏の参加ミュージシャンのクレジットを何気なく見ていて、1930年代中頃から40年代中頃の録音なんですが、この主役のジャズ・ギラムもすごいブルーズマンですが、参加してるのがギターでビッグ・ビル・ブルーンジー、ピアノでルーズヴェルト・サイクス、ビッグ・メイシオ、エディ・ボイドそしてウォシュボードのウォシュボード・サムと、ブルーズの歴史に名前が残っている人たちがすごく多いです。やはりその時代のシカゴ・ブルーズの盛り上がりを感じます。
では、最後にシカゴ・ブルーズのギター名人、ロバートルJr.ロックウッドが41年にシカゴで録音した曲なんですが、これをこのジャズ・ギラムが6年後の47年に録音しています。
Take A Little Walk With Me

ジャズ・ギラムはほのぼのしてる、どこか田舎臭さを残した歌で全体の感じものちのマディやウルフのように攻撃的な感じもないですしね。たまに夜中、こういうブルーズを聴きながらぼんやりして、酒飲むのもいいかと思います。