2020.06.26 ON AIR

Sam Cooke-2
サムの中の揺るぎないルーツ、ゴスペル

The Wonderful World of Sam Cooke(KEEN /abkco 718508-2)

The Wonderful World of Sam Cooke(KEEN /abkco 718508-2)

Two Sides Of Sam Cooke(Specialty SPCD2119-2)

Two Sides Of Sam Cooke(Specialty SPCD2119-2)

 

ON AIR LIST
1.That’s Heaven To Me/Sam Cooke
2.Jesus Gave Me Water/Sam Cooke
3.Lovable/Sam Cooke
4.I’ll Come Running Back To You/Sam Cooke

50年代終わりから60年代初め新しいR&Bの動きがやがて「ソウル・ミュージック」と呼ばれる。その最初の礎を築いたのはレイ・チャールズであり、ジェイムズ・ブラウンであり、そしてサム・クック。
サム・クックが人気のゴスペル・シンガーからポピュラーシンガーとしてデビューした57年から60年の三年間在籍したキーン・レコード時代のコンプリート・アルバム5枚組がリリースされた。
キーンレコードで録音された音源には大ヒットした”You Send Me”や”Wonderful World”のようなサム自身のオリジナルもあるが、ほとんどは黒人歌手の先輩として成功していたナット・キング・コールを目指したジャズ・スタンダードのカバー曲でした。
しかし、ゴスペルから歌うことを始めた黒人シンガーたちは終生ゴスペルを忘れることはなく、常に彼らの心の拠り所はゴスペルつまり教会なのだ。あの豪胆に見えるリトル・リチャードでさえポップの世界から神学を学びゴスペルに舞い戻ったことがある。サムもキーンレコードでポピュラーな歌を歌いながらも常にゴスペルのことは忘れなかった。キーンでも少しだけどゴスペルを残しているので聴いてみよう。
「街を歩いている時に見えるものが私にとっては天国だ。5月に咲く可愛い花、一日の終わりに沈む夕陽、その道端で見知らぬ人を助ける人、子供たちがストリートで演奏しているそして会う人すべてに親しくこんにちはと歌う。木の葉が風で飛んでいくのさえ、私にとっては天国だ」サムのオリジナルゴスペルです。
1.That’s Heaven To Me/Sam Cooke
素晴らしい!歌も曲も・・・。英語がわからなくても心に沁み入りませんか。言葉とか性別とか貧富とか人種とかなんかすべてを越えてしまう歌です。つまり教会に行ってない者さえ取り込んでしまうサムの歌唱の凄さ。
いまのはゴスペル・グループ「ソウル・スターラーズ」にいた頃にサムが書いた曲ですが、サムは素晴らしいソング・ライターでもあります。10代の頃に参加していたゴスペルグループHighway QC’sの頃から曲を書いていました。Highway QC’sは高校生のゴスペルグループでしたが、実力のあるいいグループで人気もありツアーにも出ていました。そのリードだったサムはその頃から歌が上手く評判だったし、ルックスも含めてオーラがありすでに人気がありました。残念ながらHighway QC’s時代の音源は残っていません。
その頃サムにとって人生を変える出来事がありました。それはゴスペルグループのトップのひとつ「ソウル・スターラーズ」からリード・シンガーとして選ばれたことでした。いくらサムでもこれは驚いたと思います。しかも、「ソウル・スターラーズ」のそれまでのリード、R.H.ハリスはゴスペル界の超有名シンガー。サムが心から尊敬するシンガーでハリスの歌い方を学んでいました。その後釜というのはかなりのプレッシャーだったと思います。それでもやはりただ者ではないサムはスターラーズの最初の録音でこんなに素晴らしい歌を残しています。
2.Jesus Gave Me Water/Sam Cooke And The Soul Stirrers
サム以外のメンバーはたぶん40代くらいのおっさんです。おっさんの中に10代の歌の上手い若者が加入したわけです。有名なゴスペルグルーブのリードになるのに、最初サムで大丈夫かと思った人もたくさんいました。サムも初ステージはめちゃビビったそうです。何しろゴスペルの世界はすごい歌手がたくさんいてコンサートでいくつかグループが出るときは歌のバトルになります。どれだけ聴衆を沸かしたか、ウケたかがシビアに評価される場所です。
サムの前のリードシンガー、R.H.ハリスはトップクラスのシンガーでしたが、ハリスはスターラーズで何年もツアーを続けて家族をないがしろにしていたことに心を痛めスターラーズを辞める決心をしたのです。今度はサムが厳しいゴスペルツアーにでかけることになります。
僕もゴスペルの世界のことは昔あまり知らなかったのですが、ブルーズマンやR&Bのミュージシャンと同じくらいゴスペルシンガーたちもライヴツアーをやっています。黒人音楽のマーケットではゴスペルは有名になるとお金になり、アルバムも売れるしライヴのオファーもたくさんあります。
サムがゴスペルからR&Bの世界に移っていく様子が分かるのが”The Two Sides Of Sam Cooke”というアルバム。
これはThe Two Sides つまり二面、ゴスペルの面とR&Bの面とサムの両面の曲を収録したアルバムです。いまの曲はゴスペルでしたが、同じアルバムのR&Bの曲を聴いてください。
1956年リリース これはゴスペルの曲”Wonderful(He’s Wonderful)”をLovable(可愛い)に変えて、Heつまり神様をShe彼女に変えてラブソングに仕立てたものでメロディはほぼ一緒です。
3.Lovable/Sam Cooke
ソウル・スターラーズでスペシャルティ・レコードに所属していたサムは、この曲をデイル・クックという偽名でリリースしました。ゴスペルの世界ではゴスペルをやめてポピュラーなR&Bなんかを歌うことは「神様に背いた行為」「裏切り者」と非難する人たちがいて、R&Bを歌って売れればいいのですが、もし売れずに失敗したら・・と、サムはそれが怖かったので偽名を使ったのです。でも、誰もが聴いてすぐ「これサム・クックやろ」と気づくくらいサムの色が出まくってます。スペシャルティレコードから1957年1月にリリースされたこれは売れませんでした。この時期はキーンとスペシャルティとレコードの契約でもめている頃ですが、この後にキーンレコードが九月”You Send Me “をリリースして大ヒットし、あわててスペシャルティが次の曲をリリースした感じです。57年R&Bチャートは1位ポップでは17位。僕の大好きな曲です。
「噂では君は新しい恋人ができたらしいけど、僕の名前を呼んでくれたら僕はいつでも君の元に走って戻るよ」彼女と別れたことを後悔している歌です
4.I’ll Come Running Back To You/Sam Cooke
ソウル・スターラーズでゴスペルを歌っていたサムはキーンレコードに移り、今度はそこから大手のRCAレコードに移籍します。その間に彼は音楽出版社を立ち上げ、1959年自分の”SAR”というレーベルも作りそこではゴスペルのレコードも録音し、いろんなソウル・シンガーをデビューさせました。
サムのあとにジェイムズ・ブラウンやレイ・チャールズが成功して自分のレーヘルを立ち上げましたがサムはその先駆けだったのです。
そして、そこでレコーディングに選んだのが自分のゴスペルの古巣「ソウル・スターラーズ」だった。サムは自分のレーベルで録音して、黒人による黒人のためのレーヘルを作り、出版社をつくりそれまで白人に搾取されていた録音による権利やお金を黒人のものにしょうとしていたのです。
来週はサムのヒット曲を聴きながらポップス界で成功していくサムの話をしたいと思います。

2020.06.19 ON AIR

Sam Cooke-1
いまも歌い継がれ、語り継がれるサム・クック

(Keen 86106)

(Keen 86106)

 

ON AIR LIST
1.You Send Me/Sam Cooke
2.Ain’t Misbehavin/Sam Cooke
3.Lover Come Back To Me/Sam Cooke
4.(I Love You) For Sentimental Reasons /Sam Cooke
5.(What A )Wonderful World/Sam Cooke

ブラック・ミュージックを聴いていると必ずサム・クックという名前に出会います。そして、R&Bとかソウル・ミュージックを聴き続けているとそこにはサム・クックが残した音楽的な遺産がたくさんあることを知ることになります。
この番組でも以前、サム・クックの特集をやったことがありますが、今年に入ってサムがゴスペルからR&Bに移ってキーンレコードでリリースしたソロ・アルバム5枚がボックスセットでリリースされました。彼がポップ、R&B、ジャズを歌った初期の録音になります。『The Complete Keen Years 1957-1960』というタイトルですが、最初の『Sam Cooke』(1958年)、『Encore』(1958年)、『Tribute To The Lady』(1959年)、『Hit Kit』(1959年/編集盤)、『The Wonderful World Of Sam Cooke』(1960年)の五枚です。
それを記念して今日から三回に渡ってサム・クックの特集をやってみようと思います。
まずはその一枚目アルバムタイトル「Sam Cooke」に収録されている1957年の大!大!大ヒット。R&Bチャート、ポップチャートともに1位になったこの曲です。
1.You Send Me/Sam Cooke

サムはキーンレコードに入る前にスペシャルティ・レコードと契約していたのですが、それはリード・ヴォーカルとして抜擢された「ソウル・スターラーズ」というゴスペル・カルテットでのレコーディングでした。このグルーブはサムの前にR.H.ハリスという素晴らしいリード・シンガーがいて、実はサムはそのハリスを尊敬していて歌い方の影響も強く受けていました。「ソウル・スターラーズ」は元々人気のあるグループでしたが、サムが加入してからサムは若いしハンサムなので若い人たちとくに若い女性ファンがたくさんつくようになりました。それはゴスペルの世界ではちょっと珍しいことで、そういう人気が出たこともサムがいつかR&Bというポップ・ミュージックに行きたいと思った理由だったのでしょう。それで最初はそのスペシャルティレコードの社長の反対を押し切って偽名でR&B曲を発表したのですが、それは誰が聴いてもサムとわかる歌でした。そしてポップシーンへ出る気持ちが次第に強くなって、スペシャルティからキーンレコードに移籍ということになりました。キ
キーンレコードでリリースした曲はジャズスタンダードの曲が多くて僕は昔そんなに好きではなかったです。まあ、いまもすごく好きというわけではないのですが、やはり歌が上手いのでついつい聴いてしまいます。
次の曲もジャズやポピュラーシンガーがよく取り上げる曲です。
「一緒に話をする人がいないんだ。ひとりっきりだ。一緒に散歩する人もいない。まあ売れ残りってわけさ。でも、だからと言って悪さはしない。愛は君のために取ってあるから。売れ残りという表現が”But I’m happy on the shelf”棚の上で僕は幸せだ。この表現がいいですね。要するに君のことを本当に愛しているからもう他の女と火遊びみたいなことはしないんだという歌です。
2.Ain’t Misbehavin/Sam Cooke
いまの曲はオリジナルがファッツ・ウォーラーで、他にもジャズのビリー・ホリディ、エラ・フイッツジェラルドなどが歌ってます。
次の曲もビリー・ホリディ、エラが歌っていますが、よく知られたジャズ・スタンダード。邦題が「恋人よ、我に帰れ」。
こういうジャズ・スタンダードをサム・クックはなぜたくさん歌ったかということですが、サムの先輩で白人にも受けてすごい人気を博したのがナット・キング・コール。前回やったジャズシンガーでありピアニスト。キング・コールはとにかく声がよくてクールナーと言われる歌う方で、あまり派手にシャウトしたり、大声で歌ったりしないスタイルの歌い方でウケました。あと歌の英語の発音も白人的で黒人独特の発音をしないということもあったと思います。サムもそのキング・コールが歩んだ道を目指したんだと思います。そのために白人の洒落たクラブで歌っても通用するジャズスタンダードをたくさん歌ったのだと思います。
3.Lover Come Back To me/Sam Cooke

何を歌っても上手いです。でも、僕はやっぱりサムの本領はここではない気がします。でも、それはいまだから言えることで当時とにかく上を目指していこうとしていたサムにとって、こういう歌を歌うことがいちばん有効だったのでしょう。この当時、サムは若者向けには若い人たちも手軽に買う事ができるシングルで出して、お金を持っている大人たちに向けてアルバムを出してました。
次の歌も有名スタンダードで、ナット・キング・コール、エラ・フィッツジェラルド、珍しいところではリンダ・ロンシュタットが歌ってますが、サムのこのバージョンもいい感じです。
「心からあなたのことが好きなんだ。信じて欲しい。僕の心はあなたのものだ。毎朝あなたのことを想い、毎晩あなたのことを夢見る。あなたがいる時はいつでも私はひとりじゃない」
4.(I Love You) For Sentimental Reasons /Sam Cooke
I Love You・・・・と何回も出てくるんですが、それがいいですよね。
もう一曲聴いてみましょう
次の曲はこのキーンレコードでの最後のアルバム、アルバムタイトルの一部にもなっていますサム・クックの自作の素晴らしい曲です。
「歴史のことはよく知らないし、生物学もよくわからない。
科学の本のこともよく知らないし、フランス語も勉強してるけどよく知らない
でも、自分が君を愛していることはわかってる
君が僕のことを愛してくれていたら、すごく素敵な世界になるよ
地理のことも三角法なんかよくわからない
代数学のことなんかよく知らない 何の為に計算尺を使うのか知らない
でも、1タス1が2だってことは知ってるさ、そしてその1が君だったならとても素敵な世界になるだろう」
5.(What A )Wonderful World/Sam Cooke
いまアメリカでアフリカン・アメリカンの方が白人の警察官に不当に殺された事件が発端で、人種の問題の暴動が全米各地で起きています。
実はサム・クックがこの一見ラブ・ソングを実は人種の歌として作ったのではないかという話があります。「君が僕のことを愛してくれていたら、すごく素敵な世界になるよ」そして「1タス1が2だってことは知ってるさ
そして、その1が君だったなら とても素敵な世界になるだろう」という1は黒人でもうひとつの1は白人のことだという人がいます。

2020.06.12 ON AIR

忘れがたいミュージシャン、ナット・キング・コール

Nat King Cole Vol.3 /Nat King Cole(東芝EMI TOCP-9101)

Nat King Cole Vol.3 /Nat King Cole(東芝EMI TOCP-9101)

The Roots Of The Songs"A Tribute To Nat King Cole"/Nat King Cole (ODR 6467-68)

The Roots Of The Songs”A Tribute To Nat King Cole”/Nat King Cole (ODR 6467-68)

ON AIR LIST
1.Caravan/Nat King Cole
2.Stardust/Nat King Cole
3.QUIZAS, QUIZAS, QUIZAS/Nat King Cole
4.Unforgettable/Nat King Cole
5.Love/Nat King Cole

自分が洋楽を初めて聞いたのはいつ頃だろうと振り返ってみたら、たぶん自分の親父がレコードをもってよく聞いていたこの歌手だったのではと思う。自分は小学校低学年。10才くらいだったか。

1.Caravan/Nat King Cole
元々はジャズのデューク・エリントンが彼の楽団のトロボーン・プレイヤー、ファン・ティゾールと作った曲です。歌詞はあとからつけられました。エリントンの原曲も中南米のテイストのあるリズムとメロディでしたが、このキング・コールのバージョンはよりテンポを早くして更にラテンのリズムを強くしてます。当時はアフロ・キューバン・ジャズと呼ばれました。歌はもちろんですが全体の演奏のクオリティが素晴らしく高くてグルーヴ感にあふれてます。途中のキング・コールのピアノ・ソロも絶品。
キング・コールは黒人ですから、僕は早くから黒人音楽を聞いていたことになるのですが、当時は子供ですから黒人も白人もわからなかったのは当然です。
ナット・キング・コールはいわゆるジャズシンガーにカテゴリーされるミュージシャンですが、ジャズから更にポップス寄りの歌がヒットしたことで有名になった人です。ホーギー・カーマイケルが1927年に作り、その後歌詞がつけられた超有名曲です。本当にたくさんのシンガーがカバーしていますが、僕はこのキング・コールの歌がいちばん好きです。
もう珠玉の歌声です。
2.Stardust/Nat King Cole
僕の親父が1960年頃にどういうつもりでナット・キング・コールを買ってきていたのかわからないんですが、ひとつには最初に聴いた「キャラバン」のようなアフロ・キューバンのラテン系音楽が当時流行っていてクラブやキャバレーに行くとバンドがそういうのを演奏して、それでいいなと思って買ってきたのだと思います。
当時グランドキャバレーと呼ばれる大きなキャバレーがあり、何故か親父に連れられて行った記憶があります。その時オーケストラをバックにラテンの曲を歌っていたのが坂本スミ子さんとアイ・ジョージさんでおふたりとも歌が素晴らしかった覚えがあります。
次の曲もラテンの曲です。
3.QUIZAS, QUIZAS, QUIZAS/Nat King Cole

次の曲もたくさんのシンガーがカバーしてますが、1991年にナット・キング・コールの娘のナタリー・コールが、亡くなったお父さんの音源に自分の歌をオーバー・ダビングしてこの曲を録音して、翌92年グラミー賞の”Song Of The Year”を受賞したことを覚えている方もいると思います。
「忘れられないあなた、どこにいても忘れられないあなた。心から離れない愛の歌のように、いままでのどの人よりもあなたを思う気持ちが心にあふれる」
聞いてもらうのはキング・コールの1951年のオリジナルです。
4.Unforgettable/Nat King Cole

ナット・キング・コールが白人にまで人気を得たことはのちの黒人シンガー、例えばサム・クックが成功の道を登る指標となりました。まずスーツとかタキシードで身なりをしっかりして、ヘアースタイルもこざっぱりする、そして歌うときの発音も黒人のなまりを出さずきれいな発音で歌うこと。黒人独特のジョークやそぶりもしないこと。サムはこれを肝に銘じて成功への階段を上がって、白人の高級クラブ「コパ・カバーナに出演するところまでたどり着きましたが、キング・コールはラスベガスの超有名クラブでその前にそういうライヴをやっています。白人層も巻き込んだキング・コールの成功は1950年代当時画期的なものでした。
1964年、もう誰もが知っている、日本語バージョンもあるスタンダード曲です。この曲が最後のヒット曲となり翌65年にナット・キング・コールは絶頂期だったのに45才で亡くなりました。肺がんでした。
5.Love/Nat King Cole
1930年代最初はジャズ・ピアニストとして活躍していたのですが、1937年にピアノ、ベース、ギターという編成でナット・キング・コール・トリオを結成して、その時にあるクラブのオーナーに歌も歌ったらどうだと言われて、本人はあまり気が進まなかったが歌うとこれがすごい人気でスターダムを駆け上がりました。

うちの亡くなった親父も聞いていたナット・キング・コールは、自分の子供時代を思い出させる僕にはちょっと切ない音楽です。親父がお酒と女の人が好きだったのであまり一家団欒な家庭ではなかったのですが、日曜の午後なんかに親父の部屋から聴こえてくるナット・キング・コールはロマンティックでいいものでした。
ナット・キング・コールは僕にとってUnforgettableなミュージシャンですが、うちの親父も僕にとってはいろんな意味でUnforgettableな人です。

2020.06.05 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.20

ブルーズ・ロック編ー1

The Paul Butterfield Blues Band(ELEKTRA/ASYLUM/WEA 18P2-2696)

The Paul Butterfield Blues Band(ELEKTRA/ASYLUM/WEA 18P2-2696)

Canned Heat/Hallelujah&CookBook(BGOCD578)

Canned Heat/Hallelujah&CookBook(BGOCD578)

John Mayall & The Blues Breakers/Blues Breakers With Eric Clapton(LONDON 800 086-2)

John Mayall & The Blues Breakers/Blues Breakers With Eric Clapton(LONDON 800 086-2)

Fleetwood Mac/The pious Bird Of Good Omen (Epic ESCA-7826)

Fleetwood Mac/The pious Bird Of Good Omen (Epic ESCA-7826)

The Jimi Hendrix Experience/Are You Experience (MCA MVCE-24027)

The Jimi Hendrix Experience/Are You Experience (MCA MVCE-24027)

 

ON AIR LIST
1.Born In Chicago/The Paul Butterfield Blues Band
2.Going Up The Country/Canned Heat
3.All Your Love/John Mayall & The Blues Breakers
4.Black Magic Woman/Fleetwood Mac
5.Red House/The Jimi Hendrix Experience

不連続でやっているブルーズ・スタンダード曲集ですが、今日はブルーズロックつまり白人ブルーズの曲でいいものを聴いてみようと思ってます。白人ブルーズは昔はそのままホワイト・ブルースとも呼ばれてましたが、いまはブルーズロックという大きなジャンルに入れていいかなと思います。曲としてこれからも残っていくブルーズロックの曲を選びました。
白人のブルーズバンドと言えば僕にとってはポール・バターフィールド・ブルーズバンド。その前にアニマルズなんかもいましたが、ブルーズに特化したという意味でまずはポール・バターフィールド・ブルーズバンドでしょう。歌とハーモニカがポール・バターフィールド、ギターがマイク・ブルームフィールドとエルヴィン・ビショップ、キーボードがマーク・ナフタリン、ベースがジェローム・アーノルド、ドラムがサム・レイ。
1965年にリリースされたデビュー・アルバム”The Paul Butterfield Blues Band”の1曲目で曲を書いたのはニック・グレイヴナイツ。彼はジャニス・ジョップリンにも曲を提供してたし、マイク・ブルームフィールドと立ち上げたエレクトリック・フラッグのメンバーでもありました。「シカゴに生まれて」というタイトルですが、「1941年にオレはシカゴに生まれた。親父にオマエもそろそろ拳銃を持った方がいいぞと言われた。友達も死んでしまってこの町もずいぶんと変ってしまった」
僕はこれを聴いてシカゴは相当ヤバい街なんだろうなと、アメリカに行ったこともないのに思ってました。
1.Born In Chicago/The Paul Butterfield Blues Band
瑞々しいパワーに溢れてます。当時ポール・バターフィールドもマイク・ブルームフィールドも22,23才くらいです。このアルバムはほとんどブルーズのカバーが収録されているのですが、若かった彼らのブルーズに対する真摯な気持ちがすごく感じられるいいアルバムです。それともうひとつベースのジェローム・アーノルド、ドラムのサム・レイは黒人でこのバンドの前までハウリン・ウルフのバンドのメンバーだったんですが、リズムセクションに黒人のこのふたりを入れたところがこのバンドの要です。
では、シカゴのポール・バターフィールド・ブルーズバンドと並んで60年代のアメリカの白人ブルーズバンドとして必ず名前が上がる「キャンド・ヒート」キャンド・ヒートはウエストコーストのバンドでバンド名のキャンド・ヒートは1920年代のブルーズマン、トミー・ジョンソンの曲名から取ったもの。結成は1965年ですからポール・バターフィールド・ブルーズバンドとほぼ同じ頃です。でも、ポール・バターフィールド・ブルーズバンドがエレクトリック・シカゴ・ブルーズを目指していたのに比べると、キャンド・ヒートは戦前の古いカントリー・ブルーズなんかも取り上げるセンスがありました。中心メンバーのヴォーカルのボブ・ハイトとハーモニカやスライドギターをこなすアル・ウィルソンは黒人ブルーズのレコード・コレクターでもう根っからのブルーズ・フリーク。ジョン・リー・フッカーとのコラボアルバムを作ったり、アルバート・コリンズのレコーディングに尽力した人たちでもあります。聴いてもらうのは映画「ウッド・ストック」でも流れていましたが、アル・ウィルソンがファルセットで歌う彼の自作の曲。
2.Going Up The Country/Canned Heat
いわゆるブルーズロックのバンドとはひと味ちがうセンスがあって僕は好きでした。バンドはやはり60年代のウエストコーストなので彼らのファッションやアルバムジャケットにはヒッピー、サイケデリック・カルチャーのムードがあって面白いです。
この時代のイギリスの白人ブルーズバンドと言えば、ジョン・メイオール・ブルースブレイカーズになるのですが、ジョン・メイオールはいいオリジナル曲がないのです。いい演奏はいろいろあるのですが・・・。
それでやはりエリック・クラプトンが在籍していた頃の名盤「Blues Breakers With Eric Clapton」の一曲目のオーティス・ラッシュのカバー曲にします。この曲のイントロのインパクトはやはり忘れられないものです。
3.All Your Love/John Mayall & The Blues Breakers
とにかくクラプトンのギターがいいです。1966年リリース、エリック・クラプトン21才のギター・プレイ。やはり当時これくらい弾けるギタリストはイギリスにはいなかっただろうと思っていたら、もうひとつすごい奴がいて・・「フリートウッドマック」のピーター・グリーン。
彼はクラプトンがブルースブレイカーズをやめた後のギタリストなんですが、僕はクラプトンより好きでした。結成は67年、ピーター・グリーン(ギター)とミック・フリートウッド(ドラム)、ボブ・ブランニング(ベース)、ジェレミー・スペンサー(ギター)の4人で活動を開始する。途中からベースがジョン・マクヴィーに代わって、その後もうひとりギターのダニー・カーワンが入ってギター3人のバンドになりました。
「アルバトロス」という大ヒットしたオリジナルもあるのですが、ブルーズという位置で聞くとこっちのオリジナルでしょう。
1968年フリートウッド・マックの二枚目のシングルだったこの曲はサンタナのオリジナルだと思っている人も多いのですが、実はフリートウッド・マック
4.Black Magic Woman/Fleetwood Mac
70年代半ばくらいにメンバーもだいぶ変って急にソフトロック路線のバンドになった時はびっくりしましたが、それ以降は僕はこのバンドを聴いていません。でも、それ以後のフリートウッド・マックの方が有名です。
まだまだブルーズロックのスタンダードに選びたい曲はあるのですが、とりあえず今日は次のジミ・ヘンドリックスまで。ジミ・ヘンはブルーズルーツの曲が多いので選びたい曲がいろいろあるのですが、初期の曲でブルーズのスタイルをもった曲で、アルバム”Are You Experience”に収録されているこの曲を選びました。ジミ・ヘンはアメリカン・アフリカンなのですが、イギリスでデビューしたのでしかもサウンドがロックテイストなのでブルーズロックに入れています。1967年UKのアルバムチャート2位まで上がったアルバム”Are You Experience”から
5.Red House/The Jimi Hendrix Experience
やっぱりなんかものが違いますよね。ムンムンとしてます。やはり黒人のテイストなんです。クラプトンもピーター・グリーンもマイク・ブルームフィールドもギター上手いんですが、ジミ・ヘンドリックスはその上を行ってる感じがします。
また、ブルーズロックのスタンダード特集やります!